SWEAT
劇団青年座
駅前劇場(東京都)
2019/03/06 (水) ~ 2019/03/12 (火)公演終了
満足度★★★★
製造業が海外へ流出していくグローバル化の時代に、アメリカ中西部の労働者たちの苦悩と不満のマグマをほとばしらせた舞台。親友だった3人の女性工場労働者(うち一人が黒人)が、そのなかの黒人女性の昇進から妬みが生れ、関係がきしみはじめる、そこに工場のメキシコ移転と人員整理・賃金カットが持ち上がり、その汚れ役を黒人女性が担わされて関係は完全に決裂。続いて息子たちに焦点が移り、かれらは工場移転やスト破りに対して暴力的な行動へ走っていく。そして……。
2000年のスト騒動の1年間を中心に、つかみの「入り口」として、2008年に息子たちが刑務所から出てきた後日談をカットバックする戯曲の構成が見事だ。物語の展開も、人間関係の変化も簡にして要を得ていて、よくわかる。上に書いたように、芝居の軸が少しずつ(三段階に)ずれていきながら、全体として円環をなす。多少図式的なところはあるが、現実がそうなのだから仕方がないだろう。セットのチェンジが多いのだが、テンポを妨げなかった。スタッフさんお疲れ様でした。
2時間50分(休憩15分込み)と、長いのだが、全く飽きなかった。
熱帯樹
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2019/02/17 (日) ~ 2019/03/08 (金)公演終了
満足度★★★★★
詩的なセリフの底にポッカリと死の淵が口を開けて待っている、耽美的な三島由紀夫ワールド。中嶋朋子、岡本玲、栗田桃子の女優陣が光っていた。矛盾した心境を語りながら、どっちが仮面でどちが素顔なのかもわからなくなる、虚々実々の心理的駆け引きが見事。男優陣ももちろんいいのだが、女性の力に翻弄される哀れな姿をよく演じていた。
一家の主人の鶴見辰吾は、妻の中嶋朋子を人形のように支配していることになっているのだが、実は妻の方が一枚上手。奴隷こそ主人の生殺与奪のカギを握る「主人」であり、主人は奴隷によって生かされている「奴隷」だという弁証法的関係を見事に示していた。息子の林遣都は文句なしにかっこいいが、芝居では最も受け身な存在だった。
昼の回だったが、観客は女性が9割以上。30代から50代の女性が中心で、明らかに林遣都目当て。シアターコクーンの「唐版風の又三郎」も、窪田正孝のファンの熱心さには驚いたが、今回も若いイケメンへの女性の熱心さには驚くばかり。
母と惑星について、および自転する女たちの記録
パルコ・プロデュース
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/03/05 (火) ~ 2019/03/26 (火)公演終了
満足度★★★★★
素晴らしい舞台だった。再演だが、今年第一四半期のベスト。笑いあり、哀しみあり、愛あり、希望あり。初演では鈴木杏が読売演劇大賞最優秀女優賞をとったが、今回の再演では他の女優もそん色ない。母親役がキムラ緑子にかわり、どうしようもなくジコチューだが、素直で憎めない母親を好演していた。また三女役の芳根京子も大変良かった。初めて見たが、いっぺんでファンになった。
長女の田畑智子が、イスタンブールで詐欺にあい200万のじゅうたんを買わされる出だしも傑作。サイコー
世界は一人
パルコ・プロデュース
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2019/02/24 (日) ~ 2019/03/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
何といっても役者がいい。ちょっとした間や所作で、舞台が一気に活気づく。演劇はまず俳優を見るものだと再認識させられた。話としては幼なじみの三人の男女のの20余年ということになる。この縦糸に、いじめやひきこもりや、初恋と失恋や、親たちの不幸な死や、えげつない東京生活やが横糸としてからむ。この横糸のエピソード一つ一つが結構切なくていい。これら印象的な横糸が、経糸でしっかりつながっていることがこの舞台の骨格を強くしている。
音楽劇であることもよかった。セリフは少なめなのだが、パフォーマンスとして楽しめたし、メッセージとしても伝わるものがあった。「知らない人でいこう 出合いなおそう」なんてフレーズはぐっとくる。
多分台本を読んでも何もわからない芝居。俳優が演じ、歌い、ひとつの舞台になって初めて見えてくるものばかりだった。DVDかテレビ放送があればぜひまた見たい。
LULU
アン・ラト(unrato)
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★
ベルク作曲のオペラでも知られるドイツの古典的戯曲。前半は分りにくく感じたが、後半はぐっと引き締まり、情感ある舞台だった。主人公のルルは魅力的だが、ファムファタール(悪い女)の典型と言われる。今回の舞台ではそうは思えず、霧矢大夢がさっそうと自然に生きているのに、だらしない男たちが勝手に悩んで死んでいく。死という重い事件が、次々あっけなく起きるので、その展開に戸惑った。
後半のルルは、金と過去の罪で追われるよくある世間知らず女になり、謎の女から一気に愚かで哀れな女になる。実は受動的だった前半と違い、後半は生きるために殺人もおかす、娼婦にもなるという能動的な女になったのもリアリティーがあった。
「かくも碧き海、風のように」
椿組
ザ・スズナリ(東京都)
2019/02/27 (水) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★
堀田善衛「若き日の詩人たちの肖像」を下敷きにした、戦争の時代の青年群像劇。戦争で引っ張り出されるのは男たちなのだが、その男たちに元気がない。踊り子やバーの若いママや下宿のおばさんといった女たちは元気だが、男たちはうらぶれたロマンティストばかり。生きる目的をつかめずに彷徨ったり、革命の夢、芸術の蜃気楼にしがみついたり。
1936年の2・26事件の夜に始まり、1944年の学徒出陣で終わる。娯楽を求めた浅草レビューやコントの笑いも、時代に背を向けたバーの演劇青年たちの怪気炎も、どこか虚しい。日本を出ていこうが「正義の国」はどこにもない。下り坂を転げ落ちていく暗い時代の雰囲気がよく出ていた。しかし芝居を見に来る大抵の観客にはそれは既にしられたこと。そういう常識を超える新しい発見がもう少し欲しい。
「still live」「もう終わった」「だちゃかん」と言ったセリフや、堀田善衛や加藤道夫からとったであろう詩的言い回しが結構耳に心地よかった。
花火鳴らそか ひらひら振ろか
劇団銅鑼
あうるすぽっと(東京都)
2019/02/15 (金) ~ 2019/02/21 (木)公演終了
満足度★★★★
死んだ人たちの幽霊と、生きている私たちとの心の通い合いを描くおとぎ話の喜劇。ほろっときたし、いい話だった。一緒に見た妻は、内気だった若い女の子が、最後に自己主張できるように変わったというのは「なんだかな」と言っていた。その変化がいいところなのだが、逆に、世の中それほどうまくいかないということか。内気なままでいいじゃないか、という話でもよかった気がした。
おばあさんの幽霊役の長谷川由里がよかった。
ライオンキング【東京】【2023年1月22日昼公演中止】
劇団四季
四季劇場[夏](東京都)
2017/07/16 (日) ~ 2021/06/30 (水)公演終了
満足度★★★★★
日本公演20年、上演回数1万1千回を越す、いまや日本史上最大となった舞台を初めて見た(「キャッツ」は日本公演35年だが、来月1万回になる)。一言で言って、よくできた舞台で、とても感心した。子供だましと思ってずっと見ていなかったわけだが、とんでもない。子供も楽しめる本格的な芝居であり、2時間半、別世界に心を解放する夢の国だった。
オルタリティ
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2019/02/22 (金) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★
とある町役場の要望受付部署を軸に、喫煙者の権利から、人間の善のあり方までを俎上に載せていく対話劇。最初は「喫煙者は出世できないのはおかしい」「教え子と結婚することは教師としてよくないのか」という、矮小な偏見が問題だった。しかし、再生可能エネルギー問題を経て、後半、異常気象による洪水で孤立した役場で、人間の生きるか死ぬか、尊厳をかけたギリギリの選択を迫られる。この強引な展開はすごい力技だ。
登場人物相互が子供時代や男女関係の過去でつながっているところが、議論に感情的な陰影と人間味を加味していて良かった。
孤立していく正義派を龍座さんが、その硬直した滑稽みも含めてよく出していた。「奇行遊戯」でも反捕鯨派テロリストを演じた樋田洋平さんが、今回も偏執的に前のめりな人間を熱演していた。二人のぶつかりあう迫力に圧倒された。寂しい教師の森田匠さんもよかった。
紫苑物語
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2019/02/17 (日) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
1幕は寝てしまった。メロディーなし、不安と混沌の現代音楽はやはり難解。しかし、血が次々流される舞台は結構わかりやすかった。幕間にパンフで作曲家ノートをしっかり予習して臨んだ2幕はよくわかった。緊張感と緩急のある2幕だった。
ただ、平安貴族の生活をもとに無と悟達の境地に至る世界は、オリエンタリズムの東洋理解のステレオタイプではないか。抽象的な現代音楽で描くには、こういう象徴的世界が合うのはわかる。それでも、世界に発信する日本オペラというと、能や禅の「東洋的神秘」をネタにするのはもうやめたらどうか(今回は能がネタではないけれど)。沖縄や高齢化など現代日本の矛盾と苦悩をとらえたオペラを見たい。
平田オリザ・演劇展vol.6
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/02/15 (金) ~ 2019/03/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
「ヤルタ会談」は、3巨頭の歴史的会談をネタに、ブラックな笑いをふりまく、類を見ない怪作。俳優三人の息がぴったり合っていて、ホロコーストや粛清や植民地問題や戦後処理という重厚な題材なのに、大いに笑わせられました。(上演時間30分)
新作「コントロール・オフィサー」は、東京五輪の代表選考会後の水泳選手とドーピング検査官の話。選手たちの悲喜こもごもの建前と本音を、俳優の出入りによる人間関係の変化で見せていた。役者の間合いや微妙な表情も見事で、大いに笑わせられた。
「静かな演劇」の旗手・平田オリザ氏はアイロニーと諧謔の達人です。氏のすぐれた喜劇作家ぶりを堪能しました。(おなじく30分)
ほかに「銀河鉄道の夜」を見ました。こちらはリリカルな詩劇というところ。
唐版 風の又三郎
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2019/02/08 (金) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
唐十郎の叙情あふれる戯曲を、テンポよく、視覚的にも音楽的にも大変楽しめる舞台に仕上げていた。期待以上の出来だった。読むと難解な戯曲なのだが、舞台で見てみると、ロマンチックな純愛物語の筋がしっかりと貫いていて、意外とわかりやすかった。(去年見た唐組の「吸血姫」など非常に複雑な芝居だったが)
主演の柚月礼音は「マタ・ハリ」でも見ましたが、あちらの女性の色気とはまた違う魅力でひきつけられました。そのほか、出演者は皆うまくて、舞台を活気づけていて、舞台に見とれるばかりの2時間55分でした(休憩含む)。風の又三郎が現れる時の「銀のマント」と黒い山高帽のダンサーたちの歌と踊りも、スタイリッシュだった。
Le Père 父
東京芸術劇場/兵庫県立芸術文化センター
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/02/02 (土) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
認知症になった父と娘の物語だが、父役の橋爪功、娘役の若村麻由美、主演のふたりが非常に良かった。認知症の父から見た世界で、「あなたの娘です」というのが全然別の俳優だったり、時間が前後したり、主人公の経験が、夢なのか現実なのかが曖昧なままだったり、技巧的に面白かった。自分の部屋と思っているのに、壁や家具の配置が物語が進むにつれてどんどん変わっていくのも効果的だった。
父は「自分は呆けてなどいない」と頑固で、周囲を振り回しつつも、どこかに自分自身の変化を感じ取っていて、不安と寂しさを覚えている。橋爪はその心情の振幅、心底の孤独感をよく垣間見せてくれた。高齢者はわがままを言いつつも、結局は弱い存在なのである。そのことを本人も十分わかっている。橋爪功がさらに10年後に、87歳で再演した舞台もぜひ見てみたい。
芸人と兵隊
トム・プロジェクト
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2019/02/13 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
漫才落語家などの戦地慰問団「笑わし隊」を描いた。作・演出は今年の読売演劇大賞の優秀作品賞を受賞した注目のコンビ。前半はあっさりした展開で物足りなく感じたが、後半になって大きなヤマがあり、何度も目頭が熱くなった。できれば、もっと笑えると一層良かった。
芸人たち登場人物にくっついているだけで、時代への批判精神がなければ、今日的な意義はない。かと言って、言葉だけの戦争批判はいまさら空疎であり、観客の心を動かさない。その難しい壁をよくクリアして、彼らもまた時代に押しつぶされた存在であることをしめした。笑いのある悲劇を通して戦争の残酷さ、惨さ、非人間性を切々と感じさせる舞台だった。
柴田理恵のパーっ場を明るくする存在感、村井國夫の抑制の末に真情が溢れてくる演技がよかった。戦死した弟弟子の事を語る高橋洋介の高座の場面も良かった。
CHIMERICA チャイメリカ
世田谷パブリックシアター×パソナグループ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
ラストはたいへん素晴しく、感動した。そこまでの過程が短い場面を行ったり来たり(全部で38場ある。転換、セットが大変贅沢な芝居)で、少々まだるっこしく感じたが、最後に救われた。3時間10分(15分休憩)
新国立劇場演劇研修所「るつぼ」
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/02/08 (金) ~ 2019/02/13 (水)公演終了
満足度★★★★★
赤狩りの嵐の中で、実際にあった魔女狩り事件を書いた古典的名作。後半の裁判のシーンから非常に緊迫感があった。「魔女などいない」というジョンの証言が通るのか、大衆を煽る少女アビゲイルの証言が通るのか。二転三転していく。
真実の証言をしながらもどうにもならないとわかったとき、アビゲイル側にくしていくメアリーなど、様々な人間のありようを浮かび上がらせていく。保身に入る人、両親に苦しむ牧師、そして主人公ジョン。奪ってもう前ない人間の尊厳が浮かび上がる。
若い俳優たちの熱演で、非常に迫力ある舞台だった。たとえ無名でまだキャリアは浅くとも、この舞台においてはみな、唯一無二の存在だった。3時間20分(15分休憩)
イーハトーボの劇列車
こまつ座
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/02/05 (火) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
いろいろに考えさせられ、発見がありました。「宮澤賢治の評伝劇」なのですが、単純な評伝とはいえない仕掛けが満載で、一言で言えば宮沢賢治批判の芝居ということもできます。農民たちの演じる劇中劇になっており、賢治の思い描いたユートピアが、農民の現実から遊離したお坊ちゃんの夢想に過ぎないではないかという批判です。これは驚きでした。もしかしたら井上ひさしは、賢治の話より、重労働と出稼ぎと借金にあえぐ農民の苦しみを訴えたかったのではないでしょうか。
なんといっても、主人公宮沢賢治があくまで受け身の存在で、賢治の父や、監視役の賢治批判の方が、質量ともに圧倒的です。漫才で言えば賢治はボケ役で、ツッコミを受けてうまく返せないボケ役。
それでもなお賢治の残しだ詩や童話が私たちを惹きつけるのはなぜか。考えさせられます。
俳優たちはみなはまり役で、見事な出来でした。まず松田龍平がシャイなボケ役の賢治にぴったり。そこに実直な生活者の立場から批判を突きつける山西淳が強烈です。賢治に呆れつつ、憎めない友人役の土屋佑壱も場を大いに盛り上げました。ナイロン100℃の村岡希美も、何気ない仕草で観客を引きつけ、とぼけた味で素晴らしかった。これだけのキャストが揃う舞台も滅多にありません。
長塚圭史の演出も素晴らしい。昔の小学校のような木製椅子と畳だけで場面を次々転換させる舞台作りも見事でした。
拝啓、衆議院議長様
Pカンパニー
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★
相模原障害者施設殺傷事件を題材にした芝居。「意思疎通もできない障害者は安楽死させるべき」という犯人の思想にも障害者介護の現実の一面に根がある。形だけの障害者の生きる権利と、それを全否定した犯人の思想という対立を、死刑制度の問題と絡めて、より高い次元にどう止揚させるかを問いかける舞台だった。
障害者施設職員の悩ましい本音、犯人の抱いていたコンプレックスなども掘り下げたところに発見があったし、作品が提示した目指すべき社会のイメージに私は感動した。ただ、様々な議論と理屈が十分登場人物の肉体になりきらなかった恨みはある。それは役者の問題だけではないような気がした。そのなかで荻野貴継の被告役の不気味さが一番印象的だった。(2時間10分、休憩10分含む)
雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた
流山児★事務所
座・高円寺1(東京都)
2019/02/01 (金) ~ 2019/02/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
清水邦夫が82年に書いた戯曲。
戦争の傷を抱えていきる人々と、戦後の左翼運動で挫折した若者たち へ捧げるオマージュだった。
青春の愚行と情熱のシンボルともいうべき、「ロミオとジュリエット」を、戦争とたたかいに身を投じて夢破れ、寂しく老い た女たちが演じる。見事な換骨奪胎による戦争と戦後の男たちへのエレジーだった。
舞台には本当に30人もの女優があらわれ、圧巻。その最初の勢揃いの場面は、女子校の同窓会さながらの心地よい騒がしさであった。ロミオの登場が二転三転する展開が見事で、とくにかつての男役スター役の伊藤弘子と、その妹(実は…)役の、坂井香奈美が良かった。歌と音楽も劇とピタリあって、一層感動を深めた。
久々に見た骨太にして猥雑、リアルにしてイデアルな芝居だった。
桜のその薗
はえぎわ
ザ・スズナリ(東京都)
2019/01/31 (木) ~ 2019/02/06 (水)公演終了
満足度★★★★
大変おもしろかった。久しぶりに思い切り笑えました。女優志望の若い女、40歳の後輩の女、先輩の男が現れ、その先輩後輩の劇団がかつて解散しており、当時の同志たちの今を垣間見ていくというストーリー。ほぼ3つのストーリーが同時並行で進むが、きれいに整理され、オンオフも巧みで混乱せず見られた。
後輩女が、怪我した娘を介抱しようとして「この女、若い!」と嫉妬で介抱を何度もやめたり、打ち合わせ通りにかけない脚本家が、必死に「うちあわせより、こっちのほうがいいんだ」と強弁したりなど、劇団あるある、人生あるあるという要素がいっぱいある。その日常性から物語は軽々と舞台ならではの自由な世界へ飛翔する。突然、矢が胸に刺さったり、血を吐いたり、思いっきり水を人に吹きかけたり。不条理とも言える奇抜な動きが滑稽で大いに笑えた。この日常性と奇想天外な飛躍のコンビネーションが見事だった。
踊り子ありさんは、見たことあるなと思ったら、去年早稲田の「14歳の地図」でやさぐれた教師役だった。大変存在感のある気になる俳優である。