御話-おはなし-
にびいろレシピ
シアター711(東京都)
2015/04/01 (水) ~ 2015/04/05 (日)公演終了
満足度★★★
雰囲気のある公演
舞台中央にさらに舞台を区切ったような二重構造で、その周りは回廊のような感じである。女性の昔話の内容に沿うように濃密な台詞の応酬がある。
その演出は、舞台中央と回廊のような所を出入りまたは周回し、時にその動きが手足を突っ張ったコンテンポラリーダンス(本当はもう少し適切な表現があるが、差別用語)のようで、少しコミカルに観える。
キャストは全員女性で、その艶のようなものも醸し出される、独特な雰囲気のある芝居であった。
ネタバレBOX
知っているような御話が断片・断編的に展開しているようだ。それがまとまっているのか、それとも御話の繋ぎ合わせが、全体の物語を構成しているのだろうか。単に思考する観方では、その内容を捉えるのが難しいかもしれない。完全に抽象的表現でもなく、かと言って挿話の連なりの御話でもない。そこにテーマ、主張している内容を理解しようとすると理屈の数々を...。
この公演では、意識と無意識の境界を彷徨うイメージである。その不思議な感覚が、自分の中で漠然とした「言葉にならない想い」や「~な感じ」という曖昧な意識に言葉(御話)を当てはめると、その意識の領域が顕在意識に引き上げられるのだろう。その世界感は悠遠・幽遠。その表現は優婉・優艶である。そして、その先には奥深い情動があるのだろうか。
頭で考えるクセがついているため、感じることが退化しているかも。自分の視野、思考の自由度の広がり、発想も豊か、柔軟にしてくれる公演かもしれない。
それでも、観客(自分)は物語(筋)を追い、その描かれた内容をしっかり捉え、その世界観に浸っていたいと思った。やはり心の余裕のようなものがないのかもしれない。浮遊感は不安定で落ち着かない。自由度よりも具現化した表現を求めるのが好みである。
次回公演を楽しみにしております。
満州戦線
タイニイアリス
タイニイアリス(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
素晴らしかった!
競演 東西南北 AliceFestival 2014の一環として劇団コルモッキル(fromソウル)を招聘し公演したもの。
当日配布のパンフには、現代韓国人のルーツを探る、苦く痛烈なブラックコメディ...との謳い文句が印刷されている。
公演の印象としては、”親日”的であり、戦時中はそうであったのか、という疑問も残るほどだ。同時に、現在の日本メディアによる韓国の日本に対する反日報道に違和感も覚えた。
本公演は観応えがあり、2回劇場へ足を運んだ。2回目は「競演 東西南北 AliceFestival 2014」の最後の公演にして、実質的なタイニイアリス閉館公演になっている。
上演は韓国語であるが、舞台上部に日本語字幕が映し出される。
ネタバレBOX
当日パンフから...1943年3月、満州の首都、新京。 朝鮮から留学し、満州国陸軍軍官学校(実質的に大日本帝国陸軍士官学校)を卒業した飛鳥(アスカ)の卒業を祝うために朝鮮人の友人たちが集う。彼らは満州でそれぞれ患者を診療し、詩を書き、キリスト教を布教し、市役所の公務員として働きながら暮らしている。
卒業祝賀パーティーの最中、飛鳥の妹がコチュジャン、朝鮮味噌などを持って朝鮮からやってくる。しかし、彼らは、祖国独立のために闘う独立運動家たちを匪賊と呼んで憎悪したり、朝鮮の味噌壷は虫がわいて非衛生とこきおろしたり、不倫がばれリンチにあっても日本人と結婚し後ろ指さされることのない日本人の子を生み育てたいとを願ったり...。
そのようなストーリーに、「同期の桜」「君が代」、「旭日旗」「軍刀」「御真影」という極めて日本を象徴する歌や形が道具として使用されていた。特に軍歌や軍旗(現在も使用している)をイメージするものを登場させていることが、現代韓国で上演される場合にどう受け止められるのか...そんな思いもするような公演であった。
そこには逆説的に、日本に対して歴史認識を鋭く突きつけたのでは...そんな思いもするような芝居であった。
いずれにしても考えさせられる内容であり、観応えがあった。それは構成もさることながら役者の演技力が素晴らしい。実に軽妙・重厚という使い分けが良かった。
素晴らしい公演をありがとうございました。
演劇集団/反(韓国)「家を去って」
一般社団法人 日本演出者協会
タイニイアリス(東京都)
2015/03/14 (土) ~ 2015/03/16 (月)公演終了
満足度★★★★
「家を去って」...また来日して観せて!
競演 東西南北 AliceFestival2014 の一環として演劇集団 反(fromソウル)を招聘し公演したもの。
公演はギリシャ神話をモチーフにした悲喜劇のような話。舞台構成はプロローグ、エピローグと6場から成るが、”場”における時間の長さは随分と違う...そこに描きたい思いの軽重と、それを特長付ける演出の妙があった。
さて、公演の中で印象に残るセリフとして、人間は色々なことを考えるから”戦争”をおこすのだと...。その対比になろうか、人間は考える葦である...という言葉も有名ではないか。
上演は韓国語による。
ネタバレBOX
物語は当日配布のパンフから...ギリシャ神話に託して始まる。自殺した娘の命日、家に居なかった父親が失職して7年ぶりに帰ってきた。そこには、他の男を愛した妻と娘、拳銃を持った息子がいた。家に巻き起こる激しい波風は家族のすべてを破壊し、一人残った息子は家を出て行く、まるでオレステスのように...アガメムノン王、娘のイピゲネイア、そして王の息子オレステスが想起できる。
話は過去に遡る...母と娘は同じ男を愛してしまい、娘は愛した男を撃ち、自殺する。この部分は回想シーンとなっている。そして父親は家に居なかったのではなく、閉じこもっていた...邂逅シーンは最後の6場で怒涛の如く明らかにされる。
この回想シーンを具体的にしているのが2場と5場であり、その間の3場と4場は神話を比喩した芝居になっている。このストーリーは、具体的な場と観念的な場を上手く観せるという演出の巧みさによって印象付が強調された。
本当に面白い公演をありがとうございました。
伯爵令嬢マリツァ
東京オペレッタ劇場
内幸町ホール(東京都)
2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
楽しめたオペレッタ...
なんとも直情的に描かれた話...作曲:E.カールマーン 原台本:J.ブランマー&A.グりューンヴァルトで、訳詞/台本:角 岳史 氏である。
ピアノとヴァイオリンの美しい音色にあわせ、情熱的な愛の物語がはじまる。
ネタバレBOX
内幸町ホールという観客が舞台を身近に感じることが出来る手頃な空間で繰り広げられる、熱い恋の物語...借金で無一文になった若き伯爵タシロは、妹の結婚持参金を得るため、身分を隠して農園の管理人として働いていた。農園の主人である伯爵令嬢マリツァは財産目当てに近づいてくる男にうんざりしていた。しかし、真面目に働くタシロが気になり、恋心が芽生える。この二人を中心にマリツァに想いを寄せる男爵やタシロの妹リーザが絡み、コミカルな恋愛物語が進む。
出演者の歌声はもちろん素晴らしいが、それと同じくらいに演技が楽しめた。さて男女の恋の駆け引きと情熱的な訴えは、作品を大いに盛り上げ魅力的なものにした。
次回の公演も楽しみにしております。
frequency/ありふれたこと・波長
Sayeh Iran theater group(テヘラン)
タイニイアリス(東京都)
2015/02/20 (金) ~ 2015/02/22 (日)公演終了
満足度★★★★
国家と平和と想いと...
競演 東西南北 AliceFestivalの一環としてSayeh lran theater groupを招聘し公演したもの。この作品はイラン・アカデミック賞を国内外の演劇祭で10指に余る賞を受賞した新進気鋭 Morteza.Mirmontazemi 氏が演出を担当している。
本公演は、原語上演でペルシャ語の字幕が映し出される。その言語に堪能であれば、すんなり理解できるであろうが...。しかし、当日パンフに粗筋(6情景)が記載された資料が配られる。
これは長い年月 国のために戦い続けた兵士の物語で、今、彼は普通の生活を送っている。彼は生まれ故郷で普通の生活をしている。しかし、その描いている夢物語は...
言葉や映像に書かれていることが分からなくても、その想いは十分に伝わった。
ネタバレBOX
結論は、この男は既に亡くなっており、現世での想いを綴った物語である。
その芝居の冒頭は料理番組かと思うような、野菜を切り刻む。そして突然にゾウの話へ転換する。そのゾウの話は空腹へと繋がる。そして鶏の話へ...鶏の羽を毟り取る。その鶏はチキンとして戦争へ行く。
暗転と比喩の連続であるが、そこには国情の関係で直截できない事情があるのか、もしくは自分の感性が鈍ったか。
殺戮、空虚(空腹)、戦争...戦地に行く兵士がイメージする光景が逆回転するかのようである。その情景がシュールに描かれ、最後は男が横たわった姿になる。そこは墓場…死んでやっと故郷で眠ることができる。その怖いまでの抵抗と平和への願いが心に響く。
実に見事な公演であった。
舞踊劇『葉衣HAGOROMO』
千代田区立内幸町ホール
内幸町ホール(東京都)
2015/03/24 (火) ~ 2015/03/25 (水)公演終了
満足度★★★★
樋口一葉作品の持つ”言の葉”の美しさ
樋口一葉の代表作「闇桜」「十三夜」「にごりえ」「たけくらべ」の4作品を、その言葉の独特な美しさと情景をチェロとパーカッションの音色にのせて描いた公演である。
樋口一葉...いわずと知れた明治初期の女流作家であり、その短い生涯に美しくも儚い、そんなイメージの作品を残している。多くが短編であり、本公演はその内容のダイジェストが描かれているので、樋口作品を90分程の上演の中で楽しむことができた。
この原作を芝居と日本舞踊で観せるという贅沢な演出であり、明治という時代の雰囲気を十分醸し出しており、秀逸な公演であると思う。
また、トピックのように、一葉の貧困(生活苦)を描く一方、2004年から発行されている五千円紙幣に肖像が新デザインとして使用されていることを引用し、その時代を経た皮肉...そのユーモアのある演出も楽しめた。
当日配付のパンフから.. 「舞踊・音楽・演劇(朗読)で表現する一葉の世界」は見事に表現出来ていた、と思う。
ちなみに、樋口一葉は現在の千代田区内幸町の長屋で生まれた、そうである。
次回公演も楽しみにしております。
『蝶ゲンボウ』(チョウゲンボウ)
ひげ太夫
テアトルBONBON(東京都)
2015/03/24 (火) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
組体操の見事さ…話は深い
単に組体操という演出の素晴らしさだけではなく、脚本も観応えある内容になっている。
やはり組体操の演出について書かなければならないだろう。河、ジャングル、城など、あらゆる形あるもの、見えるものを体現させる技術は素晴らしい。そして、その情景・情感も表す表現力の巧みさ...舞台上、ほとんど休みなく動き続ける体力と集中力(これが切れたら危ない)には脱帽する。
ストーリーは勧善懲悪であるが、その展開は凝っているが面白く、大人も子供も楽しめるものになっている。劇場には多くの子供も来ており、その演出の珍しさだけではなく、内容も楽しんでいるように見受けられた。
確かな冒険活劇であり、娯楽性に富んでいるから約2時間...その圧倒的な見世物(好い意味)を楽しめる。
次回公演も期待しております。
カテゴリーボックス
9-States
小劇場B1(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
物語が立ち上がり…(Bエリア)
閉鎖病棟の人間(家族)関係が進まず、堂々巡りをしながら出口が見えない不気味な雰囲気が立ち上がってくる。苛立ち、孤独、悲しみ…色々な感情が入り混じった閉じられた世界感がよく現れていた。
やはり、Bエリア の方が観劇するには適していたと思う。Aエリアに比べ幅広空間(床パネル2枚分、約60~80㌢)は大きく影響していると思う。
ネタバレBOX
芝居において、人間の目は左右の動きには即応できるが、遠近に対しては反応が鈍くなった(自分だけかもしれないが)。その意味では Bエリア の方が観やすかった。まず、役者の動きも舞台奥から現れて Bエリア に並ぶようにして演技する。一方、Aエリア からは、奥行きのある演技を観ることができるが、その動線が一直線上にあるようで変化に乏しい。また舞台セットのソファーがBエリア に面して置いてあることから、Aエリア からは父親(ほとんど腰掛けている)は他の役者の人影で見えないことが多い(特にAエリア下手側:大型モニターが見やすい側)。
演技の動きにも少し工夫が必要であると思った。
次回公演も楽しみにしております。
カテゴリーボックス
9-States
小劇場B1(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
差別と区別…(Aエリア)
閉鎖病棟における心的または脳内…彷徨というには、硬質であまりに説明口調だったという印象を持った。この芝居内容であれば、何でもありの世界を描けるから、あまりカテゴリーライズせず、もっと自由に表現してもよかった。
ネタバレBOX
インナーハウスという閉鎖病棟における心療実験的な話は、仮想家族による日常会話の積み重ねである。ところが、その話...例えば皆でピクニックに行く話し合いは遅々として進展しない。いつも曜日は”月曜日”で次の”日曜日”が来ない。
この家族における人間関係(個々人)の距離感が、まさに「仮装」であって自分の本心を曝け出さない。疑心暗鬼で虚々実々の台詞が、ちょっとしたサスペンス風で観応えがある。ただ、多重人格における心理的な描き方は、少し言葉(台詞)遊びのようであり、説明口調になっていたのが残念に思えた。
言葉の概念として、普通、常識、真実...は分かったような気がするが、それを表現しようとすると、案外難しいもの。本公演では、普通を数の論理、常識は枠内・外の区別、真実は...閉鎖病棟だから何が真実かは分からない。話の逆転した思考が面白いが、少しカテゴリーに拘り過ぎたかもしれない。
次回公演も期待しております。
花影
enji
OFF OFFシアター(東京都)
2015/03/20 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
経験差によって観方が違う
現代社会の重要課題にして、人間の尊厳という個人と家族問題でもある。自分は、公演にあったような経験をしているため、胸にこみ上げて来るものがあった。
深刻なシーンもあったが、あまり暗くならないよう演出上の配慮があった。
ネタバレBOX
公演は、2つの話が同時進行し、一人の人物を介して交わる。しかし、それは相当な偶然で強引な結びつけだったと思う。
認知症の女性入居者(元高校教師)とその家族の在りようと、その入居先にいる老人とその息子の確執ある父子関係が描かれる。息子の父親に対する嫌悪(若い頃の自分勝手、女癖の悪さなど)と、事故による車椅子生活に対する苛立ちと失望を抱えた30代男...。
この30代の息子が元高校教師の教え子であるという偶然の再会。さらにこの男が高校時代に起こしたとされる事件が明らかになるが、その事件の被害者と目される女性が施設の職員として働いているという偶然の重なり。もしかしたら女性職員が敢えてこの施設で働いていたかも...。
それぞれの話が交錯しながら、認知症の女性(忘れることで純真さが増す?ような設定)が、周囲の人間を温かく包む姿が愛しい。
既に鬼籍の母親を見るようで胸が締め付けられた。ちなみに元高校教師の夫も癌で余命いくばくもないということであったが、この状況設定も自分の時と重なり、その時の想いがよみがえった。
老いた先にあるものは...ということを改めて考えさせられた。
今後の公演にも期待しております。
コロラド
いびき
新宿眼科画廊(東京都)
2015/03/20 (金) ~ 2015/03/24 (火)公演終了
満足度★
合わなかった(女性バージョン)
自分の感性が鈍ったかもしれないが、本公演は何をテーマまたは主張したかったのか理解できなかった。
説明にあった脱獄シーンに興味を持って観ただけに残念な描き方だった。
ネタバレBOX
監獄内での女性囚人の会話は、普段よく見聞きするような「嫌らしい」「いじわる」「悪口・陰口」の類…別に収監されている状況にしなくてもよい。興味を持った脱獄の手口は、警察内部の手引きという安易な方法。拍子抜けするような話で残念だ。
演技…というよりコントを見ているようだが、わざとらしい笑いネタでは、真に笑えない。ドタバタ騒動は見苦しかった。
次回公演に期待しております。
モルフィンの伽唄
企画団体シックスペース
荻窪小劇場(東京都)
2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★
幻想的であるが...
照明は公演全体を通じて薄暗く、時に妖艶もしくは幻想的な雰囲気を醸し出すような色彩光を照射する。そのビジュアル的な観せ方は魅惑的であった。
ネタバレBOX
衣装は妖しげな演出効果を上げるため独特であったが、その統一感があったのだろうか。自分にはその意図が分かりかねた。支配人のチャイナドレス、(紅い花/母親)役の赤い肌襦袢...薬物に侵され堕ちたイメージだろうか。その割には髪は梳いており、襦袢も洗いたてのようだ。
さて、舞台上は、4個のBOXを置いただけで、その組替え、積重ねで現実状況や心象風景を説明する。使用しない場合は隅に寄せ、スペースを広げて舞踊(男性だけの群舞...中毒患者の苦痛表現か)する。群舞姿は力強いが、その苦悩度合いの多くまたは大きさを表現したのだろうか。
ストーリーは、薬物による幻影...そこで繰り広げられる世界観は神学的、哲学的なもの(登場人物名が、エンゼル、アダム。ちなみにモルヒィン、ヘロインもいる)...それは抽象的な表現になっており、その演出も有りかもしれない。しかし、話を進めるための伏線(例えばシャルルの腹にある傷跡)は、その後の話にどう繋がったのか。説明(回収)しきれているのか疑問に思った。
演出上の重要な問題として、上手・下手のそれぞれ中2階に相当する場所(上手では階段途中か踊り場)での演技は、場内両端の客席からは見えない(見切れ)。このようなことは、稽古時にチェックするべきであろう。
今後の公演に期待しております。
鷹と雀
劇団ORIGINAL COLOR
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2015/03/20 (金) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★
ふわふわ感
各地の領主が治める街は、「富豪区」と「貧民区」に分かれており、それぞれを「鷹」と「雀」という鳥に比喩し、端的にいえば、羨望・対立の構図になっている。実は、もっと根深い話であろうが、公演の印象としては掘り下げが足りなかったと思う。
比喩は、貧民区の住人が書いた一冊の本...鷹は翼を大きく広げ高く飛ぶ、雀は小さな翼で高く飛べない、と貧富の差を嘆いたもの。
ストーリーはストレート、演出は特色なし、演技はキャストの力量差が見て取れる。
主張したいことは何となくわかるが、芝居としての印象が薄かった。
ネタバレBOX
「富豪区」と「貧民区」の堺は、高い高い壁で隔てられている。この各区域の成り立ちと、その関係性がよく理解できなかった。成り立ちであるが、例えば江戸時代の士農工商のような身分制度、ヒエラルヒーなのか。序盤の会話からすると貧富(イメージ概念は「下町」と山手」)という経済的なことかと思った。終盤になって貧民区の民(叛乱分子)の処刑という話になり、支配・被支配層という対立構図が分かる。貧民区における不自由さ、叛乱を起こす原因・動機は...その描きこみが足りないと思う。
舞台に設けられた窓(枠)...そこから見える富豪区の風景とは、それが観客、少なくとも自分にイメージ出来れば良かった。情緒的な演出ではなく、力強い人間ドラマに仕上てほしかった。
今後の公演に期待しております。
子供の時間
劇団俳小
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
不合理、理不尽な行為への怒り
久しぶりに観た「子供の時間」(リリアン・ヘルマン作)は、脚本が優れていることは承知していたが、その内容を余すところなく観せた演出と演技は素晴らしかった。
上演時間は2時間50(途中休憩あり)であるが、最後まで飽きことはなかった。
ネタバレBOX
わがままな子供のちょっとした嘘...これが大きな波紋を広げ、せっかく築いた寄宿舎が潰れる。この理不尽な行いは、子供の行為ということ、また社会(世間)の同性愛に対する偏見が相まって破滅へ追い込まれる。しかし、これは表層であって、その実は子供の持っている無邪気で悪意のない行為が、実は恐ろしいこと。また社会に理解されない性癖は、それこそ男女という性差だけではなく、人間本質に対する差別そのものにほかならない。この鋭い問いをどう描くか、そして観客はどう感じるか。自分は本当に観せる芝居であり、時代を経ても色褪せることなく感動を与える作品であると思っている。それを劇団俳小は見事に観せて、そして魅せてくれた。
次回公演も期待しております。
誰も見たことのない場所2015
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2015/03/13 (金) ~ 2015/03/19 (木)公演終了
満足度★★★★★
自殺を取り巻く状況が赤裸々に...
この劇団の公演はやはり素晴らしかった。この公演は「自殺」にまつわる体験談を積み重ねる...取材を通して得た、当事者でなければ語れない貴重な発言を役者の体を通して紹介していく。その生身の証言が本当に観る者の心に響く。「ドキュメンタリーシアター」という手法は、観客に向かって語りかける、それは「自殺」を考えた当事者の思いがそこにあるからだろう。
さて、この劇団の演出であろう、ストップモーションから始まり...自殺しようとする者の逡巡が現されており、ラストは...
ネタバレBOX
ムーブメント...運動いや生きている。顔を上に向け両手を挙げて、手のひらを大きく開く動作にホッとする。
日本の自殺率は、発表機関によって統計数値が異なるが、いずれにしても世界の国の中でも高率だといわれている。
この「自殺」に関わる人々を取材しているが、その自殺に追い込まれた原因の追求は...。本公演は個人レベルの視点からの「自殺」の印象が強い。
その取り巻く状況を赤裸々にした先は......やはり、その示唆になるようなものを描くのは難しいのでしょうか。
多くを書くには心が苦しくなる。本当に見事な内容だった。
次回公演も楽しみにしております。
忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/03/11 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
知らぬ阿呆に観ぬ阿呆…同じ阿呆なら観なきゃ損・損
史実のうち、確認できていない部分を創作し、演劇らしい新解釈を加えた面白い内容だった。その軸にこれまた闇の世界で蠢く集団に光を当てて、自由度を広げる手腕が素晴らしかった。また、観せ方としてミステリアスな部分も取り入れ、3時間(途中休憩あり)近い公演にもかかわらず飽きることはなかった。
この劇団の公演はいつも多くのキャストが出演する群像劇であるが、今回は若手バージョンの公演もあり、キャスト陣の厚みも感じた。
ネタバレBOX
時は戦国時代(織田信長が織田家当主になり、本能寺の変で死亡したとされる迄)、その終焉とも言える大阪夏の陣(大阪城落城)を遠目に回顧話をしている3名がストーリーテラーとして登場。
後の豊臣秀吉が伊賀の里出身の忍者、本能寺の変は豊臣秀吉、徳川家康、明智光秀の3武将共同謀反という設定。織田信長、明智光秀の遺骸は発見されていない、もしくは正確に確認できていない。それを根拠に明智光秀は後に天海僧正になったと...。
伊賀忍術を駆使し、時の権力者と渡り合うエンターテイメント...その奇想天外なストーリーが本公演の魅力であろう。脚本・演出の面白さだけではなく、演技もコミカルでありながら、迫力あるシーンをしっかり観せる。そして魅せる。
今後もこのような楽しい公演を期待しております。
うーまくー
さるしばい
OFF OFFシアター(東京都)
2015/03/11 (水) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
沖縄のゲストハウスは心温まる
沖縄のゲストハウスを舞台に、そこで生活し、または利用している人々の心温まる話。そこには診療所も併設されており...。
この劇団はいつも日常の出来事をデフォルメして描きつつも、その奥には人間讃歌が流れている。自分は、前回観た公演「どっかこっか」のように強く印象に残る結末でなかったことが少し残念であった。
当日は最前列(ミニ椅子)もぎっしり詰めた満席状態...約2時間は窮屈であったが、芝居は面白かった。
ネタバレBOX
ゲストハウスの住人は、元経営者の おばー(眞知)、現経営者 勝男(早戸 裕)、その友人 六助(天晴 一之丞)を中心に、大勢の人が出入りする。この人達の交流を通して精一杯生きる人達への讃歌になっている。また自然との共生をさりげなく訴えている。診療所に通う余命短い男の子と、姉の弟(既に亡くなっている)を想う追憶が交錯する終盤は感動的である。
コミカルでオーバーアクションのような演技と細やかでさりげない演出が見事に調和していた。
沖縄ではタイトルの「うーまくー」は、「いたずら」という意味らしい。少し気になるのは、おばー が台詞の中で「第二次世界大戦における沖縄戦のことを”いたずら”」という捉え方をしていた。多くの老若男女の方が犠牲になっているのに...。どうしても自分は違和感を持った。
今後の公演も楽しみにしております。
春ベリー
順風男女
しもきた空間リバティ(東京都)
2015/03/13 (金) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
笑った...
脚本家8名による短編コント12作品を女性キャスト7名が演じる。春光のような穏やかな気持ちにさせる良作ばかりであった。
しかし、作品の中に世間を騒がせた問題や芸能ゴシップに対する風刺...それも棘のように小さく控えめであるが、気になるように描く。
今回は何人か見知った女優の方が出演していることから観劇してきた。笑いコントであるが、そこはやはり芝居達者な方ばかり。観せて魅せていた。
ネタバレBOX
演目は次の12作品
1.春ベリー始まる
2.そこそこ
3.春とイケメン
4.血の通った教育
5.サンリオ万歳
6.オクラ
7.天使にショートコントを!
8.忘れられない男
9.禁断の幹事
10.トモちゃん、佐々木ちゃん、犬
11.イン・ザ・トイレ
12.天使にショートコントを!2
騒動...「2.そこそこ」では、パンを買いに来た客が、「そこそこ美味しいパン」という発言に対し、店員が怒り、客に土下座を要求する。
風刺...芸能ゴシップでは、矢●真●の浮気騒動などを取り上げていた。
コントであるから、あくまで楽しくカラッと観せていた。笑い笑い~~の連続であった。
今後もこのような楽しい企画を楽しみにしております。
妄想家の弟子
劇団ガクブチ
pit北/区域(東京都)
2015/03/12 (木) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
現代的な描写が…
秀逸である。特に芝居としての構成は面白かった。
しかし、そのモチーフの捉え方に一抹の不安を感じた。
それは自分のなかで、現代的ゆえに思うことであるが、一方その表現手段は見事であるという矛盾が…。
ネタバレBOX
まず、一抹の不安は偶像崇拝(宗教的意味合いは別)…現代的にはインターネットで実体がない世界で人生相談をするということ。相手がどんな人物かわからず、自分自身をさらけ出すという怖さ。
悩み事の解決者としてネット上では有名な”マリア”...いつしかその正体が気になり探り当てるため、過去ログを覗く利用者たち。さらにはIPアドレスまで特定する…個人情報の流出に繋がる暴走をした。
その結末は意外である。舞台上では顔を合わせ直接話をしているが、本当は通信手段を利用した虚構の世界であることを忘れてしまう。
マリアは存在せず、悩み事に応じて利用者(元相談者)が回答していた...結果として集団方式でサイトを維持していたことになる。
さて、危惧しているのは、架空の人物像を創り出し神格化することである。本公演では、その方向を肯定したような終わり方であったと思う。
芝居の観せ方としてはありえるかもしれないが、自分は架空の人物または死人による求心力を保つことに疑問を持つ。強権確立の手段に利用しかねないと思うからだが...。
今後の公演も楽しみにしております。
肝っ玉おっ母とその子供たち
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2015/03/13 (金) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
やはり”風”の公演は素晴らしい!
東京演劇集団風の好きなところは、中学校・高校へも巡回公演を行い、演劇を通して、社会に対する見方、考え方を投げかける...それもお仕着せでなく。
2014年からは文化庁”文化芸術による子供の育成事業”に基づく巡回公演で、学生による参加型公演も開始している。
前回公演ではシェイクスピア「ハムレット」の時も、劇団ラウンジに巡回公演先の学校名とその様子が写されたパネルがところ狭しと飾られていた。
今回公演「肝っ玉おっ母とその子供たち」は、北欧であった三十年戦争が舞台である。パンフには、演出の浅野氏が「戦争という限りない悲惨さの発見と同時に、このような苦境にあってなお生き続け、笑い、泣く、人間の原初的な力強さを発見してほしい」という想いを込めていると、記している。
その公演は本当に素晴らしかった。
ネタバレBOX
ブレヒトの「叙事的演劇」の代表作であり、各情景のはじめには幻灯、今回はストリーテラーによって幕開けする。
北欧・三十年戦争時代のドイツおよびポーランドが舞台である。主人公は「肝っ玉」とあだ名される女性アンナ・フィアリングで、軍隊を相手に商売をする酒保である。彼女にはそれぞれ父親の違う3人の子供がいるが、長男、次男は相次いで軍に徴用される。会計係の次男シュワイツアーカース(スイスチーズ)はやがて戦死し、長男アイリフは百姓を殺して略奪をしたために処刑され、残された唖の娘カトリンもまた、軍の襲来を町に知らせようとして射殺される。
「肝っ玉」は子供を次々と奪っていく戦争を呪いながらも、戦争を相手にした商売を最後までやめることはできない。
どんなことがあろうと”生きる”。その力強さは、最後の場面で荷馬車を一人で引きながら、大きく足を前に踏み出すと、砲声が響き鼓舞するようだ。
空気のようにあるのが当たり前と思っている”平和”。しかし、それを勝ち得るまでに流した先人の血と汗を無にしてはいけない。今を生きる我々が後世へ引き継ぐために...。
今後も素晴らしい公演を楽しみにしております。