土反の観てきた!クチコミ一覧

261-280件 / 1019件中
ワルキューレ

ワルキューレ

東京二期会

神奈川県民ホール(神奈川県)

2013/09/14 (土) ~ 2013/09/15 (日)公演終了

満足度★★★

父と娘の愛憎
時代を現代に置き換えたりしていない、オーソドックスな設定の中に、物語を分かり易くする為の表現が盛り込まれた演出で、深読みし過ぎずに音楽と物語をゆったりと楽しめました。

ステージ手前に建築物風の大きなプロセニアムアーチがあり、その向こうで上げ下げされる暗幕に「兄と妹」や「逃亡」といったキーワードが映し出され、物語の流れが掴み易かったです。

本来その場面では登場しない役を黙役で登場させる手法が多用されていましたが、上手く行っている箇所とそうでない箇所のムラを感じました。
本来第1幕では登場しない神々の姿が数回フラッシュバック的に青い光の中で描かれていて印象的でしたが、その一瞬のシーンの為にいちいち暗幕を下ろして裏でセットを転換する物音が聞こえて来て、バタバタ感が気になりました。
子役が演じるブリュンヒルデの分身が、父の思う娘の理想像を表していて、父と娘の愛憎関係が入り混じる別れのシーンに深みを与えていました。
ラストシーンの情景を冒頭に一瞬だけ見せる趣向は歌詞との齟沍もなく、興味深い表現でしたが、冒頭からラストシーンまでのに4時間半以上経過しているので、もう少し印象に残る情景でないと意図が伝わりにくいと思いました。

歌手は皆安定していて、聴き応えがありましたが、演技に関してはぎこちなさを感じることがありました。歌手の声量に合わせたのか、オーケストラが迫力に欠ける様に感じられ、物足りなかったです。

ストッパード×プレヴィン 良い子にご褒美

ストッパード×プレヴィン 良い子にご褒美

演劇企画JOKO

サントリーホール 大ホール(東京都)

2013/09/10 (火) ~ 2013/09/10 (火)公演終了

満足度★★★

もどかしさを感じる公演
オーケストラがただBGMや歌の伴奏を演奏する陰の存在ではなく、オーケストラそのものとして劇中に登場するという珍しい形式の作品でしたが、音楽と演劇のコラボレーションの難しさを感じさせる公演でした。

1970年代のソビエト連邦時代の精神病院が舞台で、そこに収容されている、反体制活動を行った男と、自分のオーケストラを持っていると妄想する男の2人を通じて、体制が個人の自由を奪う社会の恐ろしさが描かれていました。最後に上官の機転の効いた判断があり、一応ハッピーエンドの形になってはいるものの、ソ連が消滅した今でも同様の弾圧が行われているのではないかと考えさせられました。
タイトルの「良い子にご褒美」が、体制に立て突かないものは普通に生活出来るという皮肉に感じられました。

音楽はソ連の作曲家、ショスタコーヴィチやプロコフィエフを思わせる雰囲気がありました。最後の旋律が、原題『Every Good Boy Deserves Favour』の頭文字からなる「E-G-B-D-F」だったのが洒落ていました。

コンサートホールでの公演でPAを用いていた為に台詞が響き過ぎて、言葉が聞き取れるようにゆっくり喋っていたので間延びした感じがありました。
序盤ではオーケストラの奏者も台詞無しの芝居をする場面があったのですが、専門ではないとはいえ酷い演技で、興醒めでした。
序盤以外は芝居と演奏のパートが独立していてあまり絡みがなく、せっかくの趣向が活かされてないと思いました。

テーマ、音楽、芝居それぞれは良かったのに、それらが上手く組み合わさってない印象があって残念でした。

DANCE TRUCK PROJECT:2013 横浜公演

DANCE TRUCK PROJECT:2013 横浜公演

Offsite Dance Project

新港ふ頭入口前 特設会場(神奈川県)

2013/09/07 (土) ~ 2013/09/08 (日)公演終了

満足度★★★

1日目鑑賞
6トントラックの奥行きのある荷台部分を舞台に、8組の出演者によってダンス、音楽、映像のパフォーマンスが行われ、屋外ならではの開放感が心地よかったです。

白井剛/Dill『...NO.2』
Dillさんがラジオの音をリアルタイムでダブ処理する音響に乗せて、上半身裸にサスペンダー姿の白井さんがもがく様に踊るストイックな作品でした。ジャンプして飛び降りた瞬間に音を変調させていたのがドラマティックでした。

21世紀ゲバゲバ舞踊団『横浜三人姉妹』
金色のビキニを来た女性3人が、スポーツやファッションショウを思わせる動きやポーズを繰り返す作品で、健康的な色気と素っ気ない感じが印象的でした。メンバーの1人が運転席に乗り込み、クラクションを鳴らして終わるのがユーモラスでした。

斉藤洋平/ケンジル・ビエン『light or BOX』
手前に透過性のスクリーンを設置して映像を映し、奥からはレーザー光線による照明を打ち、その間の空間を頭にオブジェをパフォーマーが動き、不思議な空間性が感じられました。

テニスコーツ
植野隆司さんはトラックの一番手前でギターを弾き、ヴォーカルのさやさんは客席を歩き回りながら歌う形での演奏でした。儚くて素朴な歌声が夜の屋外にマッチしていました。

岩渕貞太・関かおり『Conception -DANCE TRUCK version-』
静かなドローンが流れる中で、シンプルな衣装を身に着けた2人がほとんどの時間を接触し続けたまま動く、熱を感じさせない無機質なデュオ作品で、トラックの中に異質な世界が現れていました。

稲葉まり『無題』
アニメーション映像の上演で、人形、レース、花火といったモチーフが用いられた、ヨーロピアンな雰囲気がある可愛らしい作品でした。

東野祥子『Ende of Eden (A Lament for Syria)』
トラックの脇に設置された廃品で出来たオブジェの中や手前のスペースも用いたパフォーマンスで、シリアの音楽(おそらく)を用いたDJプレイに合わせて壊れた人形の様な動きの合間に下世話な感じの動きが入り、異様な迫力がありました。

向雲太郎『弁天さまと男』
奥で裸の琵琶奏者が演奏し、トラックの外では向さんが穴のない白い仮面を被ってうろうろ歩き回ったり、水を入れたトタンの洗い桶に顔を浸けた後にその水を被ったりと、滑稽さと孤独を感じさせるパフォーマンスでした

開演はそれほど遅れなかったにも関わらず、終演は予定より1時間以上遅くなっていて、運営の甘さを感じました。

第2の秋	 Second Fall

第2の秋 Second Fall

KARAS

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2013/09/06 (金) ~ 2013/09/08 (日)公演終了

満足度★★★★

紗幕・照明・映像で作られる幻想的空間
ブルーノ・シュルツの小説を原作とした作品で、小説は未読ですが、多分かなり自由にアレンジしていて、物語性はほとんど感じられないものの、独特の幻想的な雰囲気が濃厚で美しかったです。

舞台前面に下げられた紗幕に映像が映し出され、下手で幕の手前に立つ佐東利穂子さんに長方形のスポットライトが当てられる中、幕の向こうで勅使川原三郎さんが踊る、空間の奥行きを感じさせる冒頭の後、紗幕の下端が舞台奥側に引っ張り上げられて、たわんだ天井の様な状態になり、空間の雰囲気が一変したのが印象的でした。その後も多彩な照明・映像・紗幕によって様々な質感の空間が現れていました。
静かな印象のダンスが続く中、バルトークのヴァイオリンソナタで一気にエネルギーの溢れる動きになり、スピード感と持続力のあるダンスが圧巻でした。
終盤はバッハの平均律クラヴィーア曲集が流れる中、静かなダンスが続き、喜怒哀楽のいずれとも異なる独特の情感がドライに醸し出されていました。

意図的なのかも知れませんが、音響の繋ぎ方が振付や照明の精度に比べて粗く感じられたのが残念でした。

分かり易い物語や感情表現が無いので取っ付き難い印象はあるかも知れませんが、劇場空間とダンスを通じてしか表現出来ないものが沢山詰まった作品で素晴らしかったです。かなり空席があったのが勿体なく思いました。

インプロヴィゼーション×ダンス

インプロヴィゼーション×ダンス

サントリー芸術財団

サントリーホール ブルーローズ(小ホール)(東京都)

2013/09/06 (金) ~ 2013/09/06 (金)公演終了

満足度★★★

即興の音楽とダンス
ミュージシャンとダンサーによる即興パフォーマンスで、即興ならではの緊張感や意表を突く展開が印象的でした。

第1部はミュージシャンだけによる演奏で、Dの音を中心音にした様々な旋法による変化に富んだ即興が約1時間切れ目なく繰り広げられ、音楽的に充実していて楽しめました。

第2部は男性2人と女性3人のダンサーが加わり45分程度のパフォーマンスが展開しました。ステージだけでなく、客席の通路も用いて視線を固定させない趣向もありました。
それぞれスタイルの異なるダンスは個性が出ていて良かったですが、後半は他のダンサーの動きを模倣したり、客席にいた子供(出演ミュージシャンの子供だったようです)をステージに上げたり、観客に手拍子をさせたりと、安直な効果に頼った展開に感じられました。
音楽における調性やコードのような形式化の為のはっきりとした共通文法が存在しないコンテンポラリーダンスでは、多人数による即興で45分間持続させるのは難しいと思いました。演奏もダンスに引っ張られて硬直化している感じがあり残念でした。
数分間踊ったアンコールも華やかさはあったものの、中身が無くただ騒いでいるだけに思えました。

後ろの席の人が演奏が始まっても喋っていてうるさいので振り返ったところ、この公演を企画した、作曲家の池辺晋一郎さんでした。招待した客をもてなそうとするのは理解できますが、他の客の迷惑になる行為は慎んで欲しかったです。

ゴッド☆スピード♯ユー!

ゴッド☆スピード♯ユー!

東葛スポーツ

3331 Arts Chiyoda(東京都)

2013/08/28 (水) ~ 2013/09/01 (日)公演終了

満足度★★★

コラージュから生まれる昭和の詩情
様々な音楽、映画、ドキュメンタリー番組をカットアップして組み合わせ作品で、演技や演出に粗が目立つものの、それがマイナスの印象にならずに寧ろ魅力的で独特な雰囲気を生み出していていました。

北朝鮮を脱出した人の物語に『男はつらいよ』や『雨に唄えば』、『鳥』等の映画が重ね合わされていて、台詞やイメージの繋ぎ方が見事でした。
後半は『川口浩探検隊』の映像を流すの合わせてかなり適当な精度で同期して演技を行い、番組の胡散臭さが増幅されていて笑えました。
暴走族ブラックエンペラーのドキュメンタリー番組もコラージュしていて、全体的に昭和テイストが濃厚だったのが印象的でした。時事ネタのブラックな扱い方や演劇業界に対しての皮肉が楽しかったです。
荒唐無稽な物語で、ネタ的なエピソードが多く本筋が見えにくいのにも関わらず、何故か胸を打つものがありました。

わざと斜めに投影した映像に台詞が映し出されていて、役者がそれを見ながら台詞を話す、半ばリーディング公演的な形式となっていましたが、劇中で自虐的に言っていた様に流れがギクシャクしていると思いました。
また、今までの作品に比べて音楽のビートに合わせてラップする部分が少なくて、少々物足りなさを感じました。

鑑賞者

鑑賞者

あうるすぽっと

あうるすぽっと(東京都)

2013/08/29 (木) ~ 2013/09/01 (日)公演終了

満足度★★★★

ミニチュアや他者とシンクロする身体
身体表現を中心にしたスタイリッシュで少々ユーモアもある作品で、80分弱の上演時間が短く感じられました。

小説家の女とその夫(あるいは恋人?)のやりとりにオレンジを巡るエピソードが絡まる物語で、夢の中の様なシュールな雰囲気がありました。
おそらく脚本の構成を自由にアレンジしていて、物語としてどのような内容なのかがあまり分からなかったのですが、目を奪われる魅力的なシーンが沢山がありました。
ダンス的なシーンが多く、タイミングの揃った動きによって不思議な空間感覚が表現されていました。逆光の中、黒いシルエットだけが見えるシーンが美しかったです。テーブルの上に並べたミニチュアの家具をライブ映像で映し出し、実物の家具と動きをシンクロさせるシーンが印象的でした。

耳の不自由な方の為に字幕を用いていましたが、ただ台詞を投影するだけでなく、フォントや文字を出すタイミングが演出されていて、作品を構成する要素として機能していたのが素晴らしかったです。

ニュータウンカフェの人々

ニュータウンカフェの人々

演劇ユニット「Nプラス」

「劇」小劇場(東京都)

2013/08/27 (火) ~ 2013/09/01 (日)公演終了

満足度★★★

優しい雰囲気の物語
団地の中にあるカフェに出入りする人達を描いた群像劇で、オーソドックスな脚本と演出で、目新しさや意外性は無いものの、優しく温かな雰囲気に引き込まれました。

「ニュータウン」という名を冠し、かっては賑やかだったものの住民の高齢化が進み、空き家も増加する団地を舞台に、子供が出来てしまった若いカップル、不妊がきっかけで関係が悪化する夫婦、登校拒否の息子に悩む母といった、どこにでもいそうな人々の話に、建て替え計画の話が絡み、喜びや悲しみがバランス良く描かれていました。

ありきたりな物語でしたが、役者達の落ち着いた演技が自然で、それぞれのキャラクターが魅力的に表現されていました。姉妹の微妙な関係がほぐれて行く描写が印象的でした。

団地という設定があまり活かされていない様に感じられ、勿体なく思いました。

マイ・ロマンティック・ヒストリー

マイ・ロマンティック・ヒストリー

東宝

シアタークリエ(東京都)

2013/08/16 (金) ~ 2013/08/26 (月)公演終了

満足度★★★

ロマンティックではない物語
30代前半の男女の妥協の恋愛を両側からの視点で描いた作品で、甘くない現実がドライかつユーモラスに表現されていました。

職場で出会った2人が成り行きで一夜を共にしたことから付き合い始める話が、所々で男性の本心を打ち明けるモノローグや回想シーンを挿入しつつ進み、女性に妊娠を告げられる所で暗転し、また冒頭から同じシーンが今度は女性のモノローグと回想シーンを伴いながら進み、両者の本音や記憶の思い違いがコミカルに描かれていました。
また暗転があり、その後の話が描かれるのですが、2人の直接的な会話シーンがなく、それぞれのモノローグが続くことによって心が離れている様子が描かれ、終盤になって会話が取り戻され、ハッピーではないものの最悪でもない今後が暗示されていました。

ドラマティックな展開や感動的なシーンが無い物語で、一般的な恋愛物語を期待していると肩透かしを食らいますが、2人のやりとりの裏側にイギリスの社会や宗教的な背景が透けて見えて興味深かったです。

主役2人は役に合っていましたが、少し硬さを感じました。男性視点のパートの時のちょっとしたアクシデント(おそらく)を女性視点のパートの時も再現する様な遊び心があったら良いなと思いました。
他の3人が複数の役を演じ分けていて楽しかったです。特に土屋祐一さんは役の数が多いのにも関わらず、それぞれ異なった妙な雰囲気で演じていて笑えました。

宣伝の仕方が作品の内容に合っていなくて(そもそもシアタークリエのような大きい所ではなく、小劇場向きな作品な気がします)、勿体なく思いました。

アルトノイ スタジオパフォーマンスinアーキタンツ

アルトノイ スタジオパフォーマンスinアーキタンツ

スタジオアーキタンツ

studio ARCHITANZ(東京都)

2013/08/24 (土) ~ 2013/08/24 (土)公演終了

満足度★★★

スタジオ公演ながら充実した内容
ワークショップ受講生によって踊られる作品と、実力派ダンサー2人によるデュオ作品が上演され、対照的な作風が印象に残りました。

『KENTARO!!WS受講者16人によるショウイング』
16人の若いダンサー達がヒップホップやロックに乗せて踊る20分程度の作品でした。18時間のワークショップで作られたとのことで、KENTARO!!さんの普段の振付に比べるとシンプルで、動きも揃っていない場面が多かったのですが、エネルギーに満ちていて引き込まれました。

『アルトノイによる新作』
島地保武さんと酒井はなさん夫婦のデュオで、全身タイツを相手にデュオを踊ったり、巨大な赤いヒモ状のオブジェを振り回したりするシュールなパートと、洗練された美しいダンスを踊るパートが交互に現れる、掴み所が無い構成に不思議な魅力がありました。
バレエ的なムーブメントとコンテンポラリーダンス的なムーブメントが巧みに組み合わされて、独特な動きの美しさがありました。
10月の本公演でどの様な発展を遂げているのかが楽しみです。

2作品が上演された後、おまけでKENTARO!!さんと島地さんのインプロヴィゼーション・セッションがありました。このセッションでは島地さんもヒップホップのテクニックを用いて踊り、両者のユーモアとキレのある動きを単純に楽しめました。

ディストピア

ディストピア

角角ストロガのフ

吉祥寺シアター(東京都)

2013/08/22 (木) ~ 2013/08/26 (月)公演終了

満足度★★

正義を巡って二転三転する物語
非現実的な設定・展開で人間の醜い部分がショッキングに描かれたブラックファンタジー的な要素の強い作品で、登場人物達の立場が二転三転して、善悪を単純に分けていないのが印象的でした。

無実の罪に問われた有名俳優が世間から隔離された町に辿り着き、善い行いをしようとする中で忌まわしい人間関係が明らかになって行く物語で、立体的に作られたセットを用いて回想シーンを含めた様々な場面が次々に展開し、スピード感がありました。
安易に救いのある方向に行かず、モヤモヤ感を残した終わり方は良かったのですが、終盤で回想シーンを多用するのは説明的に見えてしまい、演出的にも落ち着きがなく感じられました。

冤罪が起きてしまうシステムと、一旦疑われたことによって崩壊する日常生活がリアルに描かれることを期待していたのですが、冤罪は物語の発端として使われるものの重要なテーマではなく、正義や偽善が中心的な主題となっていて、個人的に望んでいた方向性とは異なっていたのが残念でした。
荒唐無稽な設定と典型的なキャラクターの造形の為に全体的にマンガ的な雰囲気があり、グロテスクな暴力や狂気の表現に迫真性が感じられず、薄っぺらく感じました。

宗教曲を中心にした選曲は作品の内容に合っていましたが、効果音を含めて音響を多用し過ぎに思いました。
エンドロールはドラマの流れを滞らせていて、ビジュアル的にも格好良いとは思えず、不必要だと思いました。

20世紀のマスターワークス

20世紀のマスターワークス

スターダンサーズ・バレエ団

テアトロ ジーリオ ショウワ(昭和音楽大学・新百合ヶ丘キャンパス内)(神奈川県)

2013/08/17 (土) ~ 2013/08/18 (日)公演終了

満足度★★★

20世紀アメリカプログラム
20世紀にアメリカで活躍した振付家による作品3本のプログラムで、物語性ではなく、ダンサーの動きや形で魅せるタイプの内容でした。

『フォー・テンペラメンツ』(振付:ジョージ・バランシン 作曲:パウル・ヒンデミット)
3部構成の「テーマ」に続いて4つの変奏が展開する音楽に振り付けられていて、素舞台にモノトーンのレオタード姿で踊り、無駄な感傷性のない即物的な雰囲気がクールで格好良かったです。
バランスやタイミングが不安定な所があり、バランシンならではの曲に幾何学的な魅力があまり十分には現れていない様に感じました。

『牧神の午後』(振付:ジェローム・ロビンス 作曲:クロード・ドビュッシー)
『ウエストサイド・ストーリー』の演出・振付で有名なロビンスによる作品で、西陽が射し込むバレエスタジオに1人佇む男性ダンサーの所へ女性ダンサーが訪れるというシチュエーションで展開し、気だるさと官能性が醸し出されていました。客席側の面を鏡に見立てた演出が面白かったです。

『スコッチ・シンフォニー』(振付:ジョージ・バランシン 作曲:フェリックス・メンデルスゾーン)
1本目と同じ振付家の作品ですが、森の美術やスコットランドの民族衣装を用い、振付も古典的なヴォキャブラリーが多用されていて、全幕バレエからの抜粋の様な趣きでした。個人的には今回の演目の中で一番魅力を感じない作風でしたが、パフォーマンスとしては一番充実していたと思います。
吉田都さんの抜群の安定感と腕の表情の豊かさが素晴らしかったです。渡辺恭子さんの少年役も可愛いらしくて印象に残りました。

オーケストラは、目立つミスは無いものの、少々集中力に欠ける演奏で残念でした。

『iSAMU』 20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語

『iSAMU』 20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2013/08/15 (木) ~ 2013/08/18 (日)公演終了

満足度★★

散漫な印象
イサム・ノグチの幼少期、戦後の活躍期、そして現代が断片的に絡まり合いながら展開する物語でしたが、ストーリー的にも演出的にも大きなテーマに向かって収束しないまま終わってしまった印象を受けました。

月・飛行機・数字といったモティーフを巧みに関連させてはいるものの、90分間の上演時間は3つの時代を描くには短くて、各エピソードが並列的に提示されているだけで、そこから先の発展があまり無く、物足りなさを感じました。
各時代でイサムと関わる女性達に重要な役割を担わせようとしている割には描写が浅く、葛藤や愛情といった心情があまり伝わって来ませんでした。
一つの時代に絞って丁寧に描くか、あるいはもっと断片化してイメージの連鎖として表現した方が良いと思いました。

立体的な白いセットを照明と映像で変化させてスムーズに場所や時間が切り替わり、スピード感はあったものの、BGMや環境音が常に流れていたり、場面毎に背景をセットに映像で投影したりと説明的な情報が多過ぎで、観客が想像する余白が残されていなくて息苦しさを感じました。

音楽はミニマル・ミュージックや実験的な電子音楽をメインに用いていましたが、作品の内容からすると人の温かみが感じられるアナログ感のある音楽の方が合っていると思いました。
映像はプロジェクションマッピング的なこともしていましたが、一瞬目を引くだけで、それ以上の効果が感じられませんでした。

役者の演技はそれぞれのキャラクターがしっかり立ち上がっていて良かったのですが、脚本や演出が演技を活かしていなくて勿体ないと思いました。

八月納涼歌舞伎

八月納涼歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2013/08/02 (金) ~ 2013/08/24 (土)公演終了

満足度★★★

ユーモラスな第三部
喜劇的作品の2本立てで、伝統芸能という敷居の高さを感じさせないユーモラスな演技が楽しかったです。

『狐狸狐狸ばなし』
男と女が騙し合う物語で、幽霊のふりをしたり、気が狂ってしまったように見せかけたりと、意表を突いたコミカルな展開が楽しかったです。
昭和に書かれた元々は歌舞伎の演目ではない作品で台詞が分かり易く、歌舞伎独特の台詞回しや所作も少ないので、普通の時代劇コメディーの様な感じでした。
中村扇雀さんの幽霊になっても全く怖くないとぼけた味わいや、中村七之助さんの気絶する時の倒れっぷりや、片岡亀蔵さんの気持悪い女形など、それぞれの役者の喜劇的な面での持ち味が良く出ていました。

『棒しばり』
狂言の同名の作品を舞踊をメインに歌舞伎化した作品で、おおらかで滑稽な雰囲気がありました。
腕を縛られた状態で酒を飲もうと四苦八苦したり、酔っ払って上機嫌に踊る、坂東三津五郎さんと中村勘九郎さんの滑稽な掛け合いが楽しかったです。
腕を用いずにステップを中心に見せる踊りは歌舞伎に限らず他のダンスのジャンルでも珍しく、興味深かったです。

cocoon

cocoon

マームとジプシー

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2013/08/05 (月) ~ 2013/08/18 (日)公演終了

満足度★★★★

現前する凄惨さ
戦争に巻き込まれて行く沖縄の女学生達を斬新な演出で描き、リアリズムの芝居とは異なる面から心をえぐる、強烈な作品でした。

序盤は登場人物の紹介をしつつ学校での日常的な様子が描かれ、戦況が悪化しガマで兵隊の看護をすることが決まったところから雰囲気が一変し、絶え間なく動き続ける人々が凄まじい圧迫感を醸し出していました。ガマから出て海を目指して走るシーンは体力の限界まで追い詰めた演技が心理的なリアリティーを生み出していました。

原作の漫画は未読なので、舞台化にあたっての相違点は分かりませんでしたが、過去の出来事として描くのではなく、現在進行形のこととして感じさせる台詞や演出手法が、リアルタイムで目の前で人が演じるという演劇の形式ならではの表現となっていて、漫画や小説、あるいは映画等では感じ取れないと思われる情感が伝わって来ました。
ライブ映像の投影や同じシークエンスを何度も繰り返したり、他のシーンに挿入するリフレインの手法が、凄惨な物語を立体的にしていました。

音楽のヴォリュームが大きいので、役者の声は必要に応じて不自然さを感じさせずにアンプリファイされていましたが、それでも台詞が聞き取り難いところが何カ所かあったのが勿体なかったです。

Waltz

Waltz

金魚(鈴木ユキオ)

シアタートラム(東京都)

2013/08/08 (木) ~ 2013/08/10 (土)公演終了

満足度★★★

思索的なダンス
安易に音楽に乗せてリズミカルに踊ることを避けつつ、言葉に回収出来ないような情感を表現する繊細な作品で、ダンスについての思索を感じました。

暗闇の中からうっすらと明るくなって行く中での鈴木ユキオさんのソロで始まり、レコードの針飛びノイズの様でも不整脈の様でもある音をバックにギクシャクとした人形の様な動きに緊張感がありました。次第に3人の女性ダンサーも加わり、踊り始めのタイミングは揃えるもののユニゾンではない動きがユニークでした。
はっきりとしたビートのある曲に変わり、照明も一気に明るくなって女性3人のユニゾンが踊られる時の躍動感が素晴らしかったです。その後は、はっきりした筋はないものの物語性を感じさせるシークエンスが連なり、椅子やトルソーや大量の羽毛といった小道具がシュルレアリスムの絵画を思わせました。
次第に雰囲気が落ち着いて来て、鈴木さんと安次嶺菜緒さんの長めのデュオとなり、最後は無音の中での鈴木さんのソロで静かに終わる構成でした。

派手な動きや演出を用いずにダンスとは何かを探求するストイックさが印象に残りましたが、終盤は少々冗長さを感じました。
しっかりした体のコントロールによって、拍節感のない動きのタイミングや奇妙なポーズが明確に表現されていました。特に鈴木さんの動きは人間離れしていて、異様な雰囲気がありました。

タイトルに掲げているにも拘らず、ヨハン・シュトラウスや或いはバレエ音楽のワルツといった、いかにもな選曲はしないで、チャイコフスキーの5拍子のワルツ(交響曲第6番の第2楽章)を用いていて、電子的な変調が独特のノスタルジーを醸し出していました。

歌喜劇『おしりと御飯』

歌喜劇『おしりと御飯』

マサ子の間男

パブ山形(東京都)

2013/08/02 (金) ~ 2013/08/04 (日)公演終了

満足度★★★

アカペラ歌喜劇
「歌喜劇」と銘打った、随所で歌が入るコメディー作品で、後に何も残らない様などうでも良い物語を中年男性7人が本気で演じているのが楽しかったです。

ヤクザの親玉の身代わりに刑務所に入っていた男が出所し、裏稼業から足を洗って居酒屋のアルバイトを始める話で、感動させる場面も入れずにひたすら笑いを取ろうとする潔さと緩さが気持ち良かったです。
ドタバタな展開で台詞も大きな声だったのに、うるささが感じられなかったのが不思議でした。
歌喜劇という名の通り、ミュージカルのパロディー的な歌が沢山あるものの、全て伴奏無しのアカペラで歌われ、独特の雰囲気がありました。

馬鹿馬鹿しい内容にも関わらず演技は手を抜いていなくて、それぞれの役者が複数の役をキャラクターをはっきり打ち出しつつ演じて分けていました。
特に松之木天辺さんが演じた、ラジカセから流れる音楽に乗せてホットパンツ姿でベジャール版『ボレロ』を本格的に踊る謎の人物のインパクトが強烈でした。

会場は、赤のベルベット生地の椅子やエンボス柄の壁紙等、古びた昭和の雰囲気が色濃く残る内装のパブで、くだらない内容にマッチしていました。バーカウンターや入口のドアも巧みに劇中に取り込んで使っていて印象的でした。

ウィンカーを、美ヶ原へ

ウィンカーを、美ヶ原へ

kitt

駅前劇場(東京都)

2013/07/26 (金) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★

軽妙な会話から炙り出される本性
ワンシチュエーションの群像劇で視覚的にはほとんど変化がないものの、台詞のやりとりがユーモラスで、笑いながら引き込まれました。

近くで殺人事件が起きた為にパーキングエリアで足止めを食らった4つのグループが会話するうちに、様々な恋愛関係が明らかになって行き、嫉妬深さや空気の読めなさといった、それぞれの人物の悪い面が浮かび上がってくる話で、緊迫した場面でもコミカルなテイストが持続していて楽しかったです。
後半は殺人事件を巡るミステリー的な雰囲気となり、とりあえず一段落ついた後に、実は殺人事件の犯人であると判明する1組だけがパーキングエリアに残っているシーンとなり、冷静でありながら狂っている様子を叙情的に描いていましたが、そのシーンを引っ張り過ぎている様に感じられて、もっとサラッと終わっても良いかと思いました。

当人達は真面目に話しているつもりなのに、端から見ると滑稽な様子が自然に描かれていて、笑いの取り方に押し付けがましさがなくて良かったです。

シンプルな美術と照明が会話の面白さを引き立てていました。数分間の時間の経過を示す暗転の時にのみ流れる音楽がクラシックの曲で、妙に清々しいのも作品の雰囲気に合っていて楽しかったです。

ヘンゼルとグレーテル

ヘンゼルとグレーテル

江東区文化コミュニティ財団

ティアラこうとう 大ホール(東京都)

2013/07/27 (土) ~ 2013/07/27 (土)公演終了

満足度★★

理念に技術が追い付かず
アマチュア(あるいはアマ・プロ混合?)のオペラ公演には珍しく、攻めた感じの演出でしたが、演奏や演技、スタッフワークがその意図を表現出来ていなくて、理念だけが空回りしている印象が残りました。

鳥をメインモチーフとして、通常の演出では出演しないダンサーが登場して鳥のような動きをしたり、鳥カゴを模したセットがあったり、羽毛を撒き散らしたり、あるいは原作では魔女が子供を釜戸でお菓子にする設定をお金にする設定していたり、最後のシーンを事前に別のシーンとして先取りして見せたりと、単純な子供向けの物語にせずに、現代社会との接点を持たせたり、シーンやモチーフに関連性を持たせて伏線を巡らせた趣向が盛り込まれていて、興味深かったです。

しかし、そのアイディアを実現化するにあたって、ヴィジュアル的にかなりチープな雰囲気になってしまっていて残念でした。
お菓子の家は舞台手前に降りてくるスクリーンにアニメーションとして表現され、空間の奥行き感を殺してしまっていたのがもったいなく思いました。照明が舞台全体を明るく照らし過ぎで、もっとメリハリが欲しかったです。床がホールのフローリングそのままだったのも貧相に見えました。黒リノリウムを敷けば空間が引き締まったと思います。

歌手は魅力的な声質や表現の人もいましたが、オーケストラの音量に負けてしまって聞こえないことが多かったです。演技も必然性が感じられない小芝居が多くて煩く感じられました。
オーケストラも演奏が粗く、ファンタスティックな雰囲気があまり出ていませんでした。

オペラ研修所 オペラ試演会 「魔笛」~短縮版~

オペラ研修所 オペラ試演会 「魔笛」~短縮版~

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2013/07/27 (土) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★

謎めいたラスト
20分の休憩込みで2時間弱に短縮されたヴァージョンによる上演で、歌唱力だけでなく演技力も楽しめる演出でした。

中央には沢山のぬいぐるみが置かれたベッドがあり、上手にソファー、下手にクローゼットが設置された舞台で全てのシーンが演じられる形で、序曲は演奏されず、雷が鳴り響く中でパジャマ姿のタミーノがベッドの中にいるところから始まり、所々をカットしながら物語が展開しました。
カットされた部分がフォローされていない構成だったので、このオペラを初めて観る人には物語が分かり難くなっていました。
パパゲーノの『おいらは鳥刺し』や、夜の女王の『復讐の炎は地獄のように我が心に燃え』といった有名なアリアがカットされていたのが残念でした。

演出としては途中までは比較的オーソドックスに感じられましたが、終わり方が謎めいていました。最後の場面は単純な大団円とはならずに、パミーナが、冒頭でタミーノを襲った蛇と同じ衣装を着て現れ、夜の女王のみならずザラストロの陣営達も倒れていく演出となっていました。おそらく子供が恐怖心や親の抑圧を克服するということを表現したのだと思いますが、意図が分かり難かったです。
舞台奥にスクリーンがあり、映像を映したり歌手達による影絵を見せていましたが、あまり効果を感じませんでした。

劇場が小さく、ピアノ伴奏だったこともあって、歌に無理がなく聞き取りやすかったです。演技も期待以上に楽しめましたが、パパゲーナが正体を明かす前のお婆さんの振りが全然そう見えなかったのが残念でした。

このページのQRコードです。

拡大