I元の観てきた!クチコミ一覧

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頼朝の死

頼朝の死

試験管ベビー

G/Pit(愛知県)

2020/09/26 (土) ~ 2020/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/10/02 (金)

やっぱり歌舞伎調のカッコ良さは堪んねえなぁ。しかもそこに本家には無さそうな講談ツッコミや飛び抜けた子供っぽさや現代的ジェスチャーが織り交ぜられて生じる「心地良いギャップ」の数々が試験管ベビーの名調子でした、お見事(^o^)/

君の庭

君の庭

地点

穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)

2020/09/26 (土) ~ 2020/09/27 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/09/26 (土)

やはり独特の空気。地点なんてただでさえ独特なのに(笑)、天皇制というリスキーなテーマに加えて、更にコロナ禍対応で練られた演出が異様な空気を生み出す。

技術的にも"声"の扱いは興味深く、単なるコロナ対策を超えて踏み込んでいる辺りは演出の見事な自負だなと思う。

さて… 戯曲をぶった切って調理するのは三浦さんお手の物だけど、普通に物語が展開するのではなく、断片的な言葉の数々…その連なりと繰り返しに訳も分からず浸っているうちにボンヤリとイメージが浮かんでくる。それは… 伝わってくるというよりは台詞群を触媒に「現実」から浮かび上がってくる感じだ。

そもそも説明的な要素はほぼ無くて(と思うんだが…)、事前に未見だったフライヤーのあらすじは素より、登場人物名に応じた展開すらイメージに浮かんでこず、物語というよりは 主題を取り巻く人々の歪んだ想念やその亡霊の幻影をただ眺めて…連想する現実に想いを馳せていた。その割に響いてくるキーワードもあったし、誤読かもしれないが かなりヤバめな趣旨の提言も想起して戦々恐々だ。

UP

UP

PUYEY

四天王寺スクエア(三重県)

2020/09/12 (土) ~ 2020/09/13 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/09/12 (土)

お話は…各々にずっしり不安を抱えた人達の… 足掻きと拘りと…不器用な優しさが滲む日常のひととき。一方で演劇的パフォーマンスユニットを標榜するのも頷ける"妙な動き"も多々楽しませてくれました。それを時間経過の表現に活かした演出に、演劇と融合した"らしさ"を感じましたね。

スモール アニマル キッス キッス

スモール アニマル キッス キッス

FUKAIPRODUCE羽衣

三重県文化会館(三重県)

2020/09/12 (土) ~ 2020/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/09/12 (土)

さすがの唯一無二な妙ージカル。その存在感は… 演劇ともミュージカルとも異にする趣き。NEWアルバムリリース記念コンサートの如きで、一本貫くテーマは見極め難いオムニバス。

コロナ対策の口パク公演との噂は流れてきていて、直に聴いても… マイクがなければあり得ない方向から声が来る感じは最初からあったから… 演劇としてなら違和感はあるものの、発声タイミングとしての不自然さは一度も無かった。何せ楽曲が主体だから、噂がなければ自分もどのタイミングで気づくのかな… という疑念があるレベルの完成度。

終盤… 歌声が流れる最中に… 息を切らしたかのように… ふと役者が息遣いのみになるシーンがとても印象的に仕込まれていて如何にも挑戦的であり、たぶん口パクを知らなかった人… 気づけなかった人は、この演出をさぞかし楽しめただろうと思うと、むしろ率直に羨ましい。

翼がもらえると聞いたんです。

翼がもらえると聞いたんです。

試験管ベビー

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2020/07/10 (金) ~ 2020/07/12 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/07/12 (日)

4ヶ月半ぶりのホール観劇。否が応にも耳目を集める中、ホール公演の先陣を試験管ベビーが切りました。マスク/消毒/席間隔等の基本的な対策は勿論のこと、客の入退場や動線にも気を遣い、この劇団の売りの一つでもある客出しの交流も一部劇団員の最小限に絞って、とにかく密を避けようと頑張っていましたね。お疲れ様でした。

そんな雰囲気の中であっても…やはり普通に生のコメディに笑い声をあげられる日常が帰ってきた感触があって、感無量でした。試験管ベビーの芝居にこんな形容をする日がこようとは笑。自殺の名所という悪名を負ってしまった東尋坊でのドタバタ喜劇は、図らずも今の演劇の苦闘を投影するが如くで、そういう所でこそ… 悉く笑い飛ばす試験管ベビーの芝居が活きていた気がします。うん、笑った笑った、それで十分だ、笑う門には福来たるですわ。

眠っちゃいけない子守歌

眠っちゃいけない子守歌

広田二口企画

津あけぼの座(三重県)

2020/06/20 (土) ~ 2020/06/21 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/06/20 (土)

3ヶ月振りに本日開演の垂幕がさがる津あけぼの座。それだけでも感無量ですが… 更にその1ステ目なので舞台上だけでなく観客席も特別な空気が漂う。カーテンコールで… あの広田さんの目にも涙…という忘れられない時間となりました。舞台から発せられる圧を全身で受け、観客が息を詰めて見て…反応するからこそ蠢く空気。静かな芝居だからこそ実感できるモノがありました。堪んねぇなぁもう。

そして何せ別役実作品ですから、やにわには意図の計り難い会話が続きますが、奇しくも今のコロナ禍にも通ずる言葉が降ってくる。アフタートークで油田さんが語られた『別役さんが御存命だったら… 今まさにどんな戯曲を書いたか興味が尽きない。』というのに同感です。解釈したいことは色々あるけど、まずは印象的な演出/演技も端々にあって充実したと言いたい。幸せを噛みしめる。

沙翁十四行詩集 四月になれば彼女は

沙翁十四行詩集 四月になれば彼女は

Contondo

AHAアトリエ・ギャラリー(愛知県)

2020/03/28 (土) ~ 2020/03/29 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/03/29 (日)

具体的な事柄も語られているのに、何故だか落とし所と関係性を素直には呑み込み切れない浮遊感が付き纏う…そんな不思議な後味。果たしてこの2人は同一の時空に存在しているのか、思いの外 想像が駆け巡る。元の詩も踏まえたら… また何か新たに感じ取れるものがあるだろうか。

言葉としては 概ね藤島えり子無双劇(笑)で一人芝居でも成立し得るぐらいだが、一方で相手方のKANAMORINさんの使われ方が実に良くって、ある意味 劇伴の新たな形とも言えるかも。小道具の存在感もとても味があって良い空間を堪能。

『謎は謎のままとぱぱ』『瀬戸内に行きたい人』

『謎は謎のままとぱぱ』『瀬戸内に行きたい人』

喜劇のヒロイン

円頓寺Les Piliers(レピリエ)(愛知県)

2020/03/25 (水) ~ 2020/03/30 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/03/28 (土)

新宮さん特有の奇妙な面白味に溢れた言葉の投げ合い…このいつもながらの旨味に、ノンバーバルを掛け合わせた不思議な絡みと…メルヘン世界と現実世界を掛け合わせた様な不思議な世界線の展開は楽しかった。

そして、まといさんのこの種の演技は、新宮作品にとても相性が良いのがよく分かりました笑。表情… 特に口元の演技が、言葉以上にモノを言う感じで、この奇妙な空間を良い塩梅に膨らませた。

一方で、作品解釈は一筋縄ではいかない印象も。終盤の落とし所に何が投影されていたのかはモチーフを踏まえての咀嚼の余地がとても大きい感触があったので、まだまだ余韻を楽しめそう。

薄ら氷

薄ら氷

Queens of the Hill Company

名古屋能シアター久田館(愛知県)

2020/03/28 (土) ~ 2020/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/03/28 (土)

その空間を作り出すのに全くの妥協なし。本物の能舞台をベースに、衣装から琴の生演奏から… その場を形作るモノを、まず外堀からしっかり埋めて…目にも耳にも心地良い。

その上で… 古の日本で育まれ…苦悩に苛まれる禁断の恋心を「和歌」に託して紡いでいく雅な世界が尊い。

この厳しい世相の局面で、まさしく薄氷を踏みつつ上演に漕ぎ着けてくれたこと、それを観にこれて生で味わえた幸運に感謝したい。

たった4人のキャストに… 煎じ詰めると結構シンプルなシナリオにも関わらず、一人一人の掘り下げと移ろいの表現が充実していて、人物の所作と心情の奥を窺う観客の空気が凄く張り詰めていたのを生々しく感じた。勢いで誤魔化すことの出来ない難しい心情の表現を…じっくり丁寧に…詳かに顕現されたのを目の当たりにした。結末の割りに登場人物全てに好感が残ったのも一興…不思議な後味。

黒い砂礫

黒い砂礫

オレンヂスタ

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2020/03/14 (土) ~ 2020/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/03/16 (月)

総論として、ヂスタ得意の演出「描く対象とは異質の素材を使った美術/道具の運用により、具象と抽象の狭間で揺れ動いている感覚」は今回も秀でて、身体表現とも相性が良い。ドミノノで培ったモノが高密度に圧縮され、七ツ寺の近距離で身体/心理が迫る力は小劇場の醍醐味そのもの。

そして綺麗事では済まない登山の裏側を感じさせる現実味にも痺れた。マイナーな中にも厳然と存在する悪意なきマジョリティとの軋轢、否応なくカテゴライズされ切り捨てられる個人としての存在。一般的に山屋(登山家)のドラマとして注目されそうな、自己と極限状態との闘いではなく、多分に…題材として「個人と社会の軋轢そのもの」をそのままライブで提供している感触でした。結果として問題解決としての切り込みの甘さは否めませんでしたが、その渦中で思い悩み苦しむ人物の表現は人間ドラマとしての魅力に長けていました。

熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン

熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン

エンゲキマダシイ

円頓寺Les Piliers(レピリエ)(愛知県)

2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2020/03/14 (土)

トンデモ歌謡ミステリー&コメディとでも言うべきか… ノリも展開もかなりぶっ飛んでいて、おのが先入観と謎への拘りを捨て… 如何に早く本作の楽しみ方を見極めるかが観劇の鍵かも。割り切りが肝心だ。 登場人物のくるくる豹変する態度や口調も独特で楽しいが、私の印象ではそこに本作の面白味の核心がある為に、役者に相当な技量を要求する作品で… まだまだ道半ばな印象は否めない。でも、その熱いパッションはかなり迸ってましたね。

ラクダ

ラクダ

16号室

G/Pit(愛知県)

2020/03/01 (日) ~ 2020/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/03/08 (日)

2018年に私の観劇で年間ベスト5の逸品がトリプルキャストを引っ提げて再々演。

演出の基本路線は前回の再演を踏襲した印象でしたが、客席も取り込む様に作り込まれた店内装飾は相変わらずの絶品、中盤から終始ヒリヒリする場の空気の作り込みは秀逸でしたねぇ。そして、舞と後藤… 2人の冴えない人間が、それまでの生き方を180°反転させる転機を得て、足掻き、寄り添い、対峙する展開には何度観ても滅多刺しですわ。

ネタバレBOXに続く。

ネタバレBOX

脚本はそんなに変わっていません。 再演で生まれた細かい演出をト書きとして予め盛り込む増補がある程度の変化みたいです。
ただ… 1回しか観ていない再演で自分があまり拾えてなかった部分を… 今回かなり明確に意識できる様になった気がしますね。

その最たるものは、やはり舞に生まれる「自己愛」でしょうか。
再演までは、生まれて初めて実った愛を手放すまいと… その対象を失った後も留まることなく膨れ上がる情愛が… 「狂気」に移りゆく様の激しさに目が眩んで、その奥がよく見えなくなっていました。
しかし… 舞が次第に… 「恭平を愛する自分」を愛する様になっていくのが目に留まる。散らばった原稿を拾うシーンで、1ま~い(枚)、2ま~い(枚)… と番町皿屋敷の如く原稿用紙を拾い上げますが、おぐりさんで観た辺りから「枚」が「舞」に聞こえる様になった。原稿用紙の中にその生き様を刻まれた恭平を愛でる様に紙を拾い上げながら… その中に舞自身も同化していく。それまでその半生を「自己否定」で埋め尽くしていた舞が(ここら辺すごく共感)、恭平とのコミュニケーションの中でやっと育まれた「肯定感」… 恭平によりもたらされたその肯定は、次第に「自己肯定」となって自立していく。愛する恭平を愛する自分も愛することが出来る様になっていく。当は密やかでささやかな心の動きである筈が、狂気と背中合わせの表裏一体で促成栽培されて、際立っていく、そしてそれだけを拠り所に一人、旅立っていく。やっと舞の最後の心の動きを拾えたかな… と思いました。

あと、再演の時は私の席からは殆ど見切れていた中央ソファ。
再演の時からやってたかも知れないけど、恭平の死以降の場転を兼ねた「三上と陽子が踊りながら次の出番に向けて衣装替えとメイクを施す繋ぎのシーン」は非常に興味深かかった。とてもダンサブルで背景としても際立ったし、役者のメタモルフォーゼを間近で味わえる楽しみがありました。
 であったこと

 であったこと

安住の地

GALLERY maronie(京都府)

2020/03/05 (木) ~ 2020/03/08 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/03/07 (土)

無声劇。…といっても、よく見るパントマイムとも味わいは大きく異なる。

悠久の時の流れの中、まるで自然の営みを眺めているかの様な感覚に陥る。目の前に拡がるのは、まさしく「風景」に他ならない。

大小動植物の様々な命の育みは、役者の細かいモーションでリアリティを増していき、徐々に物語性も孕んでくる。人間社会も些かシニカルに俯瞰して、容赦ない惑星規模の活動の輪廻まで感じさせる。舞台美術に昇華された「布のパフォーマンス」が絶妙で、自然ばかりか時間までコントロールされた錯覚に陥り、唸る他はない。さすが芸術性に富む京都の風土が産んだ逸品というべきか。ギャラリー公演というのがとても馴染んだ。

その鉄塔に男たちはいるという+

その鉄塔に男たちはいるという+

MONO

四日市市文化会館 第2ホール(三重県)

2020/03/01 (日) ~ 2020/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/03/01 (日)

劇団代表格の約20年前の作品と…そこに奇縁で繋がり同じ場所を舞台とする新作を結び付ける構成。この2作は劇団員の新旧を繋ぐものでもあるらしい。

会話自体はいずれもたわいない身内の諍いなれど、ともに戦地との繋がりを窺わせながらの諍いの本質と背景に…この大局に人々を誘った日本人の悪癖を想起させる。人が集まって個を失うと… 冷徹な人ならざるモノに変質する怖ろしさを滑稽味の向こう側に感じさせる不穏さ、それに目を逸らすかの様な楽観さのギャップが痛々しい。

一瞬の希望を感じた先に突き付けられる現実。2つのドラマが繋がって… 歴史が繰り返されたことを暗喩するシニカルさが突きつけられる。個を尊重する慎ましさを忘れ、安易に二極に切り分けて他を攻撃する… 今この世相の先にあるものを浮かび上がらせる。20年前の眼差しは今もって杞憂でないことを感じさせる…意義ある公演でした。

終演挨拶で作演の土田さんが不意に涙ぐまれたのがとても印象的で…この新型コロナウィルス騒ぎの状況下で、中ホール規模の公演を全うするプレッシャーと… 万全を期そうとする御苦労の大きさを感じずにはいられません。四日市市文化会館スタッフも含めて、その完遂に厚く感謝申し上げます。

『ハンザキ』

『ハンザキ』

演劇組織KIMYO

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2020/02/27 (木) ~ 2020/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/02/29 (土)

うん、流石は初演/再演東京公演と磨いてきた作品。エンタメとして卒なくカッチリ仕上がって、洗練されてきているのが分かる。動きを見ているだけでも充足感アリ。

お話でグッと来るところの印象は初演とほとんど同じでブレて無いね。終盤でスパイスとなる新平のエピソードは、このご時世ではもっと膨らましても良いぐらいには感じた。一方で山彦が開花していく一連の苦闘は、初演よりも印象が強くなった気がするなぁ、好みの盛り上がりと役者の味でした。

3妖怪の振る舞いも益々磨きが掛かって言うことなし、ホント好きだなぁ。

蒲実里 卒業できる公演

蒲実里 卒業できる公演

名城大学劇団「獅子」

PICO2(愛知県)

2020/02/28 (金) ~ 2020/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/02/29 (土)

12月の… 前代未聞「卒業できない公演」の向こうを張って、「私は卒業できるぞ~」と蒲実里(カバミノリ)嬢が息巻く晴れ舞台。大変な状況下ではありましたが観れて良かった。何気に「獅子」も卒公2度開催の偉業を成し遂げた(笑)

あとはネタバレBOXへ

ネタバレBOX

■■■「かわいい馬鹿ほどみんな呪い殺すリターンズ」■■■

獅子メンの間でなら本当にありそうな登場人物の奇行の数々。その日常(?)を眺めてクスクス笑うだけでも一興だが、その中に潜んでいるさり気ない違和感のピースにオノウチハルカ戯曲らしさがある。

あれ?ここで終わりか~い… と心の内で…ツッコミを入れた第1部が〆となり、次の「たとえば君も〜」が始まってしまう。しかし、更にその先で「かわいい馬鹿の〜」の裏の顔が姿を現し、とても意表を突かれた。第2部の「たとえば君も〜」も終えた後の公演全体のエピローグ的な位置付けとして流れてくるシーンのことだ。第1部の「かわいい馬鹿の〜」で仄めかされていた世界線… 違和感の意味が より鮮明に映し出される。その一部は第1部のシーンのリフレインでもあり、同じ振る舞いに別のことを想起されられる新鮮さ。唐突だった「死なないで」の意味が腑に落ちる。

買った台本を読むと、この部分は「かわいい馬鹿の〜」の"リターンズ"抜きのタイトルとなっており、第1部がリメイクで…最後のシーンが初演版だったのかもしれない。でも今回の構成はすごくハマった。間に丸々1本入れているのが絶妙だ… 不意に涙腺が緩む瞬間。電子の海はそのまま人が生きていた証にもなっていた。

ところで「かわいい馬鹿ほどみんな呪い殺す」という謎のタイトル。これにも色々と想像させられてしまうが、…もはや老いることのない「かの愛おしい彼女」を巡る周りの人たちの切ない振る舞いを「呪われている」状態に準えているのかなぁ… などと妄想しました。


■■■「たとえば君もわたしのこと好きならば」■■■

こちらは2年前の尾内橋本研究室… 通称オノハシ研公演の再演になりますが、メンヘラビッチに哲学的な理屈っぽさを纏わせた奇怪な展開は、むしろ「かわいい馬鹿の〜」よりもオノウチハルカ作品らしさがある。

基本的な解釈面では当時の上演と変わるところはありませんが…最終的に至る… カウンセラー斎藤が社会に出る過程で失ったモノの尊さを踏まえて話を眺めると、一見して奇行に映る女性たちの振る舞いの向こうに、人生における「大事なこと」が見えてくる気がします。あるべきミライだけでなく…メンヘラビッチの諸々の中にすら、暗喩として置き換えられる何かを想像したくなる(笑)
ときめく医学と運命的なアイデア

ときめく医学と運命的なアイデア

匿名劇壇

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2020/02/14 (金) ~ 2020/02/29 (土)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/02/24 (月)

「ときめく医学」編と「運命的なアイデア」編を同日連続で観ました。ともに前回公演「大暴力」に引き続きのフラッシュフィクション構成でしたね。「大暴力」は文字通り「様々な暴力の形」にフォーカスして、テーマにかなり求心力があって深く考えさせる力がありましたが、今回は2作共通で「様々な恋愛の形」がテーマかなぁ… よりバラエティさに富んでいて、何となく人間の滑稽さと愛らしさを色々と見せてもらった感じ。フラッシュフィクションらしい、ムードの起伏の激しさにお得感アリでしたよ。

第5回全国学生演劇祭

第5回全国学生演劇祭

全国学生演劇祭実行委員会

名古屋市中村文化小劇場(愛知県)

2020/02/20 (木) ~ 2020/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/23 (日)

12作も観れる演劇祭なので、細かい感想は省きますが、
特に…
でいどり。(福岡)の「ありふれた白にいたるまでの青」

睡眠時間(京都)の「◎(わ)」
…が出色の出来でしたね。

443.75km

443.75km

南山大学演劇部「HI-SECO」企画

ナビロフト(愛知県)

2020/02/21 (金) ~ 2020/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/22 (土)

まずこの舞台世界を掴むまでの敷居の高さがむしろ魅力の荒井戯曲。予習で公開戯曲を読んでいる段階から幾らでも湧いてくる妄想の嵐を楽しみましたが、そういったものを役者さん方が見える形にしていって、自分の想像を超えるものを感じるのもまたとても楽しい時間でした。

そして、窓辺とリップス「消えた明日に代わって」で片鱗を見せた「独特な舞台美術の運用」は、また更に磨きが掛かり、それが最終的に戯曲の意味にも喰い込んでくる終盤の演出が堪らなかった。

『煙草とguyについて』『どうせなにもみえない』

『煙草とguyについて』『どうせなにもみえない』

演り人知らズ

AHAアトリエ・ギャラリー(愛知県)

2020/02/14 (金) ~ 2020/02/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/16 (日)

2作の45分の中編が観れる公演。
「どうせなにもみえない」は、役者を1人増やしてのリメイクで、前作と重ねてみると、解釈が深まって面白い。
「煙草とguyについて」は新作だが、コミカルで理屈っぽい出だしから、次第に極めてシニカルで男の身には耳の痛い切り口が満載。ダンサーでもある役者の登用で生まれる… ヤバいシーンのある演出にも面白みがあった。

ともに、以降の感想をネタバレBOXに。

ネタバレBOX

■■■「どうせなにもみえない」■■■

子供が大人になる過程で厳然と立ち塞がる "(学校で教わる)あるべき筈だった理想" と "自覚なき差別に侵食される現実社会" とのギャップ。ただ辿れば良いと教わった線(道筋)の外には無数の現実があり、意識せず…悪意なく…数多の意識の中に生まれる境界線が自分の内にも外にも蔓延り…不意に我に返って自らをも傷つける。目を閉じ、暗部を塗り潰した…そのカサブタを剥がしていく物語。

2019秋ver.二人芝居から1人増しての新演出。キーとなる登場人物が元々3人(たばちゃん、なっちゃん、ゆうちゃん)なので納まりはぐっと良くなった。二人芝居版以来のそもそも2度目の観劇だからかもしれないが、観やすくなった印象はとても強い。

しかし元々の特徴として、役者は1人の人物に固定されず、3人以外の人物(例えば先生)のみならず… 主要3人の中ですら役をスイッチすることがあった様な気がして… 実態の掴み難さ…不思議な感覚は残っている。しかしそれは難点ではない。

何となく醸される客観視… 主観や感情から少し距離を置いた微妙なニュアンス。感情に基づくリアルの声というよりは… 詠うような言葉の連なりとリフレイン。

音楽畑のいちろーさんらしい演出とも解釈できるがでもそれを超えて何か敢えての意味があるのだろうと思索を巡らした。

当然、先述の特徴は二人芝居の時の方が色濃く、当時 私はたばちゃんとなっちゃんは実は1人…同一人物ではないか…というところまで妄想していた。

今回、秋版DVDも販売されたので、改めてコレもじっくり見返しました。結果として、役のスイッチを切り離してテキストを聞けば、 この一連の事件で関わりを持つ3人の少女は「別々に存在している」と考えるのが、やはり筋が通るだろうとの見解に立ち戻った。

ただし、この3人の他にこれを眺める超然とした存在として観察者がいる気がする… この社会を眺める「観察者」が。

元々、当時の同一人物説は… 今のたばちゃんが居る場所を「格子窓」から独房と連想して、2人で居れる筈がないと思ったところがキッカケでしたが、そもそもあの空間にいる人物そのものが、単純にたばちゃん&なっちゃんと思えない温度を発する時がある。そこら辺が "不思議" の根幹であり、DVDでよく見返すと、シームレスに繋げたかにみえるシーンにも、仄かに役者の温度が変わる瞬間がありました。

見かけ上、当人の様に見えて… もっと別のモノの空気を纏う時間がある。それを「観察者」と言い表してみました。

この観察者… 何となくこの年頃の人達、あるいはそれを経て思い悩む人達を一般化した思念の様にも思える。その思念がこの事件を振り返り、俯瞰することで、この想いを特定の事件の特定個人のモノから、若者が抱えるモヤモヤっとした

共通の苦悩みたいなモノに拡げて感じさせている… そんな機能を果たしている様な気がしています。

役者が時に主観になったり、時に客観になったり、役を入れ替えてみたりすることで、「個人の特殊な感情」から「若者の意識の集合体」への昇華を促しているとでも言えば良いでしょうか。とりあえず、今はそこを解釈の落しどころとしてみます。


■■■「煙草とguyについて」■■■

タイトルからはチェーホフの「タバコの害について」を想起していましたが、全く異質だったので… 関わりがあったとしても単に言葉遊び的なパロディかな。

まぁでも実際の内容はズバリ「guyの害について」だった訳で、駄洒落テイストに反して内容は極めてシニカルだ。良い意味で。

一方、シチュエーションからはイヨネスコの「授業」を連想しますが、決して模倣ではなく、中身にはしっかりとした現代の男女関係への観察や批評性があって、舞台表現としてオリジナリティ溢れる。そして多分に耳が痛い(;^_^A…

さて本作はセンセー(先生[男])とガクセー(学生[女])の講義とも口論ともハラスメントとも人生相談ともとれる2人芝居。

ガクセーの口調は何となく幼児性を漂わせ… たどたどしいが理屈っぽいというギャップと、一見 斜め上に飛んでいく論理の飛躍っぷりは面白くて魅力的だ。具体性を伴わずに一気に主張を一般化して語るところに、何か理に叶ってそうだけど全然腑に落ちてこない論調の滑稽味も楽しい。

センセーもガクセーの語る紅一点の辛さや赤裸々な男女関係を聞き… 困った様にでも穏やかに…でもツッコミ鋭く諭す序盤の姿は非常に円満な師弟関係を思わせた… あくまで序盤は。

しかし、中盤の換気シーン辺りから急激に様相を変えてくる。

次第に姿を見せるセンセーのダークサイド。外光を入れるのが売りのAHAアトリエ・ギャラリーに生まれた意外な密室… 社会性から遮断される空間の恐怖。

「私は今から守られないんですね」というガクセーの呟きが印象的に響いた。

そこからは怒濤の攻防だ。現実とも話の内容の具現化ともとれるイメージ世界。

男の乱暴を正面から捉えながらダンス表現で昇華してみせたり、独特な性表現を小道具で実現してみせたり、性器をモチーフにしたパペット劇(?)も斬新だった。

口論にも男の理屈、男の自己正当化、男の言い訳が様々に表現されるが、女性の脚本であるのに… それを一方的に糾弾するのでなく… 反論しきれず取り込まれそうになる部分も描かれて、それが返って現実社会での彼女の悔しさを滲ませている気もした。

正直、男の立場としては、そればかりでは無いよとも言い返したくなるが、一方で意識せずとも相手を傷つける危うさと… 感情が表出した時に意図せずとも相手に与える恐怖がある… 自分の内に凶器足りえるモノがあることは自覚せねばならないのだろう。端々にグッと刺される瞬間があった。

さて… 実のところ、センセーの行為を単にそのまんまセクハラ&パワハラと取るのか、リスクヘッジへの高度な導きと取るのかも… なかなか判断が難しい。最後の「いい線いってるね」は言葉通りの評価なのか、はたまた負け惜しみなのか。

さて、表現の激しさの一方で、極めて弁の立つ芝居で、ところどころに真剣に汲み取りたいロジックが多々あって… 例えば「社会システムの失敗が文化になる」って言ってたかな…興味深い。惜しむらくは… 嵐の様に通り過ぎてしまって捉えきれなかった。台本で読み返したいなぁ。

本作は今後のシーズンで女優を変えた再演がある様で、自身による出演で得たものを踏まえて、どう演出を変えてくるのかにも興味が尽きない。

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