I LOVE YOU,YOU'RE PERFECT,NOW CHANGE
Score
d-倉庫(東京都)
2017/10/21 (土) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
(木村花代、麻田キョウヤ、安達星来、今村洋一、今井端、池田海人の回を鑑賞)
いやあもったいない。この出演者、この内容で空席があるとは。
主催者はもっと宣伝に努めてほしい。最近はかなりいろいろな劇場に行っているが、このチラシをチラシ束の中に見つけることはなかった。宣伝さえしっかりやっていれば満席は楽々達成できたはずだ。
場所は誰も知らない d-倉庫。期待せずに行ってみると中は傾斜のついた客席からステージが非常に見やすく、音響もなかなか良いのでびっくりした。女性ボーカルがすっきりと伸びて、変な残響がないのである。演劇、ミュージカル用にきちんと機材を選び設計したものなのだろう。トイレの配置は問題ありだけど水回りはお金が掛かるからこの辺が限界なんだろうねと同情した。
内容は男女の出会いから破局そして死別(後)までを小話でつづって行くコメディー・ミュージカル。こういうものはアメリカ人がやらないと様にならないだろうと避けていたのだが、人名、会社名はアメリカンでエアーの車は左ハンドルであっても、ちゃんと日本の話として楽しむことができた(宗教系は無理だけど)。日本版の脚本、演出がかなり工夫されているのだろう。
出演者は男女3人ずつ、計6人の実力者が歌って演技して少し踊る。この方々をこれだけ近くで観て聴けるとは実に優雅な時間であった。ここまでのレベルになると歌がうまいとか下手とかは考えることも忘れて楽しむことができた。
歌は曲も良く訳詞もこなれていて、「ただしゃべった方が良くね?」というミュージカル嫌いの方にも受け入れられるものと思う。
贅沢を言うとマイクなしで聴きたかったのだが、結構いい音だったので良しとしよう。
電子ピアノはよくスイングしており、ピアノとバイオリンだけにも一場面分の時間を割り振ってほしかった。ただしピアノの音が大きくて歌を消してしまうところがあった。相対的にバイオリンの音が聞こえにくくなって、音程までも怪しく感じられたのは気の毒であった。PA担当の方はヘッドホンでモニターするだけでなく、客席で自分の耳で聴いてほしいな。
それから幕間の大道具(?)さんの無駄のない動きはなかなか楽しめた。
『結 -YUI-』
CharMant
座・高円寺2(東京都)
2017/10/25 (水) ~ 2017/10/26 (木)公演終了
満足度★★★
バレエ、ストリートダンス、殺陣、ピアノ、ギター、ドラム、バイオリン、ボーカルの8部門の若手エキスパートを集めて2時間のエンターテインメント幕の内弁当を創ろうという意欲的な試みである。
その意気や良しということでメンバーも調べずに来てみると何だか見たことのある顔が3つも。
昨年、たまたま見た中島瑠美アリス、槇野愛美アリスに出ていらした、バレエの瀧愛美さん、ストリートダンスの千(かず)さんそしてギターの井上達也さんだ。アリスでは瀧さんのダンスが少なくてまた見たいものだと思っていたら偶然にもその機会がやってきて面食らってしまった。
そういうメンバーなので今回のステージではアリスの世界を借りてきたのかと合点した。
アリスとは言っても強権的な女王が支配する別世界というだけでおなじみのキャラクタが出てくるわけではない。ここはちょっと粉飾ありか。
瀧さんと千さんはダンスユニットCharMantとして活動しており、今回はそれをベースに6人のゲストを招いたという格好だ。
前半は瀧さんのバレエ・ショーの色合いが強く、十分堪能させてもらった。
ストーリーは美麗さん演じる女王が支配する異世界に千さんが瀧さんを誘拐してくる。そこで過去と現在が交錯してよくわからない状況からなんだかんだあって女王が改心して実世界に帰ることになって、おしまいとなる。ここでの瀧さんの怒り方が妙にリアルで現実世界に引き戻されてしまう。怒るのは女王に任せてもっとソフトにしてほしい。
後半は8部門の出演者がそれぞれの得意技を存分に披露するショーケースだ。
みなさんそれぞれ実力を発揮されたと感じた。
強いて言えばダンスとドラムとの掛け合いではタップ・ダンスがあると盛り上がる。ちょっと無理筋だが注文しておこう。
せっかくグランドピアノを用意しながらスピーカから音を出すことにしたのはどうしてだろう。ボーカルもマイクなしで美しい歌声を聞きたかったものだ。楽器間のバランスも良くなかった。おっともう一つエレキ・バイオリンは私は嫌いだ。
この構想を完成させることは想像するだけで気が遠くなってしまう。
しかし、いましばらくは挑戦を続けていただきたいものだ。
チケットを買うくらいだけど応援していますよ。
レディ・ベス
東宝
帝国劇場(東京都)
2017/10/08 (日) ~ 2017/11/18 (土)公演終了
満足度★★★★
久しぶりの帝国劇場、大人数の俳優、豪華衣装、大音量という物量だけで気分がハイになってしまった。
歌が多めのミュージカルで踊りは少ない、というか踊りらしい踊りはなかった。
音楽は雄大で、歌はもちろん皆さん何の問題もなく素晴らしい。
ただし、私は主題になじみがなく、いかにも作り話というところもあって、なかなか世界に入り込めなかった。いつも思うのだが、ミュージカルファンはストーリーにはあまり興味がなく、個々の歌や踊りに熱狂することが多いのではないか。そういうことなら大満足で星5つになるだろう。私はそういう境地には全く達していないのでストーリーが気になってしまう。調べたことをメモとして以下に書いておく。
物語は主に異母姉のメアリー1世の即位(1553年)から病死、そしてエリザベス1世の即位(1558年)までを描いている。
エリザベス1世は1603年までという長い期間在位して実績がある一方でメアリー1世は短い在位期間に宗教弾圧を行い「ブラッディ・メアリー」という悪名をカクテルに遺している。
そういうわけで、この「レディ・ベス」のような物語が作られ、悪のメアリーと善のエリザベスという記述になってしまう。
しかし、終演後ウィキペディアを読んでみると、メアリーもまたエリザベスの母アンから毒殺未遂を含む同じような迫害を受け、また民衆に支持されて即位したとあって、印象は一変した。
イギリスの人はそんなことは百も承知なのだろうが日本人がエリザベスとの関係だけを見て「メアリーはひどい」と思うのはどうかなと思った。むしろメアリー1世の一生の方が人間の深い物語が描けそうな気がする。
まあ。誰が良い悪いというより身分の高い人ほど自分の地位そして命を守るために必死であった時代ということなのだろう、と安易にまとめておく。
近くのおばちゃんが言っていたけど帝国劇場のB席は確かにお得だ。
検察官
劇団東演
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2017/10/13 (金) ~ 2017/10/17 (火)公演終了
満足度★★★★
期待通りの面白さだった。
やはり古典ものは完成度が高い。
時々こういうものを観て自分の基準を校正しておかねばならないと思った。
日本人俳優はどの方も表情豊かでセリフも聞きやすく的確な演技であった。
舞台セットは簡素だったが衣装は華やかで楽しむことができた。
ダンスは喜劇用にキレを封印した緩めのものだった。
あまり本気を出すと浮いてしまうのだろうと一応理解しておく。
ロシア人俳優がロシア語でセリフを言うところがあるが、その意図を理解できなかった。
まあ当然意味が分からなくても支障がないところを選んでいるのだろうがストレスになる。
歴史的な事情があるのかもしれないが彼らだって中途半端な役でつまらないのではないか。
会場の「紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA」は1996年にできたとは思えない綺麗なところで座席もゆったりとして3時間近い公演中も腰が痛くなることはなかった。
三編の様々な結末
東京ストーリーテラー
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了
満足度★★★★
最近にしては珍しく、最後のあいさつでSNSでの拡散についての言及がなかった。
座長の久間勝彦さんも観客も高齢なことが理由だろうと思っていたがcorichにはすでにたくさんの感想が書かれていた。
老人畏るべし!
朗読劇は(私も含めた)老人にとって子供に戻ってお母さんに本を読んでもらうようなものなのだろう。お母さんとしての理想は観客が全員寝付いてしまうことかもしれない(笑)。
第一声をどのくらいの音量で始めるかはリハーサルで決めているのだろうが観客が入ると違ってくるし、天候にも左右される。今回はちょっと小さすぎた(静かにさせる作戦なのかもしれないが)。徐々に大きくなっていったと思ったがこちらの耳が慣れたのかもしれない。
また「まんが日本昔ばなし」のおばあさんのような調子には違和感があった。
完全に独立した話ではあるが
第1話は観客が求めるところをちょっと外したもの、
第2話は雰囲気重視で少しもやもやの残るもの、
第3話は100%腑に落ちるもの
という構成になっているのではないだろうか。
第3話はちょっとまとまりが悪いと思った。2バージョンあって、ギリギリで長い方を採用したのかと想像してしまった。お話は王道もので終演後気持ちよく家路につけた。有田佳名子さん演じる女子中学生が彼女のピュアなイメージにピッタリ重なって、見とれ聴きほれてしまった。
全3話を通じて長野耕士さんの存在感は圧倒的だった。バリトンボイスには痺れてしまった。ただ、他の方も含めときどき語尾が怪しいところがあったかな。
一色知希さんのピアノの磨かれた音の粒は朗読の言葉の隙間を埋めるように流れていた。BGMの抑えた演奏なのだが詩的で知的なところはBill EvansかKeith Jaretteを思い起こさせる(ちょっと盛ってます)。早速家に帰ってEvansの"My Foolish Heart"を聴いて心を満たした。
もっとも初回なので何か所か言葉とぶつかるところがあったが、達人はすでに楽譜に修正を書き込んでいるはずだ。
仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので 鰹&栄螺
ポップンマッシュルームチキン野郎
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2017/10/04 (水) ~ 2017/10/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
(栄螺を鑑賞)
最後のあいさつでfacebookに並べてcorichを挙げていた。corichが話題にされるのを初めて聞いたよ。
内容を一言で書けば「喧嘩別れした兄妹が30年の歳月を経て和解する人情喜劇」ということになる。そしてそこに硬軟、美醜、清濁、正邪、その他取り混ぜて大量にトッピングが載っている。
…ううむ先が続かない。こういうときは他の方の感想をカンニングしよう。
*この劇団の良さは「感情操作」の上手さにあると思いました。(c)itomasa7さん
ですよね。散々笑わされるものの、すっと人情ものに戻っている。
*「中東事変」が 暴れまわるんだろうな~ と思ってたけど、 最初だけで、 ちょっと物足りなさを感じました。(c)ガチャピンさん
インタビュービデオのクオリティも高くて、もったいないというか贅沢というか。
まあしかし、煽られて煽られて蹴落とされるというエアポケット的な快感がありました。
小岩崎小恵さんてどこかのバンドのボーカルかと調べてしまった。
いやいや絶対昔やってたでしょう。
そのまま役になりきって地下アイドルとして握手・チェキ・物販で稼ぎましょう(笑)
*大きな劇場やテレビ、映画での見せ方を知ってる人が、メジャーな場所ではできないことを、タガを外せる小劇場でやっちゃう面白ステージ。(c)数学者の奥さん
というまとめに納得。危ないところもギリギリセーフ、音楽も衣装もしっかりしているし、素人臭いところがないですよね。
関数ドミノ
ワタナベエンターテインメント
本多劇場(東京都)
2017/10/04 (水) ~ 2017/10/15 (日)公演終了
満足度★★★★
世の中の不公平、たとえば「才能がある、ない」「運が良い、悪い」などについていろいろな立場から考察している。と一言で書くと薄っぺらになってしまって申し訳ない。
詳しく書いてもネタバレということにはならないと思うのだが、先入観なしで、作者の術中にはまって流れに身を任せるのがこの作品の楽しみ方のような気がするので自粛する。あちこち振り回される感じがとても楽しい。
瀬戸康史さんは世の中を斜に見る困った青年役を嫌味たっぷりに好演していてなんだかぶん殴りたくなった(笑)。
また、車を運転していた青年役の鈴木裕樹さんの狂気に冒される様には鳥肌が立った。
総じてあちら側に片足を突っ込んだ役がおいしくて、他の役は割を食った格好になっている。
小島藤子さんの美しさにいきなり心を奪われた。
煽っては鎮めるを繰り返すマッチポンプの痛い娘役なのがちょっと残念。
熱演だったのだが、心ここにあらずの私は「可愛くてかっこ良い役を観たい」という願いでいっぱいだった。「髑髏城の7人」の「沙霧」役なんかピッタリだと思うのだが。強く願うと実現しますよ(微笑)。
それから、カーテンコールで、もし満面の笑みで大きく手を振ってくれていたら私の幸せは3割増しになったのにとちょっと残念。
アイディア一発感がやはり少しするかなで4つ星。
BLUE ~龍宮ものがたり~
teamオムレット
新宿シアターモリエール(東京都)
2017/10/04 (水) ~ 2017/10/09 (月)公演終了
満足度★★★
「うーーん、これは一体なんだったんだろう」と帰り道で考え続けた。
家に着く直前に閃いた「そうか、これは水戸黄門なのだ」と。
難しい問題を提起しておいて、最後は黄門様が登場してチャンチャンで終わり。
安易だなあ。
ダンスも平凡だった。
女優陣が綺麗だったので星1つ増やして3つ。
あまりネガティブなことは書きたくなかったけれど千秋楽も過ぎたことだし残しておこう。
【追記】
「統べる」は書き言葉であって、芝居では使ってはいけない。
私は今まで人の口からこの言葉が発せられるのを聞いたことがない。
「治める」とか「まとめる」とかが普通でしょう。
真っ赤なUFO
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2017/09/29 (金) ~ 2017/10/08 (日)公演終了
満足度★★★★
席に着くと目の前に実家の居間もこうだったと思い出させるセットが広がっていた。
床の間があって(おそらく安物の)掛け軸が下がっている。
庭に面した縁側を左に進めば便所があり、右は玄関や台所に通じている。
居間の中心には電話があり、端っこにはTVが置かれている。
前半は、頑固おやじが娘の縁談に反対するという昭和名物の話だ。
後半は登場人物が増えてのドタバタである。
言い訳をしない昭和のお父さんは人間性まで否定されるが、最後はもちろんお約束のハッピーエンドとなる。
団塊の世代は暖かい気持ちに浸れる作品である。
ベテラン俳優さん達の上手すぎる演技は「うちの近所にもあんなおじさんやおばさんがいたなあ」の連続だ。若手のオーバー・アクションが若干気になったが、あれも昔の演劇の再現を意識したものと合点した。
まあしかし、SLを動態保存しているような演劇であって創造性に欠けるところは減点1か。
トロイ戦争は起こらない
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2017/10/05 (木) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鈴木亮平さんといえば「東京タラレバ娘」の「早坂さん」が記憶に新しい。
この早坂さんは非常に「いい人」で、世の常としていい人は最後にババを引くのであった。
その早坂さんと鈴木さんをダブらせ近況を追うようにして、私はこの舞台まで足を運んできた。
この「いい人」の早坂さん、もとい鈴木さんが戦争から凱旋してきた将軍というのは何かピッタリこないと思ってしまったが、その疑問は徐々に解け、後半に訪れる見せ場で「鈴木亮平+谷田歩」の狙いを完全に理解したのであった。
さて表題にある「トロイ戦争」について私が知っていることと言えば「トロイの木馬」と「アキレス腱」くらいだ。もちろん詳しく知っている方が親近感が湧くだろうが、この戯曲はその枠組みを借り、しかもその前夜を「捏造」したものなので、観劇中に私が理解に大きな困難を感じることはなかった。
初回を観たのだが私にはミスとか、ぎこちなさとかは一切感じられなかった。
船員役の方までさすがの実力だった。
その中でも大鷹明良さん演じる詩人(兼大臣)は観客の非難の視線を一身に浴びるというおいしい役だ。私の目にはうれしくてたまらないという思いが滲み出ているように見えた。
それにしても初回の不安は大きかっただろうがスタンディング・オベーションに応える早坂さん、もとい鈴木さんに安堵の表情があってこちらもうれしくなった。
人間風車
PARCO / CUBE
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2017/09/28 (木) ~ 2017/10/09 (月)公演終了
満足度★★★★
予備知識なしで行っていきなりの不思議な味の外国童話に驚いていると、売れない童話作家が登場する。この主役の成河(そんは)さんは、私は初めてお目にかかるのだが自信に満ちていて主役のオーラを感じた。身のこなしは軽快でダンサーが本職ではないかと思ったほどだ。
終演後に検索してみると10数年のキャリアを持つ中堅の方で、この春には「髑髏城の7人(花)」で天魔王を演じたという。好青年の模範のような彼が悪の権化の天魔王とは!観ておけば良かったと後悔した。
ヒロインのミムラさんは安定の好感度演技と思っていたら、びっくりするような大声も出したりして、やはりプロだなあと感心した。もちろん加藤諒さんや堀部圭亮さんもいつもの味を出している。
しかし私的には思いがけずも遭遇した今野浩喜さんが一番の収穫である。
キャスト名の一覧を見ても素通りだったが登場したとたんに、(解散した)「キングオブコント」のボケの人だと気づいた。
彼の素人然とした容貌とでかい態度、奇妙な笑いが最初の童話などと積み重なって、観客の心に笑いと同時に不安を生じさせ、後半へとつなげるのである。
会場は池袋西口公園内の「東京芸術劇場」2階の「プレイハウス」、定員834人の中規模ホールである。椅子は私に合っていて他のホールよりずっと快適であった。
音響設備も充実していて激しい低音や銃声には心臓が悪い人の心配をしてしまった。
休憩なしの2時間20分。水曜の昼ということもあってか8割は女性であった。
こんなに女性が多い舞台では昭和のプロレスネタはほとんど通じていないと思うのだが。そうでなくても賞味期限切れでしょう。
シャーロック・ホームレスの食卓
劇団ズッキュン娘
テアトルBONBON(東京都)
2017/09/21 (木) ~ 2017/10/01 (日)公演終了
満足度★★★★
(Bチームを鑑賞)
これはダンスによって救われる人々を描いた演劇であってそのダンス部分を拡充したものである。
結果としてダンス付き演劇あるいは歌抜きミュージカルのような構成になっている。
歌を付ければ劇団四季の演目になっても不思議はない。
俳優さんは全員女性である。
若い方が主体だがホームレス役の中にはベテランの方もいらっしゃって芝居全体に重厚感を与えている。
演劇部分はセリフも聞きやすく演技も的確であった。
表題から推理劇を想像するがそれはほんの短い劇中劇なので途中で少し見落としがあっても影響は小さい。
ダンスシーンは普通の観客には必要にして十分な量だと思われる。
出来栄えも私が役回りに期待する水準はクリアしていた。
ダンス3人娘の登場シーンでは「おっ、やるじゃん」と嬉しくなった。
しかし、私は次回があればもっと量も質も増やしてほしいのでいくつか提案しておく。
1.ダンス3人娘も市役所3Kと公園利用でトラブルがあることにして、争うシーンをダンスにする。
ダンス3人娘VSホームレスでもホームレスVS市役所3KでもOKだ。
2.ホームレスのダンス練習の曲ではどんどんうまくなって行くことを表現する。最初はダメダメだが最後はダンス3人娘と全員が完全にシンクロする。
今日一番感動したのはバイオリンの橘未佐子さんである。
BGMに徹し、音量を抑え抑揚も緩急も付けないというやりにくい演奏を正確な音程でこなしていた。
私は母親の日記の朗読シーンではバイオリンばかりを聴いていた。
制約を取り払った演奏を楽しみにしていたが最後までその時はやってこなかった。残念!
俳優が片手間にやるレベルではありえないと終演後に検索してみるとバイオリンが本職の方なのだった。そりゃそうだわ。
そこでダンスシーンの追加である。
3.最後のダンスにバイオリンとダンスの4(8)小節交換を取り入れる。タップダンスなら最高だが浮いてしまうかな、拍手を入れれば普通のダンスでもOKな気がする。
バイオリン一人に対して全員の揃ったダンスなんてのも見てみたい気がする。
女性アイドルグループのダンスがどんどん向上しているので負けないように頑張って頂きたい。
星屑バンプ
THE CONVOY
博品館劇場(東京都)
2017/09/07 (木) ~ 2017/09/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
The CONVOY SHOW 不覚にも全然知らなかった。
ここで出会って人生の失点を最小限に食い止めた思いだ。
観客には男性ばかりのグループ(こういうところでは絶滅危惧種だ)も見かけたりしたが多くは女性である。若い方も多いが、かなり古い昭和ネタにも反応が良いので結構な年代の方もそれなりにいらっしゃるのだろう。
そのほとんどが昔からのなじみのようにアットホームな雰囲気を作り出している。
何をやっても笑ってやろうと待ち構えているお姉さんたちもたくさんいるようで、よそ者の私は「そこで笑うの???」と圧倒的なアウェー感に最初は押されっぱなしであった。
お目当てのダンスはまさにキレッキレでバレエ的な優雅さを排除したスピード感あふれるものだった。
1曲の時間が長く、普通なら終わるところで、さらに1コーラス2コーラスと続き、そうだそうだ、どんどん行けと心の中で叫んでしまった。
そして曲の数も多い。
ポーズも決まって拍手喝采、これで終演と思いきやそこから30分くらいも続いたような気がする。
男ばかり8人(内4人は若者)のダンスショーということで、「俺には無関係」となりそうだが人生踏み外すことも必要だ。騙されたと思って行ってみよう。
最初の30分の(今と昔の)お姉さん方の熱狂に同化しているかのように見せかけてしのいでいれば、そこから先には男性観客も大いに楽しめる世界が開けている。
〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』
Aga-risk Entertainment
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
女性アイドル界の2017年夏の最大の収穫が欅坂46の全国ツアー最終日幕張公演2日目であるとすれば、若手演劇界でのそれは間違いなくアガリスクエンターテイメントの本公演である。
綿密に練られたシナリオを得て、優秀な俳優陣がおそらく膨大な練習を積み上げ作った珠玉の作品を目の前で観ることができるのは今回が最後であろう。今はシアターミラクルの80席のキャパであるが次期公演からは10倍、20倍となり、それでもプレミアチケットとなって入手は困難となるはずだ。
なんてことを秋元康のAKB48の話に重ねて妄想した。
そして彼曰く「大衆が求めるものは何かを考えるのではなく大衆の一人である自分が面白いと思えるものをやれ」と。
常識人の私は伏線回収は多すぎると思うのだが、作り手が面白くてたまらず突き抜けたのだろう。
それで良いのだというのが秋元康の教えだ。
バリバリ突き進んで行ってもらいたいと思う。
脚本などをネット上で公開しているという。
いっそのこと動画をYouTubeで公開してはどうか。
編集して予告編とか最初の「はあ??」のところまでをダイジェストでとか。
iPhone1台を客席上部に固定したもので撮影すれば十分だろう。
動画を見ると絶対に実演が見たくなるはずだ。
欅坂46のセンターは声が出なくなったり、倒れたりしたらしい、
こちらのセンターもあの長台詞が最終日までもつのか非常に心配である。
気になる人は1日でも早く出かけてみることをお勧めする。
*「なんでいきなり欅坂46?」の伏線回収はできたぞ。……弱い弱い(笑)
DOUBLE TOMORROW
演劇集団円
吉祥寺シアター(東京都)
2017/09/08 (金) ~ 2017/09/17 (日)公演終了
満足度★★
これはストーリーのない実験的なパフォーマンスである。
とはいっても小劇団のアングラ芝居とはもちろん違う。
どの役者さんも面構え、身のこなし、声の張りから現役の第一線で活躍されている一流の方々であることはすぐにわかる。
奇妙な動作もしっかりした設定の下に行われていて乱れはない。
役者の皆さんは楽しそうである。
創造に参加し、普段から気になっていたエピソードや決めのポーズなどを入れてみたりしているのだろう。
しかし、基本的にこれは役者のためのものであって、観客を喜ばせるものではない。
観客は実験の目撃者であって、彼らが高みに上るための踏み台でもある。
楽しむとしても断片的に紡がれる場面で意外性に驚き、あるのかないのかわからない寓意を勝手に読み解くのがせいぜいであろう。
音楽でもスポーツでも、何でもやる側になって初めてわかることがたくさんある。
本作もそういうものの塊なのだろう。
今から役者になるわけにもいかないがそういう境地に近づいてみたいものだ。
SHERLOCKIAN Aの項目
Project S.H
ワーサルシアター(東京都)
2017/09/13 (水) ~ 2017/09/18 (月)公演終了
満足度★★★★
これは正統派の古典的推理劇である。
笑いやアクションは一切なく、提示された謎はすべて回収される。
中高年男性ミステリーファンにも安心しておすすめできるものである。
年をとって一番困るのは目の衰えである。
小さな活字は追って行けず、すっかり読書量が減ったと嘆く声も多い。
大画面の4Kテレビで電子書籍を読む人もいるという。
そういう点ではこういうセリフの多い、朗読劇に近い芝居は案外市場が大きいかもしれない。
こんなことを書いたのは観客にお年を召した方が多かったからである。
前の方は半分以上が60歳以上ではなかっただろうか。
出演者のお父さんかお爺さんかもしれないが、上で書いたような事情もあるのかと想像してしまった。
内容を少しでも書くとネタバレになるので、些末な感想だけにしておこう。
初回なのでセリフを噛むのは許容範囲だが、声の調子がバラバラなのが気になった。
常にビブラートがかかる人、口だけで発声している人、腹から出しすぎてオペラか浪曲になっている人、なんでも絶叫調の人…
録音を聞けばまずいことは誰でも分かるだろうが、いろいろな団体の寄り合い所帯なので調整は難しいのかも。
誰もが一目置く先輩のような人はいないのだろうか。
売春捜査官
稲村梓プロデュース
サンモールスタジオ(東京都)
2017/09/05 (火) ~ 2017/09/10 (日)公演終了
満足度★★★★
昔は演劇に興味はなかったが初演当時に評判になったことは記憶している。
それを半世紀も経った今、初めて観ることになるとは。
圧倒的なスピード感、観客を追い込む激しく無意味なセリフとアクション。
重層的な構成。
これは楽しい楽しい。評判になるのもわかるわかる。
へたな役者が演じたら目も当てられないが、この4人はフルスピードでコーナーぎりぎりを攻めて行く。
勢いあまって最終盤では早口すぎてセリフが聞き取れなかったのはご愛敬。
もっとも、時代がまるで違うので、若い人にはどんなメッセージが伝わっているのだろうか。
風間杜夫ひとり芝居「ピース」
トム・プロジェクト
俳優座劇場(東京都)
2017/09/03 (日) ~ 2017/09/10 (日)公演終了
満足度★★
風間杜夫はひとり芝居を20年も続けているという。
そこまでできるのには何か特別なものがあるのだろうと期待してでかけてみた。
だがしかし、新作でまだ練れていないのであろうか、とくに盛り上がるでもなく、テーマが深まるでもなく80分であっさりと終わってしまった。
観客は団塊の世代とその少し下がほとんどと見受けられた。
結構笑いも起きていたし、終演後は「風間さんは多芸だね」という高評価も聞こえていた。熱心なファンにとってはひとり芝居という形式は至福の時間であることは想像に難くない。まあそういうことか。
ワーニャ伯父さん
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2017/08/27 (日) ~ 2017/09/26 (火)公演終了
満足度★★★
黒木華さんを観に新国立劇場小劇場へ行ってきた。
とはいえ、「重版出来!」や「みをつくし料理帖」とはまったく異世界のチェーホフの4大戯曲である。
音楽で言えば、ポピュラーのライブとクラシックのコンサートくらいの違いがある。
観客にも演劇研究家といった風情の白髪の方も多く見られ、場違いなところに迷い込んでしまったという不安が湧きあがってくる。
しかし、どうもそんなに構えて観るものではないようだ。
この戯曲には感動的なストーリーというようなものはない。
登場人物は貧乏らしいが悲惨な暮らしをしているわけではない。
他人を欺くような悪人はいないが特筆するほどの善人もいない。
そういう普通の人々がブチブチと愚痴をこぼす。
そんな話なのである。
今の私にこれを「面白い」と言える感性とか能力はない。
「日常の仕事は何かと思ったら請求書書きかい」とか「人妻に2人も言い寄るとは現代よりも自由だね」とかいう感想を持つくらいである。まあ、そのうち見る目もできてくるだろう。
出演者の皆さんはテレビでもお馴染みの超一流の方々である。
個人的には山崎一さんと小野武彦さんの実物にお目にかかれただけでもうれしい。
彼らにとってこのような舞台は修行の場なのであろうか。
緊張感が場内を覆っている。
しかし、ドクターだけはまるで観客に語りかけてくるような親しみのある振る舞いをしていた。
この役は作者に代わる語り部のような立ち位置になっているのだろうか。
ギターの生演奏が心に沁みた。久しぶりの「悲しき天使」はチクリと胸を刺す。
【第29回池袋演劇祭参加作品】『落語の国のアリス』
ラチェットレンチF
萬劇場(東京都)
2017/08/30 (水) ~ 2017/09/03 (日)公演終了
満足度★★★★
落語の「たがや」に挑戦中のダメ落語家を主人公に置いたとき、脚本家の頭に江戸と現代、「たがや」と落語家を融合させるアイディアが閃いたのであろう。
巧みな構成が光る意欲作である。
途中休憩なしの2時間20分だが適度に場面が変わって飽きさせない。
舞台セットは一つであるが江戸と現代を交互に描いて行き、最後に大団円を迎える。
構成が複雑なことと私が落語に不案内なこともあって理解できない部分もあったが、本筋は十分楽しむことができた。
遣り手婆のダミ声が耳に残る。あれを聞きにまた行きたくなってしまう。もうほんのちょっと酒とタバコで喉が焼ければ完璧だ(やっちゃ駄目ですよ(笑)。
門倉の存在感が素晴らしい。出番はそれほど多くないのに観客をすっかりコントロールしている。
白兎は社会人落語家としても活動されているとのこと、ベテラン俳優のような熟練振りであった。