諜報員 公演情報 パラドックス定数「諜報員」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    期待の劇作家・演出家による、ゾルゲ事件の劇化だったが、不完全燃焼に終わった。ゾルゲや尾崎など、直接の当事者でなく、事件を末端で協力していた(らしい)4人の男と、それを取り調べる2人の男。終始暗い舞台で、腹の探り合いのようなやり取りが多い。思想犯なのに、独房でなく、簡易ベッド付き(!)の隔離部屋。ベッドを使う回想場面の為にこういう作りにしたのだろうが、戦前の拘留施設にベッドはおかしい。そこは作者も分かっていて、特高を快くなく思っている憲兵隊が貸してくれた傷病兵の隔離部屋、ということになっている。なんと回りくどい。

    警察の一部が、特高に反発し、対抗して取り調べるという設定も違和感が大きい。自宅や職場で逮捕した人間の顔と名前が一致しないというのも、ありそうにない。
    アカの動向を探るためにキリスト教会に潜伏という設定も首をかしげる。戦前戦中、共産主義者は宗教を嫌い、普通は教会にいったりしない(と思う)。

    一番の問題は、ゾルゲ事件の本体がよくわからないうえに、登場人物たちのゾルゲ一団での役割もほのめかし程度でぼんやりしていること。事件は共産主義を信じる者たちが、ソ連防衛のために結束したスパイ活動だったし、尾崎は戦争回避も願っていたと思う。にもかかわらず、木下順二がゾルゲ事件を描いた「オットーと呼ばれた日本人」のような思想的葛藤や強い信念がないのも残念。

    ネタバレBOX

    紺野幹郎(小野ゆたか)=内閣調査室勤務。尾崎らの情報のやり取りに、職場の机の引き出しを提供していた。宮城与徳と語り合う回想がある。
    早川恭一(植村宏司)=安田(徳太郎)医院の勤務医。もちろん架空の人物。ゾルゲにあったことがあるが、スパイ活動とは関係ない。
    芝山英晶(西原誠吾)=「早川」を名乗って、取り調べを受けたりする。なかなか仕事・名前を明かさない。朝日新聞記者。尾崎と面識がある。警察が室内に「ノート」を置いていけば、ブンヤの性分で、書かずにはいられないだろうと策略する。案の定、芝山が書き始めるが、無警戒を通り過ぎて荒唐無稽である。
    立原寅生(井内勇希)=教会の牧師、実は志願して潜入した警官。
    六鹿晃(横道毅)=背の高い刑事。冷静で常識人であり、特高への対抗心に燃える若尾をいさめる役。
    若尾義彦(神農直隆)=大柄な刑事。短期でいらち。早川の片目をつぶしかねない拷問を加える。

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    2024/03/13 23:19

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