ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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弟の戦争

弟の戦争

劇団俳小

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2016/12/07 (水) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★

彼我
の差。

ネタバレBOX


 湾岸戦争は、イラクがクゥエートを石油盗掘の件で攻めたことが発端であった。サダム・フセインが指摘した如く、クゥエートはかつてイラクの一部であった。民衆に離反され追い詰められた王族がイギリスに助けを求め、かろうじて現在の地、つまり脱出を図った港周辺を領地として建国したのである。また、問題となった石油盗掘に関してはイラクの油田と繋がっているとの情報もあった。サダムは攻撃前にアメリカに打診していたが、アメリカは否定する素振りを見せなかった為、了解を得たと考えた。そこに罠があったと考えられる。  
 ところでブッシュ一族で最初にスカルアンドボーンズに入会したのは、イラク戦争を引き起こしたジョージの祖父にあたるプレスコットであるが、彼はナチスの軍資金を運用してブッシュ家の資産の基礎を築いたと言われる。また湾岸戦争時の大統領であった彼の父は、余りに疑惑が多いので以下を参照http://tarpley.net/online-books/george-bush-the-unauthorized-biography/いずれにせよ、きれいごとを並べてやることはえげつない。
今作は此処までの事情は描いていないが、優しく他人の痛みを我がことのように感じる人間にとって、「正義」の戦争とよばれるものの実体が如何なるものであるか。その実際を見せつける。戦争現場の一次情報と副次的情報との質的差異を描いた原作を読んでみたくなる作品だ。恐らく原作で余りに残虐だと感じられた点が、脚本では柔らかい表現に置き換えられていようから。

(再)けいこちゃん、ふたたび。

(再)けいこちゃん、ふたたび。

なかないで、毒きのこちゃん

駅前劇場(東京都)

2016/12/05 (月) ~ 2016/12/06 (火)公演終了

満足度★★★★

歌舞く

 8時間企画として発表された今作で、当初考えられていたのは、尺が8時間(当然、休憩も入るだろうが)ということらしい。

ネタバレBOX

然し結果的にそれとは異なった形になったというエクスキューズがつき、公開稽古(アップ、公開稽古、ダメ出し、公開ゲネ)を通じて、約45分の作品をブラッシュアップしてゆくという公演になった。
 自分が極めて面白いと感じたのは、先ず、作家が罹患したという”C型執筆困難症候群”という病が本当にある症候群なのか否かについてである。一応ググってみたが、発見できなかった。極めて特異な症状で未だネットでも網の目に掛からない可能性もあるが、会場で配布されたパンフ自体を含めて歌舞く為の演出ではないか? と考えたのである。本来演劇は、世界を歌舞くものでもある。殊に歌舞伎を国の代表的演劇形式として持つ我々には身近な感覚でもある。今作が、その点を意識していないという保証はないのであるから、このような突っ込みも可能なのであるし、解釈としてもあり得るであろう。
 以上のような演出レベルでの仕掛けが在るにせよ、無いにせよ、普段観客が見ることの無い、稽古を始める前のアップ(稽古前に心身をリラックスさせたり、イマジネーションの自由な飛翔を助けたり、頭を日常の制約から解放して柔軟な思考を取り戻す為に行う。身体を用いたゲーム形式が多いのは、役者として臨機応変に適確な判断力を養う為と言えよう。)
 舞台美術は空間分けを示す為の台が置かれている他、殆ど総ての道具は段ボール製。胎児期或いは乳児期に父を亡くした良子という娘が成長する過程を小3、中3、高3、大学生、OL、新婦の各段階で異なる女優が演じるが、これに母が対応する形である。物語は結婚式前日、母臨終の場面。父を知らない良子は、母の手一つで育てられたが、父兄参観や運動会、作文などで、中流家庭のお母さんたちが綺麗な服を着て参観に来るのに、良子のお母さんだけが給食のおばさんのような恰好で来ることなど社会的弱者であることを理由に様々な辱めを受けていた。例えばラーメン店で働いていることから小ライスと仇名を付けられたことに対する鬱憤、運動会での二人三脚で他の子たちはお父さんと一緒に走るのに良子はお母さんと走ることをクラスメイトから揶揄されたこと、作文でお父さんとの関わりでタイトリングされた為、自分だけが書けなかったこと等々(この件に関してはお父さんが居ないことについて書けばいいだけの話なのだが)を理由に反抗を重ね、結婚式を迎える段になって尚大人になり切れなかった。(結婚式のハイライトは、通常嫁ぐ新婦が読む親への手紙である)その気持ちの底に流れる、素直な気持ちをA35枚にびっしり書き込んだ便りを用意したのに、母の心臓は止まってしまう。
だが、ラスト、回想シーンで、胎児である良子に名を付ける母の姿が描かれ、母の思い一つ一つが呟かれる度に、母のおなかを蹴る胎児の様子が描かれて幕。 
Which is a Liar?

Which is a Liar?

TEAM空想笑年

参宮橋TRANCE MISSION(東京都)

2016/12/03 (土) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

創作過程も同時に楽しめる
現在のSNS社会で如何に演劇が成立し得るか? をコミカルにシニカルにそしてシリアスに描いた作品。舞台設定を稽古場にすることで、演劇の創作過程を見せつつ同時に演目を上演するという仕掛けが有効である。(追記後送)

日韓演劇週間 Vol.4

日韓演劇週間 Vol.4

ストアハウス

上野ストアハウス(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

水無月の云々
 リーフレットによれば、このユニットはトラッシュマスターズの中津留 章仁氏が無名の役者を育てる為に立ち上げたという。2012年初演の今作は、新たなオーディションで選ばれた若手無名俳優による再演である。

ネタバレBOX


 描かれている表層部分では、家族の話だ。それも殺人犯を出してしまった自然食品販売店の家族であり、地域商店街の家族である。犯罪者の家族という痛い差別は、何かことあれば噴出するものの、表立ったレベルでは逆に地域に支えられている。とはいえ商店街の活気は余りなく、成功者はドラッグストアチェーンを20店舗持ち、最近では駅前に大型店舗を構え売れ筋商品であれば何でも買える店を立ち上げた実力者がいるのみで、この店舗の影響で閉店する店も何軒もある。これに地域首長選挙も絡んでくるのだが、自分は、こういった側面はあくまでサブストーリーだと捉えた。この流れをメインストリームと考える人々にとって、今作は一種のサスペンスに近いかも知れぬ。
 自分の捉え方は、この家族を通して日本という「国」の人類学的・社会学的特性を描いて見せた作品だということだ。一応、家族構成と人間関係を説明しておこう。主人公は弟、嫉妬深い彼女がおり、結婚するつもりである。弟を子供のころから好いている従妹。殺された叔父の娘であるが叔父が殺されて行き場が無い為父方のこの家に同居している。母方の家に行かないのは彼女の意志だ。また叔父を殺害した兄の嫁も同居することになった。そして姉、商店街の若者と結婚を控えるが、婚約者がスナックのママとできているのではないか? と嫉妬に駆られている。それ以外の主要な登場人物は、出入りの電気屋の息子、姉の元カレ、スナックママ、弁護士、父親である。
殺人事件については、ボランティア団体を立ち上げ、その資金を横領していた叔父が兄に刺殺されたことが、先ず明らかにされる。兄は現在服役中である。大学生の弟は、再犯犯罪者たちが何故何度も犯罪を繰り返すのかについて、脳機能の僅かな欠損による結果だと最新の医療データに基づく知見を述べ、選挙絡みの相談を持ちかけてきたドラッグストア会長と対立する。
 さらに、姉の婚約者とスナックママの浮気が絡み、弟を愛する従妹に対する弟の彼女の嫉妬が遂に爆発、彼女は従妹をとことんののしる。優しい弟は悲しい宿命を負った従妹を選び、彼女との関係は断たれる。一方、姉の元カレが、姉と共同で貯めていた結婚資金のうち元カレの分、60万を返して欲しいと願ったことに対して、姉とその婚約者は断固拒否。元カレの母親が癌で入院し、その費用の工面を願った彼の望みはあっさり打ち砕かれる。その時、父が放った言葉「興信所にでも勤めたら」がきっかけになり元カレは興信所勤めを始める。そこで入手した情報から兄の殺人事件の真相が明らかになってゆく。一方、しっかり者の兄嫁は電気屋に気があり、遂に深い関係になってしまうが、弟はこれを察知。一部始終を弟に見透かされたと感じた兄嫁は、電気屋との別れ話を持ち出すが、電気屋は兄嫁にぞっこんで別れることなどできないと逆上。台所から持ち出した包丁で弟を刺殺してしまう。これが、この物語の大筋である。無論、救いなど一切ない。
 初演が2012年だということからも、今作が福島人災の翌年、我々が、この「国」の在り様を根底から考えなおしていた時期と重なるだろう。そして民主主義なるものの根底をこの「国」の人間が担えるのか? という根本的な問題についても考えざるを得なかったハズである。
それは自分の頭で考える自由についてであり、その結果理不尽が明らかになった時に、キチンと異議申し立てをしなければならないということについてであるはずだ。一例を上げるなら、東電がゴルフ場に降り注いだ放射性核種の被害について「無主物」で法的責任はない、と言い張った時、我々は何を思っただろうか? そして、今また経産省が核燃サイクルを新たに立ち上げようとしているが、この動機は明らかだろう。日本が大量に保有するプルトニウムを持ち続ける為のエクスキューズである。
 閑話休題。今作はヒトという生き物が作る社会、個々人、それを繋ぐ単位としての家族を通して、我ら日本人の特性を炙りだしている。即ち事大主義とプリンシプルの欠如を。そしてこれら無しには成立し得ない民主主義を恰も真っ当に成立してでもいるかのように振る舞う欺瞞を告発しているのだ。
日韓演劇週間 Vol.4

日韓演劇週間 Vol.4

ストアハウス

上野ストアハウス(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

検閲
 韓国で活躍するパク・グニョン氏が演出した「蛙」に端を発した今回の検閲問題は、韓国の演劇人・文化人千人がリストアップされ、日本でも報じられたからご存じのムキもあろう。

ネタバレBOX

この検閲サイドの言語表現を通して、彼らが抑圧しているもの・ことをシニカルにアイロニカルに、極めて当然な人間の権利、自由、そして演劇が本来持っている祭祀的側面と政治的側面を動員し対置して見せた。
真正面から権力に対して異議申し立てをする韓国の演劇人の精神的健康に拍手を送る。シナリオ、構成、演出、演技、音響・照明効果、舞台美術何れも極めて有機的に関連し、テンポも良い。日本人が、権力者の責任を問えないことに常々切歯扼腕することしきりなのであるが、韓国の人々の精神の何と健康であることか! 今回韓国から来日した2劇団。今後も注目し、またぜひ来日して欲しい劇団である。
大悪党

大悪党

モリンチュ

PRiME THEATER(東京都)

2016/11/30 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★

色々難点はあるが、旗揚げ公演ということである。おめでとう!
 時は西暦3000年頃の日本。第三次世界大戦も終了しヒューマノイド、アンドロイド、サイボーグ、人間などが覇を競っている。(追記後送)

ネタバレBOX

他地域ではヒューマノイドを奴隷扱いしている地域もあるようだが、日本は比較的進んでいて、ヒューマノイドの権利は政治家になることもできるほど進んでいる。然し、それはまだ人々の心に迄定着しているとは言い難い過渡期でもある。このような状況下、某所に設けられた秘密のスペースでは、ヒューマノイドの政治家、保守系の政治家そして富豪らが会議を開催していた。
この秘密基地には、政治家、資本家など特別な者達以外は入ることを許されていない。当然こんなスペースが在ると言うこと自体、一般には知られていない。都市伝説的な風評はあるが、それも大衆の不安を意味する他大した意味もない。それをいいことに特権階級だけが甘い汁を吸っているのである。
ところでこの世界、一枚岩ではなかった。政治家は保守層と改革派に分かれ互いに牽制しあいつつも利用し合っていた。喫緊のテーマは、近く提出される予定のヒューマノイドの権利を人間と同等ものにする法安である。無論この法には様々な要素が含まれて居る。
償い

償い

teamキーチェーン

d-倉庫(東京都)

2016/12/01 (木) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

決して
元には戻れない。賽は投げられたのだ!

ネタバレBOX

 舞台美術は左右シンメトリーなのだが、舞台上の造作物は、奥の広い踊り場から出捌け口が2か所ある背面の壁に連なり、その客席側は、最前部が波を切る船の舳先のように三角形になっている。だが、その天井に当たる部分は、客席方向へ下る傾斜になっていてこの部分は、ブロックを組むように各パーツが取り外し可能になっている。尚、天井に当たる部分の下部には、出捌け口を挟んで壁が設えられていて、赦免の天蓋部には紗のような布が見える。色調は白が基本で、左右の通路の側壁側には上部が階段状になった柱の如き物体がこれもシンメトリカルに突っ立っている。
 物語は、中学生時代の同級生が自殺? をしたという所から始まる。彼は結婚しており、近々子供も生まれる予定であった。唯、その子には障害がある可能性があると診断されたという。彼は8つもの保険に入り、障害がある子の為にそれが役立つことを考えていたというのだが、イマイチハッキリしない。医師、警察の所見は自殺ということで一致していた。偶々、自殺した同級生のクラスメイトに弁護士になった男が居て、この弁護士が所属している事務所が、妻の依頼を引き受けることになったのだが、おかしなことが次々と起こり当時のクラスメイトの人生を破綻に導いてゆく。
 謎を繙いてゆくと、妻もクラスで一番間の抜けた男も、事件に様々に関与していた人々も総てが、中学時代の苛めに起因していた。手の込んだシナリオを書いたのは、苛められていた子の姉。今ではクラスで最も間の抜けた男の妻となることになった女であり、彼らの置かした犯罪の中でも最も重い殺人を犯したのは彼女の父だと推察される。即ち一連の事件は苛めに対する復讐であったということになる。
観終わって不気味という印象を持った。それは、舞台美術の狙った斜面の不安定感や殊更白を強調して清潔感を表していたこともさることながら、最初、極めて幾何学的、知的に構成されていた舞台上のオブジェが話の進むにつれ、解体され、補修されながら決して元の完成された構築物にはならず、廃墟に残った積み石のような状態を晒し、壊れたもの・ことの不可逆的な意味を示すのみだったからである。それは恰も、我々が失ってしまった人間的価値観の代替として金銭が大手を振り、人々が金銭を神と崇めることによって安心も立命も喪失した現在の日本を映す鏡のようであったからではなかったか? 観終わった後、自分の感じた感慨である。極めて印象的な作品である。
この絶望感は、アホばかりが為政者面をして民主主義など決して担うことのできない国民を誤った方行へ道連れにしてゆくこの「国」の体制のグロテスクそのものであり、彼らの過ちをキチンと追及し責任を負わせることのできない民衆のだらしなさそのものである。苛めとその復讐を描いた作品を観て、粉々に砕け散った人間という概念の廃墟を見た!
位置について

位置について

かわいいコンビニ店員 飯田さん

シアターノルン(東京都)

2016/11/30 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

花四つ星
 私設保育園の現状は、中々に厳しい。安い給料、長い労働時間、他人の乳幼児を預かる責任、先生という職業について回る聖職という縛り、様々な悪条件からくるストレスを子供たちに向ける訳にはゆかないことからくる悩み等々。(追記後送)

ネタバレBOX


 各自が様々な問題を抱えつつ、日々仕事に邁進する姿を描くが、各々の抱える介護、離婚後の親権問題、結婚、離職等々は、誰にもついて回る問題である。業界全体が決して利益率が高くないどころか、そのような話をすることさえはばかられる乳幼児教育というジャンルであり、その労働は、利害や機械的な対応では決して成立しない。何より良い保育士としての仕事をする条件に、自分自身が良い状態にないとできない、という現実がある。そうでなければ子供達の持っている感受性の強さに悪影響を及ぼすのは必定であるから。保育に関わる者皆がそのような思いでこの職に就き、一所懸命に仕事をしているからこそ、真摯な対立も起きる。
メキシカンタコス

メキシカンタコス

劇団 EASTONES

OFF OFFシアター(東京都)

2016/11/30 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

East onesなのかにゃ
え~、Eastones初の「ミュージカル」である。

ネタバレBOX

場所の設定は房総半島南端の館山。そこに立地するペンションの話である。東京より年平均気温が0.5度高い地域だ。
 タイトル通り、メキシコが絡む話なのでスペイン語が結構出てくるし、スペイン語でプロレスを表すルチャリブレも登場、歌と踊りがかなりふんだんに披露され、楽しい舞台だ。おまけにおっかにゃいマフィアも絡んで、殺陣ならぬアクションシーンも楽しい。(因みにEastonesは、普段時代劇を演じている劇団である)
 無論、開業して10年になるこのペンションの栄枯盛衰が絡んでのマフィア登場であり、借金の返済に絡んで取り立て屋としてマフィアが登場する訳であるが、ヤクザ組織が海外のマフィアとつるみ、ボスが日系メキシカンである点も興味深い。
 当然のこと乍ら、マフィアも取り立てに当たって法を盾に攻撃してくる。従ってペンションサイドでも借りたものは支払わざるを得ないのだが、相手が突き付けてきた条件は一括返済。これを分割にしてもらえないか、というのがペンション側の要望である。事故で夫を8年前に亡くしたペンションオーナーと最も貢献した社員との恋も絡み、嘘に対してトラウマを抱えるマフィアボスに対する嘘がバレル緊張を上手く用いて、最後までだれない。上質なエンターテインメントである。
「ヴルルの島 」

「ヴルルの島 」

おぼんろ

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2016/11/30 (水) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

朧 大人になる
  初日が明けたばかりなので詳細は明かさない。然し、この所、朧の作品は何処を切っても同じ金太郎飴だと評していた向きには、今作の評価は当てはまらない。

ネタバレBOX

ファンタジーはファンタジーである。だが、いつもの形式を用いて中身は大幅に大人の童話になっている。因縁はあるし、宿命の歪を通した屈折もあれば、復讐という昏い情熱もある。最後の最後にどうなるかは観てのお楽しみだが、大人の苦みを持った作品に仕上がっている。物語自体の展開にも無理が無く、語り部たちのスタンスも良い。また、基本的な物語を語る型はいつも通り観客の想像力と一体化する手法を採っている為、大人の苦みが取り込まれても観客が自然に向き合える。
元天才子役【いよいよ千秋楽!当日あります!】

元天才子役【いよいよ千秋楽!当日あります!】

元東京バンビ

スタジオ空洞(東京都)

2016/11/25 (金) ~ 2016/12/05 (月)公演終了

満足度★★★★

花四つ星
 元天才子役(黒木 ミノル)を演じる加藤 美佐江さんの演技が素晴らしい。天才と評されただけの演技をして見せるのである。

ネタバレBOX

自分の友人にも天才子役と持て囃された人間がいるので、顔と経歴を知られ、その後ヒットに恵まれず埋もれた彼・彼女らの惨めとプライドとの相克は解るつもりである。同時に、彼・彼女らのプライドこそが、その先の成長を妨げたのだという残酷な事実も。
 然し、元天才と子供の頃に評された彼・彼女らが、それでも必死に生きる姿を描いて今作は熱い。脇を固める中で社長役のタカハシ カナコさんの演技、谷 ナオミ役の中村 英香さんも良い。売れないミュージッシャンを演じたはやし ぶうたろうさんのぶきっちょだが、一所懸命な姿にも好感を持った。無論、他の脇も頑張っている。
夢幻の血脈

夢幻の血脈

劇団虚幻癖

Geki地下Liberty(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★

ちぐはぐの持つ意味
 ゴシックロマンのようなテイストの作品である

ネタバレBOX

が、オープニングで合格点だったのは、母親役とレオン役の2人。(末弟は、この時点では登場していない。)他の役者は科白が棒読み状態で、自ら演じる役のヴィジョンが内側にないのではないか? と思わせた。
物語は、出現したり消失したりを繰り返す屋敷を久しぶりに訪れた兄妹姉妹は、異様に色の白い人々に出会う。食事に供されるパンは何れも黴だらけ。ところが、このシーンは結構滑稽に描かれゴシックロマン的雰囲気とはチグハグだし、召使たちの態度も尊大であるなど、現在巷に蔓延る迎合主義とペダンチックな発想が同居している点でアイデンティティーの崩壊を感じさせる。
 作品の内容自体は、このような己を崩壊する在り様を表象するものに感じられた。何時か、何処かでのアイデンティファイを期待する。
日韓演劇週間 Vol.4

日韓演劇週間 Vol.4

ストアハウス

上野ストアハウス(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

更なる進化を期待
 和合氏の詩をベースに構成された作品

ネタバレBOX

詩的言語の持つ宇宙的、極私的また深い思惟性と、核推進派のウンザリするほどの嘘・プロパガンダを役者の身体に落とし込み、具象化し、身体のムーブメントとしてまたフォルムとして上演することを目指した。
 言葉の力を引き出す為に独自に考えられた手法は、遊戯空間の仕事の二つの柱、即ち古典の蘇生と和合氏の詩作(現代語)の舞台化の為の一方の柱である。未だ内向きであるとはいえ、毎回進化し続ける演出の妙を今後とも注目したい。
 何よりF1人災被災者たちの苦悩を群像劇として表現した点が良い。放射性核種による被害は、五感に感知されないままやってくる。即ちその被害は、ある特定のエリアに限定されるものではなく、空気の流れにより、海流により、其処に居る総ての生き物の体内濃縮により、いつでもどこでも、食物までもが汚染されたまま、気付かれずに広がることを表していると言える。(生物による圧縮の結果は食物連鎖の上位にある者ほど影響を受ける)
 和合氏の詩作が、一躍有名になったのは、F1人災以降である。(無論、演出の篠本氏と和合氏の邂逅はこれより遥かに早い)彼の詩には、福島の現実を為政者、それに肩入れする経産省及び文科省官僚と嘘をまき散らすマスゴミ、これらの嘘・プロパガンダを信じ込んで拡散する愚衆。その愚衆のパーセンテージが増すほど視聴率に惑わされてポピュリズム礼賛に流れるTVの俗物報道への表現する者としての向き合い方がある。
 能を長くやってきた篠本氏の表現は“秘すれば花なり云々”の方法論を用いる点があり、やや内向きである。然しながら花伝書の教えは極めて戦闘的な状況における身の処し方を記したものであると考える自分には、西洋流の観た物・事を真正面から扱い対応しようとする姿勢との格闘の中でこそ、この方法を用いて欲しいのである。
僕たちは他人の祈りについてどれだけ誠実でいられるか(仮)

僕たちは他人の祈りについてどれだけ誠実でいられるか(仮)

Ammo

Space早稲田(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

「男たちの戦い(編)」
 二作品を上演。何れも極めて興味深い作品である。

ネタバレBOX


 サイイド・クトゥブは、様々な宗教の特徴のうち一神教の中でも欧米の中心的宗教であるキリスト教と自らの奉ずるイスラム教を比較し、宗教的にはイスラムこそが生活全般(生活形(様)式、シャリーア、統治システムから経済まで)を律する具体的倫理を具えた完全なシステムと捉えた。
 というのも元々教育省の官僚兼作家でもあった彼は渡米した経験を持っていた。最初に訪れたNYでは、拝金主義で物質主義的で極めて豊かだが空疎なアメリカ人を見た。その後、コロラド州立大学に留学したのだが、この大学キャンパスが位置する町、グリーリーの表と裏をつぶさに観た結果、人種差別や歓楽と禁欲の使い分けの欺瞞に反吐をもよおす。
 ところで彼の渡米の原因は、エジプト王ファルークが彼を逮捕する書状にサインしたからである。イギリスの傀儡に過ぎなかったファルークは性とギャンブルに溺れ、政治は腐敗の極みにあった。それに異を唱えた敬虔なムスリムの一人であったのが、ヴィクトル・ユゴーを愛し、バイロン、シェリー、ダーウィン、アインシュタインを繙き、クラシックを好む男としての彼であった。
 帰国後、彼はムスリム同胞団に属し、初期イスラームの姿を求めた。ナセルが、クーデタを起こしてファルークを倒したが、ナセルの目指す社会は、クトゥブの目指すものとは異なり、ナセルの軍を用いた力による政治とモスクを中心に広がったイスラム教徒との対立が深まった。ムスリム同胞団による暗殺未遂事件に動じず演説を貫徹したナセルの人気は一挙に高まり、同胞団に対する弾圧を遠慮する理由の無くなったナセルは、実行犯の即刻処刑と同胞団幹部の一斉検挙に踏み切る。クトゥブも収監され、拷問で体を壊して以降は獄中の病院で過ごすことになったが“みちしるべ”というタイトルの本を著すこととなった。この本こそ、ジハードをイスラム教徒が実行すべき最優先課題としてクローズアップした、手紙形式による書物であった。
 然し、彼がジハードを最優先課題とすべきだという結論に達した時、彼の存在は、孤立していた点に注目すべきであろう。通常、ジハードを行うべきか否かに関しては、イスラムの権威や高位聖職者の間で徹底的な討論が行われる。その際、シャリーアによって禁じられている行為は禁止事項として尊重されるのは無論のことなので、よほどのことが無い限り、これが実行されることはない。だが、キリスト教による迫害やキリスト教徒による植民地支配、差別、イスラムフォビア等々の条件が重なった結果、自らのアイデンティティーと誇りを守る為ラディアカルな思想が芽生えるのは必然と言わねばなるまい。
 世界が不公平で不公正である場合、生存の平等を求める声が上がることは当然のことだからである。問題は、告発された側が態度を改めなかったからという側面が強い。一部、ラディカルな思想に傾倒する者があっても、それに呼応する多くの人々が存在しなければ、思想が、時代、地域を超えて生き残ることはないからだ。現にパレスチナ問題を始め、イラク、シリア、アフガニスタン、パキスタン等々の問題を惹起したのは当にキリスト教国なのである。直近ではキリスト教原理主義者が人口の4割を占めるとも言われるアメリカである。イスラム教原理主義云々を言う前に、この事実を先ずは重く受け止めるべきであろう。

「ウサマ・ビンラディン・フットボールクラブ」
 ビンラディンは、サッカーチームを所有していた。サッカーファンには常識だが、サッカーは、極めて知的なスポーツである。瞬時の鋭敏で適確な判断力がなければ優れたプレーヤーになることはできない。また、戦略・戦術を練ることができなければ、試合を優位に組み立てることができない。更に効果的フォーメイションを組む為には、彼我の特徴と差異を冷静に見つめる目を持ち、情報を集めて分析し、効果的に再統合できる知恵と決断力を持たねばならない。当然のことながら、以上のこと総てを自分の頭で考え、決断し実行できなければならない。
 これら、総てのことが、リーダーになる為の資質と重なる。ビンラディンが、サッカーに目をつけたのは、彼自身サッカーが好きだったことと、サッカーという競技が持つこれらの特性にあるように思われる。今作では選手11人のうち、4名のみが描かれるが、この4名こそ、9.11実行部隊の各リーダーであることが示唆されている。
 一方、ビンラディンのここに至る過程とムジャヒディンとして彼自身がアフガニスタンで戦った結果、何も変わらなかったという深い絶望が彼をより過激な方へ誘ったことも示唆されていて興味深い。無論、各リーダーたちが、迷いながらもファナティックになってゆく痛さも描かれている点がグー。






日韓演劇週間 Vol.4

日韓演劇週間 Vol.4

ストアハウス

上野ストアハウス(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

花五つ星 「6月26日」
 戦乱にその人生を攪乱された2人の若者の運命を活写した傑作。

ネタバレBOX


 ハングルで上演されるが、字幕が非常に見易く、役者の演技を十全に楽しみながら、字幕を読むことができた。舞台美術のすっきりしていて、役者の力量で良い芝居を見せてくれる。
1938年江原道通川出身のソンニョン及び春川出身のヨンチョンは日本軍に徴用され、満州、ノモンハン戦に参戦。ソ連軍の捕虜となってから徴用された。モスクワ戦でドイツ軍に捕まって収容所でのひもじさ、寒さに耐えて生き残った。だが、またも徴用されノルマンディー戦へ。何とか生き残った後、連合軍の捕虜となり別れ別れになったが。
 1950年6月25日午前4時に38度線を越えた北朝鮮軍は10万、朝鮮戦争勃発である。翌26日、数々の戦、捕虜、脱走経験などを共にし、義兄弟となっていたソンニョン、ヨンチョンは再会する。然し、敵としてである。
 数々の戦を共にし、漸く生きて帰ってこれた慶びもつかの間、分断されたそれぞれの地域で、同胞が敵味方となった直後、義兄弟を殺してしまった苦しみ・悲しみが、6月26日のタイトルに結実して無駄が無い。義兄弟を殺す際、顔もろくに見ずに殺してしまう訳だが、これが戦争というものなのだろう。この理不尽にリアリティーを感じる。
天使も嘘をつく

天使も嘘をつく

燐光群

座・高円寺1(東京都)

2016/11/18 (金) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

花5つ星 タイゼツべし見る
 驚かされるのは圧倒的な情報量である。

ネタバレBOX

燐光群は今まで沖縄本島に関する作品はあったが、石垣、宮古、与那国などについての作品は無かったのだが、今作は島の名は変えてあるものの、最近1年余りの間にこれらの島々で繰り広げられてきた現地取材を通して書かれており、ほぼ、取材した通りの内容である。沖縄タイムス、琉球新報の二紙に対する誹謗中傷がネット上では見掛られるが、この二紙の報道の真実味を演劇の側から検証して見せた作品と言っても過言ではない。坂手氏のこの取材力と今まで日本の問題にキチンと向き合って来た姿勢が、証言者からこれだけ多くのもの・ことを引き出し得たということであろうし、被取材者たちの戦いのありようと真摯な姿が、この作品の内容の堅牢性を導き出していると言えよう。
 それに引き替え、防衛省や自衛隊上層部の在り方はどうだ!? 嘘と詭弁と力とプロパガンダで人間のみならず総ての生命の生存権を脅かす。而もその姿勢を恬として恥じることがない。当に下司!! 
 東シナ海問題は、田中角栄と周恩来の間で、この問題は様々な要素を抱えているので棚上げしよう、という政治的知恵によって長い間問題にならなかった。そこへ問題を起こしたのは、石原が始めた尖閣購入計画からである。その後、日本は国家として魚釣島、北小島、南小島を買い取った。中国にしてみれば、棚上げにしていたハズの尖閣諸島を含む東シナ海の問題を最初に破ったのは日本である、と看做すことは当然であろう。まして、与那国、石垣、宮古などへのレーダー建設等が着々と進められて、軍事基地化されている。国際法上、軍事施設の無い場所を攻撃することは犯罪である。然し、いざ戦争が始まったら、敵の目であるレーダーを最初に破壊することは、戦略・戦術上最も効果的であることは、戦争の常識だ。その最も最初に狙われるレーダー基地などの最新設備をこれらの島々に置くことによって、唯でさえ軍事施設の集中する沖縄に更なる負担を強いるとは何事か! 自衛隊が、こちらに目を向けたのは、米ソの冷戦が終結し、自衛隊の存続が危うくなった為ではないか? との説があるが、どうやらこの説が正鵠を射ているかも知れない。かつて警察がオウム真理教事件を利用して延命を図ったように。
 さて、こういう様々な動きから、見えてくるもの・こととは何か? 日米地位協定の内容からみれば、日本全土の沖縄化ではないのか? 最高の安全保障が、他国と仲良くすることにあるとすれば、軍備を増強することは、その真逆にあると言わねばなるまい。まして、国土の狭い我が「国」が世界一の強国になるなどあり得ない。現在世界最強を誇る米国でさえ、9.11で大きな被害を出した。力によっては何も解決しないと知るべきである。核戦略体制が、地球生命を人質にした戦略であることの意味する所をも当然意識的に見るべきであろう。
荒野ではない

荒野ではない

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

花五つ星
何と美しく悲痛な!(追記2016.11.25)

ネタバレBOX

青鞜に集まった女性たち、平塚 らいてう、伊藤 野枝ら主幹となった女性をはじめ、野枝の夫となった大杉 栄、らいてうのツバメのオクムラ ヒロシ、女流作家の千代子、跳ねっ返りのコウキチ、天才博徒の彦六、らいてうを支えるトミエ、皆から先生と呼ばれる理解者でもある支援者、イクタ チョウコウらの群像劇。Baudelaireの詩ではないが、人々から石を投げつけられ、唾を吐きかけられてもおかしくない程、時代のそして意識のレベルを遥かに超えていたアナーキーで真摯な姿が伝わってくる秀作。
 青鞜は、100年以上前の1911年9月から1916年2月迄発行された雑誌だが、この雑誌の作・編集部が今作の舞台である。発行しては、発禁を食らい、部数を伸ばすことは愚か、講演を打つことも会場を貸さないという形で禁じられ、剰え為政者のプロパガンダに載せられた民衆から石礫を投げつけられながら、女性、弱者の解放の為に戦った人たちの姿を描いた群像劇である。
 無論、登場する個々人のうち社会的弱者に関しては、より深く描かれている。村外れに住んで居た彦六の父は、中々やり手であった。結果、村の中心部に住む人々よりいい家を建てた。ある日、村の中心部の人間よりいい家を建てたのは生意気だとして、実家を燃やされ、家族を奪われた。因みに村の境界領域に住んだのは被差別部落民であり、これは差別の具体的で的確なイメージであろう。野枝が、この話を聞いて激高し、彦六の家族に仇為したる連中の家々を打ちつけて出られないようにし、油を撒いて火をつけてやれ、と叫ぶように言うシーンなど、その優しさ故の共感と真摯な怒りを突き付けてくる。
 更に、増々右傾化する世の中で、それでも諦めず粘り強くしたたかに生き、己の精神を荒野にせぬよう努める姿勢も良い。
 芝居を観なれている観客にとっては、演出の見事さも、見所である。ファーストシーンなどは、一挙に作品に引き込まれるだけの演出センスを見せてくれるし、シナリオの質も高く、役者陣の演技レベルも高いことは言うまでもない。舞台下手に植物の影がずっと映っているのも、非常に好印象である。弱者の声のように決して強くはないが、普遍的な生命の在り様を示しているようにも感じられるからだ。照明、音響の使い方も上手い。

ザ・タイムマシーンズ【全日程終了しました。ご来場誠に有難う御座いました!!!!】

ザ・タイムマシーンズ【全日程終了しました。ご来場誠に有難う御座いました!!!!】

THE TRICKTOPS

劇場MOMO(東京都)

2016/11/23 (水) ~ 2016/11/29 (火)公演終了

満足度★★★★

すっきりする
 自分の友人は、小保方さんのことを庇っていたな。

ネタバレBOX


 権威のある研究所所長が自分より才能のある研究者を抱えた結果、嫉妬や嫉みから天才達の論文が著名論壇で発表される際に細工を施す。天才達の使っている自分の研究所の機器に不具合等があっても、知らんぷりをし、剰えオリジナル論文に在ったデータを盗んだうえで消去し、更に論文の肝要な指摘を盗んで後これも消去、結論につじつま合わせをするに都合の良データに差し替えた上で著名論壇に送稿して失脚させ、天才の本来の業績をパクって、ほとぼりのさめた頃、自らの論文として発表。データを盗んだり改竄したりという作業は、「著名な」自分の研究所に残りたい一流半か二流の研究者に請け負わせて自分自身は決して、直接汚れ仕事をしないという汚い手口を使って発表、天才を葬り去ってきた。
 こんな下司に恋人を他界に連れ去られた、矢張り天才的な彼女が鉄槌を下す話。
 そういえば、自分の学生時代の仲間の殆どが研究者になったのだが、修士、博士課程で自らの論文を指導教授に盗用されることは、自分達の先輩世代では無茶苦茶に多かったそうである。

ベッドトークバトルS

ベッドトークバトルS

ショーGEKI

小劇場B1(東京都)

2016/11/19 (土) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★

花四つ星 面白い! C「苦悩するベッド」を拝見
 ある意味とても贅沢な企画。

ネタバレBOX


というのも、A~C迄各5本の作品をそれぞれのグループ内では一作も同じ作家が書いた作品ではなく、而も少なくともCチームを拝見した限りでは、作品の独立性が際立つと言っていい位テイストが異なる。その上、どの作品もシナリオ自体極めて良質である。更に1000円で観れる公演というのがあって、これは若手公演のX。尺は不明であるが、作品は2つである。因みにCの尺は約2時間(前説では1時間55分)であったが自分は、アンケを書く方を優先してキチンと時間を計った訳ではないので、正確な所は不明、悪しからず。
 何れにせよ、先に書いたように、シナリオは何れも高いレベルを堅持しており、演出、演技レベルも高く、ホント楽しい公演であった。噛んだ役者も少なかった。気にならなかったと言えば嘘になるので、他の公演との絡みもあるかも知れないが、付け加える点があるとすれば、舞台美術で今回は使わなかったものが、設置されていた点だ。様々な事情があるのでろうことは推測できるし、Wベッドの足元に置かれた丸テーブルに椅子が一脚しかついていないことは、注目に値する。(この舞台設定で物語が動くからである)
 だが、これだけのセンスと、知性及び頭脳を持ちながら、サイドテーブルなどは用いられていなかった気がする。サイドテーブル上に電話が置かれたり、置かれていなかったりの差はあったと思うが。
 何れにせよ、極めてレベルは高い。
量子的な彼女

量子的な彼女

NICE STALKER

王子小劇場(東京都)

2016/11/19 (土) ~ 2016/11/23 (水)公演終了

満足度★★★★

花四つ星
 基本的に文系でも分かるように作られているから、心配しないで観劇すると良い。但し、物理学の分かっている人々には、Wミーニングで読めるように作られている。

ネタバレBOX

基本はシュレジンガーの猫にみられるように、存在が確率論的であるということと、量子のゆらぎに関するテーゼだ。量子のふるまいに関して演じるのは、オカルト研究部の面々。様々なグループに平気で出掛ける女の子は、量子のゆらぎを表しているであろうし、彼氏と上手くゆかない彼女らは、存在相互の関連に観察の為のエネルギーが関与すると、その関係が影響を受けてしまう量子というものの余りにも微妙な関係を表していよう。また、当然、この量子が存在する為には、場が必要であるが、それが、舞台ということになろう。
 無論、以上は専門でもない自分の私見に過ぎないが、自分にはこのように見えた。このようなことを考えなくてもふんだんなギャグに笑えるし、役者達の演技も理系女子的である。
様々な挿話も上手く絡んで楽しめる。

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