わたしの、領分 公演情報 松澤くれはプロデュース「わたしの、領分」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/03/28 (火)

    以前から気になっていた舞台、初日である28日の晩に観て来ました。

    ネタバレBOX

    臨床心理士・萩野と、謎の少女「はるか」…このダブルヒロインが主人公の『わたしの、領分』なんですが、以前に入・退院と手術を繰り返したことのある自分の関心は「患者」…もとい!この場合は「メンタル面で事情を抱えた子供」を持つ親たちに専ら行ってしまいがち。
    完治する可能性もある怪我や病気と違って、この作品に出て来る子供たちの「事情」は、生涯、付き合っていかねばならない性質のもの。そのため、萩野をはじめとする臨床心理士の役割も、子供が周囲との折り合いを今より円滑に行えるよう、保護者共々、じっくり時間をかけて導いていく…風に素人の目には映ります。

    ですが、萩野のもとを訪れる
    シングルマザーのうえに、同じ「事情」を抱える可能性のある命を宿している、Aくんの母親も
    子供の将来を考えて、小学校の普通学級に行かせたいのに、周囲の関係者からは特殊学級への進学を説得されている、Bくんの両親も
    (Aくんの)状況が改善する、見込みだけでも見出したい!
    特殊学級でなく、普通学級に(Bくんを)行かせた方がいい、と言ってもらいたい!
    という「答え」を、専門家とはいえ自分たちより年の若い、親としての経験もなさそうな、萩野に求めています。

    Aくんの母親が(萩野の立場では無責任に口に出せない)「治る!」「今より改善する!」を断言する、怪しげな、民間療法の主宰者にすがったのも
    それまで荻野との面談では寡黙だったBくんの父親の方が「うちの子を障害者扱いする気か!」と突然、怒鳴ってしまったのも
    今日・明日にでも「答え」が聞きたい!との切実な思い…この「切羽詰まった」感、当事者の立場に置かれた者じゃなければ、絶対にわからないだろうな、と数年前の自分に置き換えて拝見させてもらいました。

    役者陣。
    開演前から演技に入っていて、上演中、ほぼ出ずっぱりで、ただならぬ「漂流感」を表現し続けていた、謎の少女「はるか」役・岡村いずみさん
    内面の葛藤を抱えつつも、「現実」から逃げずに立ち続けた、臨床心理士・萩野役の善知鳥(うとう)いおさん
    いつもは割と脇役の役者さんに目が行きがちな偏屈者なんですが(苦笑)、今回は素直に、ヒロインお二方の熱演に頭(こうべ)が下がる思いでした。

    …とここまで褒めておいて何故★★★★★じゃないの?なんですけど(汗)
    ヒロイン・萩野、子供たちと同じ「事情」を抱えたヒトなもんで、おはなしの訴求力は一層強まっているのですが、反面、(あえて失礼な言い回しをしますが)私たち「普通のヒト」ではないために、「だから、普通のヒトよりも熱心に取り組んでいるんだ」とも捉えかねず、おはなしの説得力がやや弱まったように感じられたからです。
    ヒロインの「事情」を取り除いてしまうと本作品が成立しなくなるんで、無茶なのは承知なんですが、「大学で学んだとはいえ、それまで何の実感もなかった」平凡なヒロインの目で見た『あなたの、領分』も是非観たいなと…余計なことを言ってスイマセンでした(大汗)!

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    2017/03/30 06:51

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