中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~
ホリプロ
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2024/02/06 (火) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
どん底から這い上がった稀代の歌舞伎役者・中村仲蔵に、藤原竜也がよくはまっていた。藤原は激しい喜怒哀楽と大ぶりの演技なので、ちまちました芝居では臭くなってしまう。今回は、この藤原の特徴を存分に生かせた。二幕の外郎売の蝶早口の膨大なセリフは見ものであった。井上ひさし「薮原検校」の芸の見せ場のようだった。久しぶりにいいものを見た。
もう一つ、「50両」しかせりふのない、「忠臣蔵」五段目の斧定九郎が見せ場。ただ、セリフはないので、歌舞伎とは何が見どころなのかを考えさせられる。戯曲中心の「会話劇」である新劇では、セリフのない見せ場は考えにくい。
上を目指すギラギラした歌舞伎役者を演じる座組の中に、お稲荷さんのコン太夫役の池田成志がトリックスターとしてうまく合っていた。自然体のユーモアと、緊張を和らげるほっとした時間を担っていた。
二役の市原隼人も、肉体派の彼の特性を生かして、荒事をきわめた市川八百蔵と、身投げした仲蔵を助けた新之助にぴったり。
場面が多いらしい(「赤旗」評によれば二幕二十六場)が、舞台に3階建ての芝居の楽屋セットを組み立て、それぞれの階でスピーディーに場面転換して、まったく転換の多さを感じさせない。しかもこのセットは下は稲荷町(大部屋)から、名題(スター)役者までの役者のヒエラルキーも示していて一石二鳥である。
「抗えないことには逆らうな」「俺には抗えないことなんてないと思える」等々、決め台詞も随所に光る。「一本の道がみえる。その先には何があるのか」「お前の中の化け物を引き出してくれる人がかならずいる」「分け前をもらう子分じゃない、獲物を狙う一匹狼」そして、「役者のさが」にいたる。
スターリン
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2024/02/09 (金) ~ 2024/02/16 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
村雲隆一演出を拝見。全5場構成。1場はスターリン(小田伸泰)とユダヤ人俳優のサーゲリ(斉藤淳)の初対面。リア王を絡ませながら、互いにどこまで踏み込めるかの腹の探り合いという感じ。二人とも神学校出身。スターリンも威圧的でなく、あまり怖くない。そこがちょっと物足りない。
2場で二人は互いに裏切りの経験を持つことを告白する。スターリンは帝政内務省の密偵に誘われ、サーゲリはスパイとして、刑務所で危険分子のユダヤ人と同じ房に送り込まれた。サーゲリは「俺は裏切ってない、房に入ってすぐに、自分の目的を相手に伝えた」というが、スターリンは「俺は密偵だ」と。サーゲリの息子ユーリがシオニストとして取り調べを受ける。スターリンは「もう家に帰った」というが。
3場 30年代の農業集団化と大粛清を振り返る。スターリンはジノビエフ、カーメネフ、ブハーリンのライバルを出し抜いたこと、レーニンが(右手はマヒしたため)慣れない左手で書いたスターリン排斥の遺言を。うまく切り抜けたことを自慢する。サーゲリはウクライナへ赴き、みずから富農撲滅の先頭に立っていた。飢餓で1000万人が死んだ等々と、スターリンに面と向かって告発。だんだん話が核心に迫っていく。スターリンの2番目の妻は自殺した。労働者と農民の殺人者になったみずからの姿に絶望して。「一人が死ねば悲劇だが、100万人の死は統計だ」とうそぶくスターリン。チャップリンのモジリである。ユーリは拘束されたまま、父のサーゲリは会わせてもらえない。ユーリはジョイントの一味だと、スターリンは疑う。
4場(短め)戦後、フルシチョフたち「新しい人」が自分に服従しないことにいら立つスターリン。戦争。サーゲリは何百の赤軍将校を処刑したとスターリンをなじる。戦後、スターリンはユダヤ人の強制移住を提案するが、フルシチョフ達は先送りにする。「医師団陰謀事件」がおきる。新たな「敵」として反ユダヤ主義が強調されると、なぜ作者がスターリンの相手役をユダヤ人にしたかが見えてくる。ドイツ語で書いた芝居なので、当然ヒットラーを重ねたのではないか。
トルストイのように不死を目指し?放浪するスターリン。「いくつもある部屋を、次から次へと変える」といわれて、暗転ごとに、窓や机を示すセットを配置換えしていた理由が分かった。
スターリンも多くの人を殺してきたせいか、得体のしれない恐怖におびえる。人間スターリンの「良心」を想像するのが、スターリンにふさわしいのかどうか。全く後悔もしないのでは、芝居が成り立たないが、独裁者の内心の苦しみというのは安易な想像であり、通俗的な慰めになってしまうのは注意を要する。
5場は悲劇的な、しかし厳粛なラストとなる。2時間10分
勉強になる芝居であった。それにしても「若き日のスターリンは皇帝権力の二重スパイだった」(亀山郁夫)とは本当なのか。この芝居もそう書いているが、それがスターリン生存中、公に知られなかったのはなぜだろう。
夜は昼の母
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2024/02/02 (金) ~ 2024/02/29 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
アル中の父親(山崎一)をもつ4人家族の話である。場所はデンマーク。最初は兄(樫山隼太)が弟ダヴィド(岡本健一)のセクシャリティ(女装、女性へのあこがれ?トランス?)を攻撃するところから始まり、朝、父、母(那須佐代子)も食堂におりてくる。母のしつこい咳や、食材費の工面の父の悩みと続く。父が酒で失敗したこと、施設に入っていたことが語られ、そして…父がついに隠れて酒を飲む。ここまでの過程が長い。ここから父のごまかしがおかしくて、家族同士の本気の肉弾戦になり、舞台が面白くなる。葛藤の原動力は父の酒への執着だけなのだが、その執着がとにかく半端ない。山崎一の独擅場だ。
3時間20分(15分休憩)
ウィキッド
劇団四季
JR東日本四季劇場[秋](東京都)
2023/10/19 (木) ~ 2024/01/27 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
オズの魔法使いの前日譚ということだが、途中からオズ本編の裏話になっていく。そしてすべてが最後はつながる。すべての伏線を回収して見せるストーリーが非常に巧み。西の「悪い」魔女の親友だった、南の良い魔女が、けんか別れや憎しみもないのに、なぜ西の悪い魔女の「死」を祝福しているのだろう?と、見ながらずっと疑問だったが、その疑問も最後にはほどけた。
オデッサ
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2024/01/08 (月) ~ 2024/01/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
笑いに次ぐ笑いのうえに、ミステリーは意外な展開を見せる。それで終わったかと思うと、最後にどんでん返し。100分、十分に楽しめる。ただ三谷幸喜は今回もメッセージをこめることには非常に禁欲的である。ニール・サイモンのように。
殺人事件の取り調べ。互いに話の通じないアメリカ人警部(宮澤エマ)と日本人容疑者(迫田孝也)、日英両語ができる青年(柿澤勇人)が、日本人を救おうと間に立って悪戦苦闘する。数十年前の最初の思い付きは、日中戦争中の中国での、日本人と中国人の話だったそうだ。間に立った通訳が、戦闘を避けようと嘘の通訳を繰り広げて、爆笑コメディーになる。この設定なら、笑いだけではなく、戦争回避という大きな目的を背景にした、奥行きのある話になったと思うのだが。「笑いの大学」のように。
みえないくに
公益社団法人日本劇団協議会
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/01/18 (木) ~ 2024/01/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ケストナーやスターリンなどの評伝劇で、近年急速に頭角を現した鈴木アツト氏が、評伝劇とは違う、現代の世界と翻訳の問題に切り込んだ。日本の敵どころか「世界の敵」になった国の言葉を広める辞書を作ることは、日本国民を敵に回し、会社もつぶれるのではないか。ロシア語・ロシア文学をめぐる現在のジレンマを、架空の小国の話に置き換えて、敵とみなしたら、その国に関わる全てが否定されてしまう現代の極端な風潮を見つめ直させる。なかなか難しい課題に取り組んだ意欲作である。グラゴニアが隣国に侵攻した、というところで、舞台三方の大きな本棚が倒れて、どばーッと本が散乱する演出は、ダイナミックだった。
架空のグラゴニア語をいろいろ肉付けして、舞台に乗せたのは面白かった。日本語は、雨に関する言葉がたくさんあるが、グラゴニア語は物のにおいについての単語が豊富なのが特徴とか。「ムルケアス」ということばは、「老木の香おり」の意味で、同時に「老人の生きた時間」という意味があるとか。このマイナーな言語を学ぼうと、べてらん編集者(土居裕子)が、家じゅうの物に、グラゴニア語を買いたポストイットをつけていた、というのは「なるほど!」と思った。モノになりそうな学習法だ。
一方ストレートな議論中心で、遊びというか、芝居にゆとりがないのが残念。人物の生活と感情にもう少し厚みが欲しかった。
パートタイマー・秋子【石川公演中止】
ニ兎社
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/01/12 (金) ~ 2024/02/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
つぶれそうな下町スーパーで、わけあってバイトを始めた山の手の奥様・樋野秋子(沢口靖子)。さえない店長派と、ぐーたらバイトの反店長派の対立の余波を受け、頭がくらくらしてくる。そんな世間知らずの奥様に、沢口靖子がうまくはまっていた。
生瀬勝久の「焼肉ヨーデル」のスイス風の節回しは傑作で、客席が大いに沸いた。ロッカーから突然飛び出してくる意表を突く場面と言い、生瀬氏の喜劇度は非常に高かった。
2時間45分(休憩15分込み)
ひばり
劇団四季
自由劇場(東京都)
2023/12/24 (日) ~ 2024/01/20 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ジャンヌ・ダルク役の小柄な五所真理子が、無邪気なほど無垢でりりしくて、声もよく響いて素晴らしかった。舞台装置は簡素ながらも紋章や林立する槍で歴史を感じさせる。なんといっても素晴らしいのは衣装。甲冑や、貴族の豪華な服、司祭たちの赤いビロードのような服など、見た目にもゴージャスだった。
前半の神の声を聴いてから、ボードリクール隊長を説得して隊を整え、シモンで皇太子を起ち上らせるまでは、ジャンヌの知恵と純真さに心現れる。すがすがしい。
後半の宗教裁判は、審問官とジャンヌの対決がなかなか重い。そのなかでも、最初の方の「人間こそが神の奇跡」「人間が自ら選択し、実現することができることこそが奇跡」というジャンヌの言葉は、きらめく輝きを感じた。(井上ひさし「きらめく星座」を連想させる。もちろんアヌイの方が先だが)
こうもり
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2023/12/06 (水) ~ 2023/12/12 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
おもしろかった。「ウインの森の物語」の曲を、中心のワルツに使っている気がする。屋敷と舞踏会と留置場と、3幕がそれぞれ全く違う話で、そこが面白い。でも何度も見てきて多少あきた感はある。新国立劇場にはそろそろ別のプロダクションを作ってほしい。
モモンバのくくり罠
iaku
シアタートラム(東京都)
2023/11/24 (金) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
横山拓也らしい安心して楽しめる、アットホームで深みのある芝居だった。真澄(枝元萌)と夫(永滝元太郎)と娘(祷キララ)の、別居はしているが仲の良い家族かと思っていると、意外な裏が次々出てくる。夫がスナックを任せている沙良(橋爪未萠里)と実は…と。でもまた、そうおもわせておいて、沙良はその気がなくて、夫の片思いとか。
話の手が込んでいて、少し落ち着くと、また新しい情報でざわつかせ、最後まであきさせない。真澄が足が悪いのは、実は過去に事故があったせいで、それに隣人の俊介(八頭司悠友)が絡んでいるとか。
海をゆくもの
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/12/07 (木) ~ 2023/12/27 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
おもしろかった。小日向文世の悪魔役がすばらしい。他のうらぶれたガサツな労働者たちと違い、嫌みなスマートぶりが絶品。弟役の平田満と二人っきりになったとき、正体を現して魂を懸けた勝負を挑む。ぞっとするような怖さがあった。
上演3時間(休憩20分)
東京ローズ
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2023/12/07 (木) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
アイバ・郁子・トグリは、戦争中、米軍向け「戦意喪失」放送でDJをつとめたアメリカ生まれの日系二世。UCLAを卒業し、医学部の大学院への進学が決まっていたという、当時としては超がつく才媛である。ちょうど叔母の見舞いのために日本に来ていて、日米開戦で帰国できなくなった。戦争中も特高の圧迫に抵抗してアメリカ市民権を手放さなかったのに、それが災いして、戦後米国で国家反逆罪に問われ、禁固10年、市民権はく奪の判決を受ける。なんという悲劇、なんという不条理。この人生だけでも最高のドラマの素材だ。
米穀からの来日、叔母の家、帰国失敗、同盟通信勤め、ラジオ東京勤めときて、戦後はDJ「東京ローズ」を探す米週刊誌記者の誘いに乗って、2000ドル(3万円=日本円で3年分の給料)という報酬と引き換えに「自分は東京ローズ」という契約書にサインし、インタビューを受ける。記事でも、そして裁判でも「真実はわかってもらえる」という甘い考えが裏目に出て、米国の裏切り者探しのスケープゴートにされてしまう。
6人の女優たちの芝居。主人公のアイバを、6人がバトンリレーのようにして交代で演じる。シルビア・グラブの演技がぴピカイチである。ドラマの一番のかなめである戦後、「東京ローズ」とみなされ、米国で有罪判決を受け、刑期短縮で6年で出所するまでを担っている。孤立無援のたたかいを歌う「クロスファイヤー」の重苦しいうめきのような歌も迫力があった。
70年代になって、全米日系人協会が支援を決め、フォード大統領の恩赦が出る。どん底からの逆転勝利の喜びは、歌も大いに盛り上がり、涙が出た。
他の女優は名前は知らないが、パンフを見ると、私が見た舞台にも出ている人が多い。いわば隠れた実力派ぞろい。叔母を演じた飯野めぐみが、拘留中のアイバに面会に来た時の歌がよかった。弁護士コリンズと最後のアイバを演じた森加織も、苦しくてもあきらめない正義派の感じがよく出ていた。最初のアイバと、平ラジオ局員を演じた山本咲希は小柄なのが目立ったが、まだ現役の学生とは驚いた。
2時間半、休憩15分込み
「慈善家-フィランスロピスト」「屠殺人 ブッチャー」
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2023/11/17 (金) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
屠殺人ブッチャーを拝見。 かつて ラビニア (架空の国、もとソ連の一国か)で残虐な拷問を行った男(高山春夫)に対して、 若い女(万里紗)が 復讐を始める。 その冷酷さが怖い。 最初は何も関係なく見えた若い男(西尾友樹)が、実は意外な関係があって事態に巻き込まれる。その過程がスリリング。最後に どんでん返しもあり、息をつかせない。
100分とコンパクトだが、最後まで緊張感に満ちた 芝居だった。
空ヲ喰ラウ
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/11/28 (火) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
山に入って木の高所の枝打ち などを行う作業員を空師というらしい 。山深い集落で、林業が衰退する中、かつて7つもあった空師集団が今 2つしかない。そのうちの大きい方の梁瀬組が、もう 女3人しか残っていない 中村組 に共同作業を呼びかける。しかし 中村組としては今までの経緯 もあって素直に受けられない。そんなところに、山に迷い込んだ若者が中村組見習いとして入ってくる。
山育ちの人間と都会の人間との対立や、天井までセットされたうっそうとした木組みを、縦横に上がり 下がりする姿は素晴らしい。群像劇ならではのパワーがある。
惜しむらくは後半、新人青年春一(吉田知生)が、命の危険を感じるほど追手を恐れている設定に説得力が乏しい。吉田氏は白のつなぎで図体はでかいが気の弱い青年を好演していた。もう少し無理のない設定を考えてほしい。
無駄な抵抗
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2023/11/11 (土) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
前回「終わりのない」は「オデュッセイア」がモチーフだったそうだ。今回は「オイディプス」だというから、どのように「母と交わり、父を殺すのだろう」と思いながらみた。だいぶん変形した形で「運命」は姿を現す。最後に明らかになる運命には、驚きがあった。
いつもの前川知大のような異次元の体験がないのは残念だった。
休憩なし2時間
シモン・ボッカネグラ
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2023/11/15 (水) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ヴェルディのオペラに、こんな作品があるとは知らなかった。あらすじにあるように、少々話が複雑。第一幕になって、プロローグから25年たっているとはわからなかった。とはいえ、人間関係がわからないほどではない。アメーリアをめぐる実父シモンと、養父。恋人と横恋慕するパオロの三角関係が軸になる。パオロがイアゴーのような、恨みっぽい策略家で複雑。2幕でシモンが「おれは犯人を知っている」とうたうので、パオロをはめるつもりなのかと勘違いした。実は犯人を知らない強がりだった。
歌手たちの歌の聞かせどころはたっぷりあって、それは見事なものだった。
初日に見たが、天皇陛下がきており、手荷物検査などあり、天皇の入場退場には拍手が起きた。残念ながら3階席から、その姿は見えなかった。
ねじまき鳥クロニクル
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2023/11/07 (火) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初演を見たので2回目。蜷川幸雄演出の「海辺のカフカ」よりも、村上春樹の世界観をうまく舞台に現出させたと思うので見に行った。が、仕事で70分遅れていったので、前半90分のうち見られたのは15分と、後半75分。休憩込み3時間。
「ねじまき鳥」=村上ワールドの持つ、深部の暴力性の噴出を、ダンスと生バンドのドラムなどを使って、表現しているところが一番の見どころと思う。身体性と音楽性がカギで、言葉はあまり響いてこない(「6歳の時から声を出さなくなったの。何かあったのか、決意したのか」など、説明やほのめかし)。
音楽は大友良英が演奏しているんだから、そりゃあ力が入ってる。
マクベス
日生劇場
日生劇場(東京都)
2023/11/11 (土) ~ 2023/11/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ヴェルディのオペラの中では、それほど演奏機会が多くないが、意外と面白かった。もっと演じられていいと思う。そもそもシェイクスピアのマクベスが見せ場の多いドラマチックな芝居なので、ヴェルディのオペラの作風とぴったり合う。
一幕はマクベス夫人(田崎尚美)の登場のアリアや、夫(今井俊輔)妻の二重唱など、伴奏なしでアカペラの部分が多い。これが意外と緊張感を醸し出して聞かせる。ダンカン王殺害が判明しての、1幕最後のフィナーレは金管などが響くど迫力で、最大の盛り上がりだった。それまでがマクベス夫妻の密談のような抑えた音楽なので、その落差が効果的だった。
二幕のバンクォー(伊藤貴之)殺害場面も見ごたえ・聞きごたえがあった。その後のマクベスの宴席での錯乱(バンクォーの亡霊におびえる)も、一種の「狂乱の場」になっていて、音楽的にも聞かせる。二幕冒頭だったか、一幕だったか忘れたが、マクベス夫人が権力欲にとりつかれた野心を歌うアリアも一種の「狂乱の場」で迫力があった。
三幕・四幕はなぜか飽きてきちゃって、一・ニ幕がよかった。見ながら、「マクベス」は「罪と罰」にに散ると思った。野心から殺人を犯した犯人が、犯行後に心の平穏を失って自滅していく展開が重なる。
連鎖街のひとびと【11月29日~11月30日公演中止】
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2023/11/09 (木) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
2000年の初演、翌年の再演から22年ぶり。ソ連軍将校にいわれて、余興の台本作りに取り組む二人の劇作家(高橋和也、千葉哲也)…という設定はおぼろげに覚えているが、後は全然忘れていた。若い作曲家(西川大貴)とマドンナ(霧矢大夢)の破局を防ぐため、「ハゲを隠す坊主頭」「嘘を隠す大嘘」で、マドンナと元満州国役人の俳優(石橋徹郎)の衝撃シーンを芝居の中に組み込んでしまおうという大芝居。演劇の「キネマの天地」のように、演劇は人を救えるという思想を前面に押し出した演劇賛歌である。そこに、政府の満州引揚者を受け入れない棄民政策の告発をちょいときかせている。
後半、芝居の稽古の場面がみごとに笑わせる。石橋徹郎が長ーいロシア人の名前を云えずに口ごもったり、止むにやまれず選出家に泣きついたり、その困りぶりがコミカルかつ生々しくて爆笑に次ぐ爆笑。
アメリカの怒れる父
ワンツーワークス
駅前劇場(東京都)
2023/10/26 (木) ~ 2023/11/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
みる前は韓国系アメリカ人の父親の話かと思っていたが、違った。ウォール街の仕事でクズになり、仕事も失って、麻薬とアルコールに身を持ち崩したビル(奥村洋治)。息子のウイル(米澤剛志)もやはり証券トレーダーらしいが、虚業に嫌気がさして、アラブ系の妻ヘバ(北澤小枝子)をのこし、スーダンの支援活動へアフリカに行ってしまう。題材としては重い。韓国で上演した時、客席からしじゅう笑いが起きたというが、ホント、どうしてだろうか?