満足度★★★
思索的なダンス
安易に音楽に乗せてリズミカルに踊ることを避けつつ、言葉に回収出来ないような情感を表現する繊細な作品で、ダンスについての思索を感じました。
暗闇の中からうっすらと明るくなって行く中での鈴木ユキオさんのソロで始まり、レコードの針飛びノイズの様でも不整脈の様でもある音をバックにギクシャクとした人形の様な動きに緊張感がありました。次第に3人の女性ダンサーも加わり、踊り始めのタイミングは揃えるもののユニゾンではない動きがユニークでした。
はっきりとしたビートのある曲に変わり、照明も一気に明るくなって女性3人のユニゾンが踊られる時の躍動感が素晴らしかったです。その後は、はっきりした筋はないものの物語性を感じさせるシークエンスが連なり、椅子やトルソーや大量の羽毛といった小道具がシュルレアリスムの絵画を思わせました。
次第に雰囲気が落ち着いて来て、鈴木さんと安次嶺菜緒さんの長めのデュオとなり、最後は無音の中での鈴木さんのソロで静かに終わる構成でした。
派手な動きや演出を用いずにダンスとは何かを探求するストイックさが印象に残りましたが、終盤は少々冗長さを感じました。
しっかりした体のコントロールによって、拍節感のない動きのタイミングや奇妙なポーズが明確に表現されていました。特に鈴木さんの動きは人間離れしていて、異様な雰囲気がありました。
タイトルに掲げているにも拘らず、ヨハン・シュトラウスや或いはバレエ音楽のワルツといった、いかにもな選曲はしないで、チャイコフスキーの5拍子のワルツ(交響曲第6番の第2楽章)を用いていて、電子的な変調が独特のノスタルジーを醸し出していました。