
私のそばには芝が居る
藤一色
インディペンデントシアターOji(東京都)
2018/12/13 (木) ~ 2018/12/18 (火)公演終了
満足度★★★★★
観劇が好きで演劇を創り上げる人達の苦労や想いを多少なりとも感じている自分にとっては実に刺激の多い作品でした。
舞台上には役者はもちろん、制作、演出家、美術、技術スタッフをはじめとする具体的な役職の演劇人がズラリ。
最初、こりゃ一体どんな作品なんだと・・・しばし唖然。
いわば演劇人による演劇人を描いたストーリーということになるのでしょうが、あえて生活臭を払拭した演出、バーチャルな世界観で演劇の存続をかけた決死の戦い。
シリアス、サスペンス、コメディー、いろんな味付に加えて、思わぬサプライズが満載でめちゃくちゃ楽しい!
うらやましい程の自由な発想力とエネルギーが合わさって、波に乗っちゃってる感じが爽快でした。
会場スタッフ間の連携がとれた感じも、とても良かったです。

エダニク
ハイリンド
シアター711(東京都)
2018/12/07 (金) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
生きた家畜(牛や豚)を屠殺、解体加工するという職業。
休憩室には二人の解体職人。
舞台に存在するお二人は見事なまでに、発する台詞のひとつひとつ、表情、何気ない所作に至るまで全てが、本当にそこで生活で送る人間そのもの。
包丁の研磨室を休憩室に使っている様子など、見たことの無い業界ですがガッチリ雰囲気を掴んでいるのだと思えます。
やがて休憩室に入る「延髄」紛失事件の連絡と、間の悪い珍客(正体はネタバレになるので自粛)
職人二人に引けを取らない活きた登場人物の登場!
そう、この一見場所違いな珍客の存在が3人の絶妙なコミュニケーションを大きく揺さぶり、更に滑稽で深刻なドラマ空間へと仕立て上げていきます。
職業モノとしても考える部分が多くとても感慨深かったですが、より味わい深く伝わってくるのは、その仕事に携わる人達の日常から滲み出る感情、ひょっこり顔を出す感情、事件に巻き込まれて思わず噴き出し露呈する感情の数々。
不満、狡猾、自尊心、傲慢・・・特殊な職場の中、あまりの人間臭さに思わず笑ってしまう場面は多く、何よりその時々においての状況場面が逐一面白くて期待通り、いやそれ以上の濃厚な男芝居でした。
※「延髄」を紛失すると品質検査が出来ない為、せっかく解体した肉が出荷不可能となってしまします

イキザマ3
RISU PRODUCE
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/12/05 (水) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
厳しい規律にキツイ練習、何よりどんなに頑張っても注目される主役はスポーツ選手であり、応援団のモチベーションは一体どこにあるのか謎だったのが解き明かされた思いで観終わりました。
幕開けはちょっと笑えて、めちゃくちゃ威勢のいい応援団パフォーマンス。
そしてこのパフォーマンスを見たという新入生の目線で応援団の世界に足を踏み込むことから物語は始まるので、とても入り込みやすく(私は図々しくも主役青年の目線から。他にもオジサンや女子の新入生もいて、この二人も異色ゆえにイイ味出していきます)が、彼等とのファーストコンタクト、勧誘の絵面はまるで悪徳セミナー(笑)
それでも日々の活動を通して見えてくるのです。
先輩たち4年生、3年生、2年生それぞれの立場ゆえの生き様が、そして個々の生き様がひとつひとつ染みわたってくるのです。
彼等流のやり方で部内の絆が強くなっていくのを実感していく日々。
決してスマートではなくても、春から夏へ輝く時間と共に人の成長していく姿が克明に描かれ演じられているのが素晴らしく、やがては新入部員それぞれの生き様が・・・
否が応でも胸が熱くなる芝居。久々に泣きました。

悪食娘コンチータ
劇団ブリオッシュ
カメリアホール(東京都)
2018/12/08 (土) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
ボーカロイドが歌い上げる楽曲の歌詞のままに、たっぷり2時間の舞台作品。
呪われし欲望の赴くまま破滅まっしぐらの物語にいろいろと肉付けがされていてかなり見応えがありました。
特に王子とのロマンス部分の功績は大きく、悪食娘コンチータの、悲しみまでもを快楽に変えてしまう貪欲さには何ともいえない哀れを感じました。
衣装で見せる世界観も統一され、フライヤーのイメージをしっかり守っています。
悪食になる前はくいしんぼうな美食家といった娘さんだったのに、食欲も突き詰めていくと、あり得ないモノに手をつけてしまうのかと思うと、グルメもどきくらいで充分満足だなぁと

獰猛犬~DO‐MO‐KEN~
ICHIGEN
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2018/12/06 (木) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
幕開けに広がる異様な光景。
なんだ今の!
ラストシーンを冒頭から見せちゃったのか、それとも何かの暗示?
そんな中、物語がスタート。
概ねあらすじ通りというか奇妙な人ばかりが隠れ家のようなBARに集まって(避難して?)きます。
並行して描かれるのは主人公翔太が記憶を失う前のサイドストーリー。
胡散臭い人もどんどん集まって来て何か悪い予感がうっすら漂うもののBARの中は案外ひょうきんで和やか。
偶然つけたラジオニュースを聴くまでは・・・
劇中、何度固唾をのみ、何度足元をすくわれた事か。
裏と表、善と悪、死に急ぐ人、見える人にしか見えない女、眠っているかもしれない死体等々々々
目まぐるしくヤバい要素が積み重なっていく展開に「さぁ一旦ここで整理してみようか」という思いも虚しく容赦なくやってくる修羅場。
ぐわ~ッ!危ないっ殺される!(思わず手にチカラッ)
やがて辿り着くラストはやはりバッドエンドか、それともハッピーエンドなのか?
実際この目で観たエンドですら日によって変わっているのではないかと思ってしまうほどにパラレルワールド感ある世界観。嵐が通り過ぎていったよう。
何だか前に書いた主人公のサイドストーリーさえ過去ではない気がしてきた。
あ~頭がクラクラする(笑)

「関係」
有機事務所 / 劇団有機座
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2018/12/05 (水) ~ 2018/12/06 (木)公演終了
満足度★★★★
1パート目「関係」
主人公と一緒に早くここから出ていきたいのに中々出られないイライラ感。
果たして明確な答えなど導き出せるのか?という焦燥感。
ライトな感じもまた腹立たしく、これぞ不条理の醍醐味なのかと・・・なるほどっ、これは苦手です(笑)
2パート目「アフロレンジャーズ」
いきなりアフロの不条理。
「こんな大人の役者さんが」というパンチがあって、よりライトなミニ作品。
コメディーとしては笑えなかったけれど、会話自体は面白かったです。
3パート目「ナンセンスショートショート」
お馴染みのドリフのメロディーにのせてのミニミニコント集。
おまけ的位置づけ。
小出しすぎて笑えなかったけどちょっと好き。
役者さんの演技に集中したままラストまで見届けられましたが、あれっ思っていたのと違うぞ。
いや、うっかりコメディー公演と思い込んでいた自分の間違いでした。
実際は不条理劇が主体の公演だったのですね。
わずか3回公演のためによくぞここまで。という思いと同時に、コメディーにしつこくこだわっているようですが3パート目くらいのテイストを思いきって前面に押し出す冒険があっても良かったのかなぁと。
有機座さんにとっては未開拓かもしれない分野でも、それでも敢えてのチャレンジ精神と垣間見えるイタズラ心が良かったですし、なんてったってイベント公演ですから・・・ねえ思いきって。

倉橋勝の喜劇向上委員会
喜劇団R・プロジェクト
遊空間がざびぃ(東京都)
2018/11/29 (木) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
シュールコメディライブ喜劇向上委員会の「シュール」たる所以は、どうやら向上長である倉橋勝さんのキャラクターにあるようですね。
ちょっと脱力系の独特な仕切りで、終始ツッコミ感満載なコメディライブに。
タイトルから連想できる某人気番組がモチーフということでテレビ版のひな壇にはタレントさんが並びますが、こちらの向上委員会では若い役者さん達がズラリと並びます。
ちなみに鳴り物入りで紹介、出てきた喜劇人ゲストも本公演で下から3番目の若手さんでした(笑)
タレントの場合、毎度おなじみのキャラが勢揃いなのに対して、若い役者の場合はキャラ付けこそしているもののどうしても苦戦を強いられるわけで・・・ハイ、実際しっかり苦戦されておりました(笑)
でも彼らなりの体当たりの姿勢は好ましいですし、ハプニングinの演出も嫌いではありません。
もしこの場に知人が出演していたりしたら随分楽しいだろうなぁと。
当日パンフで倉橋勝さんは、これは「演劇」ではありません。「娯楽」です。と書いておられますが、私は「奮闘記」として楽しませて頂きました。

思い出すならAnotime
演劇集団 Z-Lion
シアターサンモール(東京都)
2018/11/28 (水) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
過去の記憶を呼び起こす装置開発に勤しむ研究所を舞台にした物語。
近未来で進化している生活様式がいろいろと想像力を刺激して楽しいです。
中には過去の記憶を呼び起こすより、ずっとインパクトある発明品が散らばっているにはいるけど、あくまで軸となっているのは「記憶」
思ったより笑いはずっと抑え目、その分ドラマ性や人物描写に力が注がれており、丁寧な演技に加え要所要所で役者さんが順々に語り手となり進行していくのも分かりやすさの手助けになってイイ感じの流れ。
そして、こちらに語りかけてくるような演技をかなりバックアップしていたと思えたのが見事な舞台美術!
設定となる「50年先の田舎町にある研究所」がモチーフなのでしょうが、限られた舞台スペースにこだわりのアイデアと美意識がびっしりと詰め込まれ、一瞬美輪明宏さんの舞台かと思ってしまったくらい。
これが照明によって様々に表情を変えていくのがイイ。
衣装や音響効果もさり気なく世界観に溶け込んで公演を上質な時間に彩ります。
非現実世界へと容易にふんわりと導いてくれる強力な美術力が強く印象に残った公演でした。

人造カノジョ~あるいは近未来のフランケンシュタイン~
劇団鋼鉄村松
萬劇場(東京都)
2018/11/28 (水) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
初日からガンガンかっ飛ばしていましたね。
マッド・サイエンティストがド迫力でほんとヤバい人(笑)
創り手の恋愛シミュレーションゲームに対する愛情と畏怖が熱量高く伝わってくる作品。
個人的には「畏怖」に関しては共感できるモノが多かったのですが、恋愛感情を持つまでの感覚はやっぱり分からないかなぁ。と認識しました。
2次元が好きな方には、いろいろ多角的に楽しむことのできる作品なのかも。
どんでん返しのラストは全く予想もつかない展開だったので、あっ、これはやられた~っと。

ばけものがでた
ソニー・ミュージックアーティスツ
小劇場B1(東京都)
2018/11/23 (金) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
「ばけもの」の存在は不条理な何モノかと置き換えられるのだろうか?等、どこか深読みできそうな要素を振りまきながら、お洒落なピアノの旋律が耳に残る大人のおとぎ話みたいな作品でした。
「大人の」というのは登場人物が全員大人だからであり、大人ゆえに皆いろんなモノを背負っているわけで。
結果、血生臭い薄気味悪さと、人間臭い笑いが同居した独特の世界観に。
ばけもの退治であれば、昔々の農村が舞台というのが相場なイメージですが、現代風の時代設定というのは、これまたSFとも違った不思議な感覚。
ヤクザでガテンな男社会の中、女優さんの存在が花を添えていました。
ただひっそりと大人しく咲いている花ではありませんが。

お父さんの休日
劇団娯楽天国
駅前劇場(東京都)
2018/11/21 (水) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
ホントだ、セットが素晴らしい!
開演前の舞台はまだ薄暗くなっているものの、よくここまでクラッシックな調度品が集まったものだとずっと眺めまわしていました。
そしてコーヒー牛乳などの品数乏しい壁のお品書き。
こんなに鄙びた所で、まさかのぼったくり価格に目を疑うものの、それもそのはずコンビニなど近所にあろうはずもない、とんだ山奥の温泉旅館なのでした。(でも誰も買わなそう)
そこに連泊しているのは企業戦士のお父さん、ひどくお疲れ気味。
事前のイメージではカトちゃんみたいな人だったのですが、意外にも長身でインテリタイプなお父さん。
当然ゆったりした時間を求めてわざわざここまで来たのでしょうが、おそらくその願いは叶わないであろう匂いが最初からプンプン。
やがて笑いの矢が次々と放たれ、全てが的中とまでいかなくとも、その矢のあまりの多さに思わず笑ってしまいました。
お父さん、気の毒なほど可笑しな休日に。
娯楽のテーマパークだったなぁ。という印象で、批評めいた事はどうでもよくなってきます。
「愛されつづけて30年」の理由がよく分かる劇団さんでした。
当日パンフというにはあまりに豪華仕様の「娯楽通信」特大号で、余韻を楽しみつつ、今からじっくり娯楽天国さんの歴史に浸ってみたいと思います。

SMOKIN' LOVERS~燐寸~【25名限定公演】
惑星☆クリプトン
Cafe Bar LIVRE(東京都)
2018/11/17 (土) ~ 2018/11/30 (金)公演終了
満足度★★★★★
カフェバーといった店内での公演は幾つかあっても、テーブル席やカウンター席をそのまんま客席とする公演は初めて。
観客同志の身体で演技がなるべく遮られないそれぞれの配置や、演技・暗転中にぶつかったりしない動線の確保等々、この公演独自の配慮が幾つもあったのではないかと。
そして観客数を随分制限しなければいけない英断も。
シーンによっては背中の演技となっても、この贅沢さを考えるとお釣りがくるし、ある意味すごくリアルなアングル。
煙草の銘柄ごとに全10パート。
大人の哀愁漂う作品が多く、落ち着いた雰囲気の中、聞き耳をたてるかの様な観劇スタイルがとても新鮮です。
パートの中で観客は存在しない体(てい)の作品もありましたが、私がこのスタイルの公演の良い所が最も活かされるのは、観客もお店の客として存在している作品だと思いました。
前者には同じ空間の中でも見えない境界線ができて、通常の観劇と近いものになってしまいますが、後者では観客は物理的にも心理的にも舞台の中。
完全に役者さんと同じ空間を共有し、同じ空気を吸う融合感が生まれます。
今回のような完全な暗転(ここにも強いこだわりを感じます)でパートが入れ替わるオムニバスも勿論いいのですが、暗転無しの時間共有タイプだったり、劇中でも観客がウエイター(役)に飲物のお代わりを注文できる自由度をもたせてみる等色んな可能性を感じることのできる公演でした。
観にいく前は演劇通好みなタイプの公演かと思っていましたが、これはもう初心者でも全然OK。
堅苦しくない観劇環境で、大人同志の自然なやり取りを描いた作風は、むしろ初心者にもうってつけではないかと思えました。

祝杯ハイウェイ / 看護婦の部屋~白の魔女~ / 魁!gmn5スタンダップコメディライブ!
good morning N°5
駅前劇場(東京都)
2018/11/10 (土) ~ 2018/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
「看護婦の部屋〜白の魔女〜」
井上ひさし脚本で、こんな作品があったなんて完全な想定外。
一言で言うなら「破廉恥」という言葉がピッタリかと思うのですが、あまりの人間臭さにむせかえりそう。
看護婦たちと医者・患者等々男性とのドロドロな愛欲ワールド。
愛も執着も男女欲望丸出しで、ついでにパンツも丸出し。
中村中さんのドラマチックな生歌をBGMに、清水宏さん演じる看護婦長が女の哀しみに悶えるシーンは、もうカオスの骨頂。
「だから看護婦は好色女の代表みたいに言われるのよッ」ってそんな事誰が言ってるんだ!っていうかおまえが言うか!!
あぁ感動的になればなるほど滑稽。

祝杯ハイウェイ / 看護婦の部屋~白の魔女~ / 魁!gmn5スタンダップコメディライブ!
good morning N°5
駅前劇場(東京都)
2018/11/10 (土) ~ 2018/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
「祝杯ハイウェイ」
ここは劇団自体の熱量もハンパないですが観客の熱量もかなり高い。
自分が思うその理由はドンと突き放したかと思うとギュッと抱きしめてくるような揺さぶり力ではないかと・・・何というか惚れてしまいます。
(実際にその様な行為があるという意味ではありません)
ずっと玉の輿を妬むだけの青春を送り、45歳にして遂に韓国式よもぎ蒸しエステ経営者(70代)の後妻の座をゲットした女性を軸にしたストーリー・・・といえばいいのでしょうか(その前に軸にした でいいのだろうか)
何と説明すればいいのか分かりませんが、とにかくメチャクチャ凄いです。
役者さんが全員、車(ホビーだけど電動)に乗って、舞台・花道をグルグル回って会場はもうパリピ状態です。
なんか細かい事など、もうど~でもいいです。
まさかの客演の方々も含め、恥という概念を捨て去り、完全に吹っ切った役者根性がやたら眩しく見えます。
終演後、身体にかかったキラキラ紙吹雪(正確には小さく折り鶴の形にパンチングされた銀紙)を知らない観客同志で払いあうのもまた楽しい。
ちなみに初見の人でも全く問題はありません。

僕らはZOOっと生きている。
ACファクトリー
シアターサンモール(東京都)
2018/11/14 (水) ~ 2018/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★
日本初の動物園建設計画。
国のお墨付きのわりには、笑えるほど情報不足なまま各方面から運営の為、集められた人々。
ゴリラやライオン等々、みんな見たことも聞いたこともない状態で、それらを迎え入れる気持ちってどんなだろうと想像しながら面白おかしく楽しめるストーリー&キレのあるアクション!
これが2時間半以上たっぷり堪能できるのですから、もう大大大満足。
それはもう本当に心から思ったのだけれど、どうもストーリーと殺陣アクションの食い合わせが良くない気がしたのも確か。
ストーリーはNHK朝の連続ドラマばりに次はどうなるのかワクワクする展開で役者さんの演技も抜群。
出来る事なら主人公のロマンスや登場人物たちの掘り下げ、園の運営進行に降りかかる障害の数々をもっとおかわりしたかったくらい(一体何時間作品になるんだ!?)
そして終盤に集中するアクション(殺陣)の技術は高水準で、確かにこれをたっぷり見せずには収まらないであろうことは重々承知、小声で言いたいくらいですが個人的にはドラマの流れを最優先してもらった方が良かったように思いました。
アクションも物語上 必然の流れになっていればもう言う事無しです。
途中途中にアクセントで歌やダンスが入ったり、ラストも含めてとても上質な内容だったのでホントに贅沢な要望ではあります。

おりん(姥捨て異聞)
京浜協同劇団
スペース京浜(神奈川県)
2018/11/16 (金) ~ 2018/11/24 (土)公演終了
満足度★★★★★
川崎市で初めて訪れたエリア、住宅が立ち並ぶ一角に佇む京浜協同劇団さんのアトリエ。
受付を済ませ通路から事務室、会議室を通り抜け、ぐるぐる階段を上ると、なんとそこにはしっかりとした劇場が!
アトリエ公演ということで、もっとコンパクトな会場をイメージしていたのですがステージのスペースも充分あるし客席も一列ごとの雛段に。
頂いたパンフレットもA4冊子で、読みごたえあるかなり立派なもの。
そのパンフを読んでみると、劇団員平均年齢は69歳。
今回出演される若い役者さんは全て客演だそうで「彼らはあっという間にセリフを覚えるけど仕事の都合で稽古になかなか間に合わない。劇団員は時間にキチンと集まるけどセリフはなかなか覚えられない」という一文が何とも微笑ましい。
とはいえ公演の中身はシッカリしたもの。
映画の「楢山節考」は観ていませんが、おそらくこれをそのまま舞台化したのでは終始重たい空気に支配されそうなところを、核心はそのままに、かなり観やすく脚本・演出で工夫されていたのは充分に伝わってきます。
楢山祭りを控えた村民はどこか浮かれており、最初のうち暗い影はチラリと見え隠れする匙加減が後になって効いてきます。
因習とはいえ自ら率先して姥捨てを選択した「おりん」は84歳の女優さんが演じられて、これがまたウイットに富んだユーモアがあり何とも愛らしく、その人柄に思わず引き込まれてしまいます。
正しいかどうかは別にして、徹底した思ん量りの精神は哀しくも凛として美しく感じました。
老いも若きも皆さんの力強い演技にはパンフに書かれていたような事情もすっかり忘却の彼方に。
劇団の歴史が沁み込んだクラッシックな建物に入った時から異空間。
時代を超えた叫びを聞いてきたようで自宅に帰った今は、夢を見てきた様な不思議な感覚です。

トリックスター
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2018/11/14 (水) ~ 2018/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
ずぅ~っと“しっとりした大人の芝居”なイメージを持ち続けていた、私にとって十数年ぶりとなるスパイラルムーンさんの公演で、よもやヤクザの事務所を舞台に、ドスの効いた啖呵を聞こうとは思ってもいませんでした(笑)
若い役者さん達が威勢よく頑張っていたのも新鮮です。
今回、悪質な詐欺を扱っているのもイメージ的には画期的で、もしや凄く様変わりしているのかもと思いきや、さすが歴史を重ねてきた劇団さん。
独自のカラーに染め上げられた世界観と珠玉の台詞の数々を腰を据えてじっくりと堪能する事が出来ました。
思えば十数年前、人の優しさに溢れた独自の世界観を既にしっかり確立していたのですから根っこは変わっていません。
次回は再演となる作品だそう、きっと観に行きます。

くちびるの展会
くちびるの会
新宿眼科画廊(東京都)
2018/11/09 (金) ~ 2018/11/13 (火)公演終了
満足度★★★★
未発表作『ごうわん』、過去作『ネクラホマ・ミクサー』、新作『猛獣のくちづけ』の3作品を観劇。
それぞれ設定は違えどもリア充とは対極にある男達の物語。
作・演出の方は一見こんな不遇な生き方をしてきた様には見えないし、演じる役者さんも然りですが、創り出されるちょっとやそっとじゃ好転しそうもない生活の虚無感や焦燥感には中々説得力があり、そこにユーモアがブレンドされているのもイイ感じでした。
いずれの作品も人物ひとりひとりの描写が魅力的で、ストーリーがこれをどう揺さぶっていくのかは見どころともいえますが、できれば新作『猛獣のくちづけ』はもっと長尺で、美術にも手を加え、じっくり観てみたいと思いました。
3作とも良かったのですがファーストインパクトの圧倒感&濃縮されたシンプルさで堪能できた『ごうわん』が一番好きだったかも。

ハウス&シーク
劇団コスモル
OFF OFFシアター(東京都)
2018/11/07 (水) ~ 2018/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★
ご自身でも公言されているように好き嫌いが分かれるコスモルさんは強烈な香りを放つパクチーみたいな存在。
個人的には、子供が胸ときめかせる童心あるストーリーをギラギラ照明煌めく夜のスナックでママやホステスやボーイさんが妖しく脚色し、演じているような得もいえぬネジレた感じが魅力的。
2年前の作品を拝見した時は、あまりにも主催 石橋和加子さんの独壇場で他の役者さんがひよっこに見えてしまうと感想を書いていますが、今回は若い役者さんも彼女に負けじとそれぞれに強い個性を発揮していました。
これなら石橋さん、もっと暴れちゃっても大丈夫ですね(笑)
イケイケでハチャメチャなようで実はしっかりとした構成が組まれている作風は今回も健在。

『セルフポートレート』
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中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2018/11/06 (火) ~ 2018/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★
伝説の海賊が遺した謎と家族の名誉を賭けて大海原に乗り出した4人の少年少女。
まともなセットでは到底追いつかないスペクタクルアドベンチャーを身体(照明・音響もサポート)で表現する世界観は、観ているこちら側にもイメージの奮起を促してくるので中々楽しい。
テンポよく進んでいく展開は最後までダレることなく、いろいろビッシリ詰まった2時間。
子供が大喜びしそうなストーリー、お宝狙いの悪の3人組が懐かしのアニメキャラを巧くパロっていて、こちらの子供心も妙にくすぐられました。
特別なスキルを持っている劇団さんだけに活動休止は実に勿体ないことですが、またいつか復活するであろうヤル気を感じさせてくれる舞台でした。