リア王 公演情報 パルコ・プロデュース「リア王」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    リア王は初めて見た。幕が上がると、王国的な装飾や衣装の何もない舞台にびっくりしたが、さらに白壁も取り払って、がらんとした素舞台になったのはさらに驚き。それだからこそ、人間関係と喜怒哀楽がくっきりと見えた。思い切った演出だ。

    主筋より副筋のグロスター(浅野和之)とエドガー(小池徹平)が哀れで、二人で助け合っていくくだりが印象的。数年前のシェイクスピア名場面集的な河合祥一郎の「ウイルを待ちながら」でも、見せ場になっていた。エドマンド(玉置玲央=大河「光る君へ」でも、屈折した悪役で活躍中。今回はダテ眼鏡であまり悪人顔には見えない)もイアゴー的な悪党で、二人の姉(江口のりこ、田畑智子)より悪党ぶりがすごい。三人が醜い三角関係になり、それが自滅の原因になるのも因果応報になっている。

    ネタバレBOX

    覚書的にいくつか。
    ・冒頭は、リア(段田安則)登場の前に、グロスター家の異母弟のエドマンドの話が出る。副筋の重要性を冒頭から予告している。
    ・リアの感情的な王国分割を忠臣ケント(高橋克実)はいさめるが、グロスターは不在。いたら、一緒にいさめないとおかしいので、退場させてあるのだろう
    ・ケントが1幕1場で、エドガーが2幕1場で退場するとき、背後の白壁を壊して出ていく。二人は、この後、別人に変装してしまうので、この退場の仕方は、本人としての今生の別れという意味がある。
    ・エドガーが「哀れなトム」になり、裸(パンツ一枚)でリアと遭遇し、リアが「人間は、衣装をはぎとれば、赤裸の、二本足の動物に過ぎない」という場面、エドガーは見事な逆立ちをして見せて「二本足」を強調する。
    ・グロスター家の場面、リーガンたちがト書き上の登場前から舞台背後にいて、グロスターたちのやり取りを見ている。グロスターたちが、リーガンたちが来るので何とかしようと考えていることを視覚化しており、見事。
    ・その後も、舞台にいないはずの登場人物が、舞台後方にずっといて、ドラマを動かしているのは誰なのかが分かる仕組みになっている。とくにエドマンドがずっとたたずんでいる。
    ・次女リーガンの夫コーンウォール公爵(入野自由)は、急に出てきた召使から切り付けられ、その傷で死んでしまう。この召使はこの場面だけの端役で、シェイクスピアのご都合主義としかいえない。
    ・死んだコーディリアはリア王に抱えられてではなく、死体として引きずられて舞台を横切っていく。舞台後方に立った後で、リアにはぐされるけど。
    ・最後の場面、死んだ人間も次々現れて舞台後方に立つ。死者も生者とともにあるようだが、最後、再び白壁が下りてきて、死者たちはその後ろで見えなくなる。すると、残ったのは3人だけ。悲劇だが、悪党や強欲な連中はすべて死に、(その巻き添えで死んだ善人=コーデイリアや、気のいい老人=リアとグロータスもいるが)次代を担う良識と勇気ある三人(長女ゴネリルの夫・オールバニー公爵=盛隆二、エドガー、ケント)が舞台に残る。新しい治世の始まりを感じさせ、悲劇だけれど、すがすがしい。突然あらわれたフォーティンブラスに後を託す「ハムレット」よりずっといい

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    2024/03/15 23:40

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