ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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100人のタナカ!

100人のタナカ!

PocketSheepS

TACCS1179(東京都)

2016/10/13 (木) ~ 2016/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

自己増殖
 第3研究所では、残業、休日出勤は当たり前のハードスケジュールで、新たな研究を完成させようと励んでいた。

ネタバレBOX

研究対象は「queen」と名付けられたコンピュータ。人の脳に直接アクセスすることのできるコンピュータである。チームの中心は、若干変わってはいるものの天才の誉れ高い田中 士郎。彼に対する室長の期待値は高く、彼が思う女に心を奪われてチェックが疎かになって起きた重大事故についても殊更彼を庇い責任追及はしなかった。だが、彼は内心自分の罪だと深く悩むことになる。その為、元々非外交的であった彼は自らの魂の中に避難してしまう。脳に異常は認められない。その為、彼の昏睡から彼を覚醒させるためあるミッションが企てられた。彼の脳内にミッションで派遣される者の意識を送り込み彼を覚醒させようというのである。無論、実態を送り込んでオペをするという訳ではないから、サイコダイバーが負うようなリスクをミッション担当者は負うことになる。人選はあっさり決まった。志願者が居たからである。志願者の名は杏梨。彼を慕う乙女であるが研究職ではない。だが彼女の熱意は専門職ではない困難を乗り越えた。そこで派遣された彼女の意識の見たものは? といった展開で話としては中々面白く、恋に夢中になる女性本能を骨太に描いてもいるのだが、演じ手が劇場サイズを勘案していない。のべつ幕なしに大声のキンキン声で発声するものだから音に敏感な人間は辟易してしまう。後半話が佳境に入り他との相乗効果で余り気にならなくなるものの、この辺り演出家はもっと気を使うべきだろう。
Requiem

Requiem

宴友企画

d-倉庫(東京都)

2016/10/12 (水) ~ 2016/10/16 (日)公演終了

満足度★★★

初日観劇 約2時間
 満を持しての公演という意気込みは買うが

ネタバレBOX

、殺陣は、腰が入っておらず散漫だし、蜻蛉を切ったり側転・側バクなど、アクロバティックな要素も入らないので動きが通り一遍のものになってしまっている。主題歌は可也いい線をいっていると思うが、シナリオも溜めのない通り一遍のもので、ストーリーを線で描いたような単調さが目立った。終盤の種明かし部分に至って漸く、この活劇に相応しい大胆で興味深い内容がでてくるのだが、子供が居ないという伏線以外に伏線らしい伏線もないようだし、様々な矛盾、不自然さをマイアのメンテナンス技術者から少しずつ示すなり何なりして大団円に至るなり、小ネタを上手く利用するなりして物語の有機的必然性を醸し出して欲しかった。主張が極めて単純な分、観客に直ぐ見抜かれてしまうから。この主張をそのまま通すのであれば、見抜かれても観客が納得できるような、物語としての必然性を書き込んで欲しいのだ。それができなければ、シナリオは外部に任せた方が良かろう。自分で書くというなら、良いシナリオというものがどういうものか更に勉強して欲しい。 
パラサイトパラダイス

パラサイトパラダイス

ワンツーワークス

ザ・ポケット(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

ワンツーワークス前回公演
 初演は十数年前。

ネタバレBOX


だが、今作ちっとも古くなっていない。それどころか、普遍性を感じさせるのだ。それは登場人物個々の遭遇すべき現実が、個々人にとって最も痛い所で現実に演じられるからであろう。どういうことかというと、例えばいきなり夫と妻の科白が入れ替わる。夫は妻の科白を、妻は夫の科白を喋るという演出が為されるのだ。これこそ、想像力の用い方そのものである。何故なら想像するという行為は、相手の立場に立つことだからである。このような演出は、無論観客の度肝を抜く。その上で納得させるのである。
 今作で描かれる家族の形は、日本の伝統的なそれとは全く異なる。いわば、一つ屋根の下に住みながら、家族のメンバー個々人が能う限り自由を実践しているのであるから。娘(菜摘)は、彼氏(明良)を自室に連れてきて同棲している。息子(春人)は勝手に大学を止めて、パソコンで何かをやっているが引き籠り状態。家族会議があっても携帯電話で参加するほどだ。妻(和絵)は妻でなんやかんやの不平を梃に自己の取り分を拡張してゆく。夫(耕平)は調整型だが、楽しみは帰宅後、社畜から解放されて飲むビールとガンダムのプラモ制作。隣の住人(佐渡)が年中出入りしているのだが、サプライお宅である。おまけに母(=妻)の母という言い方を強制する祖母(さち)、はアキレス腱を切って不自由という理由で強引に狭い一家に転がり込んでくる。更に、耕平の父(孝典)は壁と対話する孤独に耐えかね、持ち家を売却後、矢張り転がり込んできた。既に家族会議で決まっていたことも状況の変化に応じて変えなければならない現実の前で、それぞれの思惑、利害が交錯して人倫と自由、既得権などの権利を巡る議論が展開される中で、上で述べたような互いの科白の入れ替え、立ち場の逆転などの演出が加えられるので、決してセンチにならず、緊張感を持続した舞台展開が可能となっている。
シナリオ自体非常に優れたものだが、演出、演技、舞台美術の特異な形態、照明や音響の効果が相俟って普遍性を持ちつつ衝撃的な作品になっている。
「66~ロクロク~」

「66~ロクロク~」

円盤ライダー

シダックス カルチャービレッジ6階(東京都)

2016/10/08 (土) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

花四つ星
 10月8日から3日で3公演というかなり贅沢な公演。

ネタバレBOX

5月にもこの「66」の公演があったそうだが、そちらは拝見していない。今回は、メンバーが少し入れ替わっているという。  
何れにせよ高校時代の仲間が6人集まって兎に角、他人を楽しく、自分たちも楽しくと大きな夢を抱いて途中、女や進路の違いで1人はアメリカンドリームを実現すると仲間を割って出た。10年後、残る5ンインはチームを組んで人も羨む立地に事務所を開設することができた。ところでリーダーの平野は、フェイスブックでアメリカに渡った仲間に顔を見せにくるよう連絡を取っていたのだった。彼はアメリカ到着後すぐにカツアゲにあって全財産をすってしまい。何と日雇いの労働で帰りの金を稼ぐと直ぐに日本に戻って来ていたのだが、皆と別れるときに約束したアメリカンドリームを掴んでいない以上、恥ずかしくて皆の前に顔を出せなかった。この辺りの男の子の意地が、彼に嘘を吐かせた。矜りの為に素直に事実を言い出せず、昔の仲間から、借金でもしに来たのかと勘繰られながらも、徐々に内実が明らかになってゆく。つまり高校生の時から抱えていた無邪気な夢と気負いを捨てずに来た5人と、形は違えど幸せを実現したアメリカンドリーム「失敗」者が、その純で一途な姿勢を変えなかった仲間であったことを再確認し、また6人の仲間に戻ってゆく過程は男の子にしかできぬ、熱いロマンを感じさせる。
 一般のビル内の会議にでも使えそうなビジネスライクな空間を使って、役者達のアドリブや、その場、その瞬間の判断による空間の身体化によって、瞬時に桁を外す技術を持った役者ばかりが集まって濃く、熱い時間を手渡してくれた。いい年をして、胸に迫る熱い念を感じた。
~50とひとつの蝶結び~

~50とひとつの蝶結び~

Manhattan96

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2016/10/07 (金) ~ 2016/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

言葉以外による
言語表現の試み。

ネタバレBOX

Scene1:Opening「ム、と、シ」
Scene2:Act  「サイトウさんとサイトウさん」
Scene3:Dance 「赤ずきんとその後」
Scene4:Tap  「14歳の娘と私」
Scene5:Act  「問題と答え」
Scene6:Act  「セミとキリギリス」
Scene7:Dance 「記録と記憶」
Scene8:Tap  「15歳の娘と私」
Scene9:Show 「カミとタブレット」
Scene10:Act 「ロミオとジュリエット」
Scene11:Ending「50とひとつ」
11の演目をこなし上演時間は役1時間50分。言葉を巡る考察が、今回のレビューテーマということになろうか。言葉に頼らぬ身体や、音、動作と間によって、言葉以上に想像力に直接訴える試みや情報伝達媒体としての書籍VSタブレット端末の攻防戦、言葉を印刷物にする際に用いる紙を空中に舞わせて蝶のようなイマージュを喚起すると同時にその複雑な舞い方の美しさを舞台上に上げる試みなど、イマジネーションに訴え掛けるショートレビューの合間にはタップダンスやそれと共に演じられる手品等が、他のレビューと緩やかに関連していたり、童話の古層と子供向けバージョンとの比較によって見えてくる認識レベルの差異、またシェイクスピアのシナリオの筋書を変えてみる試みなど実験的・挑戦的な要素が取り入れられ、楽しめる。無論、これらの他に美しさに対する配慮も付加され、イマージュの断絶を防いでいることも良いし、また音響効果もグー。
マルカジット、マーカサイト

マルカジット、マーカサイト

やみ・あがりシアター

こった創作空間(東京都)

2016/10/07 (金) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

ポテンシャルの高さに星5つ
 先ず扱っている素材が石であることに注目したい。(追記後送)

ネタバレBOX

一応パワーストーンというコンセプトで括っているが、本質が石であることに変わりは無い。石に注目できるのは詩人の感性である。何故なら石こそ生きた歴史、宇宙の無限の歴史の一端をその体内に留め置くことのできる、見る目の無い者には決して注目されることが無いほどありふれ何処にでもあると錯覚させる歴史の証言者だからである。無論、その歴史は、何年、何十年、何千年などという短いタームではない。何億年、何十億年にもまたがり得る歴史である。総ての恒星が、核反応炉であるのは、今や常識であるが、宇宙のガスが蝟集し、塵がコアを形成し強い重力を持つようになって更なる塵を集め巨大化してゆくとき、その内部は猛烈な圧力と熱によって様々な反応を生み出す。褐色矮星で中心温度が250万Kを超えると核融合が起こり、更に、1千万度を超えると恒星となる。星の命がその質量に応じた最後を迎える段階で白色矮星、超新星などの形態を取り、超新星爆発などを経て、更なる物質を作り出す。そのうちの一部が核分裂を起こすウラン235などである。太陽などの恒星では、水爆に近い原理が働いて核融合が起こっているが、猛烈な圧は高温を生じ、物質はどろどろ状態である。さらに猛烈な圧と高温は、臨界を引き起こすには充分な条件を具えていると考えることはできる。そして一度核融合を起こせばそれを簡単に止められないのは、たかが人間の発明した核分裂利用の原子炉を見ても明らかである。恒星の質量が齎す結果は、人間などの作り出すエネルギーとは桁がまるで違うことは、どんなに科学的知識の無い現代人にも明らかであろう。まあ、今作を観るには、この程度の科学的知識と物理学に対する興味はあった方が良い。無論、詩人的な感性も同時にである。開演前には宇宙に関する様々な情報が音声で流されている。相対性理論の時間概念だとか宇宙飛行士に纏わる話題、宇宙船乗組員と地球のスタッフとの交信などだ。
 こんな話をするのは、今作の展開する場所は火星だからだ。パワーストーン販売を手掛ける企業が、火星にたくさんあると見込まれるオパールを梃に、更に貴重な原石の発見を目指してプロジェクト開発チームを送り込んだのである。だが、宇宙開発の進んだこの時代、宇宙空間で暮らす人間の性欲の問題が大変重要なものとしてクローズアップされていた。狭い宇宙船で長旅をすれば毎日顔を合わせる男女の間に恋が生まれるのは必然と言ってよく、結果、子供ができる。然しオゾン層などに守られていない宇宙空間での妊娠、出産、育児などには地球上では考えられない程の放射線の影響がある。放射性核種の影響に関しては年のいかない程感受性が高いという問題があり、乳幼児に各核種の与える遺伝的影響は計り知れない。また、恋愛関係に無い者が、レイプ被害を受けるというような問題も多発していた。そこで取られた対策が、性に対する関心が一切ない特殊な人を宇宙船に乗せるということであった。今作で描かれる乗組員5人は総てこの問題にクリアした研究者、医者等である。無論、各研究者、技術者らは一人で己の任された任務を十全にこなすことのできる有能な者たちばかりである。
 だが、地球上に存在するのと組成も全く同じオパールの採掘では採算が取れそうもない。少なくとも不安である。そこでこの件についての会議が開かれ明日に迫った出発日を延ばしてこのレアな鉱石を採取することになった。


「貧乏長屋の大騒動~落語「応挙の幽霊」より~」/ショー「OH!EDO~花鳥風月」

「貧乏長屋の大騒動~落語「応挙の幽霊」より~」/ショー「OH!EDO~花鳥風月」

S-NTK

きゅりあん(品川区立総合区民会館)(東京都)

2016/10/07 (金) ~ 2016/10/08 (土)公演終了

満足度★★★★

休憩時間25分
 1部は喜劇、2部は和物レビューの2部構成。

ネタバレBOX

喜劇の中に都都逸や新内流しを入れるなど、江戸の芸事が取り入れられて粋な作りになっており、落語的な要素も入って楽しめる。応挙の書いた掛け軸に描かれた幽霊役を男が演じ、目利き役を女が演じるという趣向だが、日本舞踊の手の使い方のような優雅な所作がグー。着物の選び方などにも日本的な美学を感じる。
 レビューは、矢張り扇や団扇の用い方で和物の伝統芸を見せると共に、矢張り衣装にも随分工夫を凝らして、ここでも日本美学の一端を見るような気がしたが、グレーを余り用いていなかったのは舞台映えがし難いのだろうか? 江戸の装いの最たるものはグレーの多様性にあったと聞くが。
正安寺悠造×PATCH-WORKS『はじめての夜』

正安寺悠造×PATCH-WORKS『はじめての夜』

PATCH-WORKS

ひつじ座(東京都)

2016/10/05 (水) ~ 2016/10/09 (日)公演終了

満足度★★★★

おもろい
父は警部補、「バカモノ」が口癖の雷オヤジ

ネタバレBOX

という設定だが、娘二人は恋する乙女たちであり、長女は才能の無いミュージシャンと同棲しており、ミュージシャンは、浮気がち、おまけに姉妹丼までかましている。妹は姉の彼にバージンを捧げたのである。
 ところで、その妹にも初のステディーができた。父母が旅行で家を空けるのを幸い、妹は、彼氏を自宅に招くが。同棲中の姉がミュージシャンの浮気に気付き喧嘩して帰宅。父母も父の撮影機材を忘れたと言って戻ってくる始末。姉は彼の浮気に報復する為、出張マッサージ師を呼んだが、それと知らず雷オヤジは、妻が自分とのセックスレスに不満を感じて浮気相手として出張マッサージ師を呼ぶ人が多いとの噂のようなことをしているのだと勘違い、自分のインポテンツも他人と妻が交わっている所をみれば治るかも知れぬと考え、更に行為をビデオカメラで撮影しようとする。だが、実際に来た出張マッサージ師ではなく妹の彼氏をマッサージ師だと思い込んで秘密協定を結んだりしたものだから、話がすっかりこんがらがってしまった。妻は、娘たちの恋にもかなり理解があって彼女らを庇おうとするものだから、多くの嘘、隠し事が重なり余計喜劇的になってしまったのである。
 芝居自体はコミカルで笑える。演出、演技も悪くない。然し、生演奏はもう少し本腰を入れて練習した方が良かろう。
理想の不幸

理想の不幸

HIGHcolors

「劇」小劇場(東京都)

2016/10/05 (水) ~ 2016/10/11 (火)公演終了

満足度★★

エパーブの甘え
 家庭は経済的にも恵まれ、主人公である姉は容姿端麗、学業優秀、無論、クラスの憧れの的。だが、その「幸福」が彼女には退屈。

ネタバレBOX

おまけに自分の本性を曝け出して逆らうこともできない。生きているのか死んでいるのか分からないが、空虚の中で足掻いたつもりにもなれない。受け身に唯、偶発的な爆発を待つのみ。ひねくれた“かまってちゃん”の甘えを描いた作品と言えるだろう。
 唯、作家は設定に失敗している。新たなことにチャレンジしてみたかったようだ。が、それにしても演劇でそれをやるのだから、話がスムースで自然に運ぶようなシチュエイションと場を設定すべきであった。船でいえばビルジキールに当たる部分くらいはキチンとした設計がなければいいシナリオにはならない。
 テーマが一本調子で反作用が無いのも欠点である。これではドラマツルギーが成立しないからだ。結果、話は単調なものになり、陳腐なものになってしまった。
 捻りといえば言えるかも知れないのが舞踏家の起用とその役割の変化であるが、シナリオ自体の構造が弱いので、この工夫も十全に生きているとは言い難い。
際の人

際の人

文月堂

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2016/10/04 (火) ~ 2016/10/09 (日)公演終了

満足度★★★★

不言実行 有限不実行 花4つ星
 有言不実行を絵に描いたような主人公、俊博は現在31歳(物語開始時は、明日31歳の誕生日を迎える設定)、

ネタバレBOX

チェーンの中華料理店副店長で、誕生日前日、回りが羨む可愛い彼女との4年に及ぶ同棲生活に幕を下ろした、月130時間以上の残業をこなす社員である。因みに店の従業員の中で社員は店長と俊博だけ。仕事が終わった後、休憩時間中は寝て体を休めなければどうにもならない状況である。最近では時々耳が聞こえないといった症状も出ている。自分の出世だけを追い求めるマネージャーはシンドイことは一切せず、偉そうに命ずるだけ、現場に立つなどということは殆ど皆無である。無論、有給休暇など貰えるハズもない。然し、俊博は、他の業界の経験もなく転職するにも自らのつてもなければノウハウもない。忙しすぎて新たなことにチャレンジする道も探せずにきた。
 一方、彼女は幸せを求めた。そして変われない俊博に愛想を尽かし出て行った。だが、それはまだしもましだった。誕生日当日彼はトンデモナイ事件に巻き込まれることになった。
初日なので、ネタバレは此処まで。苦労人の書いたシナリオで、キラキラした部分が削がれている点が素晴らしい。観客の反発を買わないからである。観客も皆例外なく際の人々であるから、キラキラしている人々には嫉妬を禁じ得ない。その反発を抑え込んでいるのだ。だが、侃々諤々の議論、毀誉褒貶を引き受ける覚悟がなければ更に高い評価を望むことは難しかろう。そして、このような評価を得る為には、キラキラしたシーン(本物の才能の輝きだとか、天才の閃きなど)も取り込んだ方が良いようには思う。ただ、以上の意見は更にメジャーを目指す場合のリスクも伴う意見であって今作を否定的に見ている訳ではない。地味だが、心に残る作品であることは間違いないからである。
僕の居場所

僕の居場所

劇団あおきりみかん

インディペンデントシアターOji(東京都)

2016/10/01 (土) ~ 2016/10/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

「捨て子」

 の哀しさは、体験した者にしか分かるまい。

ネタバレBOX

今作に登場するななしは、無論、この捨て子である。バーチャル世界に顕れるさくらが彼の否定的言辞の真のきっかけではない。母に捨てられたことが、彼が総てを否定する根拠なのだ。だって母は、子の故郷。母の胎内で個々の受精卵は系統発生を体験した。即ち母とは地球上に生命が誕生して以来の歴史を子に伝える存在なのである。子にとっては地球そのもののように懐かしい命の揺り籠だ。その母に見捨てられるということが、如何に子供を傷つけるか!? 大人たちは真剣に考えたことがあるのだろうか? そんなことまで問いたくなるような問い掛けが、今作にはある。
 無論、作家の鹿目 由紀さんの優れた感性と女性らしいが、非常に上手な論理構成が、今作を此処までの作品にしていることは疑いようもないが、改めて彼女の出会っている難題の深刻さ、それに出会わざるを得ぬ才能故の淋しさにも深い共感を覚える。
 同時にななしにとっての聖杯が、元カノのくれたマグカップであること、彼女も彼と別れたことがトラウマとなって過食嘔吐を繰り返している。そんな優しい彼女が、ななしの居るべき場所だというのは、とても素敵!
---黄離取リ線---【ご来場いただき誠にありがとうございました!】

---黄離取リ線---【ご来場いただき誠にありがとうございました!】

劇団えのぐ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2016/09/29 (木) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

星5つ進呈
 舞台客席側に天井から床まで届く幅2.5mほどの白布が下がっており、下から三分の一ほどの高さの所に黄色で点線が引かれているが、真ん中にはキリトリセンと記されている。

ネタバレBOX


 開演早々、怒声が響く中、この布を掻い潜って弟、幸太役が舞台全面に立ち上がって観客席の方に顔を向けるが、頗る寂しそうな目をしている。ポケットから鋏を取り出すと、キリトリセンに沿って布を切ってゆくが、現れた光景は男女の諍いの場面だ。
 By the way,子供時代の記憶は曖昧だという話を良く聞く。然し、それは本当ではない。インパクトのある記憶は子供心に鮮烈に焼き付き、その魂を焼き、深い傷を負わせ、いつまでもじくじくと膿み爛れたまま癒されることなどないからだ。
 今作は、こんな子供時代を経験した姉弟を中心にその父、母との絆を取り戻してゆく物語である。
 状況設定が面白い。親の子に対する虐待の増加、逆に子が親に対して揮う暴力や親族殺人、強盗など凶悪犯の増加に手を焼いた行政は、新法:“親権免許”を立法化しようと計画、その為児童養護施設を用いてデータ収集などを開始した。児童虐待などで子供から引き離された親は、再度子供と家庭を構築し得るか? という非常に難しい問題を扱って説得的である。多くの破綻家庭で見受けることは、破綻家庭を為した一家の親家庭、そのまた親家庭もまた破綻家庭であることが多いということも、実際問題では見受けられることであり、問題は、今作で描かれたより更に深刻であるとの見解もあろう。然し、ハテの無い論議で終わらせることなく、この難題を今作は多くの人々が寄り添える形で提起しており、愛情という感情の広がりと深さと捉え難さに対して、規制が掛けられるのかという法的・倫理的問題、その際、愛する自由と規制の間で生じる様々な軋みをどう解消するのか、否できるのか? という大問題も含めて実に多様な問題提起をしている。
 シナリオ、演出、演技も丁寧に作られているし、照明・音響等の使い方も効果的である。オープニングでは、ショパンの革命がアレンジされていて、幸太の寂しげな目と共に、一挙に作品に引き込まれてしまった。

風ガ姿、華ト伝

風ガ姿、華ト伝

法政大学Ⅰ部演劇研究会

法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎地下一階多目的室1番(東京都)

2016/10/01 (土) ~ 2016/10/04 (火)公演終了

満足度★★★★

今後にも期待
 能は、長い修練を必要とする芸能であるが、それは溜めを持続しつつ、クライマックスではそれを瞬時に解放するという離れ業に難易度の非常に高いものがあるからであろう。

ネタバレBOX

法政1劇の取り組み方は、丁度ヨーロッパの映画作りにあるように、やりたい作品が決まったら、その作品に関わりたい人間が集まって協議しつつ作品を作り上げてゆくというスタイルだと聞き及んでいる。従って毎回テイストのことなる作品が出来上がってゆくのだが、今作では能にチャレンジしている。舞台の大きさなどの関係から橋掛かりこそないものの、また、プロが演ずる能舞台よりは広めに演劇空間を取っているものの、松の絵は、自分達で描き、奥・側壁、床に白木を用いて舞台を作り上げ、能の雰囲気を良く出している。当然、舞いの所作も能のそれである。
 シナリオもしっかりしており、ストーリー自体も面白い。時折、ハッとさせるようなシーンが鏤められていることにもポテンシャルの高さを感じさせる。更なる研鑽を望む。
三人姉妹vol.1

三人姉妹vol.1

テラ・アーツ・ファクトリー

サブテレニアン(東京都)

2016/09/29 (木) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★

原作を殺してしまった
 岸田 理生原作の今作、

ネタバレBOX

当然数々のアイロニーが鏤められているのだが、その濃度を演出が薄めてしまった。描かれているのは、敗戦後のどさくさの中での人の業である。事大主義の大好きな日本人がその付けを払わされた時期だが、そういった時期であれば猶更、人間のエゴ、カルマといったものが、執拗に個々の人生を彩る。その、どろどろの地獄模様を群衆のコロスで重層的に表現していたのが岸田の原作であるとしたら、今回はこのことで生きていた演劇としての命を解体する方向で演出が作用した結果、作品が死んでしまった。作品を殺すなら、その背景にある原因、即ちこの「国」の鵺社会を浮かび上がらせねばならなかった。その視座が無いと、ドラマとして成立し得まい。
Unbreakable -アンブレイカブル- 最終章

Unbreakable -アンブレイカブル- 最終章

演劇レーベルBo″-tanz

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2016/09/29 (木) ~ 2016/10/03 (月)公演終了

満足度★★★★

必滅の技術 花四つ星
 今作最終章に相応しいイメージは日本の多くの人々にとって何処まで行っても砂漠というのに近いのではあるまいか? だが世界最大の砂漠、サハラ砂漠で本当の砂漠は2~3%に過ぎないのは実際のサハラを知る者には常識である。残りは礫漠、岩石漠、土漠等で構成されている。

ネタバレBOX


自分自身、西アフリカに住んでいた時期には、セネガルの首都ダカールに邸があったから、サハラ砂漠の辺縁にも出掛けた経験がある。サハラ砂漠の全体像を把握することは、ミッションの要請する所でもあり当然前提知識でもあるから、その拡大に対する緊急課題と共に認識すべき最もベーシックな情報であったことは当然である。
 この観点からすると、国内しか知らない人々に対する公演とはいえ、余りにおちゃらけているという感じは持つ。現在、日本の多くの人々は余りに世界情勢に疎い。それは北朝鮮報道、南シナ海に関する中華人民共和国報道にも見られる。少なくとも北朝鮮に関してはちょっと長めのスタンスで観れば自壊する確率が高いのであって、その間、翻弄すればよいではないか? その程度の国際競争力が未だ我が故郷にはあるであろう。こう考えるのは、既に手前味噌に過ぎないかも知れない。何故なら、近年この植民地の総てに観られる、質の劣化には凄まじいものがあるからである。
 今作のタイトル、Unbreakableにした所で「国(主として自民党政権)」も人災を起こした当の東電も五重の安全対策に守られているのだから、過酷な事故が起きることなどあり得ないとして、対策を怠ってきた。その嘘が事実の前に脆くも崩れるや否や、想定外とのたまわったことは記憶に新しい。こういった無責任そのものに対する痛烈なアイロニーが、今作のタイトルには込められていよう。勝俣以下、東電幹部は未だに誰一人責任を負わないどころか、逃げ回っているではないか! 彼らの無責任の為にどれだけ多くの人々が非業の死を遂げたことか!? そして今後半永久的に地球環境そのものにダメージを加え続けることか。良心的な研究者が書いている核物理を少し勉強すれば、誰にも明らかなことなのである。
 無論、この事実の意味する所は頗る重い。その余りに桁外れな人災の齎すものに押しつぶされそうになる。だって未来が無いことは、確実だからである。この余りに重い現実をアピールする為、糖衣錠のように今作はギャグやおちゃらけでこの本質をくるんである。作家のせめてもの優しさと捉えたい。然し今現在ですら、ヒトという生き物が生み出してしまった己には制御することのできない技術が、人類のみならずこの星に生きる生き物総てを絶滅の淵に追いやっている事実に変わりは無い。自分たちが生み出してしまった必滅の状況を加速する為だけに核を推進しようとすることは、狂気の沙汰。先ずは今作に込められたこのメッセージを正確に受け取りたい。
 
かえってきた不死身のお兄さんー赤城写真館編ー

かえってきた不死身のお兄さんー赤城写真館編ー

演劇企画ハッピー圏外

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2016/09/26 (月) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

戦争の齎す日常
を描くことで、その悲惨を炙り出した秀作。、

ネタバレBOX

 時は1950年、地方の商店街にある写真屋の中庭で繰り広げられる物語だが、不死身のお兄さんにはモデルがある。ところで、恐らく常識とは反対に戦後の混乱期が庶民にとって最も辛い時期であったということは忘れられがちである。寧ろ、戦中の方が飢えは軽かった。無論、贅沢はできない。然し配給制度はかなり機能していたし、低いレベルで平等であったから飢え死になどは寧ろ少なかったのである。然し戦後のどさくさでは力が露骨な正義であり、力も知恵も行動力も無い者は飢える外無かった。実際、法を守ってその範囲で食糧を調達した裁判官は飢え死にしている。その頃より多少ましになったとはいえ、まだまだ庶民生活は貧しかったのである。
ところがこの年6月25日に38度線で南北は、全面衝突。北は、38度線を越えて南進し28日にはソウルを占領した。国連軍が組織され本格的戦闘が始まるのは9月15日の仁川上陸以降になるから特需景気で日本が潤う少し前と考えられよう。
然し皮肉なものである。戦争によって廃墟と化した日本は、元日本の植民地の同一民族同士の戦争で経済を回復してゆくのである。何れにせよ、今作の時代背景には以上のようなことがあり、兄戦死の報が届いたのは、戦死情報さえ正確に捉えることが出来ない程、戦闘が惨憺たるものであった為であり、(実際南方戦線で死亡した日本軍兵士たちの死亡原因の多くは飢えとマラリアなど疫病によるものであった。戦死の場合でも砲弾、銃弾総てが尽き、万歳攻撃を行うことも多かったのである。その為、米兵は日本兵をナメキッテいた。)家族への兄戦死の報は南方戦線での戦死を伝えていたのだが、実際には頑健な兄には特別任務が与えられて満州へ向かっており、ただ特殊任務が実行される前に敗戦が決まったのであった。いずれにせよ、最も過酷な状況にいつも送り込まれていたという。結果、敗戦後5年も経ってから兄が帰還するのはシベリアで抑留されていたからである。ソ連が抑留者を如何に遇したかについては、食糧の乏しさ、労働の過酷、避寒の不徹底などハーグ陸戦条約に違反するものが多く、多くの被抑留者がこの悪条件の中で命を落とした。被抑留者の証言では、「良い奴ほど早く亡くなっていった」という。実際、今作の中で抑留されていた兄は、抑留の為あれだけ頑健であった体が衰弱して亡くなった、と同じ曹長であった戦友の証言にもある。彼は兄の遺品を届けてくれたわけだが、それは兄が彼に看取られて亡くなったからである。
而も、亡くなったハズの兄は、早くに親を亡くし、伯父叔母の下で育った妹を気に掛けて実体化して現れているのである。この者が、幽霊であるか否かは不明であるが、以前心肺停止で3日後に蘇生したこともある兄であってみれば、本当に生き返った兄である可能性も否定できない。妹の結婚話も絡めて、相手の男に、妹が娼婦をしているというデマを信じて結婚を躊躇ったのに、そうではないと分かって再度愛の告白をする態度を詰るのも、本当に愛するということは娼婦であろうが堅気であろうが関係ない、という強い愛の形を知り実践してきた者にしか言えぬ言葉である。妹が、一言も兄の悪口を言っていないことも兄の真の優しさを知っていたからであろう。
嫌われ者、乱暴者、厄介者という評価とは逆に、兄の真の優しさと大切な人を思う妹の気持ちを中心に、戦争という逃れ難い狂気の無惨が炙りだされてくる秀作である。
役者陣では、兄を演じた田口 大朔、妹役北 ひとみ、鍋島役 浅野 泰徳、伯父役 出村 貴そしてハッピー圏外の名物役者 後藤田 文蔵のインパクトと間の、妙味のある演技が気に入った。テンションを上げたり、日常的な空間に戻したりでは三角商店の平敷 慶吾、叔母役の谷村 実紀も良い脇を務めている。ラスト、兄評価の転換点となるまで秘密を明かさないシナリオ・演出もグー。
地下アイドル失踪事件

地下アイドル失踪事件

人間嫌い

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2016/09/22 (木) ~ 2016/09/24 (土)公演終了

満足度★★★

更に磨きをかけて
 最近、中心メンバーが来ないというシチュエイションの作品が多いような気がする。プリンシパルを持たず、目指す生き方も無く、中心性という概念そのものが既に崩壊してしまったという事実を象徴しているのかも知れない。
まあ、今作では其処までの深読みは必要ないかもしれないが、女の子の演ずべき建前を演じ続けている子、割合、素で居る子、建前にはちょっと距離を置いているが、かなり現実にはコミットしている子、アイドル経由で女優を目指す、やや優柔不断な子などが、各々本音では結構真面目に人生と向き合っている点に好感が持てる。

わたしたちは生きる、このすばらしきワケありの世界で。

わたしたちは生きる、このすばらしきワケありの世界で。

黒ヰ乙姫団

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2016/09/21 (水) ~ 2016/09/22 (木)公演終了

満足度★★★★

ICRPも信用できないんだよ
 零場では、茨城から来たという37歳のオモシロピエロ氏が、開演前から大道芸で良く見かける風船での物作りやマジックを披露してサービスしてくれており、中々行き届いたサービスに感心する。

ネタバレBOX

その後、脈絡があるショートストーリー10話が上演される。第一場:朗読の時間第1000回[すずめのお宿] 二場:ホテル 三場:おんなたちと地獄の総務部 四場:ランチタイムと奇跡の人 後場:奥様は主婦 六場:バリウム賛歌 七場:牧場にいってきました 八場:朗読の時間第1111回[悪の牧場のテーマ] 急場:ナニワ食品㈱ 秋の社宅祭りだよ! 全員集合 十場:ワケあり 河内音頭 またピエロが登場して、円筒の上に板を3枚重ねバランスを取りながらジャグリングをする芸や手品、風船等を披露。バランス芸の危険を伴う芸なので矢張りハラハラしながら拝見した。また、風船では蛸や枝豆などあまり見掛ない作品を作り出して楽しませてくれた。因みに枝豆の風船は黄緑色で、鞘の中に豆が入っているという念の入れよう。
ショートショート「バリウム賛歌など」では、折角医療被曝の話が出ているのに100ミリシーベルト以上で癌の出現率が高くなるというICRPやIAEAなど核推進派の主張をそのまま持って来ているのが残念。ICRPですら、閾値なしと最近では言い始めているのだから、この辺りのことをキチンと言っておくのが命を守る為に必要なのではあるまいか? 放射線防護に関しては、WHOもあからさまな嘘を述べ立てているのは、今まで何度も指摘してきた通りである。内部被ばくに関しても然り、上記の機関は総てその可能性を否定している。だが、イラク、コソボ、アフガニスタンをはじめDUが使用された地域での癌や奇形児の増加、白血病などの増加は統計的に明らかであり、これらの事実を公表した医師や研究者が殺害されたり、拉致されたまま行方不明となっていることを見てもどちらが正しい意見であるかは明々白々であろう。
ミニチュア

ミニチュア

シアターノーチラス

新宿眼科画廊(東京都)

2016/09/23 (金) ~ 2016/09/27 (火)公演終了

満足度★★★★★

今作も実際に起こった事件にインスパイアされている
 兎に角、観易い。中央に舞台、舞台左右と正面に客席と三方から観ることができる作りだ。設定は失踪女性の部屋である。丁度舞台中央辺りに、この街の1550分の1模型が置かれ、下手のライトで照らせるようになっている。模型中央がランドマークタワーのような一際高いビル。(追記後送)

ネタバレBOX


 高いビルとちっぽけな自分。自分をそのままのサイズに、街をミニチュア化することで、自分の孤独を癒そうとでもしたのか? 社の誰にもその答えは分からない。
 ちょっと考えてみれば、都会生活というのは、生活の基本インフラから飲食の類迄基本的に金で総て買える。食糧を得る為に自然界に分け入ることもなければ、自然や獲物と格闘することもない。大きな仕事を為す為の共同や共闘も無い。金を払うことだけは能動的だが、あとは供給されるだけの受け身な生活と言えよう。そんな都会人の心の奥に潜む孤独やアンニュイ、歪みを浮かび上がらせ、ある種の恐怖を感じさせる作品。
 失踪女性の部屋に置いてある本や枕元に置いてある絵本「わたしとあそんで」などにも彼女の心象風景が読み取れる。流石に小道具にも気を配る、シアターノーチラスの丁寧な芝居作りが生きている。
『シーチキンサンライズ』『幸せな時間』

『シーチキンサンライズ』『幸せな時間』

T1project

小劇場B1(東京都)

2016/09/14 (水) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

幸せな時間
 他の多くの公演でも緑葉と窓にそれらの影が映り込んでいる演出は、さりげない分、プロの証だろう。この緑や窓に映り込んだその影の要素が、観客をリラックスさせるからである。

ネタバレBOX

 
 異なる作品をほぼ交互に上演する今回の企画、舞台美術は共用である。内容的に異なる作品ではあるが、共に漫才師の人生を描いた作品という点で共通項があり、芸人の溜まりである楽屋が舞台になっている点でも違和感はない。また、楽屋は芸人たちが素を表す場所でもあるから、人生の機微を描くにはうってつけのシチュエイションなのである。こういうさりげない設定が、芝居を自然に見せる為の非常に大切な点だということにも注意したい。
内容的には、観て頂くのが一番だから、余り深くここでは触れない。今ではピンの老師匠、寛治が、若くして死んだ相方との二人三脚を中心に、様々な時代が入れ子細工になって展開する作品だ。幾つもの時代が交錯する関係で演出、役者陣、音響、照明など、どれか一つが噛み合わなくとも不協和音が生ずる、演じ手には難度の高い作品であるが、その分、さりげなさの中に深くしみじみ感じさせるものがあり、大人の為の作品と言えよう。そして、この難しい作品を自然にみせてくれる作・演出の友澤氏の実力とT1プロジェクト参加の役者陣の力量にも賛辞を呈したい。また、演劇が生きものであるということを実感させてくれる作品群なので、できれば何回か観たいものである。
一例だが、科白の切れを紹介しておく。観劇の参考にされたい。
老師匠の子供時代、貧しさの果てに体を売らなければならなくなった母親が朝方帰宅すると、未だ眠らずにいた寛治に問う「お母さんの顔に見える?」という科白だ。

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