秘密の花園
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/01/13 (土) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
伝説の初演とかいう話を聞いて何か難しいものかと思っていましたが、ストレートに驚き楽しめました。田口トモロヲさんはナレーションのイメージとはまるで違うユーモアと迫力に溢れていました。寺島しのぶさんは二人の女性をあるときは区別し、あるときは曖昧に、片乳を出しての熱演です。柄本佑さんは最初の早口長ぜりふを見事にこなしながらも、田口さんに「DNAが…」「奥さんが…」とかいじられると素に戻ってはにかむなどベテランに押され気味でしたが好演でした。
後半では暴風雨ということで下手奥から盛大に放水があって、とくに上手前方席にはかなりの水が届きます。そのため休憩時間に前方席にはビニールシート(1m?x2m?)が配られます。放水を防いでも役者さんが溜まっている水をわざと蹴とばすのでそのたびにビニールを持ち上げて防ぐことを繰り返します。次回の公演のときには上手最前列が絶対のおすすめです(笑)。
内容については東京芸術劇場の広報誌「芸劇BUZZ Vol.22」P6から、演出の福原充則さんが唐十郎さんの作品に初めて出会った時の印象を引用しておきます。
* ここから *
躍動的で詩的な長ぜりふ、理屈では追いかけられないストーリー展開、思いもよらないスペクタクルな演出、生活感と妄想が一体化したビジュアルなど、静かな演劇とは真逆の世界が目の前に広がっていた。
* ここまで *
いやあ全く今回の私の印象もこの通りです。さすがにうまく表現するものですね。
犯人(おまえ)はもう知っている
Ⓡ360°
中国茶芸館 BLUE-T(東京都)
2018/01/30 (火) ~ 2018/02/05 (月)公演終了
満足度★★
公演が終わったので、苦情を並べます。
サスペンス風コメディを標榜した劇で前半70分、シンキングタイム10分、後半20分と別れています。こう聞くと誰でもいくつかの伏線があって推理して謎を解くものと思うでしょう。しかし伏線なんて何もありません。後半では理由が説明されることもなくこの人が犯人でこの人が探偵だと言われるだけです。
大体、今行われている芝居が現在なのか過去なのか、アジトなのか襲撃場所なのか全く分かりません。セキュリティ会社の女性は一体どこのシステムを開発していたのでしょうか。
あまりのことに、途中で寝てしまったのかとも思いましたが、他の方も分からなかったようなので書いておきます。しかし皆さんやさしいなあ。
ドリンク込みの値段ですが置く場所がないので始まる前に一気に飲むことになり、寛ぐはずが逆効果でした。
役者さんがしっかりしていたのが救いです。「しんじん」さんは発声がしっかりすればブレークしそうな予感がします。
次の公演では誰か脚本にまで駄目出しができる人をスタッフに入れてください。
ホチキス20周年記念公演第4弾「妻らない極道たち」
ホチキス
あうるすぽっと(東京都)
2018/01/25 (木) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★★
歌と踊りの人情喜劇。役者さんも達者で安心して楽しめます。
何か新しいものとか振り切ったものとは無縁です。
前回公演の「観てきた!」がほとんどそのまま参考になります。
三文オペラ
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2018/01/23 (火) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★
この舞台にはP席というエキストラの席があり、報酬分が値引きされて(?)、2,000円で観劇できます。舞台の張り出し部の両側に立って一斉に返事をしたり、手を振ったりします。私がKAATに着いたときはちょうどP席の皆さんが1階での練習を終えてぞろぞろとエスカレーターを上がるところでした。60分前に集合なので練習時間は実質30分もないでしょう。
一般席から見ていると短時間の練習にも拘わらずかなり統制がとれていました。合計100人もいたでしょうか、大勢が行動する迫力は出ていました。あんなに近くで観ることができてしかも得難い体験ができるのですから気力体力があれば絶対P席ですね。
P席の盛り上がりの一方で一般席は静かでした。普通は観客席に元気な人と静かな人が混じっていて、元気な人につられて静かな人もリアクションするわけですが、今回は元気な人がP席に集中して一般席が手薄になったのではと思いました。本当のところは分かりませんが。
内容については歌が残念の一言です。男性俳優陣は普通ですが、始まってすぐの「マック・ザ・ナイフ」はあまり良くなく、若い女優さんもあれまあというレベルでした。音響が悪かったことも大きいでしょう。もっともP席ならライブ感覚なので歌や音響の悪さは当たり前で楽しめたでしょう。
ポスターが売っていました。B2版(728x515)で500円です。
BLIND HERO
演劇集団「バックドア」
小劇場B1(東京都)
2018/01/23 (火) ~ 2018/01/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
いやあ、面白かった。久しぶりにスカッと笑えました。
チラシではシリアスな感じがするのですが(企画段階ではそういうテイストだったのかも)実際にはそんなところは微塵もありません。意外性重視でそういう表現にしたのでしょう。それも良いのですが観劇検討中の人をミスリードする恐れがあります。私もピアノとバイオリン目当てでした。
あからさまなキャッチコピーを作るなら「ゲス人間バトルロイヤル」とでもなるのでしょうか。私は“そうくるか”、“それはないよ”、“まさかあなたまで”という感じの呆れた仕業の連続に笑いが止まりませんでした(ちょっと盛ってます)。ナンセンス(?)・コメディ・ファンには絶対のお勧めです。
まだまだ試行錯誤を続けているようですし、俳優さんが一杯一杯になる場面も見受けられました。千秋楽に向かってどんどん進化して行くことでしょう。
楽園の怪人
トツゲキ倶楽部
小劇場 楽園(東京都)
2018/01/24 (水) ~ 2018/01/29 (月)公演終了
満足度★★★
私の演劇的脳内変換能力が低いせいかあまり楽しめませんでした。
(1) 重要な役で女優さんが男性役を割り振られていましたが最後まで男性に思えませんでした。
(2) 時代が何度か前後しますが年齢を正しく設定し直すことができませんでした。誰が親で誰が子なのかも混乱しました。そこに(1)が加わります。
フローズン・ビーチ
ミキミキ・コネクション
シアターシャイン(東京都)
2018/01/18 (木) ~ 2018/01/21 (日)公演終了
満足度★★★
この戯曲は全体のストーリーに光るところは無く、ギャグもつまらないし、昔のキーワードも表面的に使っているだけで、伏線回収にも冴えがありません。唯一ビクッとしたのは、市子を地球の裏側にまで連れてきた意図が明らかになるところです。
ナンセンス劇あるいは不条理劇とも言えますがそれも中途半端で、そういうものを真面目に演じる不条理、という不条理の入れ子構造にも見えてきます。
しかしcorichで検索すると、この作品は異なる人々によってコンスタントに上演されています。演じたくなる女優さんと何が面白いのかさっぱり分からない私のような観客の間には高い壁がありそうです。まあしかし、壁を崩すことに無駄な努力をせず壁のこちら側にいるコアなファンを増やすために女優業に精進するのが吉でしょう。
私にはあまり伝わらなかったものの、今回の4人の女優さんはしっかりとした演技を見せてくれました。
西村めぐみさんの狂気は本物に見えてうすら寒くなりました。
矢野歌織さんは冒頭の長電話で女性の会話のうんざり感を十分に出していました。
北本あやさんは甘えキャラというか癒しキャラというか、それにふさわしい舞台で観てみたいと思いました。
宇野仁美さんのチャイナドレスのコスプレは5つ星でした。東京ゲームショウのコンパニオンになら引っ張りだこ、キリリとした大人化粧をすればモデルも行けるんじゃないでしょうか。
愛の回転式(2018/8/26迄アカウント)
朝劇 西新宿
GLASS DANCE 新宿店(東京都新宿区西新宿1-26-2 新宿野村ビルB1)(東京都)
2018/01/01 (月) ~ 2018/08/26 (日)公演終了
満足度★★★★
「朝からレストランで演劇」の様子を知りたい方のためにWikipediaの「朝劇 西新宿」と被らない事柄を書いておきます。「恋の遠心力」の「観てきた!」も参考になります。
会場は新宿駅西口近くの新宿野村ビル地下1階にあるベルギービールを得意とするラウンジ&バー「グラスダンス新宿」です。公演はここを貸し切って行います。
朝食付で2,980円がレギュラーですが私の行った回は1ドリンクのみで2,480円でした。
この回のスケジュールは8:30開場、9:00開演、9:45終演でした。その後も10:05まで追加ドリンクの注文ができ10:15の閉店まで店内で寛ぐことができます。
ネットで検索して店内を見るとテーブル席とバーテンダーを囲むカウンター席があります。このカウンターとその前のテーブル1つ(と通路)が”舞台”なので座れません。席は自由席でもちろん相席なのでグループの方は早めに行って人数に合ったテーブルを確保しましょう。
開演時間になるとそれまでサービスしてくれていた店のスタッフは入り口のシャッターを閉めて退出します。したがって遅刻すると入れなくなるので早めに行ってドリンクを飲みながらゆったりと待っているのが良いでしょう。
ストーリーは単純でcorichの「説明」を読んで行けば予備知識は完璧です。役者さんは皆さんしっかりしていて何の文句もありません。
TERROR テロ
パルコ+兵庫県立芸術文化センター
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2018/01/16 (火) ~ 2018/01/28 (日)公演終了
満足度★★★★
テロリストが旅客機をハイジャックし、サッカースタジアムに突入しようとしていたとき、緊急発進したドイツ空軍パイロットはこの旅客機を撃墜し、乗客164名の命を犠牲にして7万人の命を守りました。彼は殺人罪で起訴され、その裁判がこの舞台という設定です。判決は観客が入場時に渡される赤い紙を有罪、無罪の箱に投票しその多数決で決定されます。
こういう問題は多くの方が大学の法学の授業などで聞いたことがあるでしょう。2010年に大流行したマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」の第一回がまさにこのテーマでした。考え方は設定次第でどうにでもなるので、裁判という形式を使って事実関係と判断基準を限定させています。どうしてドイツでこういう戯曲が書かれたかというと作品中でも述べられるように撃墜を可能とする法律が制定され、それに違憲判決が下されたという事実があったからです。
2016年8月には今回の弁護士役の橋爪功さんの一人朗読にジャズピアニストの小曽根真さんの演奏という形式で公演されています。そちらも参加したかったですね。ちなみに、今回、圧倒的な説得力で検事を演じた神野三鈴さんは小曽根さんの奥さんです。
戯伝写楽 2018
キューブ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2018/01/12 (金) ~ 2018/01/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
正直それほど期待していなかった私は、最初の歌で「ごめんなさい」と心の中で土下座をしてその不明を詫びた。
幻の浮世絵師東洲斎写楽が女性だったという設定で、写楽という存在の出現から消滅までを描くミュージカルである。ストーリーは全くの創作なのだが壮一帆さん演じる花魁浮雲を一方の柱にして巧みに構成されている。
歌麿役の小西遼生さんは女性が男装したのではと思うほど美しく色っぽい。大田南畝役の吉野圭吾さんのしっかりしたとぼけっぷりは巧みすぎる。蔦屋重三郎役の村井國夫さんは張りのある低音をしっかりと響かせていた。壮さん、小西さん、吉野さんも揃って「歌うま」である。
写楽役の中川翔子さんは思ったより小柄の女性だった。変わった人というイメージを勝手に持っていたがそんなことは一切なく芝居も歌も模範的にこなしていた。
写楽の絵から飛び出てきたような座長の橋本さとしさんも安定の歌と演技である。
特筆すべきは舞台中段のガラスの向こうにいるバンドである。キーボード+ドラム+パーカッション+ベース+ホーンの構成で、年寄りの体が思わず動いてしまうくらいスイングしていた。その演奏を最高の音で聴かせてくれる音響も完璧に調整されている。エンディング以外にバンド演奏が1曲あれば最高だった。音響の良さは歌やセリフでももちろん十分に発揮されている。どこの会場もこうあってほしいものだとつくづく思った。
近松心中物語
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2018/01/10 (水) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
すぐ隣で上演中の「アンチゴーヌ」は観客に色々考えることを求めるのに対し、こちらは観て聴いて感じたままを楽しむものでしょう。有名俳優さん揃いなこともあって私が何かを書く必要はまったくないのですが、あったりまえのことをちょっとだけ書いておきます。
堤真一さん、宮沢りえさんは演技はもちろん、声の魅力(魔力)でぐいぐい迫ります。小池栄子さんは「カンブリア宮殿」の“できる女”とは打って変わった可愛い女を演じます。池田成志さんはすっとぼけた役を演らせると日本一、笑いと哀愁の両面で観客の心を掴みます。市川猿弥さん、銀粉蝶さんのセリフの切れ味にはしびれました。
舞台セットの変化も大きな見所です。スタートは舞台いっぱいに広がった大坂の町で、溢れる色彩と歌と踊りで観客の気分は激しく高揚します。回転する舞台を巧みに用いた場面転換、笑ってしまうローテクやこちらの遠近感が狂ったのかと思わせるようなエンディングなどお楽しみ満載です。
衣装が間に合わなかったのかポスターは洋服(?)で何かひねりのある舞台なのかといぶかしんでしまいますが、ネットで通し稽古の写真を見ればわかるように普通に着物を着ています。その点では王道の元禄時代の物語ですのでご安心を。
アンチゴーヌ
パルコ・プロデュース
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/01/09 (火) ~ 2018/01/27 (土)公演終了
満足度★★★★★
十文字の舞台上に役者が配置に着くと高橋紀恵さんが力強い声で物語の開始を宣言し、ここにいたるまでの状況を手短に説明します。高橋さんの(良い意味で)芝居がかった声は観衆をそして俳優をこれから紡がれる物語の世界へと一気に運んでくれるのでした。
蒼井優さん演じるアンチゴーヌは人としての道を貫きます。しかし生瀬勝久さん演じる叔父で国王のクレオンは法の支配による国の安定を揺るがすようなことはできません。後半、クレオンは亡くなった二人の兄についてのショッキングな裏話を語ってアンチゴーヌを揺さぶります。意外な話にうろたえるアンチゴーヌはクレオンの前に屈服するのでしょうか…。
生瀬さんはもちろん安定の演技ですし、映画の人というイメージが強い蒼井さんも実に堂々としたものでマイクなしでその声を会場の隅々にまで響き渡らせます。
会場は十文字の舞台によって客席が4つのブロックに分割され、それぞれのブロックが14席×5列になっています。1列目から舞台までは手を伸ばせば届く距離です。しかも舞台は幅およそ2m、高さおよそ70cmのもので本当に目の前で演技を堪能することができます。俳優さんは隅から隅までを動き回りますし、客席にもしばしば降りて来て1列目の前を走ります。その点ではブロックごとにやや当たり外れがありますがどこが当たりかは行ってからのお楽しみにしておきましょう。
演劇としての内容はもちろん悪魔的な魅力のある十文字の舞台も必見です。
宣伝用のポスターが売っていました。大(1030×728)が1,000円で、小が500円です。
凛音×天声
凛音天声製作委員会
座・高円寺2(東京都)
2018/01/06 (土) ~ 2018/01/08 (月)公演終了
満足度★★★★
「朗読」と「音楽」にひかれて行ってきました高円寺。
朗読劇にもいろいろありますが、バックにキーボード、ギター、ドラム、バイオリンを従えたものは初めて観ました。この4人のミュージシャンは手堅い演奏で朗読をサポートします。バンドとしての演奏は後半の開始の1曲だけですが各自のソロの入るもう1曲がほしいところです。4人の俳優(声優)さんは実力者揃いでやや過剰かと思えるほどの熱演は朗読劇の静謐さに慣れていると違和感を持つほどです。そういう二つの意味で確かに新感覚の朗読劇で、その試みは成功していると感じました。ここまでは4つ星半です。…従来の朗読劇とは区別して「Super朗読劇」とか「Hyper朗読劇」とか呼んだ方が良い気がしますが、キワモノ感も出てきますね。難しい。
しかし、ストーリーはあまり感心しません。一言で表すと
「巴御前になって義仲に天下を取らせよう」というTVゲームの「ゲーム実況」が今回の舞台である
となります。少し前には、わくわくしたタイムループものというのは今ではゲームの中で一日に何度も体験している非常にありふれたものに成り下がっているのです。それを跳ね返すには映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」並みの表現力が必要ですが舞台では、ましてや朗読劇では不可能と言わざるを得ません。なのでストーリーは星3つです。
座高円寺2はちょっと大きすぎたかも。5,000円は高いなあ。
『自作自演』<第15回>
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/01/07 (日) ~ 2018/01/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
これは世代の異なる二人の舞台関連のクリエーターが自作を朗読しトークを行うという東京芸術劇場で不定期に開催されるものの最新回です。
第15回 2018年01月07日(日)15:00
石田衣良(小説家)×辻村深月(小説家) 司会 徳永京子(演劇ジャーナリスト)
今回は同舞台で上演中の「池袋ウエストゲートパーク SONG&DANCE」の原作者である石田さんと石田さんを尊敬して親交の深い辻村さんのお二人になりました。基本的に演劇関連の出演者が多いのですが今回はお二人とも小説家ということでcorichの皆様には関心の薄いものであったようです。ちなみに過去3回の出演者は以下の通りです。
第14回 2016年10月09日(日)18:00
竹内銃一郎(劇作家・演出家)×ノゾエ征爾(劇作家・演出家・俳優)司会 徳永京子
第13回 2015年12月13日(日)18:00
穂村弘(歌人)×又吉直樹(芸人・小説家)司会 徳永京子
第12回 2015年2月2日(日)19:00
飴屋法水(現代美術家・役者・演出家)× 江本純子(劇作家・演出家・俳優)司会 徳永京子
私は特にお二人のファンということはないのですが小説を読む視点を多くするためのヒントを求めて参加してみました。以下では全体の様子を簡単にレポートして次回以降の参加を検討される方の参考に供したいと思います。
司会挨拶があって、辻村さんが新作「かがみの孤城」の冒頭部を30分朗読し、ついで石田さんが「池袋ウエストゲートパーク」の上演部分を抜粋して30分朗読して前半は終了です。辻村さんは朗読は初めてということでしたがはっきりとした口調でお母さんと娘をしっかりと読み分けていました。対して石田さんは登場人物が男女複数であることもあって特に区別せず淡々と読み進め、20年前の文章を自ら褒めているのが和めました。
10分の休憩のあと、後半は司会を交えてのお二人の対談です。普段の執筆の様子とか締め切りの対処法などの定番からちょっと危ない話まで笑いの絶えないトークでした。
少しだけ記憶を掘り起こしてみましょう(私の聞き間違い記憶違いがありうることにご注意ください)。
お二人とも音楽をかけながら仕事をするのはよいとして、日本語の歌詞があっても気にならないというのがちょっと意外でした。辻村さんは大槻ケンヂ(筋肉少女帯)さんのファンで聴きすぎて特別なものでなくなりBGM化しているそうです。石田さんはロックからクラシックまで雑食とのことでした。
作品の舞台化について石田さんはクールというか突き放した感じで気に入る入らないは半々ということでした。辻村さんは「演出家に負けたい」そうで、その意味は素晴らしいものが付け加えられることを期待するということで、原作にこの場面があればもっと素晴らしいものになったのにと思うことがあるそうです。石田さんはこの意見に対しても、出来上がっているものの一部を改良するのは簡単で、ゼロから作り出すことが素晴らしいのだと原作者の誇りを強調していました。
司会の徳永さんもうまく流れをコントロールしていましたし、最後の聴衆からの質問もサクラではないかと思うような良い質問揃いで2時間飽きずに楽しめました。
帰り道で「かがみの孤城」1,800円+税、554ページを買ってしまいました。冒頭部を聴くと後が気になりますね。うまい販促です(笑)
勝手にPV
制作「山口ちはる」プロデュース
OFF OFFシアター(東京都)
2017/12/27 (水) ~ 2018/01/07 (日)公演終了
満足度★★★★
今年最初の観劇は多数の方が「観たい!」と書いているこれにしました。
内容は年の初めの街頭インタビューという設定で3人から今年の願いを聞き、寸劇と踊りで励まそうというものです。
踊りはなかなか良いのですが、登美丘高校や乃木坂46(年末に急に揃うようになった)を見たばかりなのでとくに感心するということはありませんでした。
寸劇で若い女性が体を張って頑張っているところは素直に喜びました。何それ?と思った方は劇場に足を運びましょう。
シリーズ3「注文の多い料理店」「銀河鉄道の夜」/シリーズ4「シグナルとシグナレス」「セロ弾きのゴーシュ」
株式会社K Productions
近江楽堂(東京都)
2017/12/25 (月) ~ 2017/12/25 (月)公演終了
満足度★★★★
「注文の多い料理店」は学生のころ友人が読んでいるのを見て“繁盛している料理店という意味なの”と聞いたところ“店が客に注文を付けるんだ”という答えでした。よくわからないまま50年も経った今になって記憶の奥底に眠っていた疑問の解決をしてもらえるとは。人生まったくわからないものです。
これは短編なのでリュート演奏でいくら伸ばしても50分にもなりません。
*この時点でまだ16:00前ですが、二つ目の開始は19:00なので3時間を潰さねばなりません。
「銀河鉄道の夜」は初めて聞く話のはずがどこか懐かしさを感じました。「銀河鉄道999」に関連して読んだことがあるのを忘れてしまったのかもしれません。年をとると同じ作品を2度も3度も新鮮に楽しむことができます(笑)。
こちらは長編なので中休みを含んで2時間にもなりました。最前列は子供優先席なのですが身を乗り出してずっと聴いている子がいて驚きました。飽きて動き回っている子がいるのはもちろんです。
一龍斉貞弥さんの朗読は緩急強弱自在で性別も年齢も乗り越え人間から獣までを魅力的な声で演じ分けます。「注文の…」のときはエコーが利きすぎていましたが「銀河…」ではそれがなくなりました。私が座席を移動したせいかPAが修正したのかは分かりません。
高本一郎さんのリュートは楽譜なしで譜面台に置いてあったのは一龍斉さんと同じ活字原稿でした。低音弦の柔らかな響きはギターにはないもので嬉しくなりました。ただしメロディーは現代のものが多く、また1,2弦を多用するのでほとんどクラシック・ギターのように聞こえたのは少し残念でした。
『アメリカン・ラプソディ』『ジョルジュ』
座・高円寺
座・高円寺1(東京都)
2017/12/21 (木) ~ 2017/12/25 (月)公演終了
満足度★★★★★
「ジョルジュ」も聴いてきました。
クラシックにはまるで疎い私でもショパンの曲は知っています。しかし、演奏会に行ったことはありません。その程度の関心でもこの演奏にはノックアウトされました。座席の位置も良く、ピアノの反響板正面約10メートルで聴く一流のクラシック・ピアニストの演奏は想像を超えていました。一音一音の分離の良さ、流れの滑らかさ、強弱のレンジの広さ、すべてが初体験でした。演奏に精神を集中していると別世界に吸い込まれそうになりました(もちろん眠くなるのとは違います)。クラシック・ファンもジャズ・ファンもそしてオーディオ・ファンも楽しめるものだと思います。
オープニングはまず中島朋子さんがにこやかに登場し、感情たっぷりに話し始めると、ジョルジュ・サンドもこのように優美というか耽美というか魅力的な女性だったのだろうか、それならショパンがあっさり陥落し10数年も生活を共にしたのも無理もないという気にさせられます。ついで田中美央さんが顧問弁護士として魅力的な低音で入って来ます。ひとしきりメッセージの交換をすると、お待ちかねの関本昌平さんのピアノが颯爽とソロを取ります。中島さんをクラリネット、田中さんをコントラバスと思えば変則的な編成のピアノトリオです。もちろん同時に音(声)は出しませんが、なにかそういう一体的なユニットを感じました。
私の毎年末の行事にしたいと思います。
『アメリカン・ラプソディ』『ジョルジュ』
座・高円寺
座・高円寺1(東京都)
2017/12/21 (木) ~ 2017/12/25 (月)公演終了
満足度★★★★
「アメリカン・ラプソディ」を聴いてきました。
ガーシュインといえば「サマータイム」は誰でも知っていますし、曲を聴けばああこれも知ってるそれも知ってるとなるでしょう。とはいえ、彼の全盛期の様子をわざわざ調べるほどのファンは少ないでしょう。こういう企画はそういう人(私を含む)にとってありがたいものですし、年末のひと時を優雅に過ごすことができます。
セットリストを見ると私の大好きな「Willow weep for me」が載っていました。これはガーシュインじゃないのにと思っていると、往復書簡の一方であるケイ・スウィフトが作曲者のアン・ロネルがガーシュインの恋人であったことがあり、この曲にはガーシュインの影響が出ていると言って悔しがる下りがありました。へええと思って Wikipedia でアン・ロネルの項を見るともっと生臭い記述がありましたが引用は止めておきましょう。
公演は2回しかないので22日はもう最終日。チケットは販売終了になっていますが1回目は空席もあったので興味のある方は座・高円寺に直接問い合わせてみましょう。本当に売り切れだったらごめんなさい。
セットリスト
ガーシュイン作品でないものは()内に作者を表示します。
また * は関谷春子さんの歌付きです。
1. 'S Wonderful *
2. Alexander's Ragtime Band(Irving Berlin)
3. Habanera(Maurice Ravel)
4. But Not for Me *
5. St. Louis Blues(William Christopher Handy)
6. Rhapsody in Blue
7. Swanee *
8. Concerto in F, 3rd movement
9. Three Preludes
-休憩-
10. Somebody Loves Me
11. An American in Paris
12. Cuban Overture
13. Willow Weep for Me(Ann Ronell) *
14. I Got Rhythm
15. Praludium/Suite For Klavier, OP.25(Arnold Shoenberg)
16. Summertime *
17. Nice Work If You Can Get It
18. Our Love Is Here to Stay
『OTHELLO-オセロ-』
ルドビコ★
サンモールスタジオ(東京都)
2017/12/15 (金) ~ 2017/12/25 (月)公演終了
満足度★★★
最近、オランダ版、新宿梁山泊版と観ての3つ目の「オセロー」でした。みなさん色々工夫していますね。ルドビコ★版をできるだけ感想抜きに他と比較してみます。かなり内容に触れるのでネタバレBOXに入れます。
ドッグファイト
東宝
シアタークリエ(東京都)
2017/12/14 (木) ~ 2017/12/30 (土)公演終了
満足度★★★
宮澤エマさんを観に行ってきました。
ボーイ・ミーツ・ガールもののミュージカルということで会場は99%が女性、男性トイレには誰もいません。
オープニングのテンポの緩い曲では男性ソロ陣が音程を探るように合わせるのでイライラしましたが、その後はアップテンポの曲主体で快調に進みました。しかし、メインの方々より歌専門のサポートの皆さんのうまさが目立ちました。とくに最後の方に出てくる4人組は良かったなあ。一人目が最初の1小節を歌っただけで驚いて舞台を見回しました。
お目当てのエマさんは歌も演技も良いのですがもう一つオーラを感じませんでした。まあ役柄が「可愛くない女の子」なのでそういう演出なのでしょうけれど、ギンギンの美少女に作りながら役の上では正反対ということでも良いのではと思いました。
問題は会場の音です。3人以上が同時に歌うとごちゃごちゃになって何が何だか分かりません。基本的に硬質で殴られているような音です。会場がさして大きくないのですからもっと上質の癒される音を心がけて頂きたいものです。