投げられやすい石 公演情報 ハイバイ「投げられやすい石」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2020/12/05 (土)

    ネタバレBOXに書きました。

    ネタバレBOX

    失踪して2年が過ぎ… 盟友・山田と元カノ・美紀の元に再び姿を現した天才肌の異色アーティスト佐藤。しかし彼の姿は変わり果て… 密かに死期が迫っていた…という展開。

    前半、コンビニ店員による… 差別的で理不尽な暴力に晒される佐藤の姿に…最初はそういう意味の「投げられやすい石」なのかと思いきや然に非ず。もっと生々しいアーティストの「末路」が赤裸々に描かれる…その道を歩んだことを自己満足として消化することすら叶わず…一切の救いを与えてくれない壮絶な地獄絵図。アーティストにとってはホラーに等しいかもしれない。

    序盤からの気まずい空気の中… 繋がりを手繰り寄せる様に気ごちないコミュニケーションを続ける3人の振る舞いは、実にリアルな挙動不審さで… 一歩また一歩と…「生」と「関係」の終わりに近づいていく緊迫感が絶えずありました。

    そんな中で… もはや浮浪者同然の佐藤の心の内に窺える全盛の頃と変わらずに潜む強烈な「アーティストのエゴ」みたいものが非常に印象的でした。山田に喰って掛かる… 「独創なくして人に非ず」みたいな態度は… 理解はすれども、非才の身には些か不快なぐらいなのだが、もはや彼には…そこにしか縋る寄る辺がない…と思えば腑に落ちなくもない。ましてや最後のカラオケ…「喝采」での締め括りに至っては… その調べや漂う悲哀の美しさとは対照的に… その歌詞の意味を踏まえれば、さながら佐藤をその場で「亡き者」する引導の如くでもあり、極めてシニカルで残酷な表現に思えた。

    パンフに拠れば… 本作は岩井秀人氏がまだ売れる前それでも自信だけは無闇にあって、日々怒りを募らせていた時代の作品とのことで、「才能」という得体の知れないモノの危うさに溺れそうになりながら… それでもこういう作品を描けるのは凄まじい。我が身の切り売りは作家の常とは言え…その恐怖を突き詰めるマゾヒズムの極致にも思えました。

    ここまでの死線はそうそう無いにせよ… 才能と心中する末路を描く地獄の様なこの作品は… 特に実際に作り手の立場の人達には… 良い意味でも悪い意味でもザクザク心に刺さってくるだろうな。様々な諦めを積み重ねて人生を過ごす… すっかり枯れてしまった身としては、そんな姿も眩しく映る。

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    2021/01/05 23:48

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