深海で聴くリリーマルレーン 公演情報 劇団ガソリーナ「深海で聴くリリーマルレーン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ブラックコメディ...面白い
    ザムザ阿佐ヶ谷劇場には何回も来ているが、このような舞台配置は初めてである。立体感があり躍動的な演技も観られるが、一方、醒めた目で俯瞰するような感じも受ける。最近話題になった出来事や人物を取り入れ、軽いギャグを発するなどコメディのようであるが、その描く内容は近い将来起こるかもしれないと思わせる、少し怖い話である。
    その底流にあるのは人間讃歌であろう。


    ネタバレBOX

    舞台は階段状の客席も含め、上手・下手に二分し、出入り口側を舞台にし、その反対側(通常の下手側)を客席にする。舞台には事務机が3つとそれぞれに対面するようパイプ椅子が置かれている。

    物語はハローワークでの職紹介という面接場面から序々に不穏な情勢に変化していく。仕事に就くという当たり前のような行為が、超インフレによって金の価値が失われ、それと同時に働くことの無意味さも示す。経済・金融至上主義が破綻し紙幣は紙くず同然。なにしろタバコ1本が600万円の時代である。そんな中、金を稼ぐため女達は一番古い職業へ...逞しい。
    また季節が夏日、それも43℃、47℃という猛暑日が続く異常気象...ハローワークの中は涼しいと何かと集まってくる。
    そして、不穏な情勢...いつの間にか沖縄県が独立し琉球国となり、パスポートなしでは自由に旅行できない。箱根の山々が噴火し要警戒指定地域になる。
    極めつけが、中国・韓国・台湾の3カ国連合軍が攻めてきて、果ては東京に空襲警報が鳴る。

    この平和で、小市民的な出だしから経済金融問題、自然環境問題、軍事政治問題などが、パラレルワールドとして描かれる。ハローワークで情報交換していた人々が、この破壊的な状況においても、なお活き活きとして前向きに生きようとする。出征の赤紙が来る状況でも、それぞれ想っていた男女3組が合同で挙式する。その結婚式...通常であれば紙吹雪であるが、札束が舞う。それも1千万円札、5千万円札、1億円札、5億円札、さらには5千億円札(肖像は松田聖子、裏面は印刷する余裕がないため白紙)という。札がゴミ袋に入れられ捨てられるくらい価値が無いのだ。

    一見あり得ないような展開であるが、もしそうなったらという仮定の積み重ねと各トピックスが絡み合い、まったく否定できないのではと思わせるところが素晴らしい。些細な場面の云々よりも大局的に楽しめる、ブラックコメディである。そして、不穏な状況になっていることを誰も教えてくれない、教えてもらっても理解できない、というセリフは心に刺さる。

    そして、この場面ごとに暗転する際にかかる曲...タイトルにある”リリーマルレーン”は本当にマッチしており心に沁みた。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/09/18 19:14

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