itomasa7の観てきた!クチコミ一覧

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D・ミリガンの客

D・ミリガンの客

劇団6番シード

シアターKASSAI(東京都)

2017/11/22 (水) ~ 2017/12/05 (火)公演終了

満足度★★★★

演技巧者達による見せ場の多い会話劇。
「長台詞あるよ」という噂は聴いていたけど、
本当に演者全員にかなりの長台詞+一人芝居パートあり、
経験の浅い役者だと一気に物語から冷めさせてしまうリスクとも取れるけど、
全員演技巧者と言える人達なのでそこでまだグッと惹きつけられる。
「Dミリガン」という謎の人物について二転三転する物語と基本ミステリ展開だが、要所要所に入れられた笑い要素に笑い7割ミステリ3割、ぐらい明るい劇調で観劇できた。
2017年最後の長期間お芝居らしいですが、もう1度観に行けたらいいな、と思わせるものあり。
※2時間という上演時間を全く長いと思わせなかった求心力はすばらしい。

愛だ

愛だ

X-QUEST

新宿村LIVE(東京都)

2017/10/18 (水) ~ 2017/10/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

「モヤモヤ」から「夢中」へ引き込まれる演劇。
最初「席がかなりはじで舞台が見えづらい、横の人がこっちに幅寄せしてきて邪魔、
アレ?ヒロインの声小さい?と思ったら俳優も?って事は劇場、座席や自分の耳の問題?」とか
色々モヤモヤから始まりました。
でも、舞台上で繰り広げられる悲劇を喜劇で表現するという試みや、
たくみな言葉遊び、激しい殺陣、色々な状況/心情を表現するダンスその他
色々なものを観ているうちに何もかも気にならない「夢中」状態にさせられました。
※最初邪魔に感じた隣席の人も舞台上の出来事に笑い泣きする仲間たちのように感じられるほど
そして(最近自分はすごく気にしているんですが)「メタな笑いのとり方」もX-QUESTは上手でした。
※メタな笑い=いわゆる舞台上の物語を演じている役者達の、素での視点や観ている観客達の視点に立っての笑いのとり方。
ダイナミックアクションと西尾維新ばりの言葉遊びがウリの劇団だと思っていたら、
コメディ的要素もここまで上手だとは。
ほんと笑いながら悲劇が進むのを夢中で眺めていました。
全ての役者のすべてのセリフを聞き取れた訳ではないのと、
X-QUESTならではの独創性から物語全てを正確に理解出来たとは言えませんが、
とてもとても楽しい時間を過ごせました。
PS.X-QUESTは脚本演出家が表現しようとするものに対して、
 ピースとして他劇団などの役者達を客演として呼びますが、
 ものすごくハードル高いんだろうなあ、と思いました。
 求めるものも「美しさ」「笑いとりの上手さ」「殺陣、ダンスなどアクションの上手さ」など
 様々なピースを、いつも集めてくる。
 選ばれた役者達は自分を誇っていいと思うんですよね、「とうとうX-QUESTに選ばれた」と。

ネタバレBOX

2つ
・物語のクライマックス、笑いの場面から急激に深い悲劇的な場面に移っていく所と、
 物語が完結しエンドロールさながらに役者が素に戻った瞬間に、
 何故か涙腺にくるものがありました。
・物語がクライマックスに向かい悲劇へ進む中エチオピア王がはけぎわに、
 「このくらいがちょうどいい」といった、あの言葉がすごく刺さりました。
 あれは何かの暗喩的なものなのかなあ、と。
 ・舞台演劇と観客数/劇場キャパなどのバランス
 ・笑いと涙、喜劇と悲劇のバランス
 など小劇場演劇が目指すべき方向性などに対するアンチテーゼ的な
 深い意味があったのかそれともなかったのか、それが知りたいなあ( ´ー`)
テノヒラサイズの人生大車輪

テノヒラサイズの人生大車輪

犀の穴プロデュース

犀の穴(東京都)

2017/10/11 (水) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

脚本90点、役者の演技は100点満点をあげたい。
帰宅した今、何を語ってよいのやら迷うので観劇直後のTwitterから抜粋。

正直期待していませんでした。
公開情報で自分が把握していたのは赤い作業服の役者のみ。
劇場を見てもどうにも大型セットを組み込めるような場所ではなさそう。
劇場へ入りフライヤーを読んで
「密室に両手を縛られ猿ぐつわをされて椅子に座らされた見知らぬ男女7人」
という所から、静的な会話劇かな、2時間は長すぎないかな?
などマイナスイメージばかり(知ってる俳優さんも2人だけだし)。
そして間違えて別劇団の公演と思って同じお芝居を2公演取ってしまっていた事も、
もし駄作なら次回分のお金だけ先に払って次回観に来るのやめようかな、とまで。

しかし予想は見事なまでにいろいろな意味で覆されました。
※ ネタバレにならなければいいのですが。
これは「静の会話劇」なんかじゃない、めちゃめちゃ動きまくって
場面も変わっての「動の会話劇」、
セットの少なさは役者の演技力、そして観客の想像力をフル活用させられる。
舞台上には7人の役者と7つの椅子(一時的に8つかな?)、あと縄だけ。
それを7人が巧みに、あるいは情熱的に演じ分ける事で
いくつもの物語とキャラと場面が現れて、そして・・・

役者さんについてベテランから若手まで、どのくらいの範囲で分かれているのか
分かりませんし、上手さも均等ではありません。
しかし、ベテランはベテランの巧みさで、技量が足りなければ情熱や
自分の求められるものを演じきる事で、見事に舞台上の7人は総勢100人近い
主要人物からモブまでを演じ分けていました。

本劇を観劇していて、自分がお芝居に何を求めているのかを改めて考えさせられました。
舞台上で表現される物語と演じる役者の感情から来る「感動(感情を揺さぶられる事)」と
お芝居という限定されたセットで演じられる表現から発生する
無限の可能性、観劇側の想像力/感性をどこまで刺激し、その世界を広げられるか、
でした。

そういう意味で本劇は脚本/演出に90点、役者が見事舞台上で表現しきった世界には100点満点を
上げたいと思いました。

ネタバレBOX

ネタバレを見て満足しちゃう人もいると思うんですけどね。
7人はそれぞれ生まれも育ちも境遇もバラバラ、
その中の5人はまったくつながりなし。
それが本劇の設定「7人が密室に捕らわれている」という状況から始まり、
それぞれの人物の背景を語る事から「犯人」を推理しようとし、
同時に脱出も進行して、5人の物語と
「犯人」をメインとした1つの物語で1本に線で結ばれる、というものです。
※ そこには少々のこじつけなどもあるので、脚本は100点、とは言えないですかね

ただし、「犯人」の5人への感謝と、協力者が見た「人生を諦めていた5人」
それぞれに対しての救いを与えた、という形、
また、5人それぞれの話が笑いから始まり悲しみに終わり、
そして「犯人」もまた同じような境遇ながら、5人への感謝(妻が笑って逝けた事)、
という形で物語に大波小波非常に沢山の感情の波を表現してくれたのが素晴らしい。

演じている役者さん達はアクティブな人ほど汗びっしょり、
赤い作業服を汗で濡らしてましたが、
それは「役者人生で得た、自分の演技の全てを出し切った」ホコリの証かと思いました。

観劇再開したばかりで、まだまだいろいろなお芝居に出会うと思いますが、
今日はいいもの観たなあ、と自分の感性では間違いなくいえますね( ´ー`)

PS.4000円ですがドリンク付き(アサヒスーパードライなど)です。お得だと思ってほしいなあ( ´ー`)
仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので 鰹&栄螺

仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので 鰹&栄螺

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターKASSAI(東京都)

2017/10/04 (水) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★★

基本は外さない劇団そしてお芝居。
決してTVやマスメディアなんかには流せないブラックなユーモアをふんだんに交えつつ
(禁止項目だからこそ面白い)、ベタなネタも含めて存分に笑わせた上で、
最後にちゃんとオチをつける。
劇団ごとのテンプレ、マンネリ、と言ってしまう事も出来ますが、
それを期待して自分は観劇にいって満足出来たのだからそれでいいかな。
ただ、鰹、栄螺と主役やキャストが多いに変わる事などフライヤーであおられた分だけ、
「2作品観るぐらいのお得感があるか?」とまで欲を持ちましたが、
あくまでも最初に観た方の作品に対して、どこが違うかの間違い探し的な差異、
といった所で2本観て、1+1=2ではなく1+0.5=1.5という採点になるでしょうか。
(まあ、Wキャストなんかよりは全然違う物語なのですが)
鰹、栄螺の順で観劇しましたが、鰹がベースの気がします、
ただし演技に粗が見えました(若干ですが)。
その点栄螺は設定の方に無理が見えつつ演技の方は安定していたかと。
※あくまでも10/08(日)マチソワでの感想になります。
あと爆笑を誘う笑いは演者も激しく声を張り上げる為でしょうか、
多くの役者さんが喉を壊しかけていたのが舞台公演後半戦どう観客の
感想に影響するかは気になります。
PS.2本で2冊のパンフ、そして快談CDとやら、欲しかったですね、
どんな裏話やキャストトークが展開されていたのか…今回は予算なかったので
買えませんでした( ´ー`)

2017/10/09(月)追記.すいません、当日思ってた事を書き忘れたので追記します。
この劇団の良さは「感情操作」の上手さにあると思いました。まず「笑い」でどこまでも観客のテンションをあげまくります。そうして動いた感情だからこそ、オチとなる悲しみやしっとりした話に対して、「悲しい」「優しい」などの逆の感情へそのままにプラス100からマイナス100まで、感情の振り幅を大きく伝達できるんじゃないかなあ、と。他の劇団で平たく話が進んでオチは泣ける話だった、みたいなのと比べると、
「なんでこのオチが自分にはこんなにも刺さってるんだろう?」と思う事があります(今回の劇も含めて)。

先輩、服を着てください

先輩、服を着てください

劇団東京都鈴木区

遊空間がざびぃ(東京都)

2017/09/14 (木) ~ 2017/09/24 (日)公演終了

満足度★★

ひさびさの鈴木区に期待しすぎた・・・

がざびぃの小椅子のお尻の痛さ、狭さを忘れていました。
観劇中ずっとお尻、脚、隣の人に気を遣って集中出来ない面はありました。
その上で、小ネタで笑いは取れていました、物語も悪くアリませんでした。
しかし、役者の浮ついたような空気はなんだったのでしょうか?
客に向けて一発芸のようなギャグを連発し、(身内的な)客は大爆笑、
わたくしは「そんな笑うネタか?」と疑問形、
そしてあまりにしつこいギャグの繰り返しに女優が笑って演技ができなくなってしまい、
お芝居自体の空気が壊れました。
周りはこれにも爆笑していました。
しかし、脚本の緻密さや役者の演技力で笑わせるのは「お芝居」だとして、
ギャグの繰り返し、トラブルなどで客が笑うのは、
「笑われている」のであって、劇団の技量ではありません。
その流れで感動を呼ぶ場面に来ても、何も感じられなくなってしまいました。
※ 気分的に冷めてしまいました。

もう少し、しっかりしたお芝居をする劇団だと思っていましたが・・・

〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』

〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』

Aga-risk Entertainment

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2017/09/15 (金) ~ 2017/09/24 (日)公演終了

満足度★★★★

メインが1本か2本か、ブレが気になる

ネタバレBOX

「メモを取りながら伏線が回収されたかを確認しながらの観劇」という試みは面白そうだったが、
会話劇にメモ取りすると仕事モードに入ってしまうのでそれはしませんでした。
さびれた町内会あるあるな会話劇の二転三転する状況と各役の挙動には
爆笑こそしないものの常時笑いが溢れました。
ただ、本劇の本題となる「伏線」とその「回収」、これを無理にネタに盛り込もうとしだした後半に
無理が来たかと。
1.町内会会話劇
2.会話劇を神(?)の視点(?)から見直して、「全ての伏線は回収されなければならない!」という
  無理やり設定劇
の二段階になってしまったかと(それ自体悪い事ではないのでしょうが、1.で十分楽しかった自分に
とっては2.は1.を壊す行為になると感じられました)。

あと、劇中出てきた全ての「モノ」を伏線化する、という本激の主題は、
本来物語にある、「あ、あそこで出た内容って実はここにつながるんだ!」という
「伏線の発見」という楽しみ方を奪う行為である、というのも本劇を100%楽しめなかった理由かな、と。
出たものなんでも「伏線とする」というのは強引すぎるかな、
せめて「そういう世界観なりルールなり」をもうけて、
物語自体の道理を引っ込ませてくれていたら( ´ー`)
Yellow Submarine~ここは温泉宿…ん?~

Yellow Submarine~ここは温泉宿…ん?~

WAKUプロデュース

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/12/14 (水) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★

上手、とは言えないまでも、涙腺に来る作品
ひさびさのお芝居観劇。
期待しすぎた面もあるのか
・演技はブレて噛んでという面あり
・脚本も多人数と宿屋の歴史とを深く絡めようとして
 うまく構成できていない感あり
と、ハズレと感じる部分が(昨年、一昨年の作品より)あったとは思います。

だけど、役者が1人また1人と演技を始めていく中で、
なんだか涙腺を緩ませられたりほっこりしたりする、
それがWAKUのお芝居なんだなあ、という
「WAKU魂」は押さえた作品かと思います。

ひさびさ役者の感情をぶつけられて、その共感覚だけで
かなり涙腺うるませられました。
※ いつもなら号泣まで持ってける所が本作は惜しかった、かと。

Run for Your Wife

Run for Your Wife

ラフィングライブ

Zeppブルーシアター六本木(東京都)

2016/11/30 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

爆笑につぐ爆笑が起きていました
あれ?前回も同様の重婚ものじゃなかったでしたっけ?
重婚してる男と友人、妻2人と巻き込まれていく色々な人物達が
その場面場面で色々な嘘設定で表現され、
それが面白おかしく広がっていくさまをうまく、
わかりやすく表現していると思いました。

ただ、隣の人の体臭+デオドラントスプレーかなにかの
臭いがすごすぎて、せっかくの周りの爆笑の渦に
なかなか自分が入り込めなかったのが残念です。

もう1度観に行くので、次回こそは舞台上のみ、物語のみに集中し、
自分も腹を抱えて笑いたいなあ( ´ー`)

はんなり☆夏語り〜絆〜

はんなり☆夏語り〜絆〜

はんなりラヂオ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/07/15 (金) ~ 2016/07/17 (日)公演終了

満足度★★★★

二度観で分かる妙味は多い
昨日、初日観た際には、
「面白みが分からない」など思ってしまったお話についても、
実は誰(演者)が誰(登場人物)の話を語るか、など
脚本/演出での妙味を出していたり、
という部分に本日は気づけました。

あと、やはり思ったのは
・ベテラン勢は経験以上に読み(語り)上手
 そのセリフ/ナレーションから、情景を上手に空想させてくれる

・若手については、まだ表現力の豊かさまでは感じられませんでしたが、
 その分を「感情を入れる」「情熱でカバー」しようとしていたり、やはり好感が持てました。


そして、朗読劇、ということでお芝居的な演技(所作)を
(ほぼ)無くしている為、
喜怒哀楽いずれかの感情を強く持っている役は演じやすいですが
(表情にも読み口調にも気持ちを乗せやすい)、

その部分があいまいな(色々と考えてはいるが、
それが脳の中でまとまっていないような曖昧模糊とした状態の)
役を演じる/表現するのは難しいと思いました。
(結局、「何も考えず」ただ読む/語る、が表現方法としては正しいのかしら?)

はんなり☆夏語り〜絆〜

はんなり☆夏語り〜絆〜

はんなりラヂオ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/07/15 (金) ~ 2016/07/17 (日)公演終了

満足度★★★★

群読でひさしぶりの泣き笑い
朗読は月1で聴いてますが、
群読からはしばらく離れてました(演劇自体も)。

で、ひさかたぶりの群読劇を聴きました。

3作品ありましたが、三者三様それぞれに
違った形でタイトルである「絆」について
語ってくれていて、
またTVその他で聴き慣れたあの口調での語りに、
引き込まれるものがありました。

年に1度は「はんなりラヂオ」ですかねえ( ´ー`)

ネタバレBOX

【思った事】
●うらぼんね
・ 奨学金を返し終わるまで子を作ろうとしなかったちえ子、
  その間に亭主は浮気で別の女との間に子を作ってしまった。

  親のない子として祖父に育てられたちえ子が
  祖父の「親のない子を作っちゃいけない」という想いから
  身を引かされる形になるのが、なんとも切ないなあ。

・ ちえ子に対しては「あんな男こっちから願い下げだ、別れちまえ」と言った祖父と、
  裏では土下座までして「ちえ子に悪い所があるなら必ず直させるから
  別れないでください」と懇願したという祖父、
  表と裏での祖父のその行動がまたちえ子同様涙でした。

・ 演劇上手とは言いがたいメンバーに対して、
  小ネタ(ジャンプネタなど)を盛んに仕込んでいたが
  これらは不要(原作の雰囲気を壊す、現場での観客との馴れ合いの感が強い)
  と感じられました。


●ぎっちょんちょん
・ 各演者の朗読自体には「上手さ」(漫才師とその子供、大阪人としての)も
  感じられましたが、物語自体(原作?脚本?)の方が
  その「人の良さ」を活かしきれない作りになっているかのようで、
  これはちょっと残念でした。
  
  例.常時笑わせ口調でのおしゃべりも、しっかりと笑いを取りきれない
    (笑いのネタ振りもオチも感じない)。

・ 「ぎっちょんちょん」という歌自体知らなかった事もあり、
  朗読の中にたびたび挿入されるこの歌(あるいは替え歌?)自体に
  感じどころ(笑いを狙ってる?、泣きをさそってる?)なども
  判断に困りました。


●約束
・ 少年少女が大人になる前に、
  遠くへ行ってしまう(奉公などで)が

  「5年経ったらまた会おう」
  (結婚の約束をするでもなく)「ただ会おう」
  という約束を胸に

  それぞれに「大人の苦労」を味わって、
  汚れてしまった(と本人達は思った)けれど、
  それでもまた再び会う事ができた、というこのお話。
  
  待ち人である少女が出てきてからの下り、
  ひとえに「男の度量」があるかどうか、をどっちなのか?と
  少し物語の展開にワクワクしながら観ていました。
  
  自分の身の悲運を語った少女に対して、
  声をかけることすら出来ず一度は逃げる少女を
  追えなかった少年(いや若者)、
  
  「ああ、この物語はこうやって、”生きる望み”を失った2人が
    この先を生きていく話なのか」
  と思わせた所での、
  少女の家へ現れた(探しだした)少年、
  
  「2人とも、大人の苦労を知ってしまったんだ、
    だけど、もうどんな事が会っても2人は離れちゃいけない」
  には、胸にぐっと来るもの、江戸時代など、貧乏な町人達の中には
  こんな子供から大人への階段があったのではないか?
  と感じさせるものがありました。
  
・ 阪脩先生の語り口調(ナレーション)に、
  TV番組で聴いていたのと同様引きこまれてしまいました。
  
  少年、少女などの拙さの残る読みに比べて、
  ナレーションの上手さでまず本物語に引きこまれてしまいました。
  
  これぞベテランの味!


ひさしぶりにCoRichに感想書いたわあ、
もっとお芝居も観たいなあ( ´ー`)
朗読劇 私の頭の中の消しゴム 8th letter

朗読劇 私の頭の中の消しゴム 8th letter

天王洲 銀河劇場

天王洲 銀河劇場(東京都)

2016/04/27 (水) ~ 2016/05/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

すごい「体感」をした
相葉裕樹×日笠陽子回観劇。
10年来の売れっ子声優日笠さんの朗読芝居が観たくて(聴きたくて)の
観劇でしたが、これまた2人ともすごかったです。

「演技上手」な上にしょっぱなからめちゃくちゃ情熱的に演じる日笠さんに対して、
他者の男役と違い最初テンション抑えめ粗野さも控えめな相葉さん
(悪く言うと台本を「読み」に入ってしまってる?、
「台詞」を置きにいってしまっているのかな?と感じられた)、

日笠さんのカオルと色々な意味で対照的な演技でした
(元々本物語の最初は水と油な2人なのを表していた?)。


それが物語の起伏(出会い~色々あって~結婚~アルツハイマー~別れ~結末)の
流れと共に、日笠さんは更に情熱的な演技を振り絞り、

相葉さんは段々と気持ちが移り変わっていく、
人間は一人だ、俺は誰も信じない、とかたくなだった気持ちがほぐれていき、
カオルを愛するコウスケになっていくさまがとても良く描かれていました。


カオルのアルツハイマー症状が悪化していく中、
それを愛し続けようとしながらも苦しみ助けを求めるコウスケ、
この2人のありようが観劇しているこちらにも実体験
(アルツハイマー症の家族を持った人)のように
ヒシヒシと伝わってきて
「どうしようもない苦しみ」を感じ、
神様を恨んですらしまいました(´;ω;`)


本組み合わせに限らず、
本劇の良さはそれぞれの演者の組み合わせがそれぞれに

コウスケ×カオル

2人の物語について、
役の個性と物語の起伏に合わせた感情表現を

他の組み合わせと同じものにするのではなく、
あくまでもそれぞれの演者で考えて表現している
(実際の演出指示がどうなっているのかは分かりませんが)、
というのがとても面白いなあ、と思います。


この数年で10組以上のコウスケ×カオルを見つめてきましたが、
同じ台本であっても1組として同じお芝居は存在しない。

各男性演者は、
コウスケをちょっとオチャラケさせてみたりめちゃくちゃ怖い人にしたり、
情熱的で涙もろくしたり感情表に出す事の不器用さを表現しようとしたり、

それに対してカオルの方は元々持っている
20代成人女性としての顔から、アルツハイマー告知の衝撃、
アルツハイマーゆえの記憶障害への怒り、悲しみ、
そして幼児退行していってしまうなど、
それぞれの喜怒哀楽狂気などについて、
各女性演者が思うがままに演じていく。


各組それぞれ同じ台本でも観ていて飽きない
不思議な面白さがあります。

今年の観劇前は、
「今年あたりで本劇も卒業かなあ」などと考えていましたが、
これだけ面白く演じてくれる役者陣が
まだまだいるのならば、
また来年再来年とまだまだ本劇の
「新しい組み合わせ」と「進化」を見届けたい気持ちになりました。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 説明
  日笠陽子さんは10年来のベテランにして超売れっ子声優。
  相葉裕樹さんは俳優、バンド経験などを経て、声優としても
  最近伸びてきているらしい(詳細不明)。


・ 日笠さんの感情表現がすごすぎた。

  元々アニメなどで多々目にしている安定のベテラン声優日笠さんの演技なので、
  「演技上手」(感情表現や発声その他多彩な演技をするのだろう)
  というのは予想がついていましたが、

  しょっぱなから予想を超えて感情的に、気持ちを乗せて、
  情熱的にカオルを演じて来ました。

  恋愛するカオルの喜びと悲しみなどの感情の起伏があまりにも激しく、
  「少々飛ばし過ぎかな?」
  ※ 序盤からここまで大きく感情表現を表に出してしまうと、
    物語の盛り上がり場面でもこれ以上に起伏が付けられなくなってしまうのでは?
    そうすると「物語」全体としては、案外山のないお芝居になってしまうのでは?
  など、少々心配もしました。

  しかし、物語の盛り上がりに合わせ、更に隠れていた「情熱」をぶつけ、
  本当にコウスケ役の相葉さんと真っ向勝負を挑んでいたように思えます。

  ※ 大声優日笠陽子の底の深さを改めて知りました。
    アニメその他画面越しだけじゃなく、
    朗読/群読その他色々な場で
    もっと色々な人たちに「生の演技」を観せるべき女優さんだと思いました。

  ※ (多分ですが)今まで見てきた本劇の中で初めて
    アルツハイマー症の妻とそれを支えようと苦しみもがく夫の姿が、
    観客としてよりも実際の経験のように「体感」させられたかと思います。

    その要因の1つは間違いなく日笠さんの「演技上手」とそして
    何よりその演技に込められた大きな熱量にあったと思います。


・ 相葉裕樹さんの演技プラン(と言っていいのかな?)もとても上手でした。
  コウスケについては、今までの色々な役者陣の演技から
  粗野/粗暴にして乱暴っぽさがあり(実際現場監督も殴るし)、
  過去のトラウマから人生については悲観的、
  それを口調その他から攻撃的に演じる人が多かったですが、

  相葉さんのコウスケは少し落ち着きも持った、
  「母親に捨てられたトラウマ」を抱えた悲しみからか
  何か諦めというか達観というかを持った少し深みのあるコウスケを
  うまく表せていたのかな、と。

  ※ 最初はその落ち着いた語りように
    「台本を”読み”にいってしまっている?」
    「台詞のひとことひとことを(落ち着いて)置きにいってしまっている?」
    と、今までのコウスケ像と違うものを感じてしまいましたが

  それがカオルと恋に落ち、自分のトラウマから喧嘩別れして、
  偶然の再開で「この世で1番大切なものを知り、そして変わる事を決意する」、

  段々と進む物語の中で、少しずつ優しさや内面に隠していた本当の心情、
  そして悲しい結末に向けてどんどんと表に出てくる
  カオルへの悲しいほどの愛情とを、

  コウスケの「変化していく気持ち」といった形で
  その語り口調を変化させていく事でうまく表現していました。

  ※ クライマックスでのコウスケはもう「別人」というほど、
    色々な経験からその語り口調などが変化していました。

  ※ 物語を読み込み、
    「こう演じていこう、こう変化をつけよう」と
    考えての事だと思いますが、
    それが見事にカオルの熱量と噛み合って、
    面白い舞台に仕上がりました。


・ 2人での合わせの練習で決めた事か、
  それぞれがたまたま同じ事をやろうと思ったのか、
  ブレスその他の使い方が朗読劇の場面場面に
  単なる「台本読み」から違った空気を与えていました。

  ため息だったり、
  その他色々な台詞の間に「音にならない音」「台本にない音」を
  入れてくる、それが他の組み合わせではなかった、
  面白い表現として入っていました。


・ 一応ツッコミ
  噛み、台詞トチリ、台詞かぶり(相手の台詞に台詞をかぶせてしまう)、
  などは思ったよりあったかも。


多分ですが、初めて本劇を演じる組み合わせは皆、
本物語の内容を演じる中で惹きつけられ、
いつの間にか気持ちを乗せて演じてしまうようになっている、
その込められた情熱が観客の気持ちを惹きつけ、
演者と同じように涙させてしまうのかな、

そういう意味で良い「物語」だなあ、と思います。

※ そろそろ巨人が優勝を逃し「だから原はダメだっつったろ!」のくだりは
  時代に合わせて変えてもいいかな、と思いますが( ´ー`)
朗読劇 私の頭の中の消しゴム 8th letter

朗読劇 私の頭の中の消しゴム 8th letter

天王洲 銀河劇場

天王洲 銀河劇場(東京都)

2016/04/27 (水) ~ 2016/05/08 (日)公演終了

満足度★★★★

面白い組み合わせ
前田公輝×徳井青空回観劇。

ここ数年毎年観劇している朗読劇ですが、
銀河劇場での開催は今年が最後、との事。

序盤、粗さとも練習不足とも取れる部分が一部気になりましたが、
物語の進行に合わせて両役者ともに気持ちが入っていき、

最終的にはかなり観劇側の感情を引っ張って泣ける、
良い朗読劇に仕上がっていました( ´ー`)

ネタバレBOX

【思った事】
・ 調べたのですが前田公輝さんは
  TVドラマ「ごくせん」などに出ていた俳優さんのようです。
  
  徳井青空さんは(一時期お芝居もやっていたのを観たのですが)、
  基本的にTVアニメ「ラブライブ」のにっこにっこにーなど
  特徴的なキャラを演じるのが上手い声優さんです。


・ ここ数年毎年銀河劇場にて開催される「私の頭の中の消しゴム」ですが、
  今回、「あ、この声優さんがやるんだ、ならとりあえず取っておこう」と
  徳井青空さん、日笠陽子さん、回のチケットを取ったものの、
  その後気が変わり、

  ※ 声優目当ての声オタ客が劇中に平気で「ワーキャー」叫んで
    作品にひたる気持ちを邪魔されるのも嫌ですし、

    主催側が有名声優を使って集客を見込むような朗読劇が最近多く、
    ちょっと辟易していたのもあって

  「声優さんその他で朗読(劇)を観る/聴くのはやめよう」と思い、

  徳井さんファンの会社の先輩の娘さんに譲ろうとしたのですが、
  GW前の平日日中とあって「さすがに無理」との事。

  自分も平日は厳しいんだけどなあ、と
  本劇を楽しもうという気持ちはちょっと少なめでの観劇開始でした。


・ 序盤(これは最後まで?)
  ・ 前田さんの男役の発声のテンションが序盤から
    一般人としてのリアルさが感じられないほどに高く

    ※ ここまでテンション高い人普通いないよ、と思ってしまうほど
      ? 気負いすぎた?

    冷静に演技をこなす徳井さんの女役と噛み合わないものを感じました。

    ※ これは「合わせ」練習の不足から来ているのかな?と邪推

  ・ 徳井さんの方は演技としては気負うものもなく難なくこなしていたのですが
    単語単語に滑舌の悪さが出てしまい、
    聞き取れない部分が結構な頻度で出ていたように感じました。

    ※ これを「練習不足?」と捉えました。


・ しかし、物語の進行・盛り上がりに合わせて、
  2人とも熱が入ってきたのか、気負いも抜けたのか

  ・ 前田さんは役の感情の上がり下がりを、
    モロに自分の感情として情熱を乗せて演じ

  ・ 徳井さんは声優としての声の演技の上手さもあり、
    20代OL女性、
    アルツハイマーゆえの幼児退行、
    抑えられない衝動を示すキレキャラ、
    などの演じ分け、発声分けを見事に演じ

  と、この一見凸凹コンビのような組み合わせでの朗読劇(群読劇)が、
  本劇のクライマックスに向けての盛り上がりに合わせて
  見事に噛み合っていく様に、観ていて気持ちを惹かれました。

  ※ 演技が似てくる、という訳ではなく、
    前田さんはあくまでも「感情的」に
    徳井さんは感情の前にまず「しっかり演技」として
    演じていたかと。

  ※ 終幕時、周りでは鼻をすする音多数でした。


・ GW前最後の平日である事、日中である事、
  また本劇が数年来公演され続けている事、などからか、
  本回は集客的にはどうも弱かったようです。

  ※ 昨年、一昨々年、いずれかに来た時は
    3階席からの観劇だったのですが、
    今日は2階席、3階席は使っておらず、
    かつ1階席にも空きがちらほらと見えていました。

  銀河劇場最後の「私の頭の中の消しゴム」、
  かつお2人がこれだけの好演をしていたのにもったいないなあ( ´ー`)と


・ 特に序盤「テンションが高すぎ」ととらえた前田さんの演技は、
  時間経過と共に物語とその男役の気持ちが
  本当に乗り移っていたのでしょう。

  本人自身涙をこらえきれず、叫びすぎて声も枯れて、
  
  ※ これを「役者」としての拙さととってしまう事も出来ますが、
    私は往年の尾崎豊の歌い方のような「情熱」を感じました。

  まさに観客に対して感情をぶつけてくる演技をしているな、
  と感じられました。


  終演後のカーテンコールの中で、
  徳井さんに励まされているように見えたのも
  本当の心情(感情を震わせる事とそして泣き疲れ、精魂尽き果てた?)
  だったのではないでしょうか?

  という事で、
  今まで役者×声優
  (男×女いずれかが役者でいずれかが声優)の
  組み合わせは多数見てきたものの、
  
    演技上手×演技上手

  の組み合わせは多かったですが、
  ここまで感情を乗せて演じる人と、
  その演技を演技上手(徳井さん)が受けて生まれる
  新作品としての「私の頭の中の消しゴム」というのが
  また新鮮で面白かったです。


以上、長文失礼m(_ _)m
神芝居

神芝居

X-QUEST

王子小劇場(東京都)

2016/04/20 (水) ~ 2016/05/01 (日)公演終了

満足度★★★★

ド迫力でまばゆくてワンダー、ワンダー
これ自体はいつものX-QUESTのお芝居にも言える事ですが、
今回の作品も過去作品に負けず劣らず
舞踏と武闘とで四面舞台を所狭しと駆けまわる各役者陣、

ひさびさの演劇観劇はとてもド迫力で、
きらびやかな衣装や演出がまばゆくて、
そして(??)マークが沢山浮かぶぐらいに
ワンダーワンダーな作品でした。

※ 感想の詳細は全部ネタバレになってしまうので
  ネタバレの方に。

ネタバレBOX

【思った事】
・ (特に高田淳さんなど大柄な)
  俳優が更に大きな衣装をまとって舞台上で踊って戦って
  四面舞台を縦横無尽に行き交う様は
  王子小劇場のどこから観ても間近な席では
  かなりの迫力と圧力を感じました。

  そして多種多彩な衣装のきらびやかさ、
  それぞれが交じり合って生まれる
  舞踏と武闘(殺陣)の繰り返されるさまは
  まさに圧巻で、
  トクナガさんが各作品に込めてくる「今回のテーマ」は
  なんだろう?と思考する脳のほとんどが
  きらびやかな舞台の演出で占められてしまうほどでした。

・ しかし、「約100分」と聴いていた割に
  待てども待てども「答え」が見えてこない。

  謎のままの3勢力(?)の絡まりにまったく
  テーマが見えない時間が長く、
  「今回は昔やっていたような、テーマ自体観劇して感じたままで考えろ」
  と観客に投げるつもりなのかな?
  と思ってもみたり。

・ (時計を見ていた訳ではないので、
  どのくらい時間経過してからか分かりませんが)
  ・ 天皇制
  ・ 原爆投下
  ・ 生物の発生と進化
  ・ 科学の進化・進歩
  ・ 戦争で生き残った男
  など、観劇していても把握しきれないほどの
  「テーマ」性をもった内容が投入されるのが
  ちょっと遅かったかな?と感じてしまいました。

  ただし、劇自体には圧倒されまくり、
  自分の中は興奮しまくりでしたし、
  今回珍しく「早くネタバレが知りたい!パンフレットが買いたい!」
  などの感情が湧いたので、
  複数回観劇前提のお芝居なのかな?
  とも思ったりしました。

・ 戦争で「逃げて」生き残った悲しい男を
  塩崎さんが演じだして、急激に
  舞台の求心力が上がった気がしましたが(涙腺に来る力を感じました)、
  ただただ、タイミング的に遅かったかなあ、
  もう少し早めに色々な種明かしに入ってもらえたら、
  と思いました。

・ 王子小劇場でも色々なお芝居を観劇しましたが、
  やはりこの四面舞台としての構成で、
  1番迫力のあるお芝居を見せてくれるのは
  X-QUESTだなあ、と改めて実感しました。

お芝居としては十二分に体感したものを楽しませてもらいましたが、
「答え合わせ」部分が1度では理解しきれなかったので、
☆は4つとさせていただきました。

公演期間中にもう1、2度観に行きたいとは思いますが、
時間あるかな。。。

PS.初日である本日は女性客が大変多く、黄色い歓声もすごかったです。
  プロレスを観るような感覚で、という意味で
  歓声も悪くはないのですが、
  もう1回、今度は「舞台とシンクロ」できるぐらいに
  少し落ち着いた雰囲気で観劇したいですね( ´ー`)
縋り雨

縋り雨

牡丹茶房

王子小劇場(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

「この方向のお芝居の一つの到達点」は言い過ぎでも「観て良かった」とは胸を張って言えます
事前パンフで主催が「女性の絶望を描いてきた」とあり
(何故か「退廃の美」という言葉と勘違いしてましたが)、

また本お芝居の始まりの印象からも、
「きっと説明通りのラストになるんだろうなあ」と
「その一方向にのみ突き進む舞台って最終的に面白いのかな?」と
少し疑念も持ちながらの観劇でしたが、

物語のスタートラインから段々と数限られた
登場人物達の事実/背景が浮かび上がり、

そして同じようで同じでなく、
救いようがないように観せては度々
「もしかして救われるのかな?」と
想像させられるようなギミック的要素もあり、

と2時間10分の大作でしたが
最終的にとても「楽しませて」いただきました。

今後、この方向のみでなく多方面のお芝居を作るなら
追っていきたい劇団かな?と思いました。

ネタバレBOX

【思った事】
事前パンフの説明、
お芝居始まりの女性3人の「母親を失った(事に起因する)」という同一の不幸、
舞台上に観える空気感から、

※ 舞台上の登場人物達の行動が裏目裏目に出て
  悲劇が更なる悲劇を生んで終わってしまう舞台の脚本/演出方法、
  名前なんて言うんでしたっけ?(チェーホフとかが得意とした一形態だったか?)

「悲劇の本質を見せる形で進んでそのまま終わるんじゃないかな?」と思ってました。

事実、女性3人を取り巻く登場人物と3つのグループの背景が見えていく中で、
「幸せになるきっかけ」となりうる人物が存在しないように見えたので、
きっと最初思った通りに「不幸に始まり大不幸に終わるのだろうなあ」と。


しかし、舞台上の役者陣について、
きっと「悲劇」という設定に向けてのお芝居をする、
と心に決めているからこそのブレのない演技と
そのひたむきさ(熱心さ)を感じ、

お芝居の世界に引きこまれ(共感、反感、嫌悪その他色々な感情で同調し)、
いつしか観劇の時間感覚を見失い、
「物語の盛り上がり的にそろそろ終わりかな?」と思ったタイミングでの、

(大きな波ではありませんが)
「もしかしたら、この物語に救いが登場する?」と
思わせられるような場面が何度かあり、
何度も色々想像させられては騙されて、が楽しかったです。

例.女子高生一家の不幸の源である「父親の暴力」に対して、
  漫画家志望が偶然にもその父親とゆきずりの情事を行う事になり、
  「ここで漫画家志望が父親を殺せばとりあえず女子高生は(ある意味)救われるかな」
  など。


また、物語についても

・ スタートラインの単純に「母親を失った3人の女性」という
  同一の不幸から始まり

・ その内容の違いと
  更には女子高生、カウンセラーの不幸に比べれば
  「自分の不幸は甘すぎる」と思ってしまう漫画家、

  しかし「それでも自分はやっぱり不幸なんだ(としか思う事が出来ない)」という
  2人との距離(2人への引け目?)を感じて
  段々と異常な行動

  ※ 女子高生の父親と知ってなお関係を持ち、
    「初めて満たされた」と。
    そしてカウンセラーの弟とも関係を持つ。

  を取って、同じ不幸を持った3人から2対1の別の立ち位置に立っていく。

  同様に女子高生:カウンセラー、カウンセラー:それをカウンセリングする漫画家志望、
  という移り変わりも興味深い流れでした。

という変化の過程について、
それぞれの心理状況を推測/共感しながら観劇していて、
なかなかに見えない各役の「心」の部分が動く作品だなあ、と。


何度か「ここで終わりかな?」と思わせておいて、
(その後更にその先の場面をを用意して)
引っ張った部分は「長すぎ」の感もありましたが、

最終的に、深い悲劇を抱えた2人は救われ、
浅い悲劇と思っていた1人が救われない、
という形、その状況がとても良かったです。

1.女子高生
  親子の関係を修復する為に病気の少女を演じ続ける事を決意する。

2.カウンセラー
  弟、叔父と通じ合う事が出来た、家族の形が復活出来た、と本人には信じこませておいて、
  弟、叔父のサイドからは
  「もう姉はまともじゃない、姉の言う通りに家族を演じてみせなければ本当に殺される」
  という恐怖支配。

3.漫画家志望
  ゆきずりの男たちとの関係を持ち続けた中で、
  誰の子か分からない子供をみごもったその後で、

  初めて同棲していた男性が「愛/結婚を誓ってくる」というタイミングの悪さ。

  そして、最終的に男性と別れ家も出て仕事もなく1人、
  「これからどうしよう」と立ち尽くす(だったかな?)の場面。


など、今まで色々見てきた
「笑った」「泣いた」「(アクションが)激しかった」「面白かった」「(テーマについて)考えさせられた」、
という爽快さなどで終わるお芝居とは一線を画した、
「気持ち良さ」とは違う何かで観客の心を刺してくるお芝居だったなあ、と。

※ 女子高生に対して父親がチーズケーキを買って帰り~の場面だけは
  一瞬家族の絆が復活するのか?と想像し涙腺が緩んでしまったかな。


・ 最後の最後の数度噛みがあったくらいで
  本当に集中してましたね、役者陣全員。


(良くなかったかな、と思った点)
・ 漫画家志望が女子高生の父親と偶然の出会いから関係を持つのはともかく、
  更にカウンセラーの弟とも偶然に出会って関係を持つ、
  というのは物語的に2対1の立ち位置を作るにしてもご都合主義的過ぎですかね。
  せめて、「漫画家志望がそうなるよう仕向けた」という物語を
  盛り込んで欲しかったかなあ、と。

・ 人数が少ない事もあり、役者陣が別役も同時に演じていたのですが、最初それが分からず、

  「カウンセラー宅に居座る叔父が漫画家志望と関係を持った?」
  と誤認してしまい、

  その後、漫画家志望が
  「不特定多数の男性とゆきずりの情事を重ねる事でのみ自分の心の空白を埋めていた」という
  これまでの登場人物(男性)全員が別役(ゆきずりの男)として登場しての
  心象風景的な描写で初めて
  「あ、別役をやってたのか」と理解したり、

  逆に漫画家志望が偶然女子高生の父親と会ったシーンは
  「あ、本当にこの人は女子高生の父親(役)の場面だったのね」と、
  更に物語が進んでから気づく、などこれまた誤認しかけてしまいました。

  可能なら人自体を、あるいは衣装ぐらいは分けた方が良かったかと。


途中まで、演技の良さや「悲劇の一方向」への観せ方の良さで
「☆4つかなー」などと思ってましたが、

後半でかなり物語に惹きつけられた上で単なる悲劇とは違った、
「優しさ」「狂気」など色々な結末を観せられた事で、

「こういう演劇には多分触れた事がなかったかな?」と思っていた自分には
とても「面白い」お芝居だったので☆5つとしました。
七転び八時起きの人々

七転び八時起きの人々

オフィス・REN

博品館劇場(東京都)

2016/01/15 (金) ~ 2016/01/17 (日)公演終了

満足度★★

役者による練られていない山なしオチなし長編コントのグダグダ感
ぴあのメルマガで山寺宏一さんの名前を見た時、
水島裕さんとの座組「ラフィングライブ」のイベント(演劇/朗読劇)かと
思ってチケット取ったんですよね。

現地でフライヤー見て知りましたが、
全然違う人達の短編、長編コントのオムニバス(?)でした。

最初2、3分の超短編を観た瞬間は「センスあるかも?」と思わせられましたが、
コメディアン/お笑いではない「役者」がやるコント、
(脚本がまずダメなのですが)
長編コントに至っては物語に山も谷もオチもない、
ただただグダグダと長いなんともつまらないコントの連続でした。
(周りで笑いが起きた「きっかけ(理由)」すら分からないぐらい
ただただグダグダでした。)

良かった所と言えば、
・ 短編ではセンスを感じた
・ 山寺宏一さんの喋りが面白かった
ただそれだけでした。

無駄な時間を過ごしました。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 最初、「母の控えの母がいる」というセンスのある(?)設定の
  短編にはクスリとしました。

・ その後に続く各長編、面白いと思える場面も0ではなかったのですが、
  物語に起伏がなく、ただただグダグダと同じような事の繰り返し。
  そして先が読めている。
  (最近観てませんが)お笑い芸人がやるコントと違い、
  会話/演技のキャッチボールから何から全く
  練りこまれていないものだと思いました。

・ 単に大声優「山寺宏一」のしゃべりに少し笑わせられたぐらい。

・ 1時間40分という長くもない時間の、
  中盤にも至らない時間に出演者陣トークを設けたのは
  構成が下手過ぎ、「オムニバス喜劇で笑わせる」という
  最初の趣旨がもう破綻している、と思わせられました。

そんなこんなで無駄な時間でした。。。
新年初笑いのつもりが激痛い時間になってしまいました。

※ また隣りのおっさんが時間を見ているのか、
  スマホをチカチカとON/OFFし続けたりと
  人の集中を完全に切られてしまいました。
  なんで、ああいうマナーのないヤツは減らないんだろう。


「山寺宏一」の朗読劇、演劇はハズレがない、
と思ってましたが、今回は完全にハズレでした。

ここまでツラい時間を過ごしたのは久しぶりかも。。。
『痕跡≪あとあと≫』◆◇終演。ご来場ありがとうございました!!!◇◆

『痕跡≪あとあと≫』◆◇終演。ご来場ありがとうございました!!!◇◆

KAKUTA

シアタートラム(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/14 (月)公演終了

満足度★★★★

観客の心に複雑な余韻を残す秀作
青山円形劇場での初演を観ていたので
真新しいモノ、驚くモノ、には出会えませんでしたが
作品としての面白さ、
今回特に(?)笑いの色(喜劇色)を強めて、
現実の悲劇的な物事との対比、
物語の締め方との対比、
という意味で観客の心に
「ただ悲しい」などの単純な気持ちとは違う
複雑な余韻を「あとあと」残す事になる秀作かと思いました。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 初演の青山円形劇場(囲み舞台)に対して、
  シアタートラムでどう挑むかと思ったら、
  対面舞台(かつ円形)という
  初演での観客席1面に近い形を取った事に、
  「新しい挑戦はないか」とちょっと肩透かしをくらった感じでした。

・ しかし、シアタートラムを使う事での
  演出面(照明/音響など)での強化、
  物語として(初演も同様だったかも知れませんが)、
  悲劇的な物事の重なりである物語の本筋に対して、
  舞台上の表現は喜劇と言って良いぐらいに
  笑いの絶えないお芝居として見せてくれた面などが
  物語の影の部分、ラストに対しての
  強い対比となって面白く観劇出来たかと思います。
  (笑えば笑うほど、事実面では悲しい、という・・・)

・ 各登場人物の「語り」の場面に
  今回特に力を入れていたような気がします。

・ ラスト近くの母親が自転車でグルグルと
  川沿いを走るシーン、
  母親は自転車で狭い舞台を回りながらも
  表情その他で演技を続けるという難しい場面でしたが
  腫れ物が落ちたようなすっきりした気持ちと
  まだ何か抱えるものがあるか?と思わせるような表情など、
  見事に演じて見せたと思います。

  初演でも気になりましたが、ラスト、倒れた自転車、
  あの時母親は息子の後を追ったのか、
  あるいは別の何かの展開を迎えた(ガンにより倒れたなど)のか、
  など、余韻が深いなあ、と改めて思いました。
義経ギャラクシー

義経ギャラクシー

X-QUEST

王子小劇場(東京都)

2015/11/18 (水) ~ 2015/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

王子小劇場でありがとうヽ(´ー`)ノ
二度観感想失礼します。
二度観して、細かい点への気付きもろもろもありましたが、
何よりも1度観と比べて求心力が少しも
下がらない事に「凄さ」を感じ、
その何よりのキーポイントは王子小劇場、
そして囲みリング舞台にある、と思いました。

舞台からの距離で舞台上の役者の演技(感情)と
物語の持つ空気(雰囲気)との伝播度合いは
変わってくると思います。

※ まれに演技や物語の起伏、空気感の作り方、
  演出のうまさなどでその距離を感じさせない
  お芝居というのにも出会う事がありますが、
  近くと遠くでお芝居を観るのなら、
  そして、それが
  「お芝居の世界にどっぷりと浸かりたい(客観より主観で観たい)」なら
  間違いなく距離は近く方がいい、と思います。

それがほぼ0距離(舞台そでまで使うのでほんとの0m)で
味わえてしまうのだから、
そして綺羅びやかな衣装での超高速ダンサブルな殺陣・ダンス、

そして王子小劇場ではあまり期待していなかった
照明/演出効果にまで凝りに凝りまくっているのだから
それはもう至福のひとときかと思います。

X-QUESTさんありがとう、王子小劇場さんありがとう、
2つの組み合わせにありがとう、と改めて今日思いました。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 表に書きましたが、王子小劇場はそれほど
  キャパの大きい劇場ではありません。

  (多分)囲みのリング舞台にする事で更に
  観客席数は減ってしまうものと思われます。

  それでも、観客が観て何を感じられるか、
  何を得られるか、をまず考えて
  毎回囲みリング舞台での舞台公演を行ってくれる
  X-QUESTさん+王子小劇場さんのコンビに感謝です。

  ※ 最近、集客の為に中箱、大箱を狙って、
    まったく舞台上から何も伝わってこない、
    というお芝居を観て、
    劇場と観客席の関係について色々と考える事が多くなりました。
    しかし、王子小劇場での囲みリング舞台なら
    まず「感情伝播は間違いない!」と思えるのがうれしいです。

・ 義経悲しいなー、あまりに悲しい源義経。
  そもそもの物語にしても(これも諸説なのかも知れませんが)、
  兄と弟の確執の悲しみ、

  そして本劇では「稀代のヒーロー」にして「戦(いくさ)好き」の
  源義経が怨霊となってまで、
  その波乱に満ちた生涯を繰り返し、
  「友」と信じた弁慶と仲違いをしてしまい
  かっこ悪くも泣いてしまう、
  そんな「カッコ悪さ」をもってなお、
  源義経は悲しいヒーローなんだなあ、と
  涙腺にひびきながらに思いました。

・ もう1人の主人公(いや、もう2人?)、
  義経に敗れたその日より主(あるじ)にして友、
  そう思ってきた源義経の為に
  最後の最後の立ち往生を向える弁慶(場面の名前あったんでしたっけ?)、
  そしてその友情を断つ事で、
  この無限ループを終わりにしようとする姿。
  
  そして、静御前(こちらは詳細は把握してませんでしたが)の
  腹の子であったとされるミエテルの
  宮沢賢治の世界観を超えてやってきた、
  源頼朝に父の仇(かたき)を討つよりも、
  ただ父(源頼朝)と遊びたかった、
  とする、ミエテル(本名なのかな?)、
  それぞれが悲しかったです。

  言ってしまえば「源義経ともっと旅(?でしたっけ?)をしたかった」
  と語った、源頼朝もまた悲しい人物だったのかも知れません。

・ 今回はいつも以上に演出(特に照明演出、音響演出)が
  カッコ良かったですね。

  ライティングと音響の上手さで
  ・ 銀河鉄道
  ・ 天の川
  その他色々なものを王子小劇場に表現してくれたのが
  新しい試みのようで楽しかったです。

・ 1度目は各演者の台詞回しのつたなさ(?)と
  説明の聞き取りづらさ、理解しづらさで
  (?自分でもどこが悪かった、と言い切れないのですが)
  ☆4つとしてしまったのですが、
  今回、のどを壊しかけていた方はいましたが、
  舞台上から伝わってくるもの自体には☆5つ、
  と思ったので評価を上げさせていただきます。

・ なしおさんの歌がほんと上手。
  そして、踊りもあの体格( ´ー`)とは思えないほど優雅に踊る。
  筋肉でできてるんですよね?

今後も「集客」よりも、「観客に何を与える事ができるか」を考えながら
王子小劇場+囲みリング舞台を続けて欲しいなあ、と思います。
(この体当たりの演劇を続ける為の協力(複数回の観劇など)なら
是がひでもしたいと思います。)
義経ギャラクシー

義経ギャラクシー

X-QUEST

王子小劇場(東京都)

2015/11/18 (水) ~ 2015/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

綺羅びやかな超高速ダンサブル演劇の求心力はすごい!
今回のX-QUESTさんは自分の好きなタイプのお芝居でしたね
(内容はネタバレの方に)。

物語に混乱させられつつ四角いリング舞台の上を
めまぐるしく豪華衣装の役者陣が
超高速回転ダンス+殺陣、そしてバレエ(?)要素まで。

内容には(??)と混乱しつつ舞台上から目が離せない1時間40分でした。

ネタバレBOX

【思った事】
・ X-QUESTさんのお芝居の中で、
  自分の好きなタイプの脚本/展開。
  
  目の前で簡単には何が起きているのか、
  物語の筋が分からない軽い混乱状態(トクナガワールド)の中で
  「テーマ」を語り、オチに繋げていくという。

  脳内でピースがカチリとハマる瞬間があるような。

  ラストの「諸説あります!」には、
  「ほんと、源義経ってこの多々ある諸説から英雄化した人物そのものだな」
  (モンゴルにわたってジンギスカンになった、とか)
  と思わされました。

  「笑い」で締めるのはX-QUESTにしては珍しい?


・ 序盤、役者陣の台詞がかぶってしまう(タイミングが合ってない)事が多く、
  ちょっと「調子悪いのかな?」と不安がよぎりましたが、
  激しいアクション展開が繰り広げられる中で
  そんな気持ちは吹っ飛んでしまいました。


・ 1時間40分といういつもより少ない時間の中にしては、
  「激しい」殺陣+ダンスなどの場面の比率が多く、
  「物語」部分がちょっと
  「解説」(ラップなどでの)に頼ってるかな、
  という舞台上の物語の起伏に少し薄さを感じました。


・ 1.弁慶との出会いから弁慶、義経の最後まで

  2.謎の男ミエテルと出会い、
    銀河鉄道で自分の歴史を追うという超展開部分
    +源頼朝の謎の台詞と行動

  3.現代の地方のイベントと宮沢賢治

  という3本のストーリーラインが進んでいく中で
  それらのつながり部分が見えず
  軽い「混乱」状態になりました。

  史実(?)パートはともかく
  その他はどうつながり収束していくのだろう?と。

  本編に全く関係しない静御前と狐の物語なども入っていました
  (そもそもは宮沢賢治つながりでネタとして入れた?)。

  そういった混乱の上でも舞台上の激しいアクションシーンの連続に
  いやがおうにも注目させられました。

  その上で、
  ・ 週刊モーニングの「ジパング」⇒源義経
  ・ 週刊少年サンデー「月光条例」⇒宮沢賢治
  などに最近注目したばかりなので、
  それぞれの物語には置いていかれずに済みました。


  しかし「みんなのヒーロー源義経像をぶち壊す」という
  触れ込みについてはどうだったかなあ。。。


  弁慶との劇的な出会い、強さから平家の打倒、
  そして兄との確執から悲劇的な最後をとげるまで、
  という悲劇の英雄的な側面。

  また、「実は生きていた」などの諸説が
  「源義経」を注目の英雄たらしめている事。


  その物語を
  「怨念により死ぬ事が出来ず、同じ時間軸を繰り返す源義経と弁慶」
  という設定にする事で悲劇の英雄から
  オドロオドロしいものやダークヒーロー的な何か、
  そして「死のうとするけど死ねない」と泣いてしまうなど
  等身大の「人間」として描こうとした事、
  などから「ぶち壊しきれたのかな?」、
  という所は観劇者各人判断が分かれるかも知れません。
  
  「かっこいいままだった」という人がいるかも。


・ 今日は(特に)劇場でアンケート書いてても
  自分で何が言いたいのか良く分からなくなってしまいました。
  (ひさびさの「混乱」ものだったから??)

  リング舞台への求心力は衣装/演技/アクション/セット/演出から◎、
  物語としては○~△、っていう所かなあ。
錆びつきジャックは死ぬほど死にたい

錆びつきジャックは死ぬほど死にたい

ポップンマッシュルームチキン野郎

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2015/10/28 (水) ~ 2015/11/03 (火)公演終了

満足度★★★★

PMC野郎+ぴあ=優しい(分かりやすい)作品?
PMC野郎+ぴあの結婚作品という事で、
「ポップンマッシュルームチキン野郎」という
いつものパンクぶりはちょっと少なめに感じました。

序盤から展開する各世界でのジャックの行動について、
すぐに「ああ、○○ってるんだな」という所までは分かりました。

その他色々分かりやすすぎる配役など
小劇場演劇というものの難易度を下げられるだけ下げた上で、
ちゃんと最後に感動を持ってきた、
という意味で面白い作品でした。

多分、子供とかが観ても喜べる作品なんじゃないかしら?

ネタバレBOX

【思った事】
・ 最初、バンバン変わる年表/年号に
  別々の時間が同時並行して流れるような
  理解するのが結構大変な感じの作品かな?
  と懸念しました。
  (ちょっと最近そういう疲れるタイプの演劇は嫌だったので)


・ 出し入れしながらグルグル回す盆については、
  もっとうまい仕組みを作れなかったのかな?
  と思いました(シブゲキの制約?)。


・ 最初2015年、2012年、紀元前(?)の2つの年だったかを
  飛び飛び、その中で機械のジャックは人を見守っている、

  「ああ、これは時を超えて”恋人”とかを見守る」とか
  そういうテーマの作品だな、
  という事はすぐに解りました。

  しかし見守ってる対象が「女性」に限らないので
  「アレ?子孫全員を見守っている?」
  などちょっとした謎かけも。

  本当の目的に関係ないはずの
  ベートーヴェンまでが見守る対象に入った時には、
  物語の広がり方に驚きました。


・ キメラその他色々な連中の登場や
  ベートーヴェンを「佐村河内事件」ネタなど
  段々といつものシュールさを表に出してくる本作。


・ いつものような「つい吹き出してしまう大爆笑!」というような
  場面はなかったのですが、
  小劇場演劇の普通、
  以上には「笑いネタ」も面白かったです。


・ そして、2015年の博士の実験で吹っ飛んでしまった
  ジャックの記憶が戻り、
  ここまでの流れでジャックが本当に見守っていたものが、
  ・ かつて好きだった人の子孫
  ・ その娘が愛した男の子孫

  この2つの赤い糸が結ばれる事だと分かった時
  (+ それに関わった者達も見守ってきた)、

  そして博士の家を見守った理由がその答えだと分かった時、

  あののび太っぽい青年と博士の娘が出会ったあの時、

  ラジオからかつてジャックがベートーヴェンに
  着想を与えたあの曲が流れた時、

  かなり涙腺に来てしまいました。

  今回は弾ける形ではなく、こういう形でしっとりと落としに
  来たのだな、と。


・ ローマ帝国の時代?の
  ウラギリンティヌスやオンナスパイその他
  重要役以外にはあまりに分かりやすい名前をつける、
  あれもある意味
  「このお芝居を分かりやすくする」工夫だったと思います。


・ 機械人間ジャックの人のマイムとそこに入る効果音が
  見事に「機械人間」を表現していたな、と思いました。

  暗転してハケる中でもマイムを続けた
  その役者魂に凄さを感じました。
  (観客はどこで役者を観ているか分からない、
  どんな時も観客の気持ちを冷めさせないその工夫。)


PS.シブゲキという渋谷の一等地だった事もあり、
  チケット代は高かったですが、
  お芝居自体にその価値は十分あったかと思います。

  自分はすっかり忘れていましたが、
  ハロウィンパーティー参加の準備を
  してきた人があんなに多くて
  それもまた楽しめました。

  ※ ハロウィンにかけた物語の締め方、
    そこからのハロウィンパーティーだった所も
    「上手いな!」と思わせられました。
ポンコツロボットと素敵なカミソリシュート!

ポンコツロボットと素敵なカミソリシュート!

はらぺこペンギン!

駅前劇場(東京都)

2015/10/14 (水) ~ 2015/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★

スロースターター作品?そしてロボットの未来の姿
当日観劇前にフライヤーを読むまであらすじすら知らず。

西暦3000年代という設定で
「ロボット」と呼ばれる存在がアナログチックさ全くなし、
人間っぽいようなんだけど何かが変、と感じた。
(アンドロイドと呼ばれても納得できないだろうし、
「3000年台のロボットとは?」という
ちゃんとした背景設定/演出を考えてなかったんじゃないかな、
その動きをただ単に「奇妙」と感じてしまった(特にポンコツ役)。)

シュールな笑いはとりつつも、
未来設定と「ロボットスポーツ」(名前なんだっけ?)が
うまく観劇する側の心にストンと入ってこないので、
中盤まで「面白み」を感じられず。

しかし、作/演出の狙い、「テーマ性」が少しずつ見えてきた
中盤から一気に物語に引きこまれました。
(内容はネタバレの方に。)

※ ただ、ポンコツ役だけロボなんだか
  浮浪者なんだか分からないような衣装とか
  逆に「ポンコツさ」ではなく
  違和感が浮き彫りになってしまってもったいない感じ。

ネタバレBOX

【思った事】

・ 西暦3000年、という事で「ロボット」が
  他劇団がやるような「アナログイメージ(ロボットダンスのような)」ものでもなく
  攻殻機動隊のようなヒューマノイドでもない、
  人間なんだけど「感情が欠落してる」という感じ。

  それは作/演出の狙い通りなんだろうけど、
  未来の人間はこんな挙動からに違和感ありありな
  サービス提供者と一緒に居たがるだろうか?

  そして「ポンコツ」と呼ばれるロボットが特に、
  ボロ布のようなものをまとい、
  機械的でもなんでもない、
  単に「奇妙」としか言いようのない動き、
  「ポンコツ」という名前ともまったく
  合っていないような違和感ありありな「存在」でした。
  (もう少し西暦3000年台のロボット、
  「ポンコツ」と呼ぶなら、
  など設定/観せ方を考えた方が良かったのでは?)


・ 兄もロボット(というか脳以外が機械)という設定、
  伏線が簡単かつ何度も出てきてしまうので、
  「まあ、そうなんだろうな」と話の先/裏が簡単に読め過ぎ。

  そしてその設定はあまり物語に活かされず。もったいない。

  まあ、そこから「ポンコツ」が本当の心を取り戻した、
  という流れとしては重要なんでしょうが。


・ ポンコツが本当の「スポーツ」(名前なんだっけ?)をやり始めてから
  その熱が同じロボットのコータローにもうつって(伝播して)、
  「ワクワクしたい!」という想いとから「スポーツ」に復帰し、
  そしてその生涯を終える流れは
  グングン引き込まれるものがありました。

  観客への感情伝播と共に、
  物語上のロボット感にも、
  そしてチームのメンバーである人間達にも感情伝播を起こさせるとは…



・ そして、「スポーツというもののそもそもの成り立ち」から、
  「ロボットにとっての今が”スポーツ”を楽しむ時」という、
  作/演出の考えた「テーマ性」が見えてきた時、
  一気に本物語が面白くなってきました。
  (物語自体の盛り上がりのタイミングと見事に合致。)

  「自分のオーナーに給料が入るから」、
  というだけの理由で「スポーツ」に参加していたロボット達が、

  「ワクワクしたい」「熱くなりたい」、
  そして『相手ロボットを壊して勝つ』というルール上はありだが、
  それは「スポーツとして楽しい事ではない」という事を理解し、
  お互いにスポーツを楽しみ始める姿には、
  (僕自身かつてスポーツを楽しんだ経験から馴染みのある感情だったので)
  涙腺に来るものがありました。


・ 最後の「スポーツ」最終戦、あの盛り上がりから
  「まさか3回目までやるのか?」(さすがに物語として冗長になりすぎる)
  と危惧しましたが、丁度良い盛り上がりと丁度良い締め方でした。
  (「オチ」までがお芝居です( ´ー`))


序盤はお芝居として「上手い!」と言える構成ではなかったと思いますが、
「テーマ性」が見えてからは
はっきりいってロボット熱血スポ根もの、
と言っていいぐらいに熱いドラマでした。

※ はらぺこペンギン!さんは「テーマ性」ある作品をやられる時が
  一番面白いと思います。

きっと未来、ロボット達も「心」を持って、
「権利」が保証されるようになり、
いつかこういった「楽しみ」まで持つようになるんでしょうね。

そんな楽しい時代を想像させる作品でした( ´ー`)

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