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治天ノ君【次回公演は来年5月!】

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2016/10/27 (木) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/10/30 (日)

3年前の初演時、各方面から絶賛された作品ですが、自分にとっては、今回の再演舞台がお初! 昭和世代のオイラ、特段の予習もすることなく、明治・大正・昭和の3代の天皇に関する、既知の「常識」のみをもって、拝見させてもらいました。

ネタバレBOX

でもって、もちろん「舞台作品」ですので、「虚実ないまぜ」なのは承知の上で、本作で描かれた「大正天皇」について、なんですけど…。

厳格な父親(明治天皇)の下、周囲の過大な期待(と干渉)に押しつぶされそうになりながらも、国民に、そして妻子に対しても、恐れ奉られる「現人神(あらひとがみ)」ではなく、親しみをもって接する「人間」たらんと欲した方。

生来の病弱な体質故に、晩年、重篤な心身の病に侵されながらも、「天皇」であることの重責を果たさんと体力・気力の限りを尽くされた方。

大正天皇の理想と苦悩の半生を、皇后や長男である皇太子(後の昭和天皇)、大臣や側近たちの目を通して描いた2時間20分。心が震えました。中盤以降は客席の暗がりをいいことに、目から涙の流れるままになりました。同じ一人の人間として…。

おはなしが進むにつれて、西尾友樹さん、松本紀保さん、といった演じ手の影が消え、舞台に立っているのは、まさしく大正天皇やその皇后その人に思われました。
「迫真の演技」の「迫真」さえ超えた瞬間…この歳になって初めて実感した舞台体験となりました。

唯一、不満な点。三軒茶屋・シアタートラムの舞台はちと広過ぎたかな?
やはり、初演時の下北沢・駅前劇場のような、濃密な空間の方が相応しい「密室劇」だと感じましたので。
「江戸系 諏訪御寮」「ゲイシャパラソル」

「江戸系 諏訪御寮」「ゲイシャパラソル」

あやめ十八番

サンモールスタジオ(東京都)

2016/05/27 (金) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/06/03 (金)

3日(金)の夜、前夜の『ゲイシャパラソル』に続いて、観て来ました。
フライヤーの右側、何やら、おどろおどろしい方(笑)、『江戸系 諏訪御寮』。

ネタバレBOX

江戸系 諏訪御寮』は、2014年3月、下北沢での初演を拝見。これ以降、あやめ十八番さんの舞台をフォローする、きっかけとなった作品です。

今回は「肉親の情」がテーマでしたが、過日の『ゲイシャパラソル』の感想でも触れたように、ヒトの心の機微を丁寧に描いた、現代の人形浄瑠璃、といった作風に、強く心惹かれます。次回作が愉しみな団体さんです。

主演の諏訪琴美役・金子侑加さん。
以前、舞台以外の場面で拝見した際、相当、気の強い方だなぁ(震)と感じましたが、そんな彼女の気迫、といったものが初演同様…いや、それ以上に、ビシバシ伝わって来ました。
他のキャストの方々も好演でしたが、金子侑加、彼女ひとりだけを観ていても、充分、もとの取れる舞台でした、とさ♪
蝶のやうな私の郷愁

蝶のやうな私の郷愁

劇 えうれか

ギャラリーLE DECO(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/14 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2014/09/10 (水)

渋谷ヒカリエの5階、茶庭 然花抄院(ぜんかしょういん)で「京のぶぶ膳」ささっとかけこんでから、明治通りを南へちょこちょこ。とあるビルに入って、エレベーターで4階に上がったら…ハーモニカの奏でる童謡のメロディが耳に流れてきました。
まさしく4畳半に敷かれた畳に、ちゃぶ台がポツン。その端には衣装ダンスが横並びに2さお。それに寄りかかったまま動かない、華奢な背中のパジャマ姿の女性…(後はネタバレboxにて)

ネタバレBOX

夫が帰宅すると、夫婦の間で、淡々と続くテニスのラリーのように、でも穏やかな口調とは裏腹な、二人の役者さんによる、言葉の真剣勝負が交わされるんです。
ろうそくが灯るだけの空間は、風雨で荒れ狂う部屋の外、無視するかのように、お通夜の晩のごとき静けさ。
その場には、夫と妻。そして、踏切事故で逝った妻の姉も、部屋の端にたたずんでいるように感じられます。
芝居が終わるまでの70分、これほど神経を研ぎ澄まして、互いのセリフに集中を強いられたのは初めての経験でした。
小林英樹さんに花村雅子さん、お二人の役者さんの力演に心からお礼申し上げます。
ゆびさきの半景

ゆびさきの半景

サカサマナコ

遊空間がざびぃ(東京都)

2016/03/31 (木) ~ 2016/04/03 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/03/31 (木)

リリックなセリフ廻しに、柔らか目の照明・劇伴。
ヒロイン・風子と、彼女の小学校時代の同級生を演じる、5人の女優さんが醸し出す雰囲気は、まさしく同世代の等身大の女性の佇まい。
ただノスタルジックなだけでなく、会場を包み込む作り手の温もりと言うか、観客への心づくしのおもてなし…そんな気持ちが伝わってくるような温かな舞台でした。

場違いの一日前

場違いの一日前

電動夏子安置システム

赤坂RED/THEATER(東京都)

2017/03/29 (水) ~ 2017/04/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/02 (日)

快晴の日曜日のお昼、大楽の舞台、観て来ました。

ネタバレBOX

まずは個人的要望。
舞台手前のセットが「一日前」、奥が「当日」という時間設定。おはなしが進んで「江崎」「尾久」「狭川」の、2日間の行き来が頻繁になるにつれて…スイマセン、私だけかもしれませんが(大汗)、今、どっちの時間設定での出来事なのか、一瞬、戸惑ってしまうことが時折ありました。日付を言うセリフで、観客に時間設定を確認させるだけでなく、たとえば、日めくりカレンダーや、日付の書かれたホワイトボードなど、舞台の途中からでいいので、常時、提示してもらったら、状況把握の助けになったかと存じます。

とか何とか、いきなり文句から始めましたけど、今回は、前作『Show Cage』よりも理屈や背景がわかりやすく、『ブレッチリーの啼かない鵞鳥たち』と同様、すんなりとストーリーに入り込むことが出来ました。
ふとしたきっかけで、「一日前」との行き来ができるようになった「当日」の研究者たちが、「当日」に起こった大小様々な悲劇のきっかけを消そうとして、周囲を巻き込んでの大騒動を引き起こす理系?コメディ。先月、拝見したアガリスクエンターテイメントさんの『時をかける 稽古場2.0』もそうだったんですが、「タイムトリップ」という使い古したフレームでも、ユニークな着眼点からアプローチすれば、斬新な作品が生まれるんだということ、再確認させてもらいました。掛け値無しに、大爆笑の2時間でした。

役者陣。
劇団員の方達はもちろんのこと、劇団員と見まがうばかりに座組みに馴染んだ小川麻琴さん、客演の役者さん達と、皆さん、演技が手堅い・手堅い!
シリアスものよりも演技の巧拙が作品の出来を左右する(と私は思っている)コメディにおいて、穴の無い(or 目立たない)キャストは、安心して観ていられました。
それにしても、道井良樹さんのキャラクター性と、岩田裕耳さんの舞台映えする声質は凄いですね。他ではめったにお目にかかれない、劇団の宝かもしれません。
アテルイノシン

アテルイノシン

兎団

コフレリオ 新宿シアター(東京都)

2021/09/23 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/09/26 (日)

価格2,500円

千穐楽の26日14時開演回(換気休憩3分込110分)を拝見。

蝦夷の英雄アテルイが、坂上田村麻呂との戦いを通して迫られる”民族の長としての決断”…
1200年以上も前の、でも、不正と欺瞞に満ちた現代にも通じる、人類の苦悩と希望の物語を、チカラとユーモアを込めての熱演。
見応えのある舞台だった。

【追記】
翌日、動画配信も視聴。つかみきれなかった登場人物(配役)を把握したことで、一層深いところで、作品の趣旨を理解することが出来た。

ネタバレBOX

【配役】
阿弖流為…斉藤可南子さん(颯爽とした阿弖流為、苦悩する阿弖流為を熱演)
坂上田村麻呂…中込博樹さん(滅茶苦茶、声がいい!)
大伴弟麻呂(おおともの・おとまろ。初の征夷大将軍)/タカリメ/大和の兵
…仲田正道さん
母禮(もれい。蝦夷の族長の1人)/大和の兵/上役…柳橋龍さん
芙蓉(戦死した婚約者?の仇を討ちに従軍する、元トップモデル)/上役
…岩浦さちさん
ウソミナ(都で自殺したサタミツの妻)…緋乃ほのかさん
サタミツ/ツルキ…恩田純也さん
桓武天皇/珠江/大和の兵…古川ゆかりさん
珠美/村の長老/大和の兵…manegoさん
珠緒/大和の兵…大滝衣織さん
ルシメ(蔵王の大噴火の犠牲となった、阿弖流為の元・婚約者)/蝦夷/大和の兵
…染野敦子さん
沢田(兄)…松尾武志さん
沢田(妹)…佐藤天衣さん
パル子の激情

パル子の激情

江古田のガールズ

本多劇場(東京都)

2017/01/20 (金) ~ 2017/01/22 (日)公演終了

満足度★★★★

序盤の観客・集団ステージ上げにアッと言わされ、笑いの中にも平田敦子さん中心の芝居はしっかりと・・・
客演舞台や絵空箱でのショーウィンドウ公演で垣間見るだけだった、江古田のガールズさんの本公演初体験は、このエンターテイメント団体の実力をまざまざと見せつけられた思いがします。

そぞろの民

そぞろの民

TRASHMASTERS

駅前劇場(東京都)

2015/09/11 (金) ~ 2015/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★

TRASHMASTERS(トラッシュマスターズ)さん、初体験となる『そぞろの民』(2時間半)(後はネタバレboxにて)。

ネタバレBOX

父と三兄弟、そして、この芝居に出て来る登場人物達は、それぞれ、戦後から今現在に至るまでの、様々な世代・考えの「日本人」を象徴しています。
かなり作者の政治的プロパガンダ(主張)の強い内容で、登場人物のセリフに対して、アレルギーを起こした観客も、少なからず、おられたようです。
また、沖縄基地問題やマスコミと政治の癒着等、民主主義社会における様々な今日的課題が提示されたのですが、2時間半の舞台の中で盛り込むには、ちょい「幕の内弁当」的で、話題が散漫になったかな?とも感じられました。
しかしながら、こうした、普段、私達の日常生活で語られることのない話題について、やや押しつけがましいものの(苦笑)「重厚な家庭のドラマ」として成立させた脚本家の力量、高く評価されるべきだと考えます。
恋愛とか夢とか心の機微を扱った芝居も、もちろん大切だと思いますが、本作品のような問題提起型の舞台、もっと多くの人達、特に、実社会を動かしている中高年層に、是非、観てもらいたいなあ、と願わずにいられませんでした。
根も葉も漬けて

根も葉も漬けて

やみ・あがりシアター

中野スタジオあくとれ(東京都)

2017/03/09 (木) ~ 2017/03/12 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/03/12 (日)

やみ・あがりシアターさんとのファーストコンタクトとなる本作品。95分という中途半端な上演時間に繰り広げられたのは…(以下、ネタバレboxにて)

ネタバレBOX

売れない漫才師・青柳(演・島田洋樹さん)は「花の漬け物」というコトバを口にすると、相方(小野冬樹さん)共々、現実世界から、「花の漬け物」が盛られた皿が置かれたちゃぶ台を囲む、両親・妹・祖母との「疑似」家族団らんの場に飛ばされ、その度に、現実世界で起きた出来事がリセットされていく…という、無限ループに陥ります。
このループの仕組みに気づいた青柳は、現実世界で不都合が生じる度に、「疑似」家族団らんの場に逃避→現実世界へ帰還→リセットされた現実世界で都合の良い方向へと行動を変える、を繰り返し、現実世界で一定の成功を収めていきます。
しかし、ループの乱用は、やがて青柳の心身に歪みを生じさせ…と書いていくと、何やらシリアスなSFホラーなように取られかねませんが、実際は、青柳の先輩芸能人たちや、相方・柏木のカノジョの言動で笑いを取る、コメディな場面の多い芝居です。

役者陣。
青柳の先輩芸能人たち、とりわけ「ハラッパ姉さん」役の依田玲奈さんが立て続けに披露する一発芸は、お世辞抜きで、これだけでチケット代のもとが取れる、特筆モノのクスクス・ゲラゲラ!
また、加藤睦望さん演じる相方・柏木のカノジョの存在も、劇中の良きアクセントとなっていたと思います。

最後に、思い出したように言いますが、こんな妙ちくりんなストーリーを考え出した作者の脳みその中をいっぺん拝ませてもらいたい…と凡人の観劇おじさんはつくづく感心しまくりでした、とさ♪
軽やかな初夏の風とやわらかな幻のための3つの短編集

軽やかな初夏の風とやわらかな幻のための3つの短編集

EgHOST

オメガ東京(東京都)

2016/05/30 (月) ~ 2016/05/30 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/05/30 (月)

朝からの雨がポツポツと止まぬ荻窪まで足を伸ばして観て来ました(以下、ネタバレboxにて)。

ネタバレBOX

最初は、夏目漱石原作の『夢十夜 ~第一夜~』。
死んでいった女の墓を見守り続ける男。しかし、気の遠くなるほどの歳月を経ていくうち、本当にそこに埋められているのかさえ定かではなくなり…といった幻想的なテイストの作品。
「女」を演ずる児玉華奈さんが演出上の指示なのか、かすれ気味の小さな声でセリフを喋るので、聞き漏らすまい!と踏ん張った分、いささかストレスを感じましたが…悠久の時の流れを表現する、巧みなライティングに映し出された児玉さんの「女」と、ぜんさん演ずる「男」の佇まい、まるで幽玄の世界の住人のよう!
今宵の3つの短編の中で、個人的には一番好みの作品でした。

二番手は、山川方夫(まさお)の原作をベースにした『予感』。
精神科の女医(演・竹田真季さん)がふとしたことから若い男性患者(黒澤正さん)を連れ立って、別れた夫(西原譲治さん)が運転する観光バスの乗客に…と突然、若い患者が叫び出します。「このバス、転落するから降りましょう!」
竹田さん扮する女医の快活な語りで終始リードされるこのものがたり。まさか、こんな結末とは!と驚かされた作品でした。

最後は、EgHOSTさんオリジナルの『ヴァルプルギスの羊』。
娼婦の少女キティ(大島朋恵さん)を中心とするストーリーは、この団体さんの作品らしく、往年のフランス映画(それともイタリア?)観ているような気分に♪
それから、キティが大切にしている羊のぬいぐるみ?ジジーが踊るシーン。演ずる仲村弥生さん、個人的に、四コマ漫画を描く方、と認識していたもんで、バレエの経験もある女優さんだと知って、びっくりぽん!!
ただ、この羊のジジーの位置づけ、オイラには理解がちょい及ばなかったデス(汗)

以上、毛色の異なる3本の短編集、それぞれに堪能させてもらった、良い宵の時間でした、とさ♪
銀髪

銀髪

アマヤドリ

本多劇場(東京都)

2017/01/26 (木) ~ 2017/01/31 (火)公演終了

満足度★★★★

倉田大輔、武子太郎、古澤美樹のお三方に代表される演技陣の熱演に、3時間の長丁場も苦にならない熱い舞台。最後まで集中を切らさず観ることが出来ました。
ただ…昨年、より完成度の高い(と自分は認識している)『月の剥がれる』を観た身には、『銀髪』=カレーライス、『月の…』=カツカレー、といった印象度の差がありました。それさえなければ星5つでもよかった、優れた舞台だと思います。

アイドル♂怪盗レオノワール

アイドル♂怪盗レオノワール

レティクル東京座

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2017/02/22 (水) ~ 2017/02/27 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/02/22 (水)

評判はよく見聞きしていたレティクル東京座さん。以前から機会があれば!と願っていた反面、例の「白塗り」には抵抗もあって…
白塗りアングラ舞踏の大駱駝艦さんの舞台、観に行っといて、今さら、抵抗もなにもあるかよ~!ということでの初・レティクル東京座デス。

おはなしの内容は…まだ初日なのでサラッと流すと、タキシード仮面&男の子マンガのヒーロー物&近未来SF。
極めてわかりやすいストーリーと「タキシード仮面&…」っぽいセリフの数々。
白塗りも含めて登場人物たちの華美な衣装。
派手な大音響に照明・ムーブメント、キャッチーな劇伴。
アイドルのコンサートにでも来たような錯覚を覚えたオッサンでしたが、まぁ、確かに舞台全体がキラキラしていて、素直に惹きつけられます。実にすんなりと、おはなしの世界に入り込めます。
若いヒト達の中で熱狂的なファンが多いのも、うんちく語りたがり系の「観劇おじさん」の姿を客席であまり見かけないのも、どちらも納得できる、観客目線で作られた、良い意味でエンタの王道に徹した、サービス精神満載のコンテンツでした。

わたしの、領分

わたしの、領分

松澤くれはプロデュース

小劇場 楽園(東京都)

2017/03/28 (火) ~ 2017/04/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/03/28 (火)

以前から気になっていた舞台、初日である28日の晩に観て来ました。

ネタバレBOX

臨床心理士・萩野と、謎の少女「はるか」…このダブルヒロインが主人公の『わたしの、領分』なんですが、以前に入・退院と手術を繰り返したことのある自分の関心は「患者」…もとい!この場合は「メンタル面で事情を抱えた子供」を持つ親たちに専ら行ってしまいがち。
完治する可能性もある怪我や病気と違って、この作品に出て来る子供たちの「事情」は、生涯、付き合っていかねばならない性質のもの。そのため、萩野をはじめとする臨床心理士の役割も、子供が周囲との折り合いを今より円滑に行えるよう、保護者共々、じっくり時間をかけて導いていく…風に素人の目には映ります。

ですが、萩野のもとを訪れる
シングルマザーのうえに、同じ「事情」を抱える可能性のある命を宿している、Aくんの母親も
子供の将来を考えて、小学校の普通学級に行かせたいのに、周囲の関係者からは特殊学級への進学を説得されている、Bくんの両親も
(Aくんの)状況が改善する、見込みだけでも見出したい!
特殊学級でなく、普通学級に(Bくんを)行かせた方がいい、と言ってもらいたい!
という「答え」を、専門家とはいえ自分たちより年の若い、親としての経験もなさそうな、萩野に求めています。

Aくんの母親が(萩野の立場では無責任に口に出せない)「治る!」「今より改善する!」を断言する、怪しげな、民間療法の主宰者にすがったのも
それまで荻野との面談では寡黙だったBくんの父親の方が「うちの子を障害者扱いする気か!」と突然、怒鳴ってしまったのも
今日・明日にでも「答え」が聞きたい!との切実な思い…この「切羽詰まった」感、当事者の立場に置かれた者じゃなければ、絶対にわからないだろうな、と数年前の自分に置き換えて拝見させてもらいました。

役者陣。
開演前から演技に入っていて、上演中、ほぼ出ずっぱりで、ただならぬ「漂流感」を表現し続けていた、謎の少女「はるか」役・岡村いずみさん
内面の葛藤を抱えつつも、「現実」から逃げずに立ち続けた、臨床心理士・萩野役の善知鳥(うとう)いおさん
いつもは割と脇役の役者さんに目が行きがちな偏屈者なんですが(苦笑)、今回は素直に、ヒロインお二方の熱演に頭(こうべ)が下がる思いでした。

…とここまで褒めておいて何故★★★★★じゃないの?なんですけど(汗)
ヒロイン・萩野、子供たちと同じ「事情」を抱えたヒトなもんで、おはなしの訴求力は一層強まっているのですが、反面、(あえて失礼な言い回しをしますが)私たち「普通のヒト」ではないために、「だから、普通のヒトよりも熱心に取り組んでいるんだ」とも捉えかねず、おはなしの説得力がやや弱まったように感じられたからです。
ヒロインの「事情」を取り除いてしまうと本作品が成立しなくなるんで、無茶なのは承知なんですが、「大学で学んだとはいえ、それまで何の実感もなかった」平凡なヒロインの目で見た『あなたの、領分』も是非観たいなと…余計なことを言ってスイマセンでした(大汗)!

ダージリン急行

ダージリン急行

シンクロ少女

スタジオ空洞(東京都)

2016/08/15 (月) ~ 2016/08/17 (水)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/08/16 (火)

昨年の夏頃に15分尺の短編。今年の5月には2時間モノの本公演。と、なんだかんだで、今回、3公演目の観劇となるシンクロ少女さんなんですが、16日の晩に拝見した『ダージリン急行』(70分)、過去2作で抱いていた、この団体さんへのイメージを、それこそ、こっぱみじん(笑)に砕いてくれました。

同名のアメリカ映画にインスパイアされた?本作、それぞれに決してハッピーではない事情を抱えた、主人公である3兄弟達(長男…泉政宏さん、次男…横手慎太郎さん、三男…三瓶大介さん)が、列車での旅の途中、他の兄弟が辿ってきた人生の道のりを探り・探られ、の珍道中。3兄弟の掛け合いの妙に、観客席はクスクス・クスクス。
そこにさらに、列車内のサービス係・かきあげあゆみさん、長男の助手・中田麦平さんが絡んできて、これまた観客席はクスクス・クスクス。

さらに終盤、「ママ」役の堂本佳世さんがやっと登場するんですが、ここからが、まさに…!
芝居の用語に「序破急(じょはきゅう)」というのがあるんですが、似たようなコトバである「起承転結」とも合わせて説明すると、『ダージリン急行』は淡々としたタッチの「序(起承)」がしばらく続き、「ママ」が登場する終盤になって、いきなり「破(転)」「急(結)」が猛ダッシュで襲ってくる!といった、かなりチカラ技な構成になっています。

個人的印象なんですが、正体不明の香辛料を盛られた、怪しげなチャイを飲まされたような、摩訶不思議な魅力に富んだ70分。
理屈でストーリーを追う方はかなり面食らったことだろうと推察されますが、感覚に委ねて観劇された方にとっては格好のロードムービー+アルファ?(笑)だっただろうなぁ、と思いました、とさ♪

ゼロゼロゼロ

ゼロゼロゼロ

日本のラジオ

スタジオ空洞(東京都)

2016/04/26 (火) ~ 2016/05/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/04/29 (金)

29日の午后、今回がお初の観劇となる、日本のラジオさんの舞台、観て来ました。

ネタバレBOX

山の奥深く。姉妹2人でやってる「死体処理場」。世の中から何の痕跡もなく消滅させてもらうため、ヤクザが、たまに堅気の依頼者が、そして必ず「死体」が足を運ぶ場所…。
ダーク、というより、ノアールと表現する方が似つかわしい設定の中、シニカルなセリフが交錯して…演劇観たぞぉ~!と終わってから叫びたくなるほど濃密な80分でした。
ええっと、それから個人的にはですけど、依頼者のミュージシャン役・フジタタイセイさんが終盤に演じた「一寸の虫にも五分の魂」的・独白。ノアールな色調のこの芝居の中で、唯一、鮮明なカラーに映ったシーン、ちょっくら胸に迫るものがありました。
前から評判は耳にしていた日本のラジオさん。もっと早くから観に行けばよかった!と観劇後、悔しがる程度には、すげえ芝居を見せてくれる団体さんでした。

【追記】
窪寺奈々瀬さんを認識した最初の舞台でした。その後、何度か出演作品を観させていただいて、アノ時の「あっ、このヒト、いい役者さんだなぁ!」という印象に間違えは無かったと改めて思う今日この頃でした、とさ♪
フランドン農学校の豚/ピノッキオ

フランドン農学校の豚/ピノッキオ

座・高円寺

座・高円寺1(東京都)

2021/09/02 (木) ~ 2021/10/07 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/10/03 (日)

価格2,000円

『ピノッキオ』3日14時開演回(80分)を拝見。

今年で最後という『ピノッキオ』、私は3年連続の観劇となるが、今回、レギュラーのKONTA氏が体調不良で声の出演に留まるのは残念。
だが、今年も辻田暁さんによる、人間になったピノッキオの”歓喜の舞”を目にすることが出来て良かった。

ネタバレBOX

【配役】
ジェベット、火食い親方、キツネ、殺し屋、ウサギ、オウム、少年、ロバ
…髙田恵篤(たかた・けいとく)さん
劇場の進行役、ネコ、殺し屋、小男
…曽田明宏さん
ピノッキオ
…辻田暁(つじた・あき)さん
女、コロンビーナ、給仕、青い髪の少女、オウム、水瓶を運ぶ女、少年、ロバ、仙女
…森ようこさん
男、ものを言うコオロギ、プルチネッラ、給仕、ウサギ、オウム、ルチーニョロ、マグロ
…髙橋優太さん
カタツムリ、衛兵、バレリーナ、宿屋の主人、少年、ロバ
…田中真之さん
衛兵、アルレッキーノ、給仕、ウサギ、オウム、少年、ロバ、マグロ
…黒須育海(くろす・いくみ)さん
サメの声
…KONTAさん
風の市

風の市

激団リジョロ

サンモールスタジオ(東京都)

2021/09/23 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/09/23 (木)

価格3,800円

23日18時開演回(120分)を拝見。

(1948年以降に日本で生まれた新井家の子供達の、今の様子から推測して)1970年前後?の大阪の下町。
娘5人・息子2人の在日の新井家に、ある日突然飛び込んで来た粗暴な男・ソンジンが巻き起こす、昭和のホームコメディー風ドタバタ劇(何かにつけて、長机の座卓で家族や来客が揃って団らんするさまは、まさに”昭和”だなぁと遠い目)。
だが、次第に(たとえ、物語の背景にある「済州島四・三事件(1948年)」を知らなくても)客席に、新井家の人々やソンジン、文野洋代の血の源流である、済州島の惨劇が伝わるにつれ、最後には、この”望郷と家族(一族)の絆の物語”が胸に響いて来たんじゃないだろうか。
近頃、トンとお目にかかったことのない、ごっつい歯応えの120分だった。

ネタバレBOX

【配役】
秀行(新井家末弟)…久井正樹さん
文野洋代(ソンジンが一目惚れ)…貴玖代さん
ソンジン…金光仁三さん
英子(新井家長女)…星野桃子さん
輝子(新井家二女)…福田桂子さん
順子(新井家三女)…こんどうひろこさん
秀明(新井家長男)…齋藤このむさん
清子(新井家四女)…兒林美沙紀さん
鈴子(新井家五女)…斉藤未来さん
堀口刑事…是近敦之さん
豊田刑事…中鶴間大陽さん
康順仙(カンスンソン)…松本まどかさん
洪育姫(ホンユッキ)…徳丸舞香さん
金村…金哲義さん
安田…上田裕之さん
春花(チュンファ)…きのさん
赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み

赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み

キ上の空論

新宿眼科画廊(東京都)

2014/05/09 (金) ~ 2014/05/21 (水)公演終了

満足度★★★★

『赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み』…なんか、往年の日活ロマンポルノみたいなタイトルですね(苦笑)

ネタバレBOX


【エピソード1】天涯孤独の売春婦&大学生の男の子
【エピソード2】東京の音大に受かった妹とその兄
この2組に関わるエピソードが、それぞれシーン毎に交互に繰り返し演じられていきます。
ちょっと文章ではわかりずらいんで、アルファベットを使って説明すると…
【エピソード1】時系列での、おはなしの流れ:A→B→C→D→E
【エピソード2】時系列での、おはなしの流れ:a→b→c→d→e
これを、C→c→A→a→C→c→B→b→C→c→A→a…と、同じシーン、リピートされ続けていくんです。
最初の30分、正直いってクドい!と感じました。脚本の意図は何となく読めていたんですけど、途中だけど席を立とうか、とも思ったほどです。ですけど…繰り返し・繰り返ししていくシーンが、終盤の悲劇と、その後日談的エピソードへの大きな盛り上がりにつながっていきます。
まるで主旋律と副旋律のリフレインが、壮大なフィナーレに導いていく、オーケストラの交響曲のように!
観終わった後、感動で胸を打たれたせいか、恥ずかしながら、ちょいとの間、腰が立ちませんでした。ああ、最初の30分で出ていかなくってヨカッタ(笑)
水棲のアリア s.v.

水棲のアリア s.v.

salty rock

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2016/06/03 (金) ~ 2016/06/06 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/06/05 (日)

5、6日の両日、阿佐ヶ谷で「体験」してきました。

この作品についての団体さんからのコメント、目を通してみましたが…よく訳わからん(汗)!
実際の舞台も、おはなしの背景に関する具体的説明セリフは無し。そのセリフ自身も散文詩的色彩の濃いもの。合わせて、コンテンポラリーダンスな豊かな身体表現と、女性5名・男性1名の出演者によるハミングやウィスパーボイスに近い重唱…といった感じ。
今回、他の方の感想にも目を通してみましたが、解釈は(好みも含めて)人それぞれ。
でぇ、ワタシはというとぉ…自殺を図ったヒロインの薄れゆく意識が、人間が誕生した源である水の中に漂い・浮遊している感覚で、過去の自分や恋人との出来事を追慕していくうちに…ってな風に理解しました。

saltyrockさんの舞台、ここ最近は「随分とわかり易くなったなぁ」と安堵?する反面、初期の頃の難解な作風の魅力、薄れてきたことを残念にも思っていました。
しかし、今回、作品世界の魅力をより芳醇に具現化することの出来る演出家(立夏さん)・主演女優(きえるさん)を迎えたことで、セリフの一つ一つがブクブクと息を「放出」し、ヒカリさえ帯びたように感じました。
まあ、二度も観ちまったんで、この舞台、もっとより高みまで行けるんじゃ?という我儘な欲求も出て来ましたが(笑)それは詮無き事…といいつつも、この座組での新たな作品、観てみたいな♪と8カ月経った今でも求めてやみません。

時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

Aga-risk Entertainment

駅前劇場(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/28 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/03/23 (木)

2014年に観た舞台の中で、私自身にとっての確かナンバーワンだった作品。
再演ではなく、リブートと聞いて、期待半分・不安半分で駅前劇場に足を運びました。

ネタバレBOX

個人的には『毒婦二景』以来の舞台となるハマカワフミエさん、そして矢吹ジャンプさん以外は、2014初演と同じキャスト(かなぁ?)。お馴染みの、暗転・暗転・また暗転の中、大まかなストーリーも・笑いどころの記憶も、瞬時に蘇り、2時間10分、懐かしさ半分・クスクス笑い半分で過ごさせてもらいました。
でぇ、「時かけ」経験者だけに、不意を突かれ、腹を抱えて大爆笑!とまではいきませんでしたが、リブート版、登場人物による、観客の情感に訴求するセリフが、初演時に比べて、より胸に迫ってきたように感じました。

観劇後、今回もまた、チケット代以上の満足感に浸ることが出来ました。初演時に買ったTシャツの長持ち具合に味を占めて、お礼代わりに、またもオリジナルTシャツを!
5年後?の再リブート作品を観に行く際には是非コレを着て、伺いたいと存じます。

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