朗読劇 私の頭の中の消しゴム 8th letter 公演情報 天王洲 銀河劇場「朗読劇 私の頭の中の消しゴム 8th letter」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    すごい「体感」をした
    相葉裕樹×日笠陽子回観劇。
    10年来の売れっ子声優日笠さんの朗読芝居が観たくて(聴きたくて)の
    観劇でしたが、これまた2人ともすごかったです。

    「演技上手」な上にしょっぱなからめちゃくちゃ情熱的に演じる日笠さんに対して、
    他者の男役と違い最初テンション抑えめ粗野さも控えめな相葉さん
    (悪く言うと台本を「読み」に入ってしまってる?、
    「台詞」を置きにいってしまっているのかな?と感じられた)、

    日笠さんのカオルと色々な意味で対照的な演技でした
    (元々本物語の最初は水と油な2人なのを表していた?)。


    それが物語の起伏(出会い~色々あって~結婚~アルツハイマー~別れ~結末)の
    流れと共に、日笠さんは更に情熱的な演技を振り絞り、

    相葉さんは段々と気持ちが移り変わっていく、
    人間は一人だ、俺は誰も信じない、とかたくなだった気持ちがほぐれていき、
    カオルを愛するコウスケになっていくさまがとても良く描かれていました。


    カオルのアルツハイマー症状が悪化していく中、
    それを愛し続けようとしながらも苦しみ助けを求めるコウスケ、
    この2人のありようが観劇しているこちらにも実体験
    (アルツハイマー症の家族を持った人)のように
    ヒシヒシと伝わってきて
    「どうしようもない苦しみ」を感じ、
    神様を恨んですらしまいました(´;ω;`)


    本組み合わせに限らず、
    本劇の良さはそれぞれの演者の組み合わせがそれぞれに

    コウスケ×カオル

    2人の物語について、
    役の個性と物語の起伏に合わせた感情表現を

    他の組み合わせと同じものにするのではなく、
    あくまでもそれぞれの演者で考えて表現している
    (実際の演出指示がどうなっているのかは分かりませんが)、
    というのがとても面白いなあ、と思います。


    この数年で10組以上のコウスケ×カオルを見つめてきましたが、
    同じ台本であっても1組として同じお芝居は存在しない。

    各男性演者は、
    コウスケをちょっとオチャラケさせてみたりめちゃくちゃ怖い人にしたり、
    情熱的で涙もろくしたり感情表に出す事の不器用さを表現しようとしたり、

    それに対してカオルの方は元々持っている
    20代成人女性としての顔から、アルツハイマー告知の衝撃、
    アルツハイマーゆえの記憶障害への怒り、悲しみ、
    そして幼児退行していってしまうなど、
    それぞれの喜怒哀楽狂気などについて、
    各女性演者が思うがままに演じていく。


    各組それぞれ同じ台本でも観ていて飽きない
    不思議な面白さがあります。

    今年の観劇前は、
    「今年あたりで本劇も卒業かなあ」などと考えていましたが、
    これだけ面白く演じてくれる役者陣が
    まだまだいるのならば、
    また来年再来年とまだまだ本劇の
    「新しい組み合わせ」と「進化」を見届けたい気持ちになりました。

    ネタバレBOX

    【思った事】
    ・ 説明
      日笠陽子さんは10年来のベテランにして超売れっ子声優。
      相葉裕樹さんは俳優、バンド経験などを経て、声優としても
      最近伸びてきているらしい(詳細不明)。


    ・ 日笠さんの感情表現がすごすぎた。

      元々アニメなどで多々目にしている安定のベテラン声優日笠さんの演技なので、
      「演技上手」(感情表現や発声その他多彩な演技をするのだろう)
      というのは予想がついていましたが、

      しょっぱなから予想を超えて感情的に、気持ちを乗せて、
      情熱的にカオルを演じて来ました。

      恋愛するカオルの喜びと悲しみなどの感情の起伏があまりにも激しく、
      「少々飛ばし過ぎかな?」
      ※ 序盤からここまで大きく感情表現を表に出してしまうと、
        物語の盛り上がり場面でもこれ以上に起伏が付けられなくなってしまうのでは?
        そうすると「物語」全体としては、案外山のないお芝居になってしまうのでは?
      など、少々心配もしました。

      しかし、物語の盛り上がりに合わせ、更に隠れていた「情熱」をぶつけ、
      本当にコウスケ役の相葉さんと真っ向勝負を挑んでいたように思えます。

      ※ 大声優日笠陽子の底の深さを改めて知りました。
        アニメその他画面越しだけじゃなく、
        朗読/群読その他色々な場で
        もっと色々な人たちに「生の演技」を観せるべき女優さんだと思いました。

      ※ (多分ですが)今まで見てきた本劇の中で初めて
        アルツハイマー症の妻とそれを支えようと苦しみもがく夫の姿が、
        観客としてよりも実際の経験のように「体感」させられたかと思います。

        その要因の1つは間違いなく日笠さんの「演技上手」とそして
        何よりその演技に込められた大きな熱量にあったと思います。


    ・ 相葉裕樹さんの演技プラン(と言っていいのかな?)もとても上手でした。
      コウスケについては、今までの色々な役者陣の演技から
      粗野/粗暴にして乱暴っぽさがあり(実際現場監督も殴るし)、
      過去のトラウマから人生については悲観的、
      それを口調その他から攻撃的に演じる人が多かったですが、

      相葉さんのコウスケは少し落ち着きも持った、
      「母親に捨てられたトラウマ」を抱えた悲しみからか
      何か諦めというか達観というかを持った少し深みのあるコウスケを
      うまく表せていたのかな、と。

      ※ 最初はその落ち着いた語りように
        「台本を”読み”にいってしまっている?」
        「台詞のひとことひとことを(落ち着いて)置きにいってしまっている?」
        と、今までのコウスケ像と違うものを感じてしまいましたが

      それがカオルと恋に落ち、自分のトラウマから喧嘩別れして、
      偶然の再開で「この世で1番大切なものを知り、そして変わる事を決意する」、

      段々と進む物語の中で、少しずつ優しさや内面に隠していた本当の心情、
      そして悲しい結末に向けてどんどんと表に出てくる
      カオルへの悲しいほどの愛情とを、

      コウスケの「変化していく気持ち」といった形で
      その語り口調を変化させていく事でうまく表現していました。

      ※ クライマックスでのコウスケはもう「別人」というほど、
        色々な経験からその語り口調などが変化していました。

      ※ 物語を読み込み、
        「こう演じていこう、こう変化をつけよう」と
        考えての事だと思いますが、
        それが見事にカオルの熱量と噛み合って、
        面白い舞台に仕上がりました。


    ・ 2人での合わせの練習で決めた事か、
      それぞれがたまたま同じ事をやろうと思ったのか、
      ブレスその他の使い方が朗読劇の場面場面に
      単なる「台本読み」から違った空気を与えていました。

      ため息だったり、
      その他色々な台詞の間に「音にならない音」「台本にない音」を
      入れてくる、それが他の組み合わせではなかった、
      面白い表現として入っていました。


    ・ 一応ツッコミ
      噛み、台詞トチリ、台詞かぶり(相手の台詞に台詞をかぶせてしまう)、
      などは思ったよりあったかも。


    多分ですが、初めて本劇を演じる組み合わせは皆、
    本物語の内容を演じる中で惹きつけられ、
    いつの間にか気持ちを乗せて演じてしまうようになっている、
    その込められた情熱が観客の気持ちを惹きつけ、
    演者と同じように涙させてしまうのかな、

    そういう意味で良い「物語」だなあ、と思います。

    ※ そろそろ巨人が優勝を逃し「だから原はダメだっつったろ!」のくだりは
      時代に合わせて変えてもいいかな、と思いますが( ´ー`)

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    2016/05/01 22:09

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