ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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ナイゲン(2019年版)

ナイゲン(2019年版)

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2019/08/22 (木) ~ 2019/09/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

 本日拝見して改めて今作が訴えてくるものの実体を捉え得たように思う。(追記2019.9.2)

ネタバレBOX

それは、民主主義という考え方についての極めて本質的な質問であり、実践的ロールプレイング「ゲーム」であり、疑似体験を通した学びであると同時に愉しみである。問いが本質的で現実的である以上、答えは論理の純粋な展開だけでは終わらない。どういうことか説明した方が良かろう。論理を純粋に展開するならば、その論理の根拠にするオーダーを過不足なく的確なものに措定してあることは前提である。その上で論理を展開する場合、論理の唯一の展開とは尖鋭化する事の他にあり得ない。即ちラディカルに突き進む以外あり得ないのである。然し、我々は肉体を持ち、社会の現実の中で生きている。而も、ナイゲンは生徒の自主独立を重んじ、学校生活の中で文化祭に関してはトコトン民主的に運営することで、大人達からの干渉を避けよう、というのが本来このナイゲンの設立主意ということになるのではないか? この指摘が的を射ているならば、どさまわり代表の主張は至極真っ当なものであり、全会一致を旨とするナイゲンの主張に照らして極めてエキサイティングな討論となることは自明だろう。この程度のことは高校生にもなれば充分理解できて当たり前である。その上で、今作に登場するのは高校生であるから、親の庇護下にあると考えて良かろう。経済的にも法的にも自立していないので経済的・法的に自立している大人の意見には耳を貸さざるを得ない存在である。(この点こそ、我々は肉体を持ち、社会の現実の中で生きている内実であり、それは精神の目指すもの・ことと本質的に矛盾するのではないか?)その大人は作品には声のみで関わっているが、それで充分である。何故なら今作の眼目は登場人物達の精神がジェンダーという位相に於いてどの位置を占めているかを示せば充分だからだ。(そして主役はあくまで高校生たちだ。)平たく言えば如何に高邁な精神も社会的存在たるを得ないということである。唯一の例外、その主張を守る為の抗議の自死を除き。
 さて、このような条件を踏まえて“どさまわり”代表の方針転換を如何様に評価するかという点が最後の問題になるだろう。無論、ここで結果を示して舞台は終わるが、この判断が本当に正しいか否かについては観客が各々持ち帰って考えるべき宿題であった。答えは既に出ただろうか? 無論自分は自分自身の答えを既に出しているが、各々、熟考されたい。
瀬戸の花嫁 再再演

瀬戸の花嫁 再再演

ものづくり計画

ザ・ポケット(東京都)

2019/08/21 (水) ~ 2019/08/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

 タイゼツベシ観る!!! 華5つ☆の 傑作!!

ネタバレBOX

 自分も島に住んで居たことがある。だから、その良い所も悪いというか不便な所も良く知っているが、第三の故郷としての愛着も強い。島の人々の心根は純朴で何とも言えぬ温かさと優しさがあって、都会のすれっからしの自分達の心に深く、深く沁みる。そんなこともあって、自分の周りの連中の中にも島の娘と結婚した者は多く、嫁の故郷である島で生涯を過ごす者、定年後は島に移住してしまった者らも何人も居る。パーセンテージで言うと7~8%にはなろう。かなり高くないか? 自分は、海も東京湾のような溝には入らない。汚すぎて入る気がしないのである。どこかの島か、裏日本の海水浴場では無い所で泳いだり潜ったりだ。外房はケースバイケースだが、矢張り汚く感じる。
 By the way,序盤は、こんな島人の素朴で飾らず、ちょっとぶきっちょで純な様子が淡々と描かれ溜めが充分に効くまで長めの助走が入る。この溜めが後半一気に爆発するのだが、この爆発力が凄い。島人のメンタリティーを良く理解し、都会から流れて来る人々の辛い体験や気持ちもリアルに掬い取って笑わせ、泣かせる傑作。流石に再再演作品であある!! 島の景色の美しさも、ホントに住んだ者には良く分かる。自然の持つ、厳しさそして優しさ、類稀な奇蹟としての命の尊さなどをじっくり噛みしめるにも最良の場所が島であり、共に語らう楽しさや島酒の旨さも島人とならではである。
光の祭典

光の祭典

少女都市

こまばアゴラ劇場(東京都)

2019/08/21 (水) ~ 2019/08/27 (火)公演終了

満足度★★★★

 板上は直径4m程の円盤の上にひと回り小さい円盤を載せたオブジェが中央に据えられている。奥の壁上方には、体育館の高所に設えられているような落下防止柵のついた狭い通路が在るが用いられない。但し、ここの色彩は黒、円盤天板は赤、胴は黒で色彩の表すイマージュは背負っている。それは表象の意味する所は異なるにせよ、スタンダールの「赤と黒」のうち“黒”が赤い金魚の背鰭と尾鰭に入っていると科白に現れていることで明白だろう。何れにせよ注意深く観るべき作品である。(華4つ☆追記後送)

「RE:道先案内人~ハジメマシテ死神デス~」 「終・道先案内人~ゴキゲンヨウお別れデス~」

「RE:道先案内人~ハジメマシテ死神デス~」 「終・道先案内人~ゴキゲンヨウお別れデス~」

幻奏ボレロ

新宿スターフィールド(東京都)

2019/08/16 (金) ~ 2019/08/23 (金)公演終了

満足度★★★★

 ~ゴキゲンョウお別れデス~を拝見。(華4つ☆)

ネタバレBOX

 この小屋にしては随分凝った舞台美術。奥には 分度器型の大きな半円形の物体が壁に張り付くように置かれその中央に向かってこれまた巨大な十字架のようなオブジェが横たわる。プロセミアムアーチが手前にあり客席と舞台を劃然と分かつ。
 ユダヤ教、キリスト教、回教の神は、人間との間に契約関係を持つ一神教で、この3つの宗教はイスラム教解釈では、同一神を崇める兄弟宗教であり、ユダヤ教は予言者としてモーゼを、キリスト教はイエスを、そしてムスリムはムハンマドを持つ。今作ではこれらの宗教群の契約概念と仏教の持つ輪廻転生や因果律の概念をないまぜにした世界観に人間実存の儚さ、切なさ、不安という底なし沼の只中に在る孤立を対置し契約を支点にしながら各々の利害対立、目論見実現の為の駆け引きと闘争、フェイクを交えた情報戦などが交叉し合ってある種の神経戦及び推理合戦と実践的組手合戦が展開してゆく。ノアの方舟やソドムとゴモラをベースにしたような神による世界の作り変え(リセット)、と契約(その要素として人間、人間が変異させられた死神、彼らが辿る道行道程中の避け難い工程や死と不死等の因果律、転生に組み込まれた仏教的概念)が複雑微妙に関与し合っているように見える所が、観客を惑わす階層的仕組みであることさえ見抜けば、後は比較的詩的な科白をその情緒的効果に惑わされずに切開することで本質は容易く透けて見える。唯、この透けて見えてくる本質が、極めて切実で実存の持つ本質的な存在の不安、宇宙の只中に唯一人屹立するような耐え難い不安であることに今作の要があると言えよう。その点が今作がそこいらにいくらでも転がっているチャラけたファンタジーと異なり、大人の苦い経験を味わった者にも共感を齎す苦味の持つ深い味わいを感じさせる所以である。
もっと表面的な言い方をするなら創造主の絶対に対し愛と情と死を考える力によって人間となる我々が、他の人々(つまり仲間)に忘れ去られることを含めた消滅の危機を対置して戦う物語と観ると良かろう。ここで少し深読み要素を加えておくなら、現代日本で暮らす東洋人である我々の意識が恰も「名誉」白人の意識であるかの如く物事の判断基準の根底に一神教(主としてキリスト教だが)が第1基準として設えられている点だ。
 而もアイロニーではない。この点に作家の意識せざる我々の位置表象が現れていると解釈すると面白かろう。
さいごのおうち

さいごのおうち

神保町花月

神保町花月(東京都)

2019/08/16 (金) ~ 2019/08/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

 タイトル自体実にニクイね~、と言いたくなるような味が出ているのみならず、ひらかな表記がいいね。旧盆に合わせて、総ての挿話の舞台は墓場で展開する辺りも心憎い。褒め言葉ばかりじゃ癪だからくさしてやりてえんだが、くさす所が無い、ってのがクサしかねえ。おあとがよろしいようで。(追記後送)

肉体だもん・改

肉体だもん・改

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2019/08/17 (土) ~ 2019/08/26 (月)公演終了

満足度★★★★★

 初日を拝見。拝見しながら「東京セブンローズ」(井上 ひさし)さん作の小説と随分イメージが重なり合うことに驚きながら拝見していた(物語細部については、後送)

ネタバレBOX

が、無論、それは“血桜団”、“ベビードール”のメンバー達の男達に投げつける科白に込められた掘り尽くせない程に深い怨嗟と絶望、生き残ってしまった事へのオトシマエのつけ方の正しい選択の結果が、正鵠を衝いている所から来る。余りにも有名な孫子の言葉に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というフレーズがある。この1行の内実は“正しい情報を過不足なく認識し、合理的に情報を用いる”べきこと、即ち事実に基づく情報戦こそ、勝敗を決するという極めて理知的・合理的な判断を示したものだと言えよう。然るに日本のやったことは、今を見ても明らかなようにそれとは真逆なことであり、根本的には、このことが完膚なきまでに日本を叩きのめしたのである。女性達の科白には、男が齎したこのだらしない結果の核心を衝いた批判が至る所に現れているのだ。
 もとより演劇の持つ娯楽的側面は、興業的にもまた仕事帰りの観客に振り返ってもらう為にも、また民衆演劇のみならず日本のエンターテインメントを支え続けてきた浅草の持つ歴史的・文化的・風土的・宗教的。庶民的磁場性に於いても極めて大切な要素であるからドガドガ+の公演にもそれは毎回活かされているが、今作は、その傾向が歴代作品の中でも濃いように思われる。{(無論、その分ダンスや正面奥の壁の一部が発光、物語の進展の内容に応じて内側から様々な色調で変化する演出)、ミュージカル的要素のブラッシュアップなどの進歩、劇団メンバーの成長による演技力、身体パフォーマンスの向上等もある}が、望月ワールドを真に味わう為には、今回各細部に分かる者には分かるという形で埋め込まれた様々な仕掛けにも気をつけて観るべきだろう。オープニング早々、沖中がシャブを打つシーンがあって観客の笑をとったが、このシーン、多少オーバーな身体表現はされているものの、シャブ中には親しい感覚を見事に形象化している。というのもシャブはアッパー系ドラッグの代表格とされる麻薬であるから、打った時の感覚は当に髪の毛が瞬間総毛立つような感じになるという。(シャブ中から聞いた話だから信じている。)また、当時合法的に薬局で売られていたヒロポンの名も休憩中にチラリと囁かれる(その危険性についても無論だ)。{何故、シャブのように危険な麻薬が合法的に売買されていたのか? 特攻隊の兵士らに死の恐怖から逃れる特効薬として用いられていたからであるという話は、安藤昇が書いていた。(軍部が計画的に用いていたからシャブ中になって復員した特攻隊帰りなどの元兵士に供した訳だ。)その他、ダウン系の代表である阿片等も戦争資金調達の為、戦地で負傷兵の痛みを緩和する為、人倫は決して許さない行為をなす為に、兵士が己の内部にある人間性を殺す為など様々な理由で用いられた。戦争が始まればドラッグが常態化することは常識である。1銭5厘で徴兵され、拒否したりすれば本人が非国民呼ばわりされるのみならず、特高に追われ捕縛・拷問・入獄或いは最前線送り(ある体験者から伺った話では生存者僅か1%)家族・親族迄地域から八部にされ、住むことさえ適わなかった日本の馬鹿げた宿亞(当に宿亞としか言いようがない。日本は千年以上も前から社会制度、様々な技術、文化の根底を為す文字、数学の基礎である数の概念や表記法、政治体制、生産体制等何から何まで最も根本的なことを日本人以外の発明・発見を横取りしハイタッチレベルで加工することで調子よく生き抜いてきただけだ。パラダイムシフトを起こせるような人が生まれたとしても社会全体で潰してきた。即ち自分の頭で考えもせず、考えたとしても実践してこなかったし、その結果を想像することさえできぬ愚か者と化したのである。これを宿亞と謂わず、何と言おうか? その結果が現在の体たらくである。グローバリゼーションを技術面で支えているのがインターネットで、グローバリゼーションを牽引しているのは無論、パラダイムシフトを可能にする技術を開発した人々をサポートする先見の明を持つ資本家たちを擁する地域の人々である。彼らは不特定大多数にインターネット以前には考えられなかった利便性を齎したが、それは同時に熟練労働者や深い経験を持つ者が不必要となる利便性であったから、企業の目的(利潤獲得)を最適化する為に高賃金労働者を馘首し低賃金労働者を多数雇うことによって全体の生産性を上げ、労賃コストを一定に保ったまま収益を上げ続けているのだ。)無論、嫌が上にも増した剰余価値は、資本家・金融機関オーナー・関係者、投資家、開発技術者など全地球人口の1%にも満たない人々に流れている。それが二極化したと言われる我々が生きる社会の実態だろう}今に至る日本の体たらくを是正するチャンスであった敗戦時以降数年の歴史をベースに描かれた今作は、ここに上げた現在の我々の生活にも直結しているという所迄読み込むならば、極めてシリアスな人間喜劇としても見えてくるハズだ。
’72年のマトリョーシカ

’72年のマトリョーシカ

風雷紡

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2019/08/14 (水) ~ 2019/08/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

 無論、元ネタは現実にあった事件。

ネタバレBOX

「あさま山荘」事件である。極左とされる連合赤軍事件で左派と呼ばれているのは、永田 洋子を中心とした京浜安保共闘。連合赤軍はこれに森恒夫を中心とする赤軍派が加わり共闘組織という形を採った。無論、世界同時革命を標榜しPFLPと連帯した重信 房子らとは別系統だ。赤軍メンバーは知的レベルの高いメンバーが多く理論家肌のメンバーが多かったとされる。人間的にもトロツキスト・理想派が多かったようである。これに対し京浜安保共闘は実際に京浜地区の労働者が多かったとされ、理論よりは実践派、行動的なメンバーが多かったようである。粛清されたメンバーは主として永田の嫉妬心を刺激した為殺害された者が多かったと考えられるが、形式上は、所謂総括の論理による刑死であった。無論、その論理に整合性も社会科学的根拠も無いことは明白である。革命左派というより、寧ろ宗教に近かろう。然し、今作の提起している問題の核心はそんな所にない。寧ろ、日本及び日本人の極めて深い所からその判断、行動を規定している規範を俎上に載せていると見るべきだろう。その規範とは村の掟即ち、それを犯せば村八分という憂き目をみる諸々の慣習並びに卑怯な判断を内的に正当化する為の詭弁である。これを顕在化する為に極めて効果的にじゃんけん歌が用いられている。そしてこの卑劣は、現代にも脈々と息づき我々日本人の多くを盲目的に縛っているが、それは例えば苛めに、或いは幼児虐待に、或いは在日外国人差別に、被差別部落出身者差別に、と至る所で顔を出す。それは、現在世界中で猛威を揮うグローバリゼーションを技術的に支えるインターネット環境下でも日本人に不利に作用している。どういうことかというと、例えばパソコン作業に用いられる様々なインターフェイスの開発者たちは莫大な利益を享受するが、開発されたソフトを用いて利便性を享受し続けるだけの人々は、利便性の高まった労働現場では、経験や技術力を必要としない単純労働を担う労賃の安い人々に代替され職を失ってゆく。而もこの動きは好況、不況の波の中で採用人員や採用条件が上振れするという希望も持てないままである。何故なら生産手段がほぼ飽和状態迄開発された現状では、利潤を追求する企業経理上で採算を上げる為には労賃を安くする他道が無いからである。他に社会の中流に居る人々がまともな収入を得ようとすれば、起業して新たにニッチなレベルで確たる地位を築くか、取り敢えずインターフェイスの新ソフトを開発して利権を確保するとかしかあるまい。でなければ、単なる「便利」の享受者として社会的弱者への道を転げ落ちる他無い。そしてこのような開発力を持つ人間にはある種の共通項がある。MIT,IIT等のエリート校に多いタイプ、nerdである。日本はこのタイプの人々を潰しこそすれ、育てるなどということをしてこなかったし現在もしていない。日本人であってもこの手の人達は既に海外に拠点を移し、多くは戻って来ない。意味が無いからである。このような人材を大切にできないどころか潰すことしかできない日本に未来が無いことをこそ、今作は告げているのである。公安が人質にされた若い妻に証言を変えさせる経緯にもその穢しさは露骨に表れている。
丹青の新・牡丹灯籠

丹青の新・牡丹灯籠

深川とっくり座

江東区深川江戸資料館小劇場(東京都)

2019/08/16 (金) ~ 2019/08/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

 自分は幼い頃、深川の長屋暮らしをした経験がある為か、下町が好きである。

ネタバレBOX

ガキの頃は縁日と祭り、喧嘩神輿が大好きで良く出掛けたものだ。喧嘩神輿は死人が出ることがあった為禁止されてしまったのが残念で仕方なかったことを良く覚えている。権威や権力を笠に着る連中とマッポが大嫌いなのは、こんな育ちの所為かも知れない。何れにせよ、下町の人々の持つ温かさが好きなのだが、とっくり座作品にもこの下町独特の温かな人情がいつも滲んでいる所が好みなのだ。今作でも生き延びた新三郎が屑拾いをしながら没した船から落ちたおつゆ、おちよを地を舐めるように何年も探し、近隣の寺を回って無縁仏を調べた挙句見付からず、おちよの忘れ形見・おきみを育てながら20年を過ごした後、偶々、長屋の者が野ざらしになっていた白骨を供養したことから縁あっての再会となり、おつゆらの身の上話を長屋の者らが聴くに至ったものの、新三郎はご隠居との将棋の約束があって会う事が無い辺りのじらしも上手く、逢瀬の段になって直後に、あの世とこの世の定めに泣く泣く従わざるを得ない場面での命掛けの恋相手との別れ、親子の別れの痛切な痛みは胸を撃つ。この時の照明も実に良い雰囲気を醸し出していて感心した。役者陣のこなれた演技も良い。彼岸へ旅立つ刹那、おつゆがリクエストする兎の歌も何とも言えない間を作り出して効果的。
Offline Game

Offline Game

縁ろず屋

シアター風姿花伝(東京都)

2019/08/15 (木) ~ 2019/08/18 (日)公演終了

満足度★★★

 如何にも現代日本の若者の作品。

ネタバレBOX


 社会に目を向けず、周囲の人間関係とゲームとが密接に絡み合う現代日本の若者達の日常を或る意味掬い取った作品ではあるが、いかんせん表層的で情緒的、これでは、世界中で起こっている差別・被差別問題の本質に迫ることができないのも世界との齟齬を認識できないのも当然だろう。例えば1989年から問題になってきたフランスのスカーフ論争の意味する所も、そこで暮らすマグレブ出身の2世、3世、4世の抱えるラヒール・ワタン問題も、旧宗主国であった仏の抱えるアンヴィヴァレンツも、翻って我が国が抱える在日の方々との歪や重厚長大産業延命策としての軍事路線邁進の政治も何も見えて来ないだろう。
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

DULL-COLORED POP

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了

満足度★★★★★

 第三部を拝見。この作家のぶきっちょと真摯が如実に現れた作品。今年の上演作品総ての中でベスト10入りは間違いないと思われる作品だ。自分としてはベスト3以内にノミネートしたい。必見!!!(華5つ☆追記後送)

TIME

TIME

まんざらでもねぇ

Geki地下Liberty(東京都)

2019/08/10 (土) ~ 2019/08/11 (日)公演終了

満足度★★★

 板上基本的にはフラット。

ネタバレBOX

変形箱馬などが必要に応じて用いられる他、奥はスクリーンになっており、ムービー等が流されると同時に、コント、演劇、手品ミックスステージらしく、映像で水を用いるシーンで客席に飛沫が飛んできたりとの演出もある。マジックは弟の担当、始めて3年ということで未だ修行の余地あり。コント、演技共に更に磨きを掛けて欲しい。
陰謀の摩天楼にて

陰謀の摩天楼にて

カスタムプロジェクト

調布市せんがわ劇場(東京都)

2019/08/10 (土) ~ 2019/08/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

 正解者はかなり少ない。然し無論その分、エキサイティングなチャレンジができる。心して掛かるべし!(追記後送)

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

DULL-COLORED POP

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了

満足度★★★★

 第2部を拝見。現地の人々のがどのような政治的・経済的状況に置かれていたかについては、相当に具体的イメージを持つことができた。

ネタバレBOX

 反原発の理由については旧知のことが殆どなので新味はないが、政治というものの本質的な詭弁性と一歩踏み込みが足りないが、まあ、日常レベルで金銭経済に巻き込まれてニッチモサッチモ行かない中でもがく、日本に住む「我々」のアンヴィヴァレンツを板上で見せられると、己が信ずる論理を徹底させることのできない人々の切実な内的亀裂を感じさせる。
 上手いと思わせたのはファーストシーンで穂積家の愛犬、モモを登場させ、未だ美しく寒い福島双葉町の凍った朝に、光が射し氷が煌めき、溶けかかった水が輝く北国の清朝で透明な無垢を、生命そのものの輝きと重ねて描いている点だ。因みにこの日がモモの命日でもある所がニクイ! また、既に我々は知ってしまっている人間という生き物のどうしようもない無責任と愚かさ及び傲慢を、人間以外の総ての生き物の代表として死後も彷徨う霊となったモモが、最後迄人間達を見守り、話し掛け続ける謂わば一種のボンサンスとして狂言回しならぬ人倫を囁き続ける姿が印象的である。当然のこと乍ら、無数に彷徨う霊たちは人間に語り掛け続けているのだが、人倫故か、か細い声故か、人間には殆ど聴き取られぬ所が恐らく作家の意図せざるアイロニーとなっていよう。
 分析が甘いと感じた点は、生きる為、生活の為に必要だと思い込まされている「金」について即ち現在世界中で猛威を揮う債務貨幣システム・部分準備金制度の齎す、経済危機やそのような状態に対する脆弱性を分析していない点である。それに踊らされた結果が、反原発運動のリーダーであった人物を原発推進派に変えて行く訳だから、単に地方VS中央だとか、補助金制度、電源三法などに矮小化せず、更に本質的な問題にまで踏み込んで欲しかった。
 また忠が詰め腹を切らされることになる吉岡の論理も切り崩すのは案外容易。彼の用いたデュアリズムの限界をみればそれは明らかなことであろう。
TRAIN A

TRAIN A

シアターグリーン学生芸術祭Vol.13短編部門A

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2019/07/29 (月) ~ 2019/08/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

 演劇の力をマザマザと感じさせてくれる必見の舞台。華5つ☆

ネタバレBOX

 科白は殆どなく9人で出場する際は1人が黒、他の8人は総て白の衣装である。各作品5分ほどだろうか。ソロ作品とほぼユニゾンと言ったら良いようなユニットによる作品がオムニバス形式で演じられてゆく。照明は昏めで、時折下方から照らすなど様々な工夫がされ、音響も効果的に用いられるばかりでなく、ピッタリ息の合った集団的所作の見事さや、ストップモーション、スローモーション、断続的な動きや所作の、計算され効果的な動きと、背景のスクリーンに映し出される詩的スクリプトが、作品の持つ鋭い批評性と現在時の日本に於ける演劇表現の可能性をマジマジと実感させてくれる。当にexcellentと呼ぶに相応しい作品。今後の活躍が大いに期待できる力量を備えたグループと見た。演者達の力量、作・演出の素晴らしさ、照明・音響のセンス総てに於いてハイクオリティーである。
TRAIN A

TRAIN A

シアターグリーン学生芸術祭Vol.13短編部門A

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2019/07/29 (月) ~ 2019/08/06 (火)公演終了

満足度★★

 登場人物は4人。

ネタバレBOX


だが、「現実」には2人である。名前はそれぞれ違うし演じる役者も異なり、間の取り方や滑舌の余り良くない者も居るので当初頗る分かり難いのだが、単純な話である。劇中実在するのは、茜と同期の演劇研修生 一方劇中の役柄は茜演ずる百花と同期研修生演じる委員長である。委員長は転校してゆく1級下で高1の百花に告白するのだが、これは憑依されたのだと主張する。無論、百花を嫌って居た訳ではない。逆に好きだったことは事実だ。然し彼女には好きな人が居ることも知っていたので告白して自分の彼女にするより、彼女の好きな人と上手く行くよう応援したいと考えたのだ。
 ところで作品の中で「現実」に存在している茜と同じ演劇の研修生は茜より1つ年下の21歳、同棲相手を結婚相手として選んでいいか否かで悩んでいた茜が彼に相談したことから親しくなった。研修生は茜を好きなので百花を演じている茜に委員長を通じて告白させることによって自らの念を彼女に伝えようとしたのだ。因みに百花が好きな人は同期の女性である。
 内容は以上のようなものであるが、若者の閉塞状況の在り様の一つとして本能の荒々しさすら喪失し、ひね媚びた自同律の不快をすら対象化し得ない受け身の心象風景には気持ち悪ささえ覚える。このようなメンタリティーが昨今のような日本の終末をのさばらせるのかも知れぬ。
ARTE Y SOLERA 『琥珀』

ARTE Y SOLERA 『琥珀』

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団

世田谷パブリックシアター(東京都)

2019/08/03 (土) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

 世田谷パブリックシアターの3階席から拝見したが、歌舞伎と同じでこういう席は全体を俯瞰できるので、衣装、被り物と衣装のコントラスト、照明の効果、群舞の際のポジショニングや全体のコントラスト等々が構造的に把握できて実に楽しい。

ネタバレBOX

また鍵田 真由美さんと佐藤 浩希さんの2人にはソロのシーンがあるが、流石にソロを踊れるだけのダンサーである。鍵田さんのソロは、ステップの紡ぎ出す正確なリズムと身体の用い方の見事さ、衣装を翻す際の艶やかさのみならず、観ている我々の身体の奥底に普段休眠しているリズム感迄叩き起こして、共鳴させてくれる。これは彼女のダンスが単に身体の見事な動きやステップの刻む正確なリズムによってばかりではなく、これらを通して彼女と共鳴する空間・身体が一体となって、延び広がるような彼女のイマジネーションによって繋がり、その踊りを大きく見せている為だと思われる。佐藤さんの場合、パンタロンの裾巾を物凄く広く取って身体の動きに興趣を添えるとか、スペイン伊達の若者が着るようなコスチュームを纏っても良いかも知れない。この辺り、男性は男性なりの衣装の工夫がもっと欲しい。群舞を舞った踊り手たちも基本は可也できている方々なので、自己と宇宙とのコレスポンダンスを図って欲しいと思うのだ。
 演出的には照明とのマッチングで素晴らしい効果が上がるので、それらの効果を総ての作品について検証して欲しい。自分が最も気に入ったのは黑い衣装に星を鏤めたようなショールを用いた鍵田さんのソロ、矢張り彼女のソロで、赤い被り物を用いた作品の2つ。1番が黒作品であった。頭の可也暗めのぼやかしたようなスポットからグラデーションをつけピンスポに持っていった辺り、照明にも痺れた! 無論この光の変化の中に翻る正しく小宇宙のようなショールの翻る様の美しさも、ネゲブ砂漠の大岩の上に設えられたベッドに寝転びながら、アメリカ在住の著名アーティストと一緒にみた夜空のように素敵なものであった。
500万 ~2019~

500万 ~2019~

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2019/08/02 (金) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

 一言で言って爽やかなコメディーである。

ネタバレBOX

基本的に板上はフラット。数個の箱馬があるだけだ。各ストーリーが個別演じられるが、Aの場面にはその相手方のBの場面が、そしてBの場面にはその関連噺のC場面が演じられるというオムニバス形式で物語が紡がれてゆくが、この説明から明らかなように、場面場面は密接な関連を有し各々の関係を詳らかにしてゆく。随所に擽りが入り、展開もスピーディーであり而も爽やかで心温まる内容なので素直に楽しめるし演技・演出も良い。お勧めの作品である。
 必要な額を500万という手の届きそうな額に設定していることも成功の要因になっている。
真・恋愛漫画

真・恋愛漫画

ライオン・パーマ

シアターKASSAI(東京都)

2019/07/31 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

 通常、演劇を書く際に絶対必要な条件として、事件、対立・葛藤、笑い、危機一髪、意外な結末等を挙げられよう。だが今作で作家は、先ずこれらの要素を否定することから入ったのではないか?(華5つ☆、必見!)若干の追記あり2019.8.13

ネタバレBOX

 そう思わせる説明文である。先ず、この辺りから検討しなければならない所で既に観客は作品世界に足を突っ込んでいる。即ち実際に作品を観る前から劇的世界に入り込んでいるという訳である。この辺りの仕掛けが実に巧みで興味深い。
 作品内容の細部については公演終了後に若干追記するが、内容的な深さには感心させられた。最近、自分は表現する者として自らを積極的にアイデンティファイすることに、聊か恥ずかしさを感じているのではあるが、当然のこと乍ら、自らの生きる根底にそれを置いているし、自分が生きてあることの意味もそこに置いている。そのような人間として今作が提起する諸問題は何れも極めて本質的で仮借ないものであり、其処を避けて通ればそれだけで表現者失格と言う問題ばかりである。例えば我々は何処から来て、何処へ行くのか? 我らが生きる意味は何か? そもそも、我らに意味はあるのか? 
 表現技法については、上に挙げたような総ての技法を取り去った時に如何に書くことが可能か? といったことや、もう一つの哲学的大問題。即ち死。死とは何か? から始まって死の意味する所とは何か? 死と生を対比させることで我らは何をどのように観、考え、生き、そして避けようの無い最期を迎えるのか? その時の己の心と魂、人間関係や総て関わりの在ったもの・ことと一体どのように対峙すれば納得のゆく最後が迎えられるのか? といった切実で誰一人逃れることのできない心と魂の裸形の葛藤を浮かび上がらせるのだ。そして、実際の生活である日常の、事件も起こらず、笑いも取り立てて必要とは言えず、危機一髪のアクションなんて余計で、意外な結末などもってのホカで、落語でもないのに下げも要らないという世界の限りない愛おしさをこそ描いてみせたのだ。傑作である。無論、演技の質も高く、笑わせてくれるシーンも、本当に落涙させたり、ハラハラさせたり、憐みを感じさせるシーンも鏤められている。総ての要素のバランス感覚も素晴らしい。追記は以下
 火山火山が編集者となって後任を託した天才漫画家・天童 幸一郎の担当編集者となって己を超えるべく矢継早に無理な注文を出す不自然な様や、それとなく臭わせる演技から勘のいい観客は早くから気付いたであろうが、決定的だったのが、部下に水を持って来させ薬を飲むシーンで死病であることが決定的になるシーンなど、実に上手い。
『熱海殺人事件』  vs.  『売春捜査官』

『熱海殺人事件』 vs. 『売春捜査官』

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2019/07/26 (金) ~ 2019/08/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

 つか こうへいに礼を尽くした作品でもある。(追記後送 華5つ☆)

ネタバレBOX

 沖縄の痛みを見事に掬い上げ流れ着く者達の状況、メンタリティーと、そのような人々を迎え入れる沖縄という地域の人々の真の優しさ、強さ、リアルな連帯を結ぶ根底として彼らの持つ、他者の痛みを己の痛みとして受け止める、ウチナンチューやシマンチューの経験してきた凄まじい歴史とリアルな想像力の凄さに撃たれる。
♭1~役者への道~

♭1~役者への道~

ThreeQuarter

中野スタジオあくとれ(東京都)

2019/07/28 (日) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

 今回は30分尺の短編を3本上演。ワークショップに参加した者達も出演していることから、ワークショップ風に、通常は幕などで隠して見せない裏通路や場面転換等も見えるという演出。ワークショップの課題は「新たな自分への挑戦」そしてテーマは「出会い、そして○○」だ。チームは“ひまわり”と“あさがお”の2つ。ひまわりを拝見した。作品は上演順に①婚活パーティー②corn☆er③KRZ1900A・Tomの3本。(追記後送)

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