「RE:道先案内人~ハジメマシテ死神デス~」 「終・道先案内人~ゴキゲンヨウお別れデス~」 公演情報 幻奏ボレロ「「RE:道先案内人~ハジメマシテ死神デス~」 「終・道先案内人~ゴキゲンヨウお別れデス~」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     ~ゴキゲンョウお別れデス~を拝見。(華4つ☆)

    ネタバレBOX

     この小屋にしては随分凝った舞台美術。奥には 分度器型の大きな半円形の物体が壁に張り付くように置かれその中央に向かってこれまた巨大な十字架のようなオブジェが横たわる。プロセミアムアーチが手前にあり客席と舞台を劃然と分かつ。
     ユダヤ教、キリスト教、回教の神は、人間との間に契約関係を持つ一神教で、この3つの宗教はイスラム教解釈では、同一神を崇める兄弟宗教であり、ユダヤ教は予言者としてモーゼを、キリスト教はイエスを、そしてムスリムはムハンマドを持つ。今作ではこれらの宗教群の契約概念と仏教の持つ輪廻転生や因果律の概念をないまぜにした世界観に人間実存の儚さ、切なさ、不安という底なし沼の只中に在る孤立を対置し契約を支点にしながら各々の利害対立、目論見実現の為の駆け引きと闘争、フェイクを交えた情報戦などが交叉し合ってある種の神経戦及び推理合戦と実践的組手合戦が展開してゆく。ノアの方舟やソドムとゴモラをベースにしたような神による世界の作り変え(リセット)、と契約(その要素として人間、人間が変異させられた死神、彼らが辿る道行道程中の避け難い工程や死と不死等の因果律、転生に組み込まれた仏教的概念)が複雑微妙に関与し合っているように見える所が、観客を惑わす階層的仕組みであることさえ見抜けば、後は比較的詩的な科白をその情緒的効果に惑わされずに切開することで本質は容易く透けて見える。唯、この透けて見えてくる本質が、極めて切実で実存の持つ本質的な存在の不安、宇宙の只中に唯一人屹立するような耐え難い不安であることに今作の要があると言えよう。その点が今作がそこいらにいくらでも転がっているチャラけたファンタジーと異なり、大人の苦い経験を味わった者にも共感を齎す苦味の持つ深い味わいを感じさせる所以である。
    もっと表面的な言い方をするなら創造主の絶対に対し愛と情と死を考える力によって人間となる我々が、他の人々(つまり仲間)に忘れ去られることを含めた消滅の危機を対置して戦う物語と観ると良かろう。ここで少し深読み要素を加えておくなら、現代日本で暮らす東洋人である我々の意識が恰も「名誉」白人の意識であるかの如く物事の判断基準の根底に一神教(主としてキリスト教だが)が第1基準として設えられている点だ。
     而もアイロニーではない。この点に作家の意識せざる我々の位置表象が現れていると解釈すると面白かろう。

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    2019/08/20 16:39

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