満足度★★★★
鑑賞日2020/12/19 (土)
痺れるほど格好良い空間でした。その場に居てこそ伝わる雰囲気、個々に濃密な視野を更に見廻して味わえる贅沢な視界。
バーカウンターに居並ぶ役者達は如何にも太宰ワールドを象徴する人々の佇まい。古風な出立ちなのに… 照明効果も相まって都会的でもある。発せられる言葉は巧みに切り刻まれて…所謂 地点語の態を成して音楽的な拡がりをみせる。断片的な筈のそれらは…何故だか次第に纏まって何らかの概念的なモノを伝えてくる感触がある。それら演劇的なモノを… 作品を通底する空間現代の音楽が後押しし… まるで麻薬の様に脳内に浸透してくる。
本作は太宰治 未完の遺作「グッド・バイ」をタイトルに冠してはいるが、実際には氏の50作近い作品から言葉を切り出して構成したコラージュ作品。太宰治作品というよりも…太宰治その人を表現した趣きが強いですね。複数の作品から太宰治を描くという点では、一種のモンタージュ技法なのかも。
結果として物語を追っていくような楽しみ方にはならず、ひたすら感覚的に「太宰治を浴びてる」様な時間を過ごしました。頭をからっぽにして… 視覚を… 聴覚を刺激され続けているだけでも満足感あったなぁ。
太宰治フリークなら、更にもっと濃い楽しみ方ができたのだろなぁ… とは思います。