劇の劇
壱劇屋
ナンジャーレ(愛知県)
2020/01/18 (土) ~ 2020/01/19 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/01/18 (土)
うん、さすが大熊さんが率いるパフォーマンスは見事。流れてきた写真からの期待を裏切らない。動きには三人三様の感じもありましたが、今まで演技だと癒し感のある表情を見せてくれていた高安さんがキレっキレの動きを見せてくれたのが印象的でした。
そしてお話がまた 白昼夢感漂う趣きで…笑いあり 不条理感あり… パフォーマンスを見にきた心構えの隙をついて面白味が沢山あった、ラッキー。
人ノ形
オレンヂスタ、演劇ユニットnoyR
穂の国とよはし芸術劇場 創造活動室A(愛知県)
2020/12/26 (土) ~ 2020/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/12/27 (日)
オレンヂスタ 『光の園』は上演中止になってしまいましたが、noyR『アイデアル』がとても面白かったのでかなり満足。
夫の母の死後、若き夫婦の元に吹いた一陣の風。夫のカミングアウトはセクシャリティに留まらず、彼に纏わりつき…摺り込まれ… 歪められた価値観を露わにしていく。しかし…拒絶された妻もまた"普通"じゃなかった。描かれる人ノ形、愛ノ形、数多の理想。
戯曲自体かなり面白いが、演出としてコンテンポラリーダンスも交えて描写される出来事は… 抽象と具象が入り混じった感覚を与え… 言葉以上に演技で訴え掛ける情報も多くて、想像が膨らむのが素晴らしい。
「東の海の彼方」
コンブリ団 with 三毛猫倶楽部
G/Pit(愛知県)
2020/12/18 (金) ~ 2020/12/20 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/12/19 (土)
何かしらの激甚災害の跡(?)… 行政は機能しなくなり、富裕層は海外へ移住… 中間層はサイトと呼ばれる組織が管理するシェルターへ… 更にそこからあぶれた者が寂れた市中を彷徨っている… そんな感じの近未来が舞台らしい。
放射能汚染?といった趣きだが仔細は語られず…そこには意味は無いのだろう。謎が明かされていくことが面白みになるミステリーとは趣きが異なる。
非常事態にあって…何もかもが「しょうがない」と… 差別と非寛容が肯定されて…切り捨てられていく人達がいる悲しき世界が…ただそこにある。
悲しいかな確実に… この現代日本の延長線上に在ると思わせる空気に… もの凄いリアリティとシニカルな視点がありました。
一方で、冒頭から幾度も語られる伝承(?)には… 原始的な宗教感… というか死生観?があって、近未来の現実感に不似合いな印象もありました。残された人たちにとっては…もはやそういうところにしか 縋る寄る辺がない… ということなのだろうか。
全体としては すっぱりカタのつく物語構造ではなく… 登場人物のモヤモヤが吐き出されて、不透明なしがらみと決別して前に進んでいく趣きで終わった印象。
観る者によく分からない何かを背負わせる後味もあって、感想も歯切れが悪くなっちゃう。ただ…それこそが人生だって気もするね。
『グッド・バイ』
愛知県芸術劇場
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2020/12/18 (金) ~ 2020/12/19 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/12/19 (土)
痺れるほど格好良い空間でした。その場に居てこそ伝わる雰囲気、個々に濃密な視野を更に見廻して味わえる贅沢な視界。
バーカウンターに居並ぶ役者達は如何にも太宰ワールドを象徴する人々の佇まい。古風な出立ちなのに… 照明効果も相まって都会的でもある。発せられる言葉は巧みに切り刻まれて…所謂 地点語の態を成して音楽的な拡がりをみせる。断片的な筈のそれらは…何故だか次第に纏まって何らかの概念的なモノを伝えてくる感触がある。それら演劇的なモノを… 作品を通底する空間現代の音楽が後押しし… まるで麻薬の様に脳内に浸透してくる。
本作は太宰治 未完の遺作「グッド・バイ」をタイトルに冠してはいるが、実際には氏の50作近い作品から言葉を切り出して構成したコラージュ作品。太宰治作品というよりも…太宰治その人を表現した趣きが強いですね。複数の作品から太宰治を描くという点では、一種のモンタージュ技法なのかも。
結果として物語を追っていくような楽しみ方にはならず、ひたすら感覚的に「太宰治を浴びてる」様な時間を過ごしました。頭をからっぽにして… 視覚を… 聴覚を刺激され続けているだけでも満足感あったなぁ。
太宰治フリークなら、更にもっと濃い楽しみ方ができたのだろなぁ… とは思います。
Gulliver-不安の島-
体現帝国
名古屋市内某所(愛知県)
2020/12/07 (月) ~ 2020/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★
6つの川を渡り、その度に何かを失って…残るのは名前のみになった不安の徒 Gulliver… いや、ガRiverなんじゃねぇか(笑)… っていう妙な言葉遊びの風味もあるコミカルでシニカルでアグレッシブな… 曰く 野外移動式摩訶不思議演劇アドベンチャー。
世の不安を題材に… 時に「不思議の国のアリス」にみたいな不条理空間に幾度も突き落とされましたが…不安に対する評はむしろ真っ当な分析の様に思えて…本来のガリヴァー旅行記の原点が元々「風刺」であることを踏まえれば、これも現代日本を見立てた風刺/翻案なんじゃないかと夢想もする。
ネタバレBOXに続く
彼女は海を見ている
名城大学劇団「獅子」
G/Pit(愛知県)
2020/12/11 (金) ~ 2020/12/13 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/12/13 (日)
ウミガメの赤ちゃんではなく…その前の動けぬ「卵」を擬人化して主役に据える切り口は斬新。その卵が殻を破るまでの…コミカルでアグレッシブで… そしてリアルな苦悩を擦り込んだ… 社会に踏み出す卒業生らしさ溢れる物語でした。
パーゴラの碑の下で
劇団ラッキーキャッツ
みんなの森ぎふメディアコスモス みんなのホール(岐阜県)
2020/12/12 (土) ~ 2020/12/13 (日)公演終了
アンドロイド演劇 『さようなら』 &平田オリザと石黒浩の対談
公益財団法人豊田市文化振興財団
豊田市民文化会館(愛知県)
2020/12/06 (日) ~ 2020/12/06 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/12/06 (日)
死期が迫る女と… 彼女に詩を贈るのが使命のアンドロイド。その最後の仕事とその果ての最期。
アンドロイドはかなりリアルな仕草を見せてくれるが… やはり口調には若干の異質さは見え隠れするなぁ等と思っていたら、主人の問いに逡巡する"間"に…絶妙に人間そのものに感じて唸った。
投げられやすい石
ハイバイ
三重県文化会館(三重県)
2020/12/05 (土) ~ 2020/12/06 (日)公演終了
燈籠
perky pat presents
円頓寺Les Piliers(レピリエ)(愛知県)
2020/11/29 (日) ~ 2020/12/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/29 (日)
実に味わい甲斐のある芝居をされていました。TLでは不幸が似合いすぎると評判でしたが(笑)、そこからの反動たる凛とした空気、狂ったかと見紛う主張の強さ…そしてそれらが…さき子が受け続けた抑鬱や理不尽ゆえと窺わせてくれる深みが… ある種の社会風刺まで感じさせてくれて、何重にも美味しい芝居でした。
続きはネタバレBOX
散乱マリン
下鴨車窓
三重県文化会館(三重県)
2020/11/28 (土) ~ 2020/11/29 (日)公演終了
『via Ethiopia』
演り人知らズ
AHAアトリエ・ギャラリー(愛知県)
2020/11/24 (火) ~ 2020/11/28 (土)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/27 (金)
再演続くレパートリー…キャストを変えながら かれこれ4回目を観る。甘酸っぱさと苦味…理想像と生々しさ…そして薄っすら背景に浮かぶきな臭さ。多くのレイヤーを携え…作品に臨むちょっとさた目線の違いで映る像は大きく変わる。今回のキャスティング、ばっちりハマってますよ。繰り返しが多い演目だから、役者の振る舞いの味わいもいや増す。
「その鱗 夜にこぼれて」
空宙空地
千種文化小劇場(愛知県)
2020/11/26 (木) ~ 2020/11/27 (金)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/27 (金)
再演で大胆に変えてきた… 伝えたいことはそのままに、初演で大きなイメージを担った部分をバッサリ切り落とし、代わりにフォーカスした部分はより丁寧に… 別視点も新たに炙り出す。並行世界感も醸す新しい “その鱗" 爆誕!!
INDEPENDENT:20
INDEPENDENT
一心寺シアター倶楽(大阪府)
2020/11/19 (木) ~ 2020/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/23 (月)
コロナ禍の中、今年もなんとか観に来れて、出来もとても良質で本当に良かった… 幸せ。最後に来年実施の4SS(4th Season Selection)の告知もありましたが、私は観始めが3SSだったから、ちょうど1Season廻ったなと感慨深かったです。
とりあえずオーソドックス系では「くいくがりのなみだ」の作りがピカイチに好み…心理弄ばれたわ〜 さすが関戸さんのホン。
一方、全く想定外から攻めてきた「このカラダ」「七転罵倒」のインパクトが凄い… 特に前者は筆舌に尽くし難い異次元のモノだ。
「Lisa」はエンタメをギュウギュウに詰め込んで鳩川さんの演技が心地よかったなぁ。
「YAKISOBA」はまさしく「今」に刺さる芝居として今回挑んでくれて良かったなぁ… ただ上手客に超厳しい笑。
「02:解なし」は反則やん笑、失業夫婦の一体感の見事さに対するご祝儀なのでしょうか?、客にとっては楽しけりゃ良いんですけど、あるいは次シーズンに向けての運営の布石なんでしょうか?… な〜んて。
#456789の舞台
とよた演劇祭
豊田市民文化会館(愛知県)
2020/11/21 (土) ~ 2020/11/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/21 (土)
人類がその個性として 1677万種のコードで識別される "色" を生まれ持ち… 色相における反対色を持つ者同士は… 触れ合うだけで物理的な危険が及んでしまう分断社会。
星新一を彷彿とさせる… 日常にSFを滑り込ませた様な設定にまず引き込まれる。そして、それに対する人と社会の在り様が…しっかりと「現実」を暗喩し…シニカルな風味になっていることもまた然り。上質なショートショートの佇まいでした。
親から子へと繋がっていく物語構成も… 人の想いと時の流れの重奏な響きを作り出していて、メッセージに深みを添えていましたね。
色というモチーフを反映した… シンプルだけど印象的な衣装に… それを味付けする様々な効果。映像を照明の様に投影し… 光・水・波紋といったイメージで彩る演出も眺めていて心地よかった。
そして本作の象徴とも言える「赤い海に青い夕陽」の絵画… それそのものは舞台上には現れませんが、その絵画を前にして驚きに包まれるソラとアサヒ… その2人の少女のえも言われぬ表情は… 本当に見事にその感動を表していて素敵でした…とても好きなシーン。
彼女たちが眺めているその絵画の素晴らしさを… 見事にその表情に写し取っていて、観る者にそのまま伝えてくれていた感じでした。
バイバイリバティ・レチタティーヴォ
今日もミルクがこぼれそう
愛知県一宮市愛知真和学園 大成中学・高等学校 体育館(愛知県)
2020/11/21 (土) ~ 2020/11/23 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/21 (土)
とあるボーリング場で巻き起こる… 狂想曲が如き波乱に次ぐ波乱… いやVR波乱?(笑)
あたかも芝居に飢えた演劇人どものエチュード主導権争い勃発な感じでもあり… まさか…この剛腕力技な展開を2時間続けようとは(笑)、そしてそれで飽きさせなかったのも 凄いよ。様々なパロディを眺める感触も楽しく… そこから不意に突き落としてくる終盤の落差が見応えありました。
弄られ王いばさんの活躍と須原女史の華麗な元ヤン振りは必見。加川さんの憑依的演技も美味しい。
けむりのゆううつ
劇団芝居屋かいとうらんま
御浪町ホール(岐阜県)
2020/11/20 (金) ~ 2020/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/20 (金)
想い人達の“逢いたい想い“が… “逢えない社会事情“に翻弄される悲恋の名作「八百屋お七」を… コロナ禍での想いも込めて大胆アレンジ。禍難の愛のみならず… 周囲が作り出す「身勝手な真実」にも比重を置き、社会風刺としても刺さる。
ネタバレBOXに続く
OKiNaのキ
双身機関
道徳ハウス(愛知県)
2020/11/14 (土) ~ 2020/11/15 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/14 (土)
このコロナ禍にあって、日本の伝統文化に強い影響を受ける双身機関が疫病封じの流れを汲んで、まさしく神事そのものの想いと風合いをもって本公演のカタチとしたのは自然の流れだったのかもしれませんね。塗香(ズコウ)や神水… 灯明に見立てた線香花火など雰囲気たっぷりで儀式の中に観客を取り込んでくれて、祈りの一部に加えてくださった。今尚…私のメモ帳からはお香の香りが立っています。
ヒトガタに想いをのせて故人を悼み、災いをイキガミの怒りと捉えて鎮め、祓う…しかしその責を徒に課すでなく、共に祈る形になってゆくのが印象的。何となく現代の価値観を汲んだアレンジなのかな…とも想像しましたが、浅学ゆえ真偽のほどは分かりません(;^_^A
舞台上の演者(?)達だけでなく、スピーカー越しに聞こえてくる声も印象的でしたが、どうもリモート出演だったようです。
声だけでなく、楽器音や… 何とも言い難い効果音(?)… キーキーと擦れる様な… 必ずしも心地良くはない音まで含まれており、伝統文化の奥深さを窺わせてくれました。
『朽ちた蔓延る』
愛知県芸術劇場
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2020/11/07 (土) ~ 2020/11/09 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/08 (日)
とある遺跡… 「墓宮殿」という場を遡っていく時の流れ… 現代の観光客から…宮殿の盛衰を経て… それを築いた王その人に纏わる出来事まで、様々な身分/立場の人々が時間を入り乱れつつ、9つの独白を奏でる。
観る立場からすれば、それはあたかも「遺跡」という場に漂う多様な「残留思念」を眺めるが如きで、とめどなく流れる怒濤のテキストに呑み込まれ、更には多様な趣向と演出に目を奪われるうちに… 何が何だか分からないまま終演を迎えたと言うのが率直なところ。
観劇したというよりは… 何かを体験したという感触で、まさしく自分も遺跡を訪れた観光客の一人であったのだろう。
事前に半分までしか戯曲を読んでおらず、しっかり読んだところは その場でちゃんと印象が頭に刻まれているのだか、そうでないところは… 観劇後に戯曲を改めて読んでも 舞台イメージとしっかり繋がらない体たらくで、フワッとした観後感になったのは悔やまれる。
モノローグ単発での面白味はそれぞれにある… 歴史学者の妻は印象的。
ただ それらを繋ぎ合わせて通底する何かを掴み取るには咀嚼に時間が要る。アーカイブ配信で改めて挑む必要がある感じ。でもこの歯ごたえがAAF戯曲賞公演の常やな。
かもめ
第七劇場
三重県文化会館(三重県)
2020/10/30 (金) ~ 2020/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/01 (日)
原作の後日談的な時系列の中、フラッシュバック的に「かもめ」のシーンが差し挟まれる構成。自らの夢の挫折と… コーチャスの自殺への自責の念で心を病み、精神病棟に隔離された独自設定の「ニーナ」を核に展開する。潤色/翻案というよりスピンオフ的な切り口で原作の中にある「弱き者への眼差し」に絞って再構成された様にも感じました。いや… のみならず、この中には… シチュエーションに合わせてか、作中10分程がチェーホフの他作「六号室」等のテキストの引用だそうで、チェーホフのこの思想のエッセンスになっている…と言えるのかもしれません。
続きはネタバレBOXへ