陰獣 INTO THE DARKNESS
metro
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/01/17 (木) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
「陰獣」をほぼ原作通りの流れで展開し、そこに「化人幻戯(けにんげんぎ)」の断片をはめ込むという構成になっている。乱歩の大好きなタイプの女性のW盛りである。前者のヒロインはサヘル・ローズさん、後者のそれは月船さららさんが演じる。乱歩ものはあまり好みではなく、ローズさんのファンではない私でも満足度は5つ星を付けざるを得ない完成度である。原作にはない怪しいオープニングにも大いに期待を高められた。
「陰獣」には乱歩自身をモデルにした謎の作家大江春泥(本名平田一郎)が登場し、語り部のライバル作家が乱歩とその作品について言及する。この芝居ではそれをさらに進めて未来の作品を乱歩に代わって取り込んでいることになる。
男女のからみのシーンは「化人幻戯」だけで行われる、とはいっても月船さんの裸身が拝めるわけではないのでお父さん方はお間違え無く。情交シーンを「外部委託」することによって「陰獣」の論理構造が明確になっている。一方の「化人幻戯」は事件も捜査もトリックもカットされていて「必要なのは濡れ場だけかい」状態である。
さて「平田一郎」が「平井太郎」のもじりであることは明らかだが「大江春泥」はどこから来ているのだろうか。「江戸川乱歩」そのものからなのか、遡って「エドガー・アラン・ポー」からなのか。後者とすると「O.A.Sunday」などというのが思いつくが、そんな作家も名探偵も犯人もいない。「日曜にオンエア」なんて言い方も当時はないだろう。もう一ひねりが必要なのだろうか?「泥」は「どろ」で「ドイル」が臭いのだが。ちょっと調べたがこの問題に対して誰も言及していない。あまりに明白で私だけが分かっていないのか?
ついでに新しい英語題名の "Into the Darkness" だが、本当は "INJU, the Darkness" だったのだが誰かが "INJU" を "into" に聞き間違えたのを「乱歩的だ!」と採用したのでは?
しきしま探偵事務所
シアターまあ
テアトルBONBON(東京都)
2019/01/15 (火) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★
この劇団のモットーの通りに「誰にでもわかる」「楽しい芝居」であった。
ただし、笑いの小ネタばかりで泣かせる場面もなく、ベテラン俳優の演技をたのしむだけ。
捏造タイムスリップ
AcTTRACT
王子小劇場(東京都)
2019/01/17 (木) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★
「アクトラクト旗揚げ公演」と銘打っているので感想を述べたい。ちょっと上から目線なのはご容赦。星はご祝儀込み。
女性陣はまあまあ綺麗で良い。男性陣はちょっとキモくて良い。
初回の割にはセリフの噛みも少なく演技のテンポも良く、普通に楽しく見ることができた。
タイムスリップの話も特段新鮮味はないものの、そこそこ面白い。
ただ設定が大学のサークルの部室というところに安易さを感じた。作者も役者も楽だろうけど演劇の基本は非日常だと私は思う。どんどん安易になって内輪ネタで仲間内だけで「わかる~」「泣けた~」と褒め合うようにはならないでほしい。
また誰が主役なのか曖昧で芝居全体の印象が薄い。旗揚げで全員横並びということなのだろうか。次回からはメリハリを付けてほしい。「バック・トゥー・ザ・フューチャー」もマーティとドクという強いキャラがいたからこそだった。
遠慮ガチナ殺人鬼
企画演劇集団ボクラ団義
ザ・ポケット(東京都)
2019/01/09 (水) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★
もの凄く高いハードルなので多少の無理はやむをえない。よくここまで作り上げたものだと感心した。
140分間いろいろ新しい事実が出てくるので頭がウニになった人のために終演後に出口で「AFTER PAMPHLET」という解説を配っていた。
二つ折りのチラシも美しい。
ただ色々な点で単調なので途中で私の時間がワープしてしまった。
1. 細身の若者ばかり
2. ずっと声を張りっぱなし
3. 黒服ばかり
まあ3.は仕方がないけど。黒いベールとか帽子とかカメオに十字架あるいは数珠とかアクセサリでどうにかするのもあり。サングラスの男がいてもよい。
トロンプ・ルイユ
パラドックス定数
シアター風姿花伝(東京都)
2019/01/09 (水) ~ 2019/01/14 (月)公演終了
満足度★★★★
皆さんが書かれている通りで何も付け加えることはありません。
競馬に詳しくない私でも楽しめました。
また旗森さんがカチンと来た作者のあいさつも今回は無難なもので気持ちよく会場を後にできました。
チラシの色合いは内容と合っていない気がします。これじゃあオカルトかホラーです。まあオカルトといえばそうなんですけど(笑)
なお15日(火)19:00にも追加の公演があります。劇団の予約フォームからどうぞ。
アラサー魔法少女の社畜生活
森プロ
萬劇場(東京都)
2019/01/11 (金) ~ 2019/01/14 (月)公演終了
満足度★★★★
10代で覚醒した魔法少女は専門会社の社員となって、日々モンスターと戦い、地域の平和を守って来た。そして気が付けばすでにアラサーである。そんな彼女らの職場を舞台にして現実のブラック企業とか働き甲斐とかを多角的に描いている。
と書くと取っつきにくく感じるがそこは作者の力量で柔らかなコメディーに仕上げている。アフタートークによればさらに先まで作って稽古していたのだが結局ボツにしたのだそうだ。勝手に想像するに、現実的には万能の処方箋がないのでオープンエンドにならざるをえなかったということなのだろう。その分、小さくまとまった感は否めないがこのフォーマットの限界ではある。
出演者は数年前なら新宿村LIVEに出ていたであろう元美少女の親しみやすい方々である。もう少し体を絞ればまだまだいけてると思われる方もチラホラ…余計なお世話でしょうね。魔法少女の仕事ぶりもなかなか本当らしくて楽しませてくれる。3人の男性も中間管理職、召喚獣、モンスターとして良い味を出していた。
チラシそのままのカラークリアファイルを全員に配っていたのも好感度大。
それからパイプ椅子の間隔が10~20cmもあいていたので大劇場以上の快適さだった。夏場はとくにこうして欲しい。
ミュージカル レベッカ
東宝
シアタークリエ(東京都)
2019/01/05 (土) ~ 2019/02/05 (火)公演終了
満足度★★★★★
【一回目】1/11 13:30「わたし」=桜井玲香、ダンヴァース夫人=保坂知寿
【二回目】2/4 13:30「わたし」=桜井玲香、ダンヴァース夫人=涼風真世
原作は1938年のイギリスのダフニ・デュ・モーリエの小説である。1940年にはヒッチコック監督で映画化されアカデミー作品賞を受賞した。この映画は1月2日にTOKYO-MXで放送されたのでご覧になった方もおられるだろう。
あらすじ:
天涯孤独の「わたし」は小間使いをしてなんとか生計を立てていたがあるとき妻を亡くしたばかりの大富豪の貴族ド・ウィンター氏に見初められ結婚する。ド・ウィンター邸は「マンダレイ」と呼ばれる豪邸であった。そこには大勢の使用人がおり、家政婦頭のダンヴァース夫人は前妻「レベッカ」が実家から連れてきた厳格な人であった。屋敷にはいたるところにレベッカの影響が残り、人々もレベッカをほめそやすばかりである。何とか存在を示そうとする「わたし」だが、ダンヴァース夫人の策謀で大きな失敗をしてしまう。夫人に責められて窓から海に身を投げてしまいそうになったそのとき船の座礁を知らせる警報が鳴り響き、そこから事態は急変して行く…。
このミュージカルでは普通のミュージカルよりソロパートで歌う人の数が多い。そして皆さん呆れるほどうまい。たとえばド・ウィンターの姉のビーはそれほど重要な役ではないが3回も長いソロがある。ここに宝塚出身の出雲綾さんが配されていて堂々とした歌声でこの後で何か大変なことをするのではないかと錯覚してしまうほどだった。正確にはトリオ、ソロ、デュエットの3つの歌でソロのパートが多い。
この物語の影のそして真の主役はダンヴァース夫人である。彼女はレベッカの分身なのだ。
【一回目】保坂知寿さんの圧倒的な歌唱力と存在感はこの劇全体を支配していた。出来栄えには保坂さんご自身も大満足だろう。
【二回目】涼風真世さんのダンヴァース夫人も保坂さんと同様歌唱力も存在感も圧倒的である。回数を重ねた分だけ怖さが増していた。ただし、屋敷が燃え落ちるときの高笑いが可愛らしくなってしまったのはやや減点か。
ド・ウィンター役の山口祐一郎さんは安定の歌声、ただし強引に歌をねじ伏せる印象を持った。またレベッカを回想する歌は説明の言葉が多すぎてちょっと同情してしまった。【二回目】前半では小さな声が安定していなかった。
森公美子さんの上手すぎる歌と余裕の道化は単調になりそうな物語にポップな色合いを与えていた。【二回目】ではアドリブでさらに笑いを増やしていた。
セットの変更を伴う場面転換の回数も最近では珍しいほど多い。何か驚かせるようなものではないが適切なセットが丁寧に作られ雰囲気を醸し出している。たとえば重要なアイテムである屋敷の窓は手抜きをせず舞台の天井まで届くように大きく作られている。衣装も抜かりはない。「わたし」は着せ替え人形かファッション雑誌のようであるし、仮装舞踏会でも昔の貴族の服装を惜しげもなくおごっている。
さて本作は乃木坂46の桜井玲香さんの本格ミュージカルデビューとしても注目されている。誰もが「大丈夫なの?」と心配することだろう。そんな心配の裏をかくように、この劇は彼女の歌から始まる。若く、そしてほのかな哀愁をまとった声が観客の心をつかまえるには4小節も必要なかった。すぐに皆このミュージカルの成功を確信したのであった。TVで見る桜井さんは大きめの眼鼻口が乃木坂46的ではなく少し浮いているのだが、舞台ではそれがプラスに作用し、素晴らしく良く映えて見える。演技も歌もたたずまいも華があり、乃木坂46の中でも将来一番伸びるのはこの人ではないかと予感させるのに十分であった。
このミュージカルで超絶歌うまの皆さんに揉まれていれば桜井さんも大化けするだろう。意外にもビブラートは合格点なので当面の課題は声量である。
【一回目】ダンヴァース夫人とのデュエットではすっかり負けてほとんど聞こえない。夫人が抑えて合わせれば良いのにと思ったが、目標を設定しての愛のムチ(死語?)なのだろうと納得した。もちろん私は目標達成を見越して来月初めのチケットも確保してある。
【二回目】でも桜井さんの歌は全く変わっていなかった。あまりにも同じなのは演出から歌い方を厳しく決められているのだろう。デュエットの音量のバランスが良かったのはPAの調整が上手くなったのと涼風さんが控え目に歌っていたためだと思われる。
ミュージカルファンには絶対のお勧め。自然にスタンディングオベーションの気分になること請け合い。85分+20分休憩+85分?
【二回目】には男性の割合がかなり増えていて、途中休憩の男性トイレの列が廊下から舞台上手まで伸びていた。シアタークリエでも他でもこんな状態は見たことがない。桜井さんの千秋楽だからなのだろうか。乃木坂おそるべし。
罪と罰
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2019/01/09 (水) ~ 2019/02/01 (金)公演終了
満足度★★★★
椅子や机、ベッドにドアが散乱した舞台、雑多なようで緩い統一感があって心地良い。音楽はクラリネット、アコーディオン、チェロなどの生演奏が実に美しく効果的であった。また多くの場面では10人以上の人物が舞台上にいて躍動感をもたらしている。老婆の殺害シーンも周りから何人もが観ているのが不思議な感覚である。そういう舞台美術、音楽を含む演出は満足度5つ星である。
だがしかし、主役の三浦春馬さんのセリフが聞き難く、何度も聞き取りをあきらめた。さすがにストーリーの大筋は頭に入っているので飛ばし飛ばしになっても話の流れを見失うことはなかった。三浦さんもゆっくり話すときは明瞭だが、少し急ぐと発音があいまいになってしまう。もっとゆっくり発声すれば良いとは思うものの100分+20分休憩+100分の長丁場をこれ以上延ばすわけにはいかないだろう。難しいところである。他にも何人かセリフが聞き取りにくい役者さんがいたのでシアターコクーンの音響のせいとか私の耳のせいとかいうこともあるだろう。ソーニャ役の大島優子さんのセリフがひときわ明瞭に聞こえたのはファンゆえに心の耳で聴くからかもしれない。
セリフの問題を除けば舞台を眺めているだけで楽しい。お勧め。長いけど。
勝手にPV2
制作「山口ちはる」プロデュース
小劇場 楽園(東京都)
2018/12/27 (木) ~ 2019/01/06 (日)公演終了
満足度★★★
年末年始の気楽なバラエティである。文句をいうのも野暮なのだがすこしだけ書いておく。
前説で拍手の練習までしたのだが
「暗転していかにも拍手をするタイミングになるのでそこで拍手してください」
というのはちょっと無理な要求である。暗転するまでには舞台から全員はけているので拍手する気にならないのである。
代わりに
「曲の終わりにドヤ顔のポーズをとるのでそこで拍手してください」
とするべきだ。そして最初の作品では拍手が起こるまでじっとポーズをとって待っている。なかなか拍手が起こらなければ手を動かして拍手を強要するくらいはしないといけない。気取った態度で拍手をもらおうなんて100年早い。ましてや舞台にいないのに拍手をもらおうなんて…。
それから「記憶」の旦那は奥さんの医療費をあまり負担しないで奥さんの実家の母親と姉に頼っていた。しかもそのことを意識すらしていなかった。お前はアホかというのがまずあって腹が立つばかりで全然泣けなかった。特殊な事情の夫婦なのだろうがそんなこと分からないよ。
かもぬ
演劇ユニット「みそじん」
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2018/12/26 (水) ~ 2018/12/29 (土)公演終了
満足度★★★
秋本奈緒美様を拝みに下北沢へ。秋本様は昔と変わらない美貌で見とれてしまった。これで木戸銭分はあったし、番外編なので文句をつけるのも野暮だがすこしだけ書いておく。
演劇ではなくてコントである。ストーリーはコントを並べるための仕組みであって意味はほぼない。コントとしては面白い話がいくつかあってなかなか良いのだが、お二人はこれから漫才で食べて行こうというのだろうか。固定ファンとお仲間で満員なのは結構だが、私のように何かの縁で偶々観に来た一見さんは「みそじん」ってこういう団体なのか次はないなあという感想をもってしまう。
アドリブ心理劇 ドナー・イレブン
アリスインプロジェクト
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/12/19 (水) ~ 2018/12/30 (日)公演終了
満足度★★★
昨日の「スリル・ミー」の観客は腐女子95%、今日のこれはオタク男子100%である。昨日は研ぎ澄まされた素晴らしいミュージカルだったが、今日はグダグダの「人狼」風リアルタイムゲームである。最近の私はどちらもそれなりに楽しめるがそれは成長なのか幼児化なのか悩むところだ。
題名にもなっている「ドナー・イレブン」というゲームは当日パンフにも書かれていて、舞台の途中でも説明がある。基本は11人の美少女の中に隠れている4人の「バイツ」という敵を探し出すものなのだが、なんともルールが分かりにくい。最初の方にヒントタイムがあって「真剣に考えたい人は目を閉じているように」という指示があるが、ルールが分からないうちは見るしかないだろう。とはいえリピートはないよなあ…。
11人の他に2人の進行係がいて、さらに「アルベルタ」というバイツの大物が時折出てくる。私の観た回の野中美智子さん、ウィキペディアによると元吉本興業TRAPPER所属で現在はプロレスのリングアナもこなす方である。「ちょうどいいブス」という自虐キャラで売っているようで「ちょうどいいブスあるある」のネタも披露していた。ダジャレもうまくて、美少女達を差し置いて私の今日の一押しである。肝心なところで段取りを間違ったのは減点だが。
美少女達は他の登場人物の名前もあやふやで、自分に割り振られた力をうまく使えなかったりする。やはり一風変わった女子会を楽しむことにして真剣に当てに行くのは止めた方が良いだろう。美少女度にもかなり多様性があることは覚悟されたい(笑)。
ミュージカル「スリル・ミー」
ホリプロ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/12/14 (金) ~ 2019/01/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
<私=成河、彼=福士誠治>
裕福で聡明な同性愛の男子が自分たちはニーチェの言う超人なのだと思い込み、完全犯罪を計画実行し、破綻していくというストーリー。実際の事件を下敷きにしているが、二人の支配関係はこの作品のオリジナルではないだろうか。ちょっと話がうますぎるような気がした。まあそこもどうにでも解釈できるのだが。芝居としてはおおっと思わせる転換となって気持ちが良い。
二人の俳優とピアノ伴奏によるミュージカルである。セリフの半分は普通であるが、あとの半分がメロディー付きである。こんな言い方をしたのは普通のミュージカルのようなビブラート全開で歌い上げるようなものではなく切々と心情を吐露する儚げなものであるからである。お二人はこの難しい「歌」を丁寧に見事に歌いこなしていた。「普通にしゃべった方が良くね?」というミュージカル嫌いの方にも「まあこれなら良いか」と納得してもらえるのではないだろうか。
会場のシアターウエストはクリスマスイブの夕方だというのに、補助席が出るほどの超満員状態で、その95%は BL 大好きの腐女子の皆さんである。そのあおりで男性は多目的トイレに追いやられ、仕方がないので会場外のトイレに行くと「チケットを持っている人は各シアターのトイレを使え」という掲示があってどうすりゃ良いのよと途方に暮れる(ウソ)。しかし着衣の二人の女性が抱き合ってキスをするのを喜ぶ男子は皆無と思われるがこの違いは何なのだろう。
円盤屋ジョニー
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
上野ストアハウス(東京都)
2018/12/19 (水) ~ 2018/12/25 (火)公演終了
満足度★★★★★
「男っておバカですね」という永遠のテーマに寄り添った30分の短編3作。
3つの話はサービス精神溢れる喜劇エンターテインメントでどれもダイレクトに感じ楽しめるものです。お父さん向けのカットもありますよ(笑)。
3つはまったく異なる設定ですが、的確に役者さんが集められていて作者の意図が明確に表現されています。衣装も大道具も小道具もしっかりしていて、ああ演劇ってこうだよなあと再確認しました。
平日昼間割3,000円はちょっと申し訳ないくらい。
カワサキ ロミオ&ジュリエット
ラゾーナ川崎プラザソル
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2018/12/06 (木) ~ 2018/12/11 (火)公演終了
満足度★★★★
「縹組」60分+10分休憩+60分。
最初のインパクトは福田麻希子さんの歌によってもたらされる。プロの声楽家の盛大なビブラートに度肝を抜かれる。このあたりまでは瑞生桜子さんはニコニコしているだけで存在を消しているかのようだ。ややあってようやく切々たる彼女の歌声が静かに響き出す。セリフと同様に歌の一音一音がコントロールされていて音量、音質にバラツキがない。安定した声により心情がダイレクトに伝わってくる。前半ではマキューシオとベンヴォーリオのラップが大きくフィーチャーされている。ただ少し遠慮がちであった。どうせなら4-5人で派手にやった方が良いように感じた。
前半でマキューシオが死んでしまうので後半はラップ無しである。ジュリエットにもエンジンがかかり、段々とセリフも激しい口調になっていく。前半もそうだがジュリエットが饒舌である。チェックすると要所要所で原作の長い会話をそのまま採用しているのだった。今まで私が観た映画や舞台の方が短縮版だったのだ。その代わりに全体のストーリーを大胆にカットして寄り道を入れる時間を捻出している。
最初の歌と踊りのところで伴奏が大きくて歌もセリフも消されていたのが残念だった。これは2回目に行ったときには良いバランスになっていた。しかし今度はエンディングの合唱がグダグダであった。女声だけの部分は良いのだが男声が混ざるとモタモタして練習していないんじゃないのと疑ってしまった。また大道具を移動するときのロック、アンロックの仕方が雑でその音や動作が雰囲気を損ねていた。あるいは大人の事情とでもいうべきものもあった気がした。どうして満足度が5つ星でないのかを考えるとこういう不満点が出てきた。大手の公演との違いを感じるところである。
会場のラゾーナ川崎プラザソルはラゾーナ川崎プラザの5階にある200人収容の施設である。5階に上がるのにちょっととまどってしまった。
ら・ら・ら・ららんど
株式会社Am-bitioN
新宿村LIVE(東京都)
2018/12/05 (水) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★
若者向けとは分かっているのに凝りもせず新宿村LIVEに行ってしまった。
お目当てはフェアリーズの井上理香子さん。フェアリーズは厳選されたメンバーで歌って踊れるガールズグループのトップを目指したのだが、歌と踊りはそれなりのAKB路線にやられ、K-POPとバッティングして低迷が続いている。井上さんもいろいろ仕事の幅を広げようと奮戦中で昨年の朗読劇「陰陽師」は張りのある艶やかな声が素晴らしく本人も手ごたえを感じたと思われる。しかし期待して行った今回は歌が「どうしちゃったの?」というレベルで目の前が真っ暗になった。
出演者の皆さんはそれなりの歌、踊りそして演技をしていたが、いかんせん内容がただのおふざけではどうにもならない。映画『ラ・ラ・ランド』とは1ミリの共通点もないのにこの題名を付けることにも呆れてしまった。老人の偏見かとも思ったが会場は空席が目立ち若者の支持も多くはないようだ。
へたくそな字たち
TOKYOハンバーグ
座・高円寺1(東京都)
2018/12/05 (水) ~ 2018/12/12 (水)公演終了
満足度★★★★
夜間中学ものは大昔にTVのドキュメンタリーとかドラマでよくやっていた気がします。こういう地味な感動ものは演劇の題目の王道の一つで、この舞台も私の期待や予想からほとんど離れないものでした。若いころは「(悪く言うと)感動の押し売り」には馴染めませんでしたが、年齢をとって許容範囲が広がったのか、こういう人生もあるなあと自然に観ることができました。役者さんの年齢の幅も広く、演技も的確で自然に引き込まれて行ったことが「押し売り」感を低減したのでしょう。
ウィキペディアによると2014年には生徒の8割が外国人だということで夜間中学は全く違うものになっています。この舞台も30年前の設定ですが、もうこの先この内容では現実の状況との乖離が大きすぎて公演は難しくなるでしょう。興味を持った方は今のうちにどうぞ。
ところで「みなみ」さんが書かれたこと:
「話すことでも、書くことでも気持ちが伝えられない時はどうしますか?」という先生の質問にたった一人手を挙げた道郎君でしたが、あの答えには納得できません。
に私も同感です。抽象的で美しい言葉は空疎な自己満足になりがちです。そんなオチは要りません。カーテンコールの後で先生が出て来て黒板の前で何かを確かめるようにしてまた戻って行くのも余計な演出でした。
劇作家と小説家とシナリオライター
劇団6番シード
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/11/21 (水) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
「B日程」 現実世界と作品の中の世界がエッシャーの絵のようにつながり、そこに全く別の絵がコラージュされているような奇妙で雑多な味が心地良い。またテンポの良い演技でまったく退屈することはなく、豆知識的なこともいくつか勉強になった。しかし書かれている絵が何だか結局分からなかった(汗)ので満足度は星3つ半くらい。なのだが福田真夕さんのくっきりショートヘアに心を鷲づかみにされてしまったのでプラスして4つか。
評決-The Verdict-
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2018/11/29 (木) ~ 2018/12/11 (火)公演終了
満足度★★★★
すっかり落ちぶれた酒浸りの弁護士が主人公。判事も敵に回し、打つ手を次々と潰され万事休す。さて結末は?
題名から陪審員の評議の状況が描かれて『12人の怒れる男』的な部分があるかと思いきや、それは全くない。最後の評決は私には納得がいかないが「ハードルが高すぎるのでまあ許す」というところか。
法廷ものとしては反対尋問での痛快な逆転が無いところに不満が残るが全体としては山あり谷ありで十分に楽しめる。整った舞台装置と適切な衣装にベテラン俳優の安定の演技も満足度を高めてくれる。
観客は老人の白髪頭が目立つ。この世代は本当にミステリーが好きだ。
追記
1982年のポール・ニューマン主演の映画をアマゾン・ビデオで観た(199円)。
最終弁論で陪審員に語りかけるシーンが映画全体の説得力を増している気がした。この舞台では陪審員席がカラなので空しい戦いの象徴のようになっていた。我々観客が陪審員になったつもりで聴くことを想定しているのだろうが、少なくとも私はそういう気分にはならなかった。
対策として舞台上の陪審員席に観客を入れてはどうか。KAATでの「三文オペラ」のP席のようなもので料金を割引く代わりに演技をしてもらう。演技と言っても黙って座っているだけだが。評議のために退出し、舞台裏を一回りして再入場するくらいはしても良いかもしれない。
我々は陪審員制度に馴染みがないので、あの評決をどう受け取って良いのかが分からない。今の日本は裁判員制度で評議には裁判官が参加する。ああいう結論には絶対にならないだろう。良いのか悪いのか。
空と東京タワーの隣の隣
マコンドープロデュース
下北沢 スターダスト(東京都)
2018/11/17 (土) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★
父一人、娘一人で娘の結婚までという定番の設定である。話は時々前後するが大きな出来事もなく淡々と進んで行く。30分経っても40分経っても何も起こらない。そして53分経ったときに暗転、上演時間は60分とアナウンスされていたので、そうか最後に大どんでん返しか…と思ったら早目のカーテンコールだった。
演出などよりもストーリーを重視する私には向いていなかった。
ナース・コール
劇団俳協
TACCS1179(東京都)
2018/11/21 (水) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
舞台はほとんどナースステーションで、下手上方に必要に応じて病室が現れる。
基本は看護師あるあるの喜劇だが後半は新型感染症との戦いで緊張感に包まれる。上手くできた台本で役者さんも自然体で安心して観ていられる。私はもう少し尖がったところが欲しいのだが、そういう観客はすっぱりと切り捨てて、現在の方針を選択しているのだろう。
ところで私の父が病院の事務長をしていたので「ちょっと事務長の扱いがひどくない?」とはこの作品に限らず病院ものではいつも思うことである。父の供養に、事務長が大活躍する病院ものをやって頂けないだろうか。…誰も観ないね(笑)。そうそう父が「医者によって外来の人数が全く違ってくるんだ」とボヤいていたのを思い出してしまった。事務長って大変なんですよ(笑)。