満足度★★★★
すっかり落ちぶれた酒浸りの弁護士が主人公。判事も敵に回し、打つ手を次々と潰され万事休す。さて結末は?
題名から陪審員の評議の状況が描かれて『12人の怒れる男』的な部分があるかと思いきや、それは全くない。最後の評決は私には納得がいかないが「ハードルが高すぎるのでまあ許す」というところか。
法廷ものとしては反対尋問での痛快な逆転が無いところに不満が残るが全体としては山あり谷ありで十分に楽しめる。整った舞台装置と適切な衣装にベテラン俳優の安定の演技も満足度を高めてくれる。
観客は老人の白髪頭が目立つ。この世代は本当にミステリーが好きだ。
追記
1982年のポール・ニューマン主演の映画をアマゾン・ビデオで観た(199円)。
最終弁論で陪審員に語りかけるシーンが映画全体の説得力を増している気がした。この舞台では陪審員席がカラなので空しい戦いの象徴のようになっていた。我々観客が陪審員になったつもりで聴くことを想定しているのだろうが、少なくとも私はそういう気分にはならなかった。
対策として舞台上の陪審員席に観客を入れてはどうか。KAATでの「三文オペラ」のP席のようなもので料金を割引く代わりに演技をしてもらう。演技と言っても黙って座っているだけだが。評議のために退出し、舞台裏を一回りして再入場するくらいはしても良いかもしれない。
我々は陪審員制度に馴染みがないので、あの評決をどう受け取って良いのかが分からない。今の日本は裁判員制度で評議には裁判官が参加する。ああいう結論には絶対にならないだろう。良いのか悪いのか。