傘と花火 公演情報 teamキーチェーン「傘と花火」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    母と息子たち...その想い
    プロローグとエピローグがあり、ありそうなシチュエーションだが、現実的ではないストーリーが展開する。芝居はフィクションの積み重ねであるが、描きたいまたは伝えたい想いは十分に表現していたと思う。時空間移動や脳内探訪するような奇抜さはなく、演出も中途半端なコメディ、シリアスでもない。本当に描きたい”母と息子たち”の想いを搾り出していくような、そう正攻法(?)のような公演である。

    脚本・演出のAzuki 氏と話をさせていただいたが、自分の思いをしっかり表現したかったと...。この真摯な取り組みが、劇団を応援したくなる。
    細かい点はいくつかあるが、芝居という大きな枠組みで考えた時、氏の中で形成した主張は表現できていたと思われる。

    ネタバレBOX

    まず舞台セットが見事に組まれており、観せる努力はさすがである。上手・手前にはベンチ、奥には向かいの家、中央が細道(私道か)、下手は主舞台となる秋月家の居間といったところ。そして二階は子供たちの部屋がある。

    秋月家は両親と息子2人の4人家族である。どこにでもありそうな家族構成である。二人の息子は性格の違いはあるが、仲は良い。父親は会社勤め、母親は夜の仕事をしている。波乱があるとすれば、長男が5日間ほど家出したこと、父親がリストラさせたこと。それが原因で離婚したことが描かれる。また母親の再婚(入籍なし)があるが、それ以外は日常の坦々とした生活である。
    じつは長男は生まれつきの心臓疾患があり、二十歳までに移植しないと危険であるということ。母親は夜の仕事で手術費用を貯め、自殺して自分の心臓を提供するという結末である。
    本当は家族の想いとなるところであるが、早々に父親と離婚してしまった。

    細かいことだが、少し気になったところが...
    まず、自殺後のことを考えれば、父親の存在は大きいはずであるが、家族の再生の努力が見えない。
    また、主筋ではないが、近所の千里という子の家族についても描かれるが、その話と秋月家は直接絡まない。思わせ振りの感じもした。

    やはり、母親と息子たちに絞った想い、愛情を表現したかったということであろう。主張したい点を鮮明にする...その力が観客の心を揺さぶる。
    ラストシーン...雨の中、縁側で線香花火をする兄弟。その煙の向こうに優しい眼差しの母親の姿。実に余韻を感じさせる演出であり、見事であった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2015/05/23 18:09

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