タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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パイドパイパー と、千年のセピラ

パイドパイパー と、千年のセピラ

劇団ショウダウン

あうるすぽっと(東京都)

2015/09/04 (金) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

ハイドパイパー
笛吹き男の伝承を大胆に膨らませ、現代風に蘇らせた笛を吹く者、「パイドパイパー」...その笛の音に隠された悲しい群像劇。
この物語は、上手・下手対称の大きな館、または城砦をイメージさせるような建物で繰り広げられる。
その物語は大きな舞台を見上げる観客と、見下ろす館・城壁の視線が交差するところで生まれていた。そこには多少の空間があるが、それを感じさせない迫力と臨場感があった。そして雰囲気は、人々が混沌とした時代時代を懸命に生きるが、しかし悠久の歴史の中ではほんの一瞬の出来事。そのような壮大感溢れる物語であった。

ネタバレBOX

冒頭に老婆が孫に語り聞かせる形で、ハーメルンの笛吹き男の物語を聞かせる。しかし、物語は1260年から約30年及び1945年という2時代を跨ぎ、伝承の話とは直接繋がらない。 

1260年、ハーメルン市とミンデン司教軍のふ間で激しい激戦の末にハーメルン市民軍が壊滅する。その背景にはエーフェルシュタイン家と敵対関係にあるヴェルヘン家の勢力抗争が潜んでいる。舞台はそこにシュピーゲルベルグ家やエジプトの若きスルタン、それにテンプル騎士団が絡む壮大な物語になっている。 

エーフェルシュタイン家の娘であり不死の存在のミリアムと、「千年のセピラ」で彼女を守るためパイドパイパーとなった夜の女王の娘…それが1945年では、歴史を変える力を持つ少女とパイドパイパーは時代を経ることで不死を感じさせる。その橋渡として歴史教師が登場し、子供たちに真の歴史を教えることになる。

物語に登場するのは、「命」のあり方、それにどう向き合うかという人間本質を問うているように思える。死なない...永遠にいき続け使命を果たさなければならない。それはいつ終わるとも知れない、その限りない「命」...不老不死を願う話もあれば、この物語のように苦悩と苦痛が際限なく続く、という宿命。「命」のあり方は、人間の幸せとはと鋭く問う。

「笛吹き男」の伝承をこうも大胆に解釈し脚色する、その発想力に驚かされる。この歴史エンターテイメントの面白さは、もちろん脚本、演出、舞台美術・技術の総合的な素晴らしさと賜物であろう。
そして、この内容をしっかり体現させるキャストの演技。この制作サイドと役者陣の両輪がうまくかみ合った素晴らしい公演であった。

次回公演を楽しみにしております。
深海で聴くリリーマルレーン

深海で聴くリリーマルレーン

劇団ガソリーナ

ザムザ阿佐谷(東京都)

2015/09/16 (水) ~ 2015/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

ブラックコメディ...面白い
ザムザ阿佐ヶ谷劇場には何回も来ているが、このような舞台配置は初めてである。立体感があり躍動的な演技も観られるが、一方、醒めた目で俯瞰するような感じも受ける。最近話題になった出来事や人物を取り入れ、軽いギャグを発するなどコメディのようであるが、その描く内容は近い将来起こるかもしれないと思わせる、少し怖い話である。
その底流にあるのは人間讃歌であろう。


ネタバレBOX

舞台は階段状の客席も含め、上手・下手に二分し、出入り口側を舞台にし、その反対側(通常の下手側)を客席にする。舞台には事務机が3つとそれぞれに対面するようパイプ椅子が置かれている。

物語はハローワークでの職紹介という面接場面から序々に不穏な情勢に変化していく。仕事に就くという当たり前のような行為が、超インフレによって金の価値が失われ、それと同時に働くことの無意味さも示す。経済・金融至上主義が破綻し紙幣は紙くず同然。なにしろタバコ1本が600万円の時代である。そんな中、金を稼ぐため女達は一番古い職業へ...逞しい。
また季節が夏日、それも43℃、47℃という猛暑日が続く異常気象...ハローワークの中は涼しいと何かと集まってくる。
そして、不穏な情勢...いつの間にか沖縄県が独立し琉球国となり、パスポートなしでは自由に旅行できない。箱根の山々が噴火し要警戒指定地域になる。
極めつけが、中国・韓国・台湾の3カ国連合軍が攻めてきて、果ては東京に空襲警報が鳴る。

この平和で、小市民的な出だしから経済金融問題、自然環境問題、軍事政治問題などが、パラレルワールドとして描かれる。ハローワークで情報交換していた人々が、この破壊的な状況においても、なお活き活きとして前向きに生きようとする。出征の赤紙が来る状況でも、それぞれ想っていた男女3組が合同で挙式する。その結婚式...通常であれば紙吹雪であるが、札束が舞う。それも1千万円札、5千万円札、1億円札、5億円札、さらには5千億円札(肖像は松田聖子、裏面は印刷する余裕がないため白紙)という。札がゴミ袋に入れられ捨てられるくらい価値が無いのだ。

一見あり得ないような展開であるが、もしそうなったらという仮定の積み重ねと各トピックスが絡み合い、まったく否定できないのではと思わせるところが素晴らしい。些細な場面の云々よりも大局的に楽しめる、ブラックコメディである。そして、不穏な状況になっていることを誰も教えてくれない、教えてもらっても理解できない、というセリフは心に刺さる。

そして、この場面ごとに暗転する際にかかる曲...タイトルにある”リリーマルレーン”は本当にマッチしており心に沁みた。

次回公演を楽しみにしております。
龍 -RYU-

龍 -RYU-

劇団ZAPPA

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/08 (火)公演終了

満足度★★★★

少し龍馬の魅力が...(雷)
龍馬が龍になる前の物語。どちらかというと土佐藩内における上士、郷士という身分制度の理不尽さに目がいくようであった。その主人公の龍馬は、その魅力ある姿がなかなか観られなかったが、そこは演出の妙であろう。ラストにはしっかり龍が天に昇る...そんな印象を持たせる幕末土佐における群像劇であった。


ネタバレBOX

もう少し早い段階から龍馬の魅力を出しても良かったのではないか。先にも記したが、龍馬の魅力がなかなか伝わらない。その脱皮する、または成長過程がわかり難かった。この「龍」という字は、”人との思いを繋げる”という意味があるらしい。その繋げる、という場面は郷士仲間との語らいの中で十分表現している。また裏切者と言われている郷士・岩崎弥太郎(雷・北崎秀和サン)との繋がりも心温まる。

柵(牢)内に閉じ込められている郷士が脱出(結果、脱藩)する、それまでの方策、それを阻止しようとする上士との攻防は面白い。その中で見える人間性...このあたりから龍馬の存在感が出てくる。この人の繋がりは、舞台の色々な場面で出てくる”蛍”が印象的である。一輝から無数に輝く、その美しさは幻想的であり、少し哀しい。この哀しさは、言葉を変えた土佐女...いやこの時代の女性全般に言えるのだろう。夢を持ち大志を抱くなど、考えもしない。坂本乙女の「男に生まれたかった!」は心に響く。

これから活躍する「龍馬」誕生までの、あまり知られていない脱藩までの芝居は観応えがあった。特に脚本・演出も面白いが、その役者陣の殺陣は迫力があり、最前列で観ていたが緊張感溢れていた。役者陣の演技力もバランス良く安定しているようであった。

なお、本公演は2回(9月3日、9月6日)観たが、初日では冒頭 郷士脱藩して途中川に足を入れるシーンでSEと合わない、また龍馬が江戸に出向く際、旅仕度(薬を渡す)シーンでは、初日はマイム、6日には小物箱を用意するなど、日々観やすく修正しており好感が持てる。

龍馬が初めから”龍”ではなく、段々と仲間の思いを知り受け止め成長していく姿が印象的である。今、意味を深く考えない行動・行為は大きな過ちまたは破綻を引き起こす危惧がある。今幕末ほどの転換期ではないが、不安定な情勢によって社会不安が広がると、多くはわかり易い世界観を説くほうに傾斜する傾向があるようだ。幕末における龍馬が日本または世界を見据えて、自分で考え行動したことを改めて自分の中で反芻したいと。

次回公演も楽しみにしております。
おおきに龍馬

おおきに龍馬

劇団Spookies

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/09/16 (水) ~ 2015/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★

有言実行させた、素晴らしい舞台
坂本龍馬亡き後、その大きな存在を失った若き海援隊士が自立しどう生きていくかを見つけるまでの再生(再構築)物語。その青春群像劇...ストーリーの展開に無理または疑問を呈するところもあるが、それを上回る役者陣の熱演が素晴らしかった。


ネタバレBOX

冒頭、褌姿の男たち(女性隊士1名は着装旗手)が舞台狭しとキレのあるパフォーマンスを観(魅)せる。この段階で隊士全員が登場し、その立場や性格が紹介される。それまで龍馬の夢の下、自分たちで考え、行動していなかったことに気づく。今後何をすべきか、どう行動するかという、自分自身への問い掛け、もがき苦しむ姿...それを克服し成長した時、終盤間際に自分の夢として生き生き語られる。

その描く舞台セットは、正面に聳える塀、もしくは帆船をイメージする作り。正面上部には舵、左右にはマストロープ。そしてアクション(殺陣)が迫力あり観応えがあった。そして、いつの間にか海賊との死闘の最中、丸腰になり暴力では人を屈することは出来ないと叫ぶ。心魂に響くセリフである。

この物語で無理または疑問に思うところは、隊士たちを再生させる試練(手段)のような場面である。海援隊士にして海賊である山本琢磨(小坂逸サン)が勝海舟(飯山弘章サン)の要請を受けて若き隊士たちを殺傷しようとしている。観ている限り、放銃・砲弾しているようであったが...。再生試練として有り得たのだろうか。さらにそれを龍馬の姉・乙女(おぉじのりこサン)も知っていたようだ。自分の中ではうまく辻褄が合わなかった。この展開に違和感が残った。

本公演は、龍馬亡き後だから龍馬は登場しないが、しかし自由に疾風するような姿なき龍馬が芝居の中心にいるような...魅力ある人物像が浮き彫りになるような素晴らしい演出であった。

実はこの公演、現代社会も鋭く問うような...この若者たちの見据える夢は様々。一人ひとりが違った見方で世界を眺めることで、初めて世界は正しく見えるのではないだろうか。みんなの意見が一致することも大切であるが、それぞれが違った意見をぶつけ合っている状態の方が正常かもしれない。そのためには自分をしっかり持っていることが...そんな思いを感じさせてくれた。

次回公演も楽しみにしております。
パイドパイパー と、千年のセピラ

パイドパイパー と、千年のセピラ

劇団ショウダウン

あうるすぽっと(東京都)

2015/09/04 (金) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

千年のセピラ
大きな舞台に小柄な女性が一人...しかし演じるのは登場人物とストーリーテラーの役割も担い、10名もの人物を演じ分ける。

さて、舞台は同時上演する「パイドパイパー」との繋がり、その物語と興行の両方をうまく牽引するところは、作・演出 ナツメクニオ 氏の手腕の優れたところ。


ネタバレBOX

物語は、伝承でしか残っていない古代ローマの建国期におけるカピトリウムの砦を舞台に、そこで起きる謀略・戦争・愛情が壮大なスケールで描かれる...そんな前口上から始まる。このリードは、これから始まる一人芝居をワクワクさせる。

物語は先に記したようにローマ建国期に実際に起きた事件をモチーフにしているらしい。砦を舞台にローマ人とザビニ人の争い、その昔にローマ人の奸計によってザビニ人の男子が殺害され、女子は奪略された。そしてローマ人に育て上げられた(ザビニ人)少女...。時は流れ、ザビニ人が今度は復讐のため砦を攻める。その少女は攻撃してくるザビニ人の新王に恋し、城壁を開門する。その後、恋した新王に裏切られ...。
その霊魂はいつの日にか再びこの世に蘇り...パイドパイパーへ引き継がれる。一瞬、輪廻転生のような感じもする。

さて、本公演は第26回池袋演劇祭大賞受賞を記念したものであり、東京公演のみハイドパイパーの舞台裏で進行する、もう一つの奇跡の物語であるという。
伝承の世界であるから、そのモチーフを利用しつつも、大胆に発想し好きなように膨らませる。その内容は壮大なドラマであるが、一方細部に人間の愛憎というドラマも観える。悠久の歴史の中でも、なお一人ひとりの人間の営み無くしては刻まれない想いがしっかり伝わる。脚本、演出、舞台美術・技術は素晴らしかった。
また、林遊眠サンが表情豊かで躍動感溢れる演技で魅了してくれた。全体的には素晴らしかったが、序盤から前半にかけて台詞と動きに精彩を欠いていたように観えたが、杞憂であろうか。

次回公演も楽しみにしております。
3年G組

3年G組

劇団だるま座

アトリエだるま座(東京都)

2015/09/08 (火) ~ 2015/09/16 (水)公演終了

満足度★★★★★

心に沁みる
27年ぶりのクラス会は、その年齢が45歳という人生におけるエポックとなるような時期を設定し、それを卒業した富山(とみやま)高校3年G組の教室で行うというシチュエーションも面白い。芝居の中でも、最近はホテル、飲食店で行い、二次会はカラオケというのが多いのに...。しかし、この教室内で行うことに意味があった。

そして冒頭、文化祭で「シンデレラ」を上演した思い出を語っているが、このシーンがこの芝居の底流にある友情、人間愛に繋がって行くようだ。

黒板に書いた「頑張れ!中年 我らが青春!」は、当日集まった卒業生それぞれが歩んだそれまでの人生を、本当に喜怒哀楽が鮮明になるような描き方で観応えがあった。



ネタバレBOX

人生に向きあう、友情を確かめ合う...という予定調和であるが、そこには27年経ても変わらぬ友情が確かに存在する。45歳という年齢は、仕事、夫婦、子供、親の面倒・介護、や将来に対する思いなどが錯綜する時期であろう。けっして若くもなく、無理も利かない。しかしまだ先のある人生にどう向き合うかも考える、という悩み不安が尽きない。それが当日集まってきた同級生の近況を通して浮き彫りになる。同級生同士で結婚した夫婦の平凡生活に対する自問、実家の店を継ぎ、いまだ独身男性、エリートコースから外れ虚栄する男、そしてやはり同級生同士で結婚したが、うまく営めない夫婦など、個性豊かな人々が時代を生きてきた。その人間くさいドラマに涙する。
恩師も参加する予定であったが、病のため代わりに娘がテープを聞かせる。この場面は声の出演のみで、その内容が少し教訓のようにも感じた。
恩師の指示で黒板に数学の問題(1÷1、1×1、5÷1、5÷2、∞×X)が...1の答えは自分自身を意味し、自己を持つ、5はその人間関係の広がり、少数点が出る答えは、余りとし小数点以下(人)を切り捨てない。そして無限の広がりが...。この場面は少し長いが、声のトーン・口調が実に柔らかく、聞き入るようである。

当日パンフで演出・美術の菊地一浩 氏が「個性豊かな面々。 それは、12色の色鉛筆のよう…」と記しているが、人は一人ひとり違うから、それぞれの力を掛け合わせたほうが面白いものができる。だから18歳の時の「シンデレラ」は記憶にあるのだろう。

最後に、教室でクラス会を行った理由は、数学担当でありながら音楽も好きで、クラスの歌まで作った担任が、その思い出の品(縦笛)を黒板の後ろの壁に埋め込んでいるため。その笛で合奏...クラスに馴染めなかった男も落涙する感動シーン。
なお、そのクラスの仲間に溶け込めない男とその子供の確執のような理由は、何だったのだろうか(子供が謝りたい?)。

実に見事な脚本・演出、そしてキャスト陣がそのキャラクラーになり切り、しっかり色をつけた演技をしていた。

次回公演も期待しております。
Unbreakable -アンブレイカブル- 第二章

Unbreakable -アンブレイカブル- 第二章

演劇レーベルBo″-tanz

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2015/09/10 (木) ~ 2015/09/14 (月)公演終了

満足度★★★★

戦いの続きを観たくなる内容
本シリーズを昨年観ているから、前説で第一章概要を聞いて思い出した。初めて観るとその言葉・台詞に翻弄されるかもしれない。
なにしろ、旧約聖書偽典、ギリシャ神話、物理学・地質学、そしてその雰囲気テイストは、昭和の香り...その色々な材料(要素)をしっかり混ぜた豪華料理は、美味(上手)く堪能した。

その内容とは...

ネタバレBOX

ダーク・ファンタジー...ではあるが、そこにはしっかり脱力系ギャグも盛り込まれている。敢えて失笑を覚悟した、観客サービスである。
しかし、この公演の面白さはその脚本はもちろん、観せる演出、音響・照明という技術が素晴らしいところ。この独特の世界観が観る者の心を放さないのだろうと思う。
さて、この劇団の特長として映像を利用した描写が美しい。天使の翼...Wスクリーンにすることでその迫力を増し、観客も観やすくなった。前作を踏まえ、単にその続章公演ではなく、ステップ・アップさせてくるところが好ましい。

梗概は説明「天界を裏切った堕天使〈グリゴリ〉とそれを追う翼をもがれた天使〈殺戮天使〉との戦い。" グリゴリ達が堕天した時、天界からの追撃によって致命傷を負った〈サタナイル〉は醜い虫の姿になり地に潜っていた。 メルトダウンにより目覚めた〈サタナイル〉は地上に現れ”ある場所”を目指し暴走を始める。 ネフィリム事故の後始末にそれを利用しようと画策する〈石間興産〉の陰謀が絡む」というもの。

この話...どうしても原発を想像(創造)してしまう。この公演の物語性だけでも面白いのだが...。

最後に、芝居の展開上、辻井純奈(羽生田早穂サン)の件が唐突で混乱してしまったが、伏線があったのだろうか。”アマダスの弾丸”発後の説明セリフしかわからなかった。

次回公演も楽しみにしております。
第三章があるような含みの終わり方ですからね。
【ご来場誠にありがとうございました!】ギンノキヲク FINAL

【ご来場誠にありがとうございました!】ギンノキヲク FINAL

ラビット番長

南大塚ホール(東京都)

2015/09/11 (金) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

再演...やはり素晴らしい。
公演は特別養護老人ホーム「紀陽の里」で、そこで働く人々と利用者および家族の方々の心温まる内容である。「ギンノキヲク」シリーズは全四作あり、すべてを観させていただいた。それぞれの公演は一話完結になっているので、どの公演からでも楽しめる。

本「ギンノキヲク FINAL」は、昨年も池袋演劇祭参加作品として観劇し、その素晴らしさに感激したことを思い出す。昨年は別の観点で観ていたが、本年は純粋にその優秀賞作(再演)を楽しんだ。

ネタバレBOX

この公演で一番関心しているのが、井保三兎 氏の当日パンフに書かれている序文「家族が倒れて実家で24時間体制の介護を1年半体験しました。再び東京に戻って来た時…以前と同じように介護の仕事をしようと思って出来なくなりました」という箇所である。
介護…それは高齢化社会において行政はもちろん個人の生活においても大きな課題である。それは、芝居の中でも家族を介護することは、仕事以上に大変であったと悲哀をもって語ったことに凝縮されている。
自分も両親の介護を...自宅での介護の限界は十分承知しているつもりである。しかし、施設へという選択をするまでは相当の勇気というか覚悟を要したことを覚えている。

本公演の素晴らしいところは、単に人間味・人情味を描くだけではなく、そこで働く職員の労働環境もさりげなく問題提起している。昼夜の交代勤務、仮眠室のベットの不足、事務机での仮眠...。
最近は介護ロボットの開発も進んでいるようだが、最後は人間的な絆が大切になろう。

公演全体を通して、その人に対する思いやり、優しい気持ち...それが溢れんばかりに感じる。コメディな作風であるが、その底流にある問題提起は鋭く、大変見応えのある公演であった。
あの日はライオンが咲いていた

あの日はライオンが咲いていた

PocketSheepS

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/09/10 (木) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★

心温まるも、厳しい現実
タイトル...「あの日はライオンが咲いていた」は、多くの観客の涙で大輪を咲かせたようだ。心温まる話...とある病院の片隅で一人の少女のために語られる物語、である。しかし、人の思いやりという心温まる面と、一方その現実をどう捉え、対応していくのかを鋭く問う面、その両方が上手く描かれた秀作である。
劇団PocketSheepS 初の再演だそうである。その自信作の内容は...。

ネタバレBOX

本公演の素晴らしいと感じたところ...。
脚本・演出は、病人を主人公「梢」にした、当人だけのために語られる物語...いわゆる劇中劇であるが、序盤から梢が持っている本が「モモ」であることから、時間に関係する話であることを暗示させる。その導入の仕方は上手い。
そのテーマの観せ方は、ファンタジーのようで、淡い浮揚した雰囲気が物語の底流にある重く悲しい出来事を隠しており、徐々にその深刻さが分かってくる。その観せる興味をしっかり最後まで繋ぐ構成・演出は秀逸であった。

「記憶」という、目に見えない事柄の確認・消去という両面から捉え、どちらも当人を思い遣る優しさの表れ。一方、その自分のものである「記憶」を第三者が操られるという危惧と怖さ。

この物語(劇中物語)は、主人公の会社の「エデル」プロジェクトが記憶の一部を預かり管理するもの。その被験者として選ばれた。他にもプロジャクト開発部の人間2人も被験者になり、それぞれ被験者になった理由・経緯などが展開する。その消去(預けた記憶)とは、という謎と、それが何であったのか知りたくなる心理描写も面白い。しかし、これは全て自分側から見た事象であり、そこに隠された真実は...健忘が進む患者を思い遣るプロジェクトである。

また、キャストの衣装がカラフルで上着、タイツなども色彩統一していたようで、その感じもお伽噺を彷彿とさせる。そしてラストにしっかり泣かせてくる。あのエアーデルワイスが舞い落ちるシーンは...やられた。
気になったのが、キャストの演技力である。その力量に差があり、観ていて違和感を持ったのが残念でならない。

「あの日はライオンが咲いていた」は、百獣の王といわれるライオンのごとく鋭い印象を刻み込んでくれた。
ちなみにエーデルワイスは、ライオンの足裏(肉球含め)に似ていることから、その別名を「ライオンの足」と言うそうである。

次回公演を楽しみにしております。
よみ人シラズ

よみ人シラズ

ナイスコンプレックス

吉祥寺シアター(東京都)

2015/09/09 (水) ~ 2015/09/14 (月)公演終了

満足度★★★★

いろいろ考える
この公演は、観ていて胸が締付けられる思いであった。第二の故郷である広島県内で、某高校における日章旗掲揚・君が代斉唱を端に、教師が卒業式前日に自殺した事件(こと)があった。確かこのことが「国旗及び国歌に関する法律」成立のきっかけとなったと思う。

この芝居は、描く内容が観客によって受け止め方が違うであろうことを承知で、それでも敢えて問題提起したと思った。その表れが、タイトル「よみ人シラズ」...実に上手いネーミングである。この公演の素晴らしいと感じたところは、問題の根幹を見据えつつ、しかし直截的に描くことをせず、その思いを観客に委ねたところであろう。確かに主張は垣間見えるが、そこは余韻として受け止めた。

ネタバレBOX

梗概は、2015年生まれのアキラが成人式を迎える2035年。2020年の東京オリンピックを経た本当に近未来の話である。その時に国歌として「君が代」斉唱を促されるが...。
表層的には、君が代を巡り、過去・2021年(小学校入学式)・現在(2035年)という1100年の時代空間を旅する。そして更に自分の生立ちで小学校入学式でのトラウマ(苛められたと誤解)になっていた耳が聞こえない、を成人式において邂逅・誤解が氷解、克服するような成長物語。

その舞台は、ほぼ素舞台であるが、中央上部に日章旗(真ん中部分は刳り貫き、旗後部から出入り)が掲げられている。板上は登場人物分のパイプ椅子が並べられているが、それは常時あるわけではない。

さて、「君が代」の考え方として、時代は文徳天皇の第一皇子惟喬親王の時代へ。親王に仕えていた者が詠み人知らずとして扱われるが、この詞が朝廷に認められ、詞の元となった”さざれ石”...が登場する。
そして時代は下り、紀貫之編纂での取り扱い。ここでの「君が代」の解釈はどうか、という学問史書の内容も披瀝する。
更に時代は下り、明治時代...第二次世界大戦という戦前までの「君が代」とは...万葉集などでは「君が代」自体は「貴方(あるいは主君)の御寿命」から、長(いもの)にかかる言葉である。転じて「わが君の御代」となる。国歌の原歌が『古今和歌集』の賀歌であるため、「我が君」の「君」とは天皇なのかどうかということがしばしば問題にされる、らしい。刷り込みも示唆するような展開もあったが...。

この”君が代”斉唱の時に、起立の号令に従ったのは、アキラだけであった。耳が聞こえないから...しかし、その歌詞に引き込まれた、というのが事の始まり。そして斉唱号令を掛けたのが父親であり、耳が聞こえないアキラを厳しく育て上げた。そのいくつもの思いが「君が代」を通じて描かれた秀作である。

描き方が難しいようなテーマであるが、今、いろいろなことを考える...自分で考えるという姿勢が大切である。この物語では敢えてそれに挑み、主人公の身体的ハンデによる心を上手く使い、自分の成長と同調したようなストーリーに感心した。

次回公演を楽しみにしております。





SMOKIN’ LOVERS(20名様限定公演)

SMOKIN’ LOVERS(20名様限定公演)

惑星☆クリプトン

BAR BASE(東京都)

2015/09/04 (金) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★

楽しめた【灰】
渋谷・松涛Bar BASE。事前の案内にあるとおり客席20名ほどの中での芝居...紫煙の中、9話が繰り広げられる。自分は、アルコールだけではなくその親近感、臨場感という雰囲気にも酔った。惑星☆クリプトンVol.2(実質的には3公演目)には、その内容(劇場規模等も含め)のモチーフ、コンセプトを模索し、いかに観客に楽しんでもらうか...そんな思いが籠められているようで好感を持っている。

しかし、現実に公演を観ると残念なところもある。

ネタバレBOX

OP
前説...携帯電話等の電子機器は電源からお切り下さい、と

NATURAL AMERICAN SPIRIT
芝居の演出を巡る自己主張...同時に自分にとってのタバコとは。

PIANISSIMO
キャバ嬢2人の職場話...売れっ子嬢が年齢とともに客離れ。枕営業と結婚話に揺れる女心。

PARLIAMENT
恋人同士の語らいから、男の浮気疑惑へ進展。包丁による刃傷沙汰か。

KOOL
恋人同士の語らいが、男・女の結婚願望の逆転。女は歌手を目指して芸能事務所へ。

DUNHILL
いつもの...Barで知ったかぶり客の羞恥話。コミカルな遣り取りが笑える。

CASTER
いままでの会話...絡み合う男女の思い。中川えりかのアカペラ「心の草原」「ベットで煙草を吸わないで」は見事。”KOOL”で歌手へ、と言った女が登場。

ECHO
女に今更は...ない。失って初めてその大切さが分かる。

Marlboro
あんたと同じタバコを吸ってみたい...。

この9話のうち、キャストの動きがあったのは、中川えりかのアカペラ時のみ。それ以外は、カウンターの中央席での会話劇に終始しており、キャストの両側の観客しかその演技・表情が見えない。
できれば制約ある空間を舞台に選んだ以上、もう少し観客が観える工夫が必要だろう。

ちなみに、自分は唯一あったカウンター後のソファーで観たが、キャストの横顔のみ...少し残念。それでもミム・メモさんの学生時代からの女友達の方と並んで観られてラッキーかも。

芝居は、Barで本当に恋人同士の会話を知らずに聞き入るような、そう盗み聞きするような臨場感が良かった。この雰囲気を味わえるのは、この場所を選択した演出家の慧眼であろう。あとはその観(魅)せ方であろう(ここが重要であるが)。
今回は作・演出はミム・メモ、そしてキャストとして緒川凛として出演...3役お疲れ様です。

次回公演を期待しております。
今日はこのくらい

今日はこのくらい

Outside

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2015/09/03 (木) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

地元愛
どこかの地域にありそうな話。日常の延長線上にある物語で、その意味で親しみが持てるが、一方芝居として観ると盛り上がりに少し欠けたと思う。話の展開もわかり易く、登場人物の性格もしっかり描いている。しかし、坦々としたテンポが...。

ネタバレBOX

街興しのプロジェクト...本公演ではサッカーチームとの提携か。シャッター商店街という言葉が出てから久しいが、大都会は別にして地方都市の商店街ではそのような光景を目にする。
そこの住民にすれば街の活性化は重要であり、その有効な手段としてスポーツ・クラブなどとの提携は重要であろう。その事業に関わる人々の取り組み...その描きがアッサリとしていて残念に思った。

今日的な課題であり、関心が高いテーマであると思われるだけに、”今日はこのくらい”にしてほしくなかった。もっと提携か招致か、自分の中では判然としないが、どちらにしてもそれまでの過程(軋轢、障害があれば、なお面白い)をドキュメント風に描いていれば、もっと興味を惹いた。テーマの描き出しが中途半端であり、観せる演出としてもあまりインパクトが感じられなかった。それだけに勿体無い公演であった。

次回公演を楽しみにしております。
BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

劇団バッコスの祭

萬劇場(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/07 (月)公演終了

満足度★★★★

テーマが...
「ペルー日本大使公邸人質事件」を題材にした公演...他の劇団でも上演しているが、政治・経済・民族などといった多角的な視点が必要になる。その要素があまり感じられなかった。武装集団(テロリスト)と人質...どちらを主眼に置いていたのだろうか。
この公演で気になるところが...。

ネタバレBOX

1996年12月17日から1997年4月22日(現地時間)までの127日に及ぶ事件を概観しており、今までの公演に比べ、オリジナリティというか大胆な発想の下にある内容ではなかったこと。

作・演出は森山智仁 氏である。実は、その作家性に魅力を感じていたが、今回は事実取材等を重ねているのであろう。その意味で手堅い...守りの公演というイメージである。自分は、今年この題材を観るのは3公演目である。前方公演墳「もうすぐ、お家に帰ります」(2015年5月」、Trigger Live「祝祭」(2015年7月)である。やはり同じような事実をもとに、またストックホルム症候群をイメージさせる親和性も描く。このチラシのことば...「歪で美しい何かが生まれた。」は物語の進展においては興味を惹くが、逆にその特異性に他の作家同様に目が行ってしまったようだ。
観客の主義、主張を声高に代弁しても面白くない。

描き方が、広く満遍ないペルーの国内事情を説明していることから、その不満が表層的になっており、説得力に欠けた(政治・経済・社会問題が重層・錯綜しているが、芝居としては的を絞るほうが解る)。さらに日本の取材姿勢について、一部マスコミの突出した行動に世界的な批判も出ていたと思うが、今回公演でもそれをイメージさせる場面が多々観られた。

もう一つ、この劇団の魅力はそのアクションにあると思っている。今回も確かにあったが、それはパーティに乱入する時、後日チャビン・デ・ワンタル作戦と呼ばれる制圧時だけである。このラストのセルパ(丹羽隆博さん)落下シーンは見事。しかし、過去には殺陣等、その迫力あるアクションが多く観られたことを思うと、少し残念であった。

以上が自分の感想であるが...。

今回、初めて「バッコスの祭」を観たら、その物語(展開)は丁寧で分かり易いし、登場人物はキャラクターを描きこみ、その親しくなる過程を微笑ましく、それ故に悲しくなる結末に心を打たれるだろう。舞台美術...舞台中央を二階部にし、上手から横向階段で上がる。また上手客席側に横長ソファー。全体的に豪奢な造りがイメージできる。そして舞台技術の音響・照明はいつも効果的で見事。

また、いつも遊び演出があるが、今回はフアナ(金子優子さん 当日パンフに「史実とは異なる架空の人物」との注釈あり)が記念撮影に応じる際に見せるヘン顔、その他にも小ネタはあったかもしれないが。その意味で、劇団カラーを薄めてまで真摯に取り組んだ公演であろう。多くの観客に受け入れられる選択をした好公演である。

次回公演も楽しみにしております
紙の花たち

紙の花たち

スポンジ

「劇」小劇場(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

紙のような裏表が...
表層的に観れば人間...特に女性の外見と内面が描かれていると思うが、それが全てではないことは明らか。紙のように見た目はどちらが表で裏かは判らない。触り感触を確かめるように、人も触れ合い感じあうことが大切なのだろう。
もっとも物語は、そんなキレイごとではなくドロドロした醜悪な面も見せながら、それでも生きていく...そんな逞しい女性像が描かれる。

ネタバレBOX

民宿「ひまわり」が舞台...そのセットは、上手側から入り口、受付カウンター、その前(客席側)にすのことミニテーブル、中央から下手にかけてテーブル席2つ。上手奥が二階へ通じる階段。下手正面にある壁が折りたたみ式になっており、それが開くと二階部屋が現れる。

小豆島という、いわば限定された場所(閉鎖的だと語弊があるが)における開放できない女、解放しすぎた女、解放(く逃避)をする女...その女性の態様が少し怖く描かれる。
実家の民宿を経営する希(後藤いくみサン)、そこへ姉・栞(あんじサン)が突然帰ってくる。同じ頃、アベック客として雪子(志賀聖子サン)が宿泊する。その彼女たちは内面いろいろな悩み、問題を抱えている。平穏な生活を送っていた希を刺激しだし、日々の(もしくは蓄積されていた)憤懣が爆発する。
さて、栞は東京でAV女優(単体)、希は地元で結婚(男は旦那しか知らない)、雪子は男を騙し奪金品のAV(企画)女優という素性である。
栞の素性がわかり、結婚しようとしていた話が流れ...その地域の特性が現れる状況設定に小豆島がある。実に上手いシチュエーションである。

この出会いは、爆発する契機になり、自分自身の本性を知り人生が変わり始めることになった、かもしれない。厭らしいが本音が言える、思いを行動するという性差に関係なく人間が思っている感情が打つかってくるようだ。
当日パンフで中村氏がインド映画 グル・ダット監督の言葉を引用し「いつか自分が狂うんじゃないかという恐怖を持っている。孤独というのは本当に重苦しくのしかかってくるものなんだ。」と書いており、続けて「…小豆島を舞台にした孤独な女性たちの物語です」とある。しかし、それが生きるということであり...というと何故生まれてくるんだという禅問答になる。その孤独であるが、孤独はまだ耐えられる、しかし孤立は耐えられない...とは太平洋ヨット横断した堀江謙一氏の言葉であったような...。

その孤独の脚本作りを続け、次回作を楽しみにしております。
モーリタニアの空

モーリタニアの空

劇団PATHOS PACK (パトス パック)

シアター711(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい公演
人間が生きる...その様を庶民の目線でしっかり描く。そこに現代社会が抱える問題をさり気なくちりばめ...いや核心的に表現した秀作である。
登場する人々の苦悩と喜び、そしてそれを優しく見つめる...その俯瞰した世界観が場面に広がりをもたらす。
タイトルはアフリカ大陸にある国「モーリタニアの空」であるが、物語の”空”は日本、その理由は...

ネタバレBOX

一人の人間ドラマであり、同時に社会ドラマとしても骨太の内容を織り交ぜている。逆に社会性ある内容を個々人の視線で捉えた物語とも言える。どちらにしても拱手傍観でよいのか、という問題提起をしている。
 主人公という人間が、私という三人称の立場に変え、何も持っていない、誰にも知られないことは存在しないに等しい。この俯瞰したような表現と、擬人化したカラスの群れ、それは暗に全体主義に飲み込まれる民主主義の危うさを暗喩しているようだ。飢餓・紛争、それらのヒューマン報道写真家の彼の存在。。。そこに民衆の視点が重なる。しかし、その彼が亡くなり、社会的な意味での危惧と残された彼女の人間的な心情という、表現的には正しくないが、硬軟の両面から捉えた秀作である。

他愛ない日常の暮らし出来事が、女性の凍って閉ざしていく心を優しく氷解させていくような、そんな温かさに救われる。日常の暮らしは生きている証、悲しい出来事は、人との繋がりの中で起こる些細な変化や刺激で忘却させてくれるかもしれない。それは人間が持っている良くも悪くも特徴だろう。それがなければ、悲しみだけが堆積してしまうのだから。

(2015.12.28追記)
2015年12月26日に「禁じられた歌声」が公開された。監督はモーリタニアに生まれ、西アフリカ・マリで育ったアブデラマン・シサコ氏。
町をジハード主義者が占拠し音楽は禁止、サッカーも出来ない。未婚のカップルは投石によって公開処刑される。この映画は2012年にあった投石処刑事件に基づく悲劇を美しい映像で描く。平和で美しい場所で悲劇が起きた。残虐行為を残虐に見せるだけではなく、暴力の異常さを際立たせる。必見

次回公演を楽しみにしております。
笛を吹け吹け 双子のフロイライン

笛を吹け吹け 双子のフロイライン

演劇企画ハッピー圏外

TACCS1179(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

大胆解釈した物語
ハーメルンの笛吹き男...怖い教訓イメージがあるが、この公演では虚実の伝承ゆえに、その不確実を逆手にとって大胆に解釈した物語。
そして演劇企画ハッピー圏外らしい、軽妙だがしっかり物語に引き込む魅力ある演出は見事である。
伝承...その謎を解く展開は、わかり易く本当に楽しめる芝居になっている。

子供のころに聞いた伝承は、教訓または風刺のようであったが、本公演では、政治情勢などが絡む人間ドラマになっている。その意味では寓話というよりは、この公演のような歴史書(編纂)と評するほうが相応しい。この物語の中心となる街の統治を巡る権力闘争(政争)は、そこに住んでいる人々の生活に大きな影響を及ぼした。知られた諺に「木の葉を隠すには森に隠せ」ということを聞くが、その悲しい苦渋の選択とは...。

ネタバレBOX

敗れた前領主の跡継ぎ王子を匿うため、街中の同じ年頃の子供の行方を晦ます。
不安定な政情時、その犠牲になるのは弱き立場の者たち。その行動をするまでの経緯を歴史書編纂という形で描く。その演出は、時計の針を逆回転させるようなシーンを挿入し納得させるような展開である。それがミステリー・サスペンス風で最後まで飽きさせない。
この物語を歴史編纂として紡いでいくが、ありきたりの歴史書の範疇を超える異形なものに仕上げている。双子の王子は生まれて直ぐ里子に出されるが、それを恨むこともしない。なぜそのような運命を辿ることになったのか、物語を遡行することから始まる。そして自分が生を享け、その役割を全うしようとする。そして第三者(観客)がその記録を見守るという形のようである。

伝承を大胆に解釈...あたかも在るような資料を博捜し、登場人物(街人)にインタビューをする。綿密に叙述させ、「在る」ことの謎を解明して行くようであった。物語は自在に時間軸を行き来し、空間を飛翔させ想像させる。この公演の最大の見せ所であった。

次回公演も楽しみにしております。
保健室探偵カネコ【終演しました!ありがとうございました!観てきたランキング1位獲得!】

保健室探偵カネコ【終演しました!ありがとうございました!観てきたランキング1位獲得!】

もぴプロジェクト

cafe&bar 木星劇場(東京都)

2015/08/26 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★

低ナンセンス...コメディ?
チラシに「やりたい放題企画VOL.1」とあるが、本当にやりたいことをやったのだろうか。何を伝えたいのか、観せたいのかが分からなかった。その訴えたい”何か”が整理できていないような感じである。やりたい放題でも構わないが、そこに観客を意識した”自分の思い”があったんだろうか。

この劇団は2回目の観劇となる。前回は新宿眼科画廊「メモリー・アンド・メモリー」であるが、その時はトラジディーのような展開であったが、今回はコメディ。その意味で、劇団主宰で作・演出の下平慶祐 氏の引き出しは多いと思う。

ネタバレBOX

梗概は、説明を引用すれば「主人公、金子太一は都内の東帝高校で勤務する養護教諭。 普段は学園の衛生環境を守るために活躍する彼だが、実は裏の顔は探偵なのである。しかし、それは誰にも知られてはいけない秘密。」ということで、その事件解決を図るらしいが...。そもそもどんな事件で、何を解決しなければいけないのか?
所々にダンスパフォーマンスも入り、明るく元気なのは良いが、もう少しこれは観てほしい!という主張がほしい。場面がバラバラでストーリーがまとまっていないため、その思いが伝わらない。

先にも記したが、主宰者は色々な芝居が描けると思う。
次回公演を楽しみにしております。
青い地球は誰のもの 「OUR BLUE PLANET」

青い地球は誰のもの 「OUR BLUE PLANET」

DGC/NGO 国連クラシックライブ協会

サントリーホール ブルーローズ(小ホール)(東京都)

2015/08/30 (日) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★

盛り込みすぎ
第一部「ミュージカル」、第二部「シンポジウム」という構成であるが、その組立て方に工夫が必要だと思われた。それこそ観せるのが先か、聞かせるのが先か...。中途半端な形での公演になったと思う。

”劇“が終わったところで席を立つ人が多かった。その後のシンポジウムで訴えたかったのではないか。しかし、そのシンポジウムも登壇者の自己紹介のような発言で、全体としてのまとまりがなかった(全体で約30分で、本当にアピールのみ)。

この”環境”の重要性は誰もが疑わないだろう。ただその考え方、取り組み方は人の立ち位置によって異なるだろう。

さて、第一部「青い地球は誰のもの 『OUR BLUE PLANET』」の登場人物は、演奏家、ミュージカル俳優、舞台俳優、声楽家と、それぞれ違う分野(音楽として括る)で活躍している人達である。周知イベントとして各分野の協力を得て成立していることも分かる。
その上で、あくまで観劇という観点での感想は、個々の素晴らしい演奏なりは楽しめたが、全体として魅力の融合は観られなかった。本当に特長が生かしきれていないのが残念である。

合唱で気になったことが…。

ネタバレBOX

合唱団は、小学生低学年から高校生またはそれより年上と思われるメンバーで構成されていた。確かに幅広い人たちに支持されている、というメッセージ、または次世代を意識したかもしれない。しかし、年齢層に幅があり、その音域、声量に差が出ていることは間違いないだろう。
せっかくこれだけ各ジャンルで活躍している人たちの協力を得ているのであれば、合唱団もそれ相応のメンバーで歌ってほしかった(合唱指導も大変だったと思う)。

ちなみに、自分の席の隣に合唱団...子供ゆえに出番がない時は座席でも身動きが多くて、集中して観ることが出来なかったのが残念であった。
劇作家協会公開講座 2015年夏

劇作家協会公開講座 2015年夏

日本劇作家協会

座・高円寺2(東京都)

2015/08/08 (土) ~ 2015/08/09 (日)公演終了

面白かった!!
8月9日(日) 《別役を待ちながら》 総合司会:鴻上尚史 鈴木 聡

劇作家協会の公開講座らしく?観応えのある内容であった。
このイベントを★評価するのは難しい。内容はもちろん素晴らしく楽しめた。また今後の観劇の参考になるようなこともあった。
例えば、「不条理」を描くとき、どの位置・場所にいるか分からなくなり迷子になるなどと、現場舞台でもそうならば、観客(自分)などはついて行くのが大変かも、など変に感心してしまった。

さて、当日は二部構成になったいた。
第一部【14:00ー あしたの別役】 《20分×3本》別役戯曲の抜粋
その後、鴻上尚史と鈴木聡が、各カンパニーに作品解釈や狙いを聞く。

上演順
○こゆび侍『にしむくさむらい』   [演出]成島秀和  [出演]背乃じゅん(こゆび侍)、宮崎雄真(アマヤドリ)

○□字ック『或る昼下り』   [演出]山田佳奈  [出演]堂本佳世(□字ック)、他

○あやめ十八番『向こう横丁のお稲荷さん』   [演出]堀越 涼  [出演]大森茉利子、金子侑加、笹木晧太(以上 あやめ十八番)、他

[トーク出演]大森茉利子、金子侑加、成島秀和、背乃じゅん、山田佳奈、堂本佳世

第二部
【16:00ー わたしの別役】
○ 「別役実」×「ケラリーノ・サンドロヴィッチ」対談映像
○劇作家たちが「別役実」の人と作品を語り尽くす。登壇:岩松 了、鐘下辰男、坂手洋二、宮沢章夫、渡辺えり 。

9.1迄に追記

BABELL

BABELL

BABELL

新宿眼科画廊(東京都)

2015/08/28 (金) ~ 2015/09/02 (水)公演終了

満足度★★★

熱演 「インターホン」
この集団...BABELLは、独自のイマジネーション揺るがない個性、変わり者だから描ける不思議な世界、を観せてくれるという。居酒屋ベースボールの異端児と自認している彼らが綴る物語...初単独公演らしいが、その演技は熱かった。全体的には好感が持てる公演であった。

ただ、話の内容は分かるが、その展開というか構成で少し気になるところも...。

ネタバレBOX

梗概は、親友である恵吾と啓祐、それに恵吾の彼女・幸子を中心にした三角関係。それに啓祐の友人2人が関わり、些細なキッカケで人間関係が壊れていく様子が描かれる。

さて、気になったのはシチュエーションである。
啓祐が彼女を奪うのではないか、という恵吾の猜疑心はなんとなく分かるが、自殺を図るキッカケが...彼女に聞かせるためのハーモニカ奏を啓祐が先に行ったからか。
もう一つ、この三角関係に直接絡まない啓祐の友人2人の存在である。終盤は交わるようなストーリーであるが、別展開という印象が強く違和感があった。
また、ありえないピアノのシーンなど、敢えての演出であり、何を伝えたかったのか観せたかったのか理解に苦しむ場面もあった。

芝居という虚構の世界を承知で、それでも、ありそうな設定と考え難い設定という微妙な感じは、少し落ち着かなかった。

総じて役者の演技は安定しておりバランスも良かったと思う。

今後の公演にも期待しております。

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