latticeの観てきた!クチコミ一覧

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~崩壊シリーズ~「派」

~崩壊シリーズ~「派」

エイベックス・エンタテインメント / シーエイティプロデュース

俳優座劇場(東京都)

2019/10/18 (金) ~ 2019/11/04 (月)公演終了

CoRichの「説明」を読んでシリアスなものを想像していたら、真逆のドタバタ喜劇だった。チラシを見たら大きくそう書いてあるではないか。しっかりしろよ→自分。

気を取り直して、元を取ろうと観始めたが、音響係が音飛びを叩いて直すという昭和のギャグに気を失い、目が覚めたら終わっていた。満足度は判定不能。

会議

会議

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2019/10/25 (金) ~ 2019/10/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

別役実偉い!星5つ!戯曲が素晴らしいので誰が演じても面白いのかもしれないが、研修生の出しゃばらない演技はこの奇妙な味わいをストレートに伝えてくれる。演技を合わせても星5つ以外にありえない。十分楽しませてもらった。

昨今は「民主主義ってこの先も機能するの?」というのが世界的な心配事になっている。もっとも、その基本である会議(とか選挙とか)がそもそも機能するのかというのは昔から誰もが持つ疑問であったから当然の成り行きではある。会議劇では会議をマウンティング合戦として描く。最近なら「ナイゲン」が代表的だ。「ナイゲン」は会話のプロレスに徹しているが、70年代に書かれた本作は社会的な(ただし本作は政治的ではない)メッセージを提示せずにはいられない。フフとかムフとかウーンとかウームとかつぶやきながら少し笑って少し考え、最後は無言となる、そういう演劇を観たい人には超お勧めである。

ネタバレBOX

最初に白衣の男が言った実験の会議は失敗したが、実は包帯の男も仕掛け人で最後に始まる会議が計画通りのものなのではないかとも思えてきた。そうすると、殺すところは見せかけということになって、運んでいく男たちに分からないというのは無理があるんじゃないか。では彼らも共犯かなどと考えていると収拾がつかなくなる。ううむ。

追記:要するに、どこまでを(劇中の)事実と捉えて良いか分からなくなったのだ。その原因の一つに白衣の男の腹に、刺される前から血糊がそれとわかるくらいに沁み出ていたことがある。それが役者のミスなのか、血が出ても現実ではないよとあらかじめ断っているのかが判断できなかった。原作ではどうなっているのか確かめようと思ったがamazonにも売っていないし、過去の公演ではナイフでなくピストルだったと知って図書館にすぐに行く気も薄れてしまった。
ラヴズ・レイバーズ・ロスト ―恋の骨折り損―

ラヴズ・レイバーズ・ロスト ―恋の骨折り損―

東宝

シアタークリエ(東京都)

2019/10/01 (火) ~ 2019/10/25 (金)公演終了

満足度★★★

会場は若い人が主体だがお年寄りも多い、男性も2~3割はいるようだ。俳優さんはいろいろなジャンル(TV、映画、声優、ミュージカル、元宝塚、アイドル)の若い方が多いのでファンが来ているのだろう。飛び交う会話を聞いていると3回、4回のリピーターが若い人に沢山いるようで驚く。年配の方はシェークスピアだからということなのか。

皆さん歌はまあまあ上手いのだが好き勝手に歌うので調子がバラバラで聴いていて疲れてしまった。それ以外は良く出来たステージだと思うが、特に惹かれる所もなくいつの間にか終わっていた。

何も残らなかったので、観劇後に松岡和子「深読みシェイクスピア」を開いてみた。そこで紹介されている9編は「ハムレット」を初めとするいずれも人気作であるのだが、何故かそこに不人気作と言われる「恋の骨折り損」が紛れ込んでいるのである。この本の内容で私が興味を持った部分をまとめると以下のようになる。

このナヴァール国というのは現在のフランスとスペインの国境付近に当時実在した王国でその王がフランス王になったのがアンリ4世(在位1589-1610)である(彼が出したナントの勅令(1598)はカトリックとプロテスタントの戦いに一応の終止符を打ったことで有名)。アカデミーを作ったのも事実。フランス王女マルグリッドと結婚もしている。その後離婚してからマルグリッドが持参金の精算に王のところを訪問したことが冒頭の話の原型らしい。4人の男が無意味な厳しい誓約をするのは王が宗旨替えを繰り返したことへの含みがあるのかもしれない。当時流行ったクリストファー・マーロウの戯曲「パリの大虐殺」にはナヴァール王とその敵デュメイン公爵が出てくる。他の側近も実在の敵味方の人物の名前を借用している。ちなみに奇妙なスペイン人アーマードとは無敵艦隊(アルマダ)を揶揄するもの(アルマダの海戦でイングランド軍が勝利したのは1588年)。1595年頃に書かれた「恋の骨折り損」もカトリックとプロテスタントの争いの時代の話なのであるがそういう話は一切出てこない。

ヒット演劇に便乗して当時の有名人をからかったのだろうか。何百年も後から観るとなんじゃこりゃになるのは自然なことだと納得することにした。

不機嫌な女神たちプラス1

不機嫌な女神たちプラス1

エイベックス・エンタテインメント

紀伊國屋ホール(東京都)

2019/10/19 (土) ~ 2019/10/27 (日)公演終了

満足度★★★★

CoRichの常連の方々はこういうのは行かないだろうなあ。私も私が勝手に決めた「死ぬ前に生のお姿を拝見したい女優さん100人」の中の和久井映見さん、羽田美智子さんが出演されているがためにポチってしまったのだ。

アラフィフの女性3人と男性1名の恋愛などを巡るドタバタ喜劇である。男女4人の人間関係劇という点では前日観た「終夜」と同じである。もちろん比べるようなものでは全くないが何かの縁と無理に振り返ってみると、一方はストレスが張りつめたまま終わり、一方は一時的な軽いストレスが予定調和的に解消されて終わる。演技も一方はいつもとは違う大きな負荷がかかるものであるが、一方はいつもの持ち味をそのまま発揮するものである。もちろんどちらもプロのお仕事であった。

和久井さんも羽田さんも私にはアラサーにしか見えなかった。そういう点では満足度大。

終夜

終夜

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2019/09/29 (日) ~ 2019/10/27 (日)公演終了

満足度★★★

ベテランの皆さんの真似をして観劇に。こういうのを面白いと感じるようになれば私も演劇鑑賞人として成長したということになるのだろうが道遠しである。役者の皆さんの素晴らしさは理解できるが他の見どころが分からない。

この長さで途中休憩が2回も入るので意外と苦痛は感じなかった。休憩の時に、さて作者は次はどういう嫌がらせを仕掛けて来るのかと期待するような余裕もあった。これでは観客を甘やかしすぎだ。観客も不快の輪に参加してもらうのが狙いの一つだろうに。

しかしこの奥さん、攻撃は激しいが夫の主張を必ず検討して次の発言に乗せてくる。適切に取り入れたかどうかは別にして良心的だ(笑)。私の場合は奥義「お前が全部悪い」百裂拳で吹き飛ばされた記憶しかない(遠い目)。

ラ・マンチャの男

ラ・マンチャの男

東宝

帝国劇場(東京都)

2019/10/04 (金) ~ 2019/10/27 (日)公演終了

満足度★★★★

行かないはずだったのだが50歳以上割引の案内が来て、予定も空いていたので何かの縁と出かけてみた。チケットが売れていないのかと思ったが少し見回した限りでは空席はなかった。

松本白鸚さんは歌においても劇中と同じお爺さんの声だ。私は普段の声ですっきりと歌って欲しかった。上條恒彦さんは79歳なのだが「出発(たびだち)の歌」の頃よりたくましく元気に見えた。100歳まで活躍できそう。そして元気な老人トリオのもう御一方の石鍋多加史さんはいつもの美声が朗々と響き渡っていた。

過去の「ラ・マンチャの男」を調べていて「松たか子さんも松本紀保さんも昔は出てたのか。ところでお姉さんは今何やっているの?」と思ったら二日前に観た「治天ノ君」の皇后役だったのだった。しっかりしろよ→鳥頭の自分。

全体として、もう一つ物足りない感は否めない。休憩なしの2時間10分。

ネタバレBOX

期待した大きな風車の登場もなく、前半は退屈な展開。しかし後半の戦いのシーンに惹きつけられ、そのまま向こうの世界に連れていかれた。この戦いはコミカルながらゆったりとした不思議な所作で古典芸能に詳しい人なら背景が分かるのだろう。その後は、狂気とは、人生とは、などいろいろな教訓が一々身につまされた。そして大詰めは「鏡の騎士」との戦いである。小説ではドン・キホーテは鏡の騎士に勝ち、銀月の騎士に負けるのだが、このミュージカルでは鏡の騎士だけが登場する。大きめの盾のような5枚の鏡に囲まれ、ドン・キホーテは現実の自分の姿を見せつけられ精気を失い倒れてしまう。
どん底

どん底

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2019/10/03 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了

満足度★★★

登場人物が多く、それぞれが主役級なので、きちんと区別できなければいけないという。幸い Kindle のマンガ「どん底」(横井謙仁画)がamazon prime特典でタダで読めたので、そこはかなりクリアして劇場へ向かった。おおよその登場人物のイメージはマンガと舞台とで変わらない。ただルカはマンガでは優しい禿頭のいかにもな爺さんだが舞台では強面の立川三貴さんでちょっととまどう。

さて舞台を観終わった感想は、ちょっと書きにくいが、マンガは面白かったが、舞台はそうでもなかった。「マンガの表現力」対「演劇の臨場感」という違いがあるので比べてもしょうがないが、端的に言ってそういうことになる。まあ私の感性がマンガ向きだということなのだろう。休み時間を込めて3時間も内容に比して私には長すぎた。

ネタバレBOX

時代は現代、場所は高架橋のコンクリートの橋桁の下の金網フェンスに囲まれたところである。これは上からの圧迫感と横からの閉そく感を表しているのだろう。そして、久しぶりに集まった劇団員が「どん底」を演じるという設定になっている。その結果として登場人物とそれを演じる劇団員その人とがかなり混じり合う。それは現在にも共通する話なのだと言いたいのだろう。思わず笑ってしまうメタな場面もあったが、全体として意義深い試みかどうか、私には判断ができなかった。
治天ノ君

治天ノ君

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/10/03 (木) ~ 2019/10/14 (月)公演終了

満足度★★★★

明治生まれでおしゃべりな祖母でも大正天皇のことになると言葉に詰まった。戦後しばらく経っていてもである。彼女にとっては成人前のことであるし、昭和天皇の登場でタブーになったのでもあろう。私も子ども心に、言ってはいけない病気で亡くなられたのだと察するだけだった。

この舞台では大正天皇に対比させて昭和天皇を好戦的に描いている。しかし昭和天皇の即位の場面で締めくくったのは、大正天皇の物語としては蛇足に思えた。まあ暗転して拍手をしようとしたらまだ続いたのでちょっとイラッときたということなのだが。

松本紀保さんのナレーションに促されてお話は進行してゆく。皇后がこんなに政治に関わるとは想像できないし、登場時間が長すぎるので、皇后のセリフを減らした方がしっくりきた気がする。もちろん彼女の発声、抑揚、立ち居振る舞いは見事なものであった。

渦が森団地の眠れない子たち

渦が森団地の眠れない子たち

ホリプロ

新国立劇場 中劇場(東京都)

2019/10/04 (金) ~ 2019/10/20 (日)公演終了

満足度★★★

団地の子供の主導権争いというストーリーに馴染めないままの75分+15分休憩+65分。何かの寓話でもなさそうだ。鈴木亮平さんの妹役の青山美郷さんが切れの良い演技で私の一押し。

こどものおばさん

こどものおばさん

ふくふくや

駅前劇場(東京都)

2019/09/26 (木) ~ 2019/10/06 (日)公演終了

満足度★★★★

熊谷真実さん、特別ゲストで出番少な目かと思いきや、しょっぱなから山野海さんとのボイン対決である。いやあ良いものを見させて頂いた。最初だけなのでお父さんたちはここでしっかり目に焼き付けよう。

ストーリーは元AV嬢で今は超熟女パブのホステス春子(山野)と幼馴染の同僚ホステス日向子(熊谷)の中学生時代から現在までの物語。弁護士志望だった春子、お嫁さん志望だった日向子がいかにしてこうなったのかが過去と現在を行き来しながら次第に明らかになる。前作の「ウソのホント」と同じく腹違いの弟の弁護士幸太郎(塚原大助)も子供の頃から登場する。前作との整合性はあるのか?それともパラレル・ワールドの話なのか?こちらの記憶も曖昧なのでどちらでも良いけどね。

小さ目な笑いどころが沢山散りばめられているが、泣き所はない。特にクライマックスもなく、なんとなく終幕に持って行かれる。「ふくふくや」としては平凡だが熊谷さんが可愛かったので星1つ増し。「ふくふくや」ファンと熊谷さんファンにはおすすめ。

舞台「仮面山荘殺人事件」

舞台「仮面山荘殺人事件」

ナッポス・ユナイテッド

サンシャイン劇場(東京都)

2019/09/28 (土) ~ 2019/10/06 (日)公演終了

満足度★★★★

余計なサイド・ストーリーのない本格ミステリーである。お涙頂戴の要素もない。それならしっかり細部まで観て推理するのが良いかというとそれは違う。少し考えつつも流れに身を任せ、騙されることを楽しむのが正解ではないだろうか。笑いどころも多いし。

結構有名な俳優さんが出ている。デブの医者役の筒井俊作さんが大いに笑いをとっていた。元乃木坂46の伊藤万理華さんも重要な役をしっかりこなしていた。ちょっと料金は高いかな。

枚数限定のポスター(チラシと同デザイン)が500円。

君恋し

君恋し

劇団昴

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2019/09/19 (木) ~ 2019/09/26 (木)公演終了

満足度★★★★

「君恋し」という歌は若い人は知らないだろうし、私の世代にはフランク永井が歌った1961年のレコード大賞曲として記憶されている。ゆったりとしたテンポと低音の魅力が懐かしい。しかしこれはリバイバルであって1929年にオリジナルを歌ったのが本作の主人公である二村定一(ふたむらていいち)であった。そちらはアップテンポの軽い曲調になっている。

歌手として華々しいスタートを切った二村が、徐々にエノケンや藤山一郎に追い抜かれ、酒におぼれて48歳で亡くなってしまう、その最晩年(1948年)ごろの数日の(架空の)お話である。

実に演劇らしい演劇である。とくに素晴らしいというところはないが安心して楽しめる。若い役者さんの”あともう一つ”感もパッとしない劇団という設定に合っている気がする。

特徴的なのは歌手が主人公であるので歌と楽器が大きくフィーチャーされていることである。とくにアコーディオンが音楽全般を取り仕切っていた。ギターは音が小さいし、バイオリンは伴奏には向かない。こういう舞台はソロも伴奏もできてハンディーなアコーディオンの独壇場だ。奏者の橘田美穂さん、役者ではないので空襲のときに言葉を失ったという設定になっていたが存在感は役者以上であった。

蛇足追記:
当日パンフレットには作者中島淳彦氏へのインタビューがあって小学生の頃「クイズグランプリ」のパロディーで「クイズ知らんぷり」という番組を考案して、台本を書いて遊んでいたという。これは「1・2のアッホ!!」の「クイズ・シランプリ」より前ということになる。おそるべし。
*このクイズはあまりにも簡単な質問で答えは明らかなのだが、バカだアホだと罵倒されても決して答えてはいけないというもの。
いやあ変なものを思い出してしまった。
更に追記:
当日パンフレットは厚手の紙でA4で2色刷り8頁相当と大奮発である(パチパチパチ)。これにA4の作者インタービュー1枚が付いている。

ネタバレBOX

二村のいろいろなエピソードが出てくる。それは本当のことのようだが、若いころの井上ひさし(もどき)と渥美清が出てくることには疑問を感じた。とくに井上はまだ中学生なのでこういう出会いがあったはずがない。こんな怪しげな話に逃げてはいかんでしょう。
昔々ルーツ

昔々ルーツ

晩餐ヒロックス

ザ・ポケット(東京都)

2019/09/19 (木) ~ 2019/09/23 (月)公演終了

満足度★★

バックの音楽は実に的確でプロの仕事だった。
以下略。

誰そ彼

誰そ彼

浮世企画

駅前劇場(東京都)

2019/09/19 (木) ~ 2019/09/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

私の守備範囲では「蓬莱竜太+水木しげる」という感じだろうか。作者の上手さには脱帽だ。こういうものは始めたのは良いけれど終わり方に苦労するように思える。今作では中々の大技で締めくくっている。

役者さんも皆さん達者だ。とくに気弱そうな兄の短時間だけ出てくる高校生(?)時代のチンピラらしい物腰にはなるほどと納得させられた。そして鬼婆の怪しいオーラは男子(とくに私)の周りの時空を歪めていた。

ネタバレBOX

オーギソヨソヨが結界を簡単に破って入ってきたことをもっと噛みしめるべきだった。悔しい。まあそんなに先を予想しながら観る必要もないんだけれどもね(笑)
ミュージカル ペテン師と詐欺師

ミュージカル ペテン師と詐欺師

松竹/フジテレビジョン

新橋演舞場(東京都)

2019/09/01 (日) ~ 2019/09/26 (木)公演終了

満足度★★★★★

石丸幹二さんと保坂知寿さんが出演することで4つ星は堅い。そして今回も期待通りの歌と芝居を見せてくれた。そしてそこに最近大活躍中の山田孝之さん、芝居はもちろん歌も一級だ。さらには宮澤エマさん、前にも書いたがエマさんはこういう実力主役に続く準主役になると俄然元気溌剌となってダイナミックな歌と芝居が光り輝くのである。そして今回の私の一押しは岸祐二さんである。品の良い佇まいに魅惑のバリトンボイス、存分に堪能させていただいた。

歌で特筆すべきは男女のデュエットの一体感である。歌の終わりでテンポを緩めたときにタイミングも音程もピタッと合ってハモることはそんなにないのだがこの舞台ではすべて決まっていた。

お話は特別なもののない予想の範囲内の騙し騙されものであり、軽い笑いがどんどん続いて飽きさせない。これが福田節なのだろうか。前半は少し散漫でちょっと心配になるが、後半はテンポの良い展開で何も考えずに流れに身を任せていると「ああこういうものも良いなあ」と幸せな気持ちになることができた。85分+30分休憩+75分くらい。

アンサンブルの男女7人づつのダンサーさんが素晴らしい。そしてオープニングの踊りの背景に20人規模のブラスの楽団が見えると一気に気分がヒートアップする。演舞場の舞台は奥行きが深いのだろうか生バンドが直接に見えるのは非常に嬉しいことだと分かった。ただし、芝居中はほとんど幕が降りていて見えない。

悪魔を汚せ

悪魔を汚せ

鵺的(ぬえてき)

サンモールスタジオ(東京都)

2019/09/05 (木) ~ 2019/09/18 (水)公演終了

満足度★★★★

人間の悪意を集め濃縮して作った核兵器とでもいう作品だ。ここに観客の悪意が加わって臨界量に達する。まあしかし悪意も純化すると観劇後はむしろ爽やかな気分になる。諸手を挙げて推薦するという作品ではないし、第一チケットは完売なのだが、こういう作品もコンスタントに上演されて欲しいものである。

ネタバレBOX

終盤で佐季が一季と笙子の相談を聞いて何かを思いつくシーンがある。何だろうと引っかかりながら想像が及ばなかったのが悔しい。
死と乙女

死と乙女

シス・カンパニー

シアタートラム(東京都)

2019/09/13 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了

満足度★★★★

チリの作家アリエル・ドーフマンによる1991年の戯曲。1990年のピノチェト政権退陣後の民主化の時代を想定しているが独裁政権糾弾劇の色合いは薄い。

ポリーヌを演じる宮沢りえさん、高ぶった精神が細かくピリピリと震えている状態をずっとキープしていた。彼女が断定すればするほど夫(と観客)は当惑の度合いを深める。そうさせてしまう挙動の繊細な表現なのだ。

なお、シューベルトの「死と乙女」を聴き、その物語も予習して行ったが関係性を見出すことはできなかった。単なる小道具と言うと叱られるのか。

ネタバレBOX

サスペンス劇のカタルシスを期待していると肩透かしをくらってしまう。終盤のストーリーは観客がいろいろと想像を膨らませる余地を残している。それはうまいのか深いのか手抜きなのか。好みの問題で言えば私は嫌いだ。何かもやもやしたものを残すことが作者と演出家の狙いなのだろう。彼らの注文に乗らないで3人の名優によって作られる緊迫した空気を楽しむことに徹する方が幸せになれると思う。
おへその不在

おへその不在

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2019/09/04 (水) ~ 2019/09/16 (月)公演終了

満足度★★★

てつさんと全く同意見。
以上

以下蛇足
「おへそ」に込めた作者の思いも結局分からなかった。

宍泥美さん、「バイビー…」では松本みゆきさんのボケの怪演に押され気味だったが(まあそういう話なのだからしょうがない)、この公演では女王様的な演技のうまさが輝いていた。

私は「マチルダアパルトマン」という名前を忘れていたがチラシのイラストのタッチは覚えていた。これをもっと利用しなくっちゃ。ポスターにする、ノートの表紙にする、Tシャツにでかでかと描く、とか何でもやって売りまくろう。
*しかし最近はポスターを売る公演が全然ない。儲からないのだろうか。

それに物販は最初からやりましょう。私は始まる前はTシャツを買おうと思っていたのだけれど、終わったときは疲れて買う気がなくなっていたのだった。年寄りはそんなもの。もっとジジババから巻き上げよう(笑)

真田十勇伝ー令和元年ー

真田十勇伝ー令和元年ー

劇団SHOW特急

あうるすぽっと(東京都)

2019/09/04 (水) ~ 2019/09/08 (日)公演終了

満足度★★★★

NHK大河ドラマの『真田丸』とはまったく違う真田幸村と真田十勇士のファンタジーである。私の子供の頃、猿飛佐助や霧隠才蔵は頻繁に耳にするヒーローであった。彼らとは半世紀ぶりの再会だ。

時代は秀吉没後の関ヶ原前の頃から始まる。真田家では父昌幸と幸村(当時は信繁)が豊臣方へ、兄信幸(後に信之)が徳川方へと分かれ、幸村の下では十勇士に由利鎌之助が加わって完成する。十勇士の他に服部半蔵や出雲阿国も登場する。

出演者の皆さんは私の知らない方々ばかりだがどなたもしっかりした顔付きと演技で安心して観ていられる。何か突出したものがあるわけではないがテンポの良い進行で結構楽しむことができた。

阿国にちなんで二度入る踊りは私の好みではないが良い気分転換となっている。この踊子に加えて合戦などでの切られ役が沢山いるのでカーテンコールではすごい人数で舞台が一杯になっていた。そういう点では非常に贅沢な作りになっている。

*指定席と自由席があって案内が徹底していないせいか、間違って指定席に座って後から交代となった方がかなりいらした。これは始まる前から気分が悪いだろう。運営はちゃんと仕事しなくっちゃ。

日の浦姫物語

日の浦姫物語

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2019/09/06 (金) ~ 2019/09/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

家に帰ってさあ感想を書くぞと思ったら既に先人が。お二人とも何かを語らずにはいられなかったのだな。わかるわかる。

私はベテランお三方(たかお鷹、毬谷友子、辻萬長(かずなが))の芝居のうまさに口をあんぐりであった。オープニングは辻さんのミュージカルかオペラのような朗々とした語り、その要所要所に粒の揃った音を正確なタイミングで弾き出す毬谷さんの三味線と語り。三味線がない時もメロディーが聞こえ、リズムを感じる。もうこれは音楽劇だ。

お話は悲劇であり喜劇である。私は舞台の流れるままにちょっと泣き、大いに笑った。絶対のお勧め。65分+15分休憩+100分。

初日に続いて千秋楽も観劇
今回は朝海ひかるさんのセリフ回しのうまさに感心させられた。しかし彼女、元宝塚という感じが薄くて私には親しみやすい。
それと一度目には気に止まらなかった岩の間の聖人を迎えに行くところはくだらないセリフの応酬がなんともツボにはまったし、その後の音楽、とくにブルースハープの音色にやられてしまった。

ネタバレBOX

後半最初の歌と踊りは毬谷さんのマイクの調子が悪かったが、良い所でも歌い難そうであった。彼女にキーが合っていなかったのではないかなあ。二回目の観劇で、やはりキーが低すぎることを確認した。ここが唯一のマイナスポイントだよ。残念。

最後の「観客の皆さんだって、悪事と無縁ではないでしょう」的な流れは、井上ひさしにしては凡庸なあてこすりだ。

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