満足度★★★★★
お笑いライブの舞台裏、楽屋には、期待通り観てみたかったモノが沢山詰まっていました。
私にとって芸人さんをつくづく「スゴイな~」と感じるのはネタを披露しているスポットな部分よりも全体の空気を操る人間力にあります。
たまたまこの前日にヨシモトのイベントを観てきたのですが(ここから先ちょっと長くなりますが申し訳ありません)
大勢の芸人さん達が自身の面白エピソードを競い合うイベント、最終戦まで勝ち残った、ある芸人さんが、まさかここまで勝ち進むとは思っていなかったらしく用意したネタが尽きてしまいました。
これはかなりヤバい状況。
先攻、対戦相手の芸人さんは前回の優勝者でもあり、そつなく面白エピソードを披露して、ますます彼にプレッシャーがかかります。
結局、その芸人さんは心が折れてしまい途中で逃げ出してしまいました(笑)
まさかの「えぇぇぇぇ」です。
そして審査発表。発表前にその芸人さんは、くやしさに泣き出してしまいました(笑)
これらの(笑)は決して馬鹿にした笑いではなく、なんかもう一生懸命に足掻く姿に対して、切なく感情に訴えてくる笑いです。
しかし当然、優勝は前優勝者。
涙が止まらない芸人さんに、周りから「その賞金譲ってやれよ~」といったヤジが飛び交い、優勝者は「え~っ、泣けば賞金もらえるのかよ~」と舞台は大混乱。
ネタを用意していなかったとか、途中で逃げ出すとかいった事はプロとしてどうなのかという見方もあるかもしれませんが、もし接戦レベルのエピソード対決が出来たとしても、決してこんなカオスな笑いは生まれなかったと思います。
何が凄いって、ヘタレた姿をライブに披露してしまう芸人さんの人間味もありますが、それをいじる司会者芸人さん、囃し立てる周りの芸人さん、悪態をつきながらも賞金を彼に差し出す優勝芸人さん(受け取りませんでしたが)
普通なら「失敗」に対して盛り下がるであろう事態を大爆笑に変換してしまう全員の機転が利きまくった見事なチームプレイです。
(本作に戻ります)
楽しく笑えるからといって仲良しこよしの仕事仲間とはまた違った芸人さん達の関係性。
何より自分が目立ちたいでしょうし、ひがみや焦りの感情も常に隣り合わせでしょう。
どうすればこんな関係が生まれるのか、そのヒントがいくつも散らばった作品だったと思います。
本作はヨシモトに比べてずっと小さな事務所のお話しで、舞台ではスベリを笑いに転換できなかったくせに何故か楽屋で笑いをとっちゃったりの、まだこれからの芸人さん達でしたが、この日ライブや楽屋で繰り広げられた出来事を通して確実に何かが変わっていく姿を見る事ができました。
「笑い」に肥料が与えられた瞬間とでもいうのでしょうか。
毎日がプロとしての成長過程。
更に明日からの一日一日が彼等にどう繋がっていくのか楽しみでもあり怖くもあります。
サラリーマンには全く不向きな人ばかりでしたが、こうした日々を送り、「笑い」にハングリーでありつつ低収入や挫折を乗り越え、いずれ成功を掴んでいくような芸人さんには、そりゃもうかなわないと改めて実感する公演でした。