終夜
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2019/09/29 (日) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★
ベテランの皆さんの真似をして観劇に。こういうのを面白いと感じるようになれば私も演劇鑑賞人として成長したということになるのだろうが道遠しである。役者の皆さんの素晴らしさは理解できるが他の見どころが分からない。
この長さで途中休憩が2回も入るので意外と苦痛は感じなかった。休憩の時に、さて作者は次はどういう嫌がらせを仕掛けて来るのかと期待するような余裕もあった。これでは観客を甘やかしすぎだ。観客も不快の輪に参加してもらうのが狙いの一つだろうに。
しかしこの奥さん、攻撃は激しいが夫の主張を必ず検討して次の発言に乗せてくる。適切に取り入れたかどうかは別にして良心的だ(笑)。私の場合は奥義「お前が全部悪い」百裂拳で吹き飛ばされた記憶しかない(遠い目)。
ラ・マンチャの男
東宝
帝国劇場(東京都)
2019/10/04 (金) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★
行かないはずだったのだが50歳以上割引の案内が来て、予定も空いていたので何かの縁と出かけてみた。チケットが売れていないのかと思ったが少し見回した限りでは空席はなかった。
松本白鸚さんは歌においても劇中と同じお爺さんの声だ。私は普段の声ですっきりと歌って欲しかった。上條恒彦さんは79歳なのだが「出発(たびだち)の歌」の頃よりたくましく元気に見えた。100歳まで活躍できそう。そして元気な老人トリオのもう御一方の石鍋多加史さんはいつもの美声が朗々と響き渡っていた。
過去の「ラ・マンチャの男」を調べていて「松たか子さんも松本紀保さんも昔は出てたのか。ところでお姉さんは今何やっているの?」と思ったら二日前に観た「治天ノ君」の皇后役だったのだった。しっかりしろよ→鳥頭の自分。
全体として、もう一つ物足りない感は否めない。休憩なしの2時間10分。
どん底
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/10/03 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★
登場人物が多く、それぞれが主役級なので、きちんと区別できなければいけないという。幸い Kindle のマンガ「どん底」(横井謙仁画)がamazon prime特典でタダで読めたので、そこはかなりクリアして劇場へ向かった。おおよその登場人物のイメージはマンガと舞台とで変わらない。ただルカはマンガでは優しい禿頭のいかにもな爺さんだが舞台では強面の立川三貴さんでちょっととまどう。
さて舞台を観終わった感想は、ちょっと書きにくいが、マンガは面白かったが、舞台はそうでもなかった。「マンガの表現力」対「演劇の臨場感」という違いがあるので比べてもしょうがないが、端的に言ってそういうことになる。まあ私の感性がマンガ向きだということなのだろう。休み時間を込めて3時間も内容に比して私には長すぎた。
治天ノ君
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/10/03 (木) ~ 2019/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★
明治生まれでおしゃべりな祖母でも大正天皇のことになると言葉に詰まった。戦後しばらく経っていてもである。彼女にとっては成人前のことであるし、昭和天皇の登場でタブーになったのでもあろう。私も子ども心に、言ってはいけない病気で亡くなられたのだと察するだけだった。
この舞台では大正天皇に対比させて昭和天皇を好戦的に描いている。しかし昭和天皇の即位の場面で締めくくったのは、大正天皇の物語としては蛇足に思えた。まあ暗転して拍手をしようとしたらまだ続いたのでちょっとイラッときたということなのだが。
松本紀保さんのナレーションに促されてお話は進行してゆく。皇后がこんなに政治に関わるとは想像できないし、登場時間が長すぎるので、皇后のセリフを減らした方がしっくりきた気がする。もちろん彼女の発声、抑揚、立ち居振る舞いは見事なものであった。
渦が森団地の眠れない子たち
ホリプロ
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/10/04 (金) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★
団地の子供の主導権争いというストーリーに馴染めないままの75分+15分休憩+65分。何かの寓話でもなさそうだ。鈴木亮平さんの妹役の青山美郷さんが切れの良い演技で私の一押し。
こどものおばさん
ふくふくや
駅前劇場(東京都)
2019/09/26 (木) ~ 2019/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★
熊谷真実さん、特別ゲストで出番少な目かと思いきや、しょっぱなから山野海さんとのボイン対決である。いやあ良いものを見させて頂いた。最初だけなのでお父さんたちはここでしっかり目に焼き付けよう。
ストーリーは元AV嬢で今は超熟女パブのホステス春子(山野)と幼馴染の同僚ホステス日向子(熊谷)の中学生時代から現在までの物語。弁護士志望だった春子、お嫁さん志望だった日向子がいかにしてこうなったのかが過去と現在を行き来しながら次第に明らかになる。前作の「ウソのホント」と同じく腹違いの弟の弁護士幸太郎(塚原大助)も子供の頃から登場する。前作との整合性はあるのか?それともパラレル・ワールドの話なのか?こちらの記憶も曖昧なのでどちらでも良いけどね。
小さ目な笑いどころが沢山散りばめられているが、泣き所はない。特にクライマックスもなく、なんとなく終幕に持って行かれる。「ふくふくや」としては平凡だが熊谷さんが可愛かったので星1つ増し。「ふくふくや」ファンと熊谷さんファンにはおすすめ。
舞台「仮面山荘殺人事件」
ナッポス・ユナイテッド
サンシャイン劇場(東京都)
2019/09/28 (土) ~ 2019/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★
余計なサイド・ストーリーのない本格ミステリーである。お涙頂戴の要素もない。それならしっかり細部まで観て推理するのが良いかというとそれは違う。少し考えつつも流れに身を任せ、騙されることを楽しむのが正解ではないだろうか。笑いどころも多いし。
結構有名な俳優さんが出ている。デブの医者役の筒井俊作さんが大いに笑いをとっていた。元乃木坂46の伊藤万理華さんも重要な役をしっかりこなしていた。ちょっと料金は高いかな。
枚数限定のポスター(チラシと同デザイン)が500円。
君恋し
劇団昴
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2019/09/19 (木) ~ 2019/09/26 (木)公演終了
満足度★★★★
「君恋し」という歌は若い人は知らないだろうし、私の世代にはフランク永井が歌った1961年のレコード大賞曲として記憶されている。ゆったりとしたテンポと低音の魅力が懐かしい。しかしこれはリバイバルであって1929年にオリジナルを歌ったのが本作の主人公である二村定一(ふたむらていいち)であった。そちらはアップテンポの軽い曲調になっている。
歌手として華々しいスタートを切った二村が、徐々にエノケンや藤山一郎に追い抜かれ、酒におぼれて48歳で亡くなってしまう、その最晩年(1948年)ごろの数日の(架空の)お話である。
実に演劇らしい演劇である。とくに素晴らしいというところはないが安心して楽しめる。若い役者さんの”あともう一つ”感もパッとしない劇団という設定に合っている気がする。
特徴的なのは歌手が主人公であるので歌と楽器が大きくフィーチャーされていることである。とくにアコーディオンが音楽全般を取り仕切っていた。ギターは音が小さいし、バイオリンは伴奏には向かない。こういう舞台はソロも伴奏もできてハンディーなアコーディオンの独壇場だ。奏者の橘田美穂さん、役者ではないので空襲のときに言葉を失ったという設定になっていたが存在感は役者以上であった。
蛇足追記:
当日パンフレットには作者中島淳彦氏へのインタビューがあって小学生の頃「クイズグランプリ」のパロディーで「クイズ知らんぷり」という番組を考案して、台本を書いて遊んでいたという。これは「1・2のアッホ!!」の「クイズ・シランプリ」より前ということになる。おそるべし。
*このクイズはあまりにも簡単な質問で答えは明らかなのだが、バカだアホだと罵倒されても決して答えてはいけないというもの。
いやあ変なものを思い出してしまった。
更に追記:
当日パンフレットは厚手の紙でA4で2色刷り8頁相当と大奮発である(パチパチパチ)。これにA4の作者インタービュー1枚が付いている。
昔々ルーツ
晩餐ヒロックス
ザ・ポケット(東京都)
2019/09/19 (木) ~ 2019/09/23 (月)公演終了
誰そ彼
浮世企画
駅前劇場(東京都)
2019/09/19 (木) ~ 2019/09/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
私の守備範囲では「蓬莱竜太+水木しげる」という感じだろうか。作者の上手さには脱帽だ。こういうものは始めたのは良いけれど終わり方に苦労するように思える。今作では中々の大技で締めくくっている。
役者さんも皆さん達者だ。とくに気弱そうな兄の短時間だけ出てくる高校生(?)時代のチンピラらしい物腰にはなるほどと納得させられた。そして鬼婆の怪しいオーラは男子(とくに私)の周りの時空を歪めていた。
ミュージカル ペテン師と詐欺師
松竹/フジテレビジョン
新橋演舞場(東京都)
2019/09/01 (日) ~ 2019/09/26 (木)公演終了
満足度★★★★★
石丸幹二さんと保坂知寿さんが出演することで4つ星は堅い。そして今回も期待通りの歌と芝居を見せてくれた。そしてそこに最近大活躍中の山田孝之さん、芝居はもちろん歌も一級だ。さらには宮澤エマさん、前にも書いたがエマさんはこういう実力主役に続く準主役になると俄然元気溌剌となってダイナミックな歌と芝居が光り輝くのである。そして今回の私の一押しは岸祐二さんである。品の良い佇まいに魅惑のバリトンボイス、存分に堪能させていただいた。
歌で特筆すべきは男女のデュエットの一体感である。歌の終わりでテンポを緩めたときにタイミングも音程もピタッと合ってハモることはそんなにないのだがこの舞台ではすべて決まっていた。
お話は特別なもののない予想の範囲内の騙し騙されものであり、軽い笑いがどんどん続いて飽きさせない。これが福田節なのだろうか。前半は少し散漫でちょっと心配になるが、後半はテンポの良い展開で何も考えずに流れに身を任せていると「ああこういうものも良いなあ」と幸せな気持ちになることができた。85分+30分休憩+75分くらい。
アンサンブルの男女7人づつのダンサーさんが素晴らしい。そしてオープニングの踊りの背景に20人規模のブラスの楽団が見えると一気に気分がヒートアップする。演舞場の舞台は奥行きが深いのだろうか生バンドが直接に見えるのは非常に嬉しいことだと分かった。ただし、芝居中はほとんど幕が降りていて見えない。
悪魔を汚せ
鵺的(ぬえてき)
サンモールスタジオ(東京都)
2019/09/05 (木) ~ 2019/09/18 (水)公演終了
満足度★★★★
人間の悪意を集め濃縮して作った核兵器とでもいう作品だ。ここに観客の悪意が加わって臨界量に達する。まあしかし悪意も純化すると観劇後はむしろ爽やかな気分になる。諸手を挙げて推薦するという作品ではないし、第一チケットは完売なのだが、こういう作品もコンスタントに上演されて欲しいものである。
死と乙女
シス・カンパニー
シアタートラム(東京都)
2019/09/13 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★
チリの作家アリエル・ドーフマンによる1991年の戯曲。1990年のピノチェト政権退陣後の民主化の時代を想定しているが独裁政権糾弾劇の色合いは薄い。
ポリーヌを演じる宮沢りえさん、高ぶった精神が細かくピリピリと震えている状態をずっとキープしていた。彼女が断定すればするほど夫(と観客)は当惑の度合いを深める。そうさせてしまう挙動の繊細な表現なのだ。
なお、シューベルトの「死と乙女」を聴き、その物語も予習して行ったが関係性を見出すことはできなかった。単なる小道具と言うと叱られるのか。
おへその不在
マチルダアパルトマン
OFF OFFシアター(東京都)
2019/09/04 (水) ~ 2019/09/16 (月)公演終了
満足度★★★
てつさんと全く同意見。
以上
以下蛇足
「おへそ」に込めた作者の思いも結局分からなかった。
宍泥美さん、「バイビー…」では松本みゆきさんのボケの怪演に押され気味だったが(まあそういう話なのだからしょうがない)、この公演では女王様的な演技のうまさが輝いていた。
私は「マチルダアパルトマン」という名前を忘れていたがチラシのイラストのタッチは覚えていた。これをもっと利用しなくっちゃ。ポスターにする、ノートの表紙にする、Tシャツにでかでかと描く、とか何でもやって売りまくろう。
*しかし最近はポスターを売る公演が全然ない。儲からないのだろうか。
それに物販は最初からやりましょう。私は始まる前はTシャツを買おうと思っていたのだけれど、終わったときは疲れて買う気がなくなっていたのだった。年寄りはそんなもの。もっとジジババから巻き上げよう(笑)
真田十勇伝ー令和元年ー
劇団SHOW特急
あうるすぽっと(東京都)
2019/09/04 (水) ~ 2019/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★
NHK大河ドラマの『真田丸』とはまったく違う真田幸村と真田十勇士のファンタジーである。私の子供の頃、猿飛佐助や霧隠才蔵は頻繁に耳にするヒーローであった。彼らとは半世紀ぶりの再会だ。
時代は秀吉没後の関ヶ原前の頃から始まる。真田家では父昌幸と幸村(当時は信繁)が豊臣方へ、兄信幸(後に信之)が徳川方へと分かれ、幸村の下では十勇士に由利鎌之助が加わって完成する。十勇士の他に服部半蔵や出雲阿国も登場する。
出演者の皆さんは私の知らない方々ばかりだがどなたもしっかりした顔付きと演技で安心して観ていられる。何か突出したものがあるわけではないがテンポの良い進行で結構楽しむことができた。
阿国にちなんで二度入る踊りは私の好みではないが良い気分転換となっている。この踊子に加えて合戦などでの切られ役が沢山いるのでカーテンコールではすごい人数で舞台が一杯になっていた。そういう点では非常に贅沢な作りになっている。
*指定席と自由席があって案内が徹底していないせいか、間違って指定席に座って後から交代となった方がかなりいらした。これは始まる前から気分が悪いだろう。運営はちゃんと仕事しなくっちゃ。
日の浦姫物語
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2019/09/06 (金) ~ 2019/09/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
家に帰ってさあ感想を書くぞと思ったら既に先人が。お二人とも何かを語らずにはいられなかったのだな。わかるわかる。
私はベテランお三方(たかお鷹、毬谷友子、辻萬長(かずなが))の芝居のうまさに口をあんぐりであった。オープニングは辻さんのミュージカルかオペラのような朗々とした語り、その要所要所に粒の揃った音を正確なタイミングで弾き出す毬谷さんの三味線と語り。三味線がない時もメロディーが聞こえ、リズムを感じる。もうこれは音楽劇だ。
お話は悲劇であり喜劇である。私は舞台の流れるままにちょっと泣き、大いに笑った。絶対のお勧め。65分+15分休憩+100分。
初日に続いて千秋楽も観劇
今回は朝海ひかるさんのセリフ回しのうまさに感心させられた。しかし彼女、元宝塚という感じが薄くて私には親しみやすい。
それと一度目には気に止まらなかった岩の間の聖人を迎えに行くところはくだらないセリフの応酬がなんともツボにはまったし、その後の音楽、とくにブルースハープの音色にやられてしまった。
愛と哀しみのシャーロック・ホームズ
ホリプロ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2019/09/01 (日) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
若きシャーロックホームズとワトソンのほんわか探偵譚。
60分+15分休憩+60分
配役は
柿澤勇人:ホームズ
佐藤二朗:ワトソン
広瀬アリス:ヴィオレット
八木亜希子:ワトソン夫人
横田栄司:ホームズの兄
はいだしょうこ:ハドソン夫人
迫田孝也:レストレイド警部
この7人ならただ雑談していても満足度は星4つになるだろう。佐藤さんのとぼけた味、横田さんの重厚さはもちろん良いが、私の第一のお勧めは広瀬アリスさんである。明るくはちきれた演技がまぶしい。昨日まではノーマークだったが、すっかりファンになってしまった。
くどくてくさい三谷幸喜さんのオリジナル作品である。私はTVや映画では彼の作品はやや苦手なのだが、舞台は基本的にくどくてくさい所なので、ぴったり合って気にならない。
第一幕はヴィオレットが男に追いかけられていると言って飛び込んでくる。ワトソン夫人とホームズの兄というレアな人物も登場して賑やかである。
第二幕は…と説明するのも野暮なので止めておく。
しつこい推理の他にしつこいクイズもあったり、三谷流サービス精神の溢れた舞台である。
上にいきたくないデパート
メディアミックス・ジャパン
三越劇場(東京都)
2019/08/21 (水) ~ 2019/08/29 (木)公演終了
満足度★★★
説明にあった
「平穏な日々を望んでいた主人公はなんとか自身の昇進を阻止しようと奮闘するが」
というのに惹かれて観に行ったけれど、このテーマの追及が足りないし、色々散らかした話を回収しないうちに強引にフィナーレになってしまった。今野浩喜さんの独特のおかしみは健在だし、矢島舞美さんの美しさも楽しめる。モロ師岡さんも味がある。なのにこの意味不明な台本は何なのでしょう?
Calmera というバンドの生演奏はうまいし迫力があって良いのだけど、演劇を観に行った私にはちょっと長いし回数も多い。確かにジャズではあるのだがアレンジ過多で私の好むジャズではない。まあ私は彼らのターゲットには入っていないだろうけれど。
有能な俳優さんを集め、実力派バンドとコラボしながら、1+1 が 2 どころか 0.8 くらいにしかならないというプロデュースの失敗例であると感じた。
ブラッケン・ムーア ~荒地の亡霊~
東宝
シアタークリエ(東京都)
2019/08/14 (水) ~ 2019/08/27 (火)公演終了
満足度★★★★
表題と説明から受ける印象はミステリーかオカルトですが全然そうではありません。確かにミステリー的な要素もあるのですが謎解きに期待すると脱力します。ああそうなのと軽く受け流しましょう。サスペンス仕立ての社会派ホームドラマというのが近いと思います。
社会と家庭の二つの領域でハロルド(益岡徹)とテレンス(岡田将生)が対決するのですがテレンスはどちらも代理戦争という立場です。本来は地味な話なので家庭の方をおどろおどろしく仕立てて商業演劇として成立させています。
岡田さんと益岡さんはもちろん良いのですが、私の一押しは木村多江さんです。木村さんっていつもはジメジメしたイメージがありますが、この舞台では最愛の息子を亡くしてから10年もひきこもっていた母親という本来ジメジメした役柄を、逆にカラッとかつ積極的な女性として演じていて新鮮でした。
私にはあまり興味のあるテーマではありませんでしたが、脇役の俳優さんの手堅さや重厚なセットなどでも楽しむことができました。
ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」
TBS
IHIステージアラウンド東京(東京都)
2019/08/19 (月) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
10月上旬のチケットは確保してあるが、モーニングショーで見たマリア役のソニア・バルサラさんの歌声にガツンとやられて急遽プレビュー公演へ。
いやあ参った。星10個。絶対のお勧め。
90分+20分休憩+50分と、この劇場での演目としては短い。
あらすじ:「ロミオとジュリエット」を現代のニューヨークの下町に移したもの。キャプレット家とモンタギユー家を二つのチンピラグループ、ジェッツとシャークスに置き換えている。ポーランド系のジェッツの初代リーダーがトニーで現在のリーダーはリフ。プエルトリコ系のシャークスはベルナルドがリーダー。ベルナルドの妹のマリアは洋品店に勤めている。ダンスパーティーで出会ったトニーとマリアは一目ぼれするがベルナルドは激怒。そして二つのグループはとうとう決闘を行うことに。止めようとして巻き込まれたトニーとマリアを悲劇が襲う…。
英語公演で日本語字幕が左右、時々上に出るが10列目より前だと舞台と一緒には視界に入らないと思う。お話は、あの仮死の薬が出てこない分だけ「ロミオとジュリエット」よりも単純だ。字幕なしでも観ていれば分かるだろう。1961年の映画を観ておけば完璧。無名の方々で顔力も弱いがトニーとマリア、そしてベルナルドが分かれば十分だ。
私の好みは前半に集中している。一番のお勧めはダンスパーティのシーン。少人数から大人数、緩急取り混ぜて色々と楽しめる。次はマリアとトニーがアパートの外階段で会うシーン。客席も一緒に上昇して行く(感じがする)と周りは一面の星空。歌は「トゥナイト」である。まるで「ラ・ラ・ランド」の天文台のシーンのようだ。映画なら合成で簡単にできるが、それを劇場でやってしまうのはまるでマジック(あ、もちろんあんなに派手ではありません。期待しすぎないように)。
皆さんオーディションで選ばれた無名の方だが歌も踊りも呆れるほどうまい。特に歌は誤魔化しのない正統的なもので何とも気分がスカッとする。日本の男性歌手に感じるこねくり回したモヤモヤがない。あの人も、かの人ももっとストレートに歌ってくださいよ。
パンフレットはA4版50ページ、2,000円。赤表紙と黒表紙がある。キャスト紹介が後ろに追いやられて、トニーもマリアも特別扱いなしで1ページに6人ずつが詰め込まれている。チケットはまだまだ残っているようだ。360度回転舞台(客席)を未体験の方はこの機会にどうぞ。