(再)けいこちゃん、ふたたび。 公演情報 なかないで、毒きのこちゃん「(再)けいこちゃん、ふたたび。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    歌舞く

     8時間企画として発表された今作で、当初考えられていたのは、尺が8時間(当然、休憩も入るだろうが)ということらしい。

    ネタバレBOX

    然し結果的にそれとは異なった形になったというエクスキューズがつき、公開稽古(アップ、公開稽古、ダメ出し、公開ゲネ)を通じて、約45分の作品をブラッシュアップしてゆくという公演になった。
     自分が極めて面白いと感じたのは、先ず、作家が罹患したという”C型執筆困難症候群”という病が本当にある症候群なのか否かについてである。一応ググってみたが、発見できなかった。極めて特異な症状で未だネットでも網の目に掛からない可能性もあるが、会場で配布されたパンフ自体を含めて歌舞く為の演出ではないか? と考えたのである。本来演劇は、世界を歌舞くものでもある。殊に歌舞伎を国の代表的演劇形式として持つ我々には身近な感覚でもある。今作が、その点を意識していないという保証はないのであるから、このような突っ込みも可能なのであるし、解釈としてもあり得るであろう。
     以上のような演出レベルでの仕掛けが在るにせよ、無いにせよ、普段観客が見ることの無い、稽古を始める前のアップ(稽古前に心身をリラックスさせたり、イマジネーションの自由な飛翔を助けたり、頭を日常の制約から解放して柔軟な思考を取り戻す為に行う。身体を用いたゲーム形式が多いのは、役者として臨機応変に適確な判断力を養う為と言えよう。)
     舞台美術は空間分けを示す為の台が置かれている他、殆ど総ての道具は段ボール製。胎児期或いは乳児期に父を亡くした良子という娘が成長する過程を小3、中3、高3、大学生、OL、新婦の各段階で異なる女優が演じるが、これに母が対応する形である。物語は結婚式前日、母臨終の場面。父を知らない良子は、母の手一つで育てられたが、父兄参観や運動会、作文などで、中流家庭のお母さんたちが綺麗な服を着て参観に来るのに、良子のお母さんだけが給食のおばさんのような恰好で来ることなど社会的弱者であることを理由に様々な辱めを受けていた。例えばラーメン店で働いていることから小ライスと仇名を付けられたことに対する鬱憤、運動会での二人三脚で他の子たちはお父さんと一緒に走るのに良子はお母さんと走ることをクラスメイトから揶揄されたこと、作文でお父さんとの関わりでタイトリングされた為、自分だけが書けなかったこと等々(この件に関してはお父さんが居ないことについて書けばいいだけの話なのだが)を理由に反抗を重ね、結婚式を迎える段になって尚大人になり切れなかった。(結婚式のハイライトは、通常嫁ぐ新婦が読む親への手紙である)その気持ちの底に流れる、素直な気持ちをA35枚にびっしり書き込んだ便りを用意したのに、母の心臓は止まってしまう。
    だが、ラスト、回想シーンで、胎児である良子に名を付ける母の姿が描かれ、母の思い一つ一つが呟かれる度に、母のおなかを蹴る胎児の様子が描かれて幕。 

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    2016/12/06 15:50

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