ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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職員室の午後

職員室の午後

STUDIO META

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/02/26 (水) ~ 2014/03/04 (火)公演終了

満足度★★★★

芝居としては5 イデオロギー的には4
 普段は青森で活躍している作家の作品だ。青森と言っても青森市ではなく弘前である。現在の青森県には旧、津軽藩と南部藩が含まれ、余り仲は良くない。気候帯も青森辺りから亜寒帯に入ると記憶する。昆虫の分布などにも明らかな差が出る。
 弘前は自分も好きな町だが、弘前城址で眺める桜はまた格別であろう。残念乍ら、桜の時期に弘前を訪れていないのだ。城址から眺める岩木山、標高は大して高く無く1625mだが、富士山型の山容から津軽富士とも言われ、本丸天主閣など主要な城郭を喪失した弘前城址から眺める景色は当に絶景。
 ところで、貧しい地域の暮らしは厳しい。村八分にされたら、乞食同然の暮らしを余儀なくされるのは必定。原発廃棄物の受け入れを肯んじたのは、無論、この貧しさを背景にしている。娘の身売りはもとより、飢饉の折には子を喰らうような歴史もあったであろうし、水争いで死人が出る話など、農村の古歴史を当たれば必ず出てくる。その為に、溜め池を作り、人柱を立てた話もいくらでも転がっていよう。1603年に江戸幕府が成立してから1868年に幕府が崩壊するまでの間に、日本の総人口は、余り増えていない。そのような背景にあった歴史的事実が子捨て、子殺しの系譜である。中でもかつて征夷大将軍が征伐すべき地として規定されていた東北地方一帯の窮状は、酸鼻を極めた。東北の人々とホントに仲良くなって本音を確かめてみるが良い。中央に征服されたという意識が見えるハズである。このような状況に置かれていたからこそ、会津藩のように幕末に幕府側について徹底抗戦した勢力が出たのである。つまり、冒険はできない体質なのである。そのような哀しさが、大人しさとして滲みでるような舞台であった。自分の目指す世界とは正反対なので、イデオロギー的に、自分は、この作品を評価できない。然し、演劇的には、上記に上げた様々な要素を考えさせる舞台であったし、知的で、上手に歌舞いた舞台であった。

ネタバレBOX

  東北の県立高校、短い秋の一日。第3職員室では、教師たちが、三年の 
 金井 里子の起こした万引き事件で揺れている。問題行動は、これで4度目。本人も万引きを認めているが、事ここに至っては退学も已む無し、という流れだ。然し、教育者として、それは、負けを意味しよう。教師の誰一人としてしっくりはこないのも事実である。
 ところで、現在、この職員室には2人の教育実習生が来ている。一人は分田上 良平、蟻の研究をしていた。もう一人は平出 敦子、哲学科を出ている。構造主義の研究をしていた。分田上は、平出に好意を持っているが、ひつこ過ぎて嫌われている。
他に教務主任格、数学の岡枝 竜也、体育の西 一、物理の村松 四朗は子だくさんで、こづかいが一月3000円とずっと上がらないのが、なんちゃって気味に皆の前でバラス愚痴である。以上の3人は、同級生で腐れ縁だ。西はインター杯でバタフライの記録を持っていた。
科学の遠藤 崇は、トレッキングをしていて4000m程の山の頂きで丁度反対側のルートから登ってきたフランス人女性と劇的な出会いをして3年前に結婚した。休みには、妻と共に世界中の山々のトレッキングをしているので、いつも金欠で、事務の金子 公子には借金の申し込みをしている関係で頭が上がらない。
 英語の神成 誠二は、暫くイギリスに留学していたが今日帰って来た。それで直ぐに、顔を合わせて暫くは猛烈な悪口雑言を相手にぶつける、という奇妙な癖を持つ。イギリスでもこの悪癖の為に、当初散々殴られた。
国語の藤田 涼子は、頗るつきにプライドが高い為、ぎこちない態度が目立つ。最近、恋をしていると言う。
 東京から着任した北山 宗介は、物理の教師だが、動物の生態や行動に詳しく、そのジャンルでは村松や分田上と合う。因みに村松と北山はバスケットボールが上手く、ちょっと体育館で練習して見た感触では、去年のリベンジを目指している2職に、今年も楽勝の予想が立った。
他の先生達も其々に、キチンと落とし所があるが、それは観てのお楽しみ、ということにしておいて終盤に移る。
 教師間の噂話や雑談が一回りした所に、電話が入る。警察からだ。金井らしき若い女性の遺体が上がったというのだ。川の橋脚に引っ掛かっていたというのである。いくら問題児とはいえ、教師達は、殆ど青ざめんばかりである。早急に、正確な情報を集め、対応する為の準備に走る。然し、学校近くの金子の家を訪ねた教師は、本人を確認、警察が、金子らしいと判断した材料になったものは、彼女が友人に貸し、それを友人の姉が又借りしていたことが判明。本人は至って元気で拍子抜けするというより、こんなに生徒を心配している自分達を発見して、退学お流れは完全に失せたような先生達の雰囲気を盛り上げて幕。
せんてい

せんてい

ポーラは嘘をついた―Paralyzed Paula―

プロト・シアター(東京都)

2014/02/28 (金) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

孤立と言葉 空疎になる前の
 漸く舞台の進展が見える程度の照明で進行する。無論、観客のイマジネーションを最大限刺激する為と、地下で展開している物語であることを観客にも体感させる為の演出であろう。潔癖症であることが明らかなような女性が登場するが、作家に訊いてみると、作家自身は潔癖症ではない、ということであった。矢張り、凄い想像力の持ち主である。自分が、この劇団を拝見するのは今回で2作目だが、前回の「ある程度の教育」にしても、今作にしても、絶対孤独なヒトという存在が、既に定式化され大多数の人々に認知された「常識」という訳の分からない観念連合と対峙する形をとっているように思う。その意味で、科白は、ダイアローグ化しているのであるが、片側が、絶対的孤立内に在る為、真のダイアローグに成り得ないという意味で現代日本の病弊を表現しているのである。当然のことながら、描かれている範囲は狭い。然し、極めてラディカルでもある。今後、更に突き詰めて行く中で、発狂の恐怖と戦い乍らも、この世の一般人が決めたボーダーなるものを乗り越えて行って欲しいものである。それを期待出来る才能だと信じる。ご本人には、非常にキツイ状況だろうが、偶には、阿保をやったり、自然の中を彷徨ったりしながら、生きている意味を掴んで欲しい。

うた歌うなら私は出る!【ご来場ありがとうございました!!】

うた歌うなら私は出る!【ご来場ありがとうございました!!】

劇団前方公演墳

小劇場 楽園(東京都)

2014/02/27 (木) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★

可愛いカポネ
 中々ダンディーで哀しみのあるギャングが描けていて新鮮であった点、シナリオに幅がある点、思いがけないキャラクターがピアノの生演奏をする点などがgood。(追記2014.3.4)

ネタバレBOX

 時は、禁酒法時代、所はシカゴ。アルカポネの活躍した時代である。今作は、カポネ時代の伝説のギャング、ホワイトヘッドを中心とする物語だ。彼の店、Dancersが物語の舞台。この店は、無論、酒を扱っているが、カナダから、ちゃんとした酒を輸入して飲ませる、が売りの店だ。禁酒法時代、メチルアルコールをバスタブに入れた水で薄め、売シテ儲ける輩、飲んで、目を潰したり死ぬ輩が大勢いたのである。ギャングとはいえ、筋は通す、ということになっていた、と言うべきか。
 日本のヤクザで言えば、所謂、地廻りの伝統的ヤクザと暴力団の差と言うべきか。まあ、暴力団もある時期から企業舎弟等を持ち、政治・経済絡みで動くようになったが。一例を上げると堤と稲川会の関係は有名だ。が、稲川会は、何も堤とつるんでいただけではない。もっと詳しく知りたい方は、広瀬 隆氏の「私物国家」を読んで頂きたい。現首相の安倍の系列を始め、日本の支配層が如何にダーティーな連中かその一端が分かるハズだ。
 まあ、日本ほど、「単一」でない民族国家のアメリカでは、日本と多少異なる流通キーによる似たようなダーティー社会が形作られていたと言うことだ。但し、アメリカの正義は日本のそれほど腐り切ってはいなかったようであるが。
何れにせよ、伝説には、尾ヒレがついて針小棒大になっており、事実はスーパーマン物語ではなかった。が、実際に救われた人々の中には、本当の義を果たす者達が居り、それが、伝説の維持にも繋がり、他方、正義が、正義を正義として実行する為の縁ともなる、その腑分けを為さしめるもの・ことであった。為に、義を守るべくして守ったギャングは、ギャングの怖さよりもダンディスムやある種の可愛らしさが描かれているのである。
 役者の力量がかなりばらばらで、それが露骨に出るきらいがあった為、荒い印象を受けたシーンが何か所もあったが、そういう所を削り、泥臭さを出す場所では、上手い役者が態と下手を演じて歌舞くという方法を採るとか、不必要なギャグを落として、内容を濃く見せるなどのテクニックも演出する者は意識すべきであろう。
 個々の役者には、レベルの高い者も居たので、本を少し直し、若手も育てながら、残った仲間と共に本質に切り込んで欲しい。
心の中、翼ひろげて

心の中、翼ひろげて

夏色プリズム

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/02/27 (木) ~ 2014/03/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

勇気
 シナリオ、演出、演技ともバランスの取れた良い劇団。扱っている題材は、避けて通れない問題なのだが、余りにも微妙で皆避けて通りたがる障害者の性。これだけの大問題に真っ向から取り組み、作品化したということは、志の高さと真剣に取り組む姿勢を意味しよう。それと共に、敢えて大変な問題に挑んだ勇気をも高く評価したい。

眠る羊

眠る羊

十七戦地

LIFT(東京都)

2014/02/19 (水) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

2度目
 2度目を拝見。シナリオの質が非常に高いだけに、役者相互の役作りで、もっとがちのぶつかり合いを練習で積んで、そのあと、滲み出るようなものが、出せるようになると、もう、これは、鬼に金棒、鉄壁だろう。非常に大変な作業になるが、今後とも目の離せない劇団である。

一緒にいれば敵なし

一緒にいれば敵なし

パセリス

シアターシャイン(東京都)

2014/02/21 (金) ~ 2014/02/24 (月)公演終了

満足度★★★★

企画力高し
 パセリス+めがね堂+ファルスシアター+Niceplan都合4団体による対バン公演、無論、オムニバス形式である。別に起承転結を狙ったわけではないだろう。唯、この企画の立て方自体が、様々に観客を刺激する、そうではないか? (4団体総てが出る日時の回を拝見)

ネタバレBOX

 小劇場での上演時間は、凡そ、2時間。椅子やスペース、訴えたいことを充分に伝える為に必要な分量から、また、観客の集中力の持続可能性からこのくらいの公演が多い。4団体が出演しても、この原則は、基本的に変わらない。従って、各団体に許されるのは、30分。
 30分で、舞台装置や場面転換がスムースに行われ、次の劇団が過不足なく気分一新した舞台を勤められるようにバトンタッチしなければならない。無論、交代時には、暗転するから、明転した際には場見していた通りの位置取りで控えていなければならない。役者には基本中の基本と笑われるかも知れないが、真っ暗な中で、良く間違いない位置取りをする、と観客の多くは内心感心しているのではあるまいか? 
 まあ、ざっと挙げただけでも以上のような気配りやら何やらが、必要なのが、舞台芸術なのだ。これらの要求にキチンと応える為には、裏回りに余裕の在るスペースが欲しいのだが、小劇場に、そんな余裕を要求する方が、酷という場合も多々ある。だから、舞台道具は、可能な限りシンプルで抽象性に富み、何にでも見える、何にでも使える形態やサイズでなければならない。同時に、ユニットとして単体でも使え、組めば応用が効くというものが良い。今回、このような意味で、用いられたのは、直方体の蓋が開く箱である。これなら椅子にも机にもなる。組めば更に様々に用いられる。移動や構築が楽であるからスピーディーな場面転換や展開にも対応が効く。想像力の助けを借りれば、そこに何が表されているかの類推も容易である等々様々な利点がある。無論、劇団の持ち物である場合には、遠距離の移動も楽だから、余計な手間が掛からない。これくらいにしておこう。ざっと挙げただけでも、これだけのことが、演劇上演の前提となる。而もタイムスケジュールは決まっているから、基本的には動かせない。客入れ迄に裏回りは、スタンバイできていなければならない。だから、段取りが必要で、段取りがしっかりできれば、作業の半分は片付いたと言っても過言ではないのである。段取りとは、論理である。時間・空間と人の動きをマッチングさせる技術と言っても良いかも知れぬ。
 各団体とも作品の上演時間が限られる為、劇団の特徴を凝縮したようなエッジの利いた作品を出している。劇場のキャパや裏回りの関係で舞台上で用いられる道具類も殆ど共有、無駄が省かれ、或る程度の抽象度を保って何にでもなり、何にでも見えることが必要な為、シナリオ、演技、演出と照明や音響は、かなり微妙な調整をしつつ、コラボレイトしなければならないが、役者達は、素をキチンと守って奇を衒うようなことがなく、バランス感覚に優れた浅海氏の演出で極めて自然でありながらエッジの利いた作品群に仕上がっている。音楽も邪魔にならないように雰囲気を盛り上げ、照明は照らし出す対象に適確に当たることで、照明自体の呼吸が聞こえるような感覚を持った。
 作品配列に於いても、一作目に、作家、ライター、編集者間での締め切り間際の慌しく緊迫感に満ちたスッタモンダを見事な落ちとエスプリの利いたシニックな笑いを鏤めた佳作で引きずり込み、二話では、OLと占い師の二人芝居で、この国の悪弊、建前社会と本音の矛盾を対決させず、結果、何時まで経っても進歩のない社会の遣る瀬なさを、哲学の欠如と取り、逆手にとって文明批評と言っても良いような、自らの頭で考えられた知恵によって腑分けしてゆくような作品に結晶化した。第三話では、観客を一旦ファルスの世界に遊ばせて凝りをほぐし、四話に流して行く。当然、ファルスは継承しつつ、人生の機微を造物主に語らせるのだが、神は一人ではなく三人。総て女神で合議制を採って多数決でことを決めていることが面白いだけでなく、三は、弁証法を示唆している点も興味深い。
 ところで、神々の最後の科白が揮っている。「最近の人間は、俯いて画面ばかり覘き込むようになって面白くない。滅ぼしてしまおうか」と判断したり、更に面白い被造物を作ればよい、と考えていることが示されていることで、地球上の現在の支配者であるヒトに対する極めて真っ当な意見がさりげなく盛られている点も良い。
エリカな人々 -この愛らしい、恥さらしな世代へ-

エリカな人々 -この愛らしい、恥さらしな世代へ-

東京マハロ

駅前劇場(東京都)

2014/02/26 (水) ~ 2014/03/04 (火)公演終了

満足度★★★★

この国の体育会
 エリカと聞いて、ひょっとしたら、と思っていたら、矢張り神保町の喫茶、“エリカ”のことであった。自分は、小学校時代から古本屋街に通い、当時、隆盛だった「いもや」でてんぷら定食を食べ、古本屋の臭いを嗅ぎ、時に上野に足を延ばして美術館や科学技術館に通う生意気なガキ時代を過ごして以来、何度も神保町時代を過ごしている。編集者時代は無論のこと、ライターとして仕事をしていた時代、フランス語を学びに行っていた時期等々、様々な時期、縁のある町なので、もしや、と思ったのだ。小屋で配られたリーフレットに目を通すと、然り、あのエリカであった。確かに朝6時には開店していると。徹夜仕事開けに飲む珈琲はまた格別。暖かいストーブの焚かれたカウンター席に腰掛けて、余り話さないマスターの温和な表情を見ながら飲む珈琲は至福の時である。実は、弟さんが近くで矢張り喫茶店のマスターをなさっているので、自分は、両方の店に出入りしていた。
 ところで、実在のエリカとこの物語は無関係である。エリカの作りは舞台上のものと違うし、窓から外を走る人の姿が見える作りにはなっていない。興味のある方は神保町界隈をうろついて実際のエリカを発見なさるとよろしい。雰囲気のある良い店である。(念のため付け加えておく)

ネタバレBOX

 本題に入ろう。高校球児の話である。基本的には15年後、松坂が、エースの噂を聞いて練習試合を申し込んで来、2年の時にはプロのスカウトが来るほどの大器、将来を嘱望されたエースを抱えた球児が溜まる、ちょっと大人びた神聖な世界、それが喫茶・エリカであった。練習試合の中で、エースは、味方の選手がフライを取りに来た際、突っ込んできた選手と衝突、大怪我を負うが、その選手に負担をかけまいと当日、動けず怪我も酷いものであったのだが、無理を押して翌日には、選手達の溜まり場であったエリカの窓から、自分のランニング姿が見えるように走り、医者にも行かなかった。結果、後遺症で野球は止めざるを得ず、学校も転校、皆と合わなくなって15年が過ぎた。15年後、エースと付き合っていた緑子は、彼の転校にも付き合い、その後結婚もしていたが高校時代の野球部部員に連絡をつけて来た。彼が亡くなったというのである。通夜の席でも詳細は語られない。集まった関係者は、自分達の置かれた現状を愚痴ったり、近況を知らせ合ったりして時を過ごすが、運動部の常として、先輩・後輩関係は、この国の特殊性を露骨に表して面白い。
 さて、当初露骨には、表されなかった、この国の人間関係の作り方の綻びや矛盾が、この狭い範囲の人間関係内の浮気問題や、香典の額の多寡、エースを球界から去らせることになった事故への各々の位置、対人関係に於ける人気・不人気等々の差から綻びを見せて行く。その果てに見えてきたものは、このような曖昧化が齎す結果であり、責任者の不在であり、それを誤魔化す為に行われる儀式であるが、儀式を行わなければ、八分に会ったであろう、この社会の歪な特徴である。
 エースは大津波に攫われて行方不明になっていた。後遺症で杖をつき、片足は殆ど麻痺していて神経も充分機能しないような状態であった。彼は、妻の目の前数メートルで津波に呑まれていったのだが、野球部の誰をも怨んでいなかった。それを含めて残された妻は、野球部の面々を呪っていたのである。
  
かもめ~21世紀になり全面化しつつある中二病は何によって癒されるのか、あるいはついに癒しえないのか、に関する一考察~

かもめ~21世紀になり全面化しつつある中二病は何によって癒されるのか、あるいはついに癒しえないのか、に関する一考察~

アロッタファジャイナ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2014/02/26 (水) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★

両バージョン観劇がお勧め
Aは、原作が透けて見えるような作り、Bは、役者の解釈をより多く取り込んだ作り と作り分けることによって、現代日本を起点に見たチェーホフの新たな読み込みの可能性・多様性を堪能できる。(受付で販売しているアロッタ版「かもめ」を楽しむための12の証言も参考にするとより面白かろう。追記後送)

もの2けの姫

もの2けの姫

ノーコンタクツ

シアター風姿花伝(東京都)

2014/02/21 (金) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★

シナリオに新味なし
 ストーリー展開は、タイトルに現れているように「もののけ姫」をなぞっており、新味は無い。また、「もののけ姫」にあったような技術・文明に対する強い警戒感もない。(追記後送)

てろめあ

てろめあ

EgofiLter

ギャラリーLE DECO(東京都)

2014/02/20 (木) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★

在日ということ
 まず、テロメアと言う聞きなれない単語から調べてみた。ウィキペディアによれば、DNA端末を分解や修復などの変更から保護する構造で、細胞の物理的、遺伝的な安定性を保つ働きをすると考えられているそうである。テロメアの伸長は、テロメラーゼと呼ばれる酵素によって行われ、この酵素が無い細胞では、分裂の度にテロメアは短くなる。そしてある長さ以下になると細胞老化と呼ばれる状態に達し、分裂を止める。分裂が止むことによって染色体は不安定化することを阻止され、癌化などから保護される。
 今作では、クローン羊、ドリーの話で、テロメア短縮による細胞老化が、個体の老化原因と示唆されているが、テロメア短縮は、細胞老化の十分条件ではあっても、必要条件では無い為、テロメア短縮による細胞老化と個体老化の関係は完全に明らかにされたわけではない。
 が、物語の流れとしては、姉、ひろこと妹、まりえの暗い運命共同体を表す遺伝的必然の寓意として捉えて構わないだろう。(追記後送)

天守物語

天守物語

世 amI

要町アトリエ第七秘密基地(東京都)

2014/02/21 (金) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

センスの良さ
 言わずと知れた、泉 鏡花の名作。構成は多少変えてあるものの、内容は殆どいじっていないので、あらすじ等は省く。靴を脱いで観るというのが、先ず、らしくて良い。

ネタバレBOX

 全体的に暗い舞台作りは、無論、観客のイマジネーションを最大限に引き出し、夢幻の世界に遊ばせる為の条件である。だが、この舞台作りのセンスの良いこと。最も観客席に近い所は、板敷きで奥行き一間弱という所か、下手には木製の燭台が、蝋燭を一本立てた状態で置かれ、その奥に湯のみと急須が各々一つずつ置かれている。能の雰囲気と茶の雰囲気が、もうこの小道具だけで濃密に漂う。更に懐紙のようなものが見える。
 板の間の切れる所から三段長い階梯が設えられ上手のそれには手すりがつき、その上手にある舞台奥の出捌け口からの掛かりになっている。
 最上段の階梯は、四段目に当たるが、他の階梯の半分の幅で人が一人座っており、その背後に広げた大きな衣と編み笠が壁に掛けられ、獅子を形成している。坐している人物は姫路城城主の鷹匠、図書之助である。
 階の上手・下手には垣を模した透かし彫りの板と各々、一株ずつの花があしらってあるのも侘び寂びの茶道精神を表して洒落ている。このような風情を齎すものをこそ、もてなし、という。
 城主が鷹狩りをしている最中には、昔は用いられなかった弓や銃が用いられるようになっており、城の天守閣五層に住む、富姫ら、妖怪には、煩くてならぬ。おりしも、姫の妹、亀姫が、姉の所へ空を翔け遊びに来ようという時であったから、彼女らの怒り、その苛立ちは常よりも強い。亀姫が到着すると、土産に寄こしたものは、姫の棲む城の主の生首。この気の利いた土産に姉の用意していた姫路城城主の兜は、見劣りがした。そこで姉は、類まれなる白鷹を捕えた。図書之助は、鷹を逃した廉で切腹を命ぜられる。それで、蟄居していたのだが、鷹が消えたのは天守の五層辺り、登れば戻れないと噂のある此処まで誰も登ろうとせぬ為、蟄居を命じられていたが呼び出され、様子を探りにきたのだ。そこで、彼は姫に出会う。彼にこの地へ来た訳を訊ねた姫は、その返答の雄々しさ、清冽に好意を持ち、殺さずに逃してやるが、次に来た時には戻さぬ、と念を押した。だが、戻る途中、彼は、妖しきものに襲われ、手に持った灯りを消されてしまう。城の下の層へ行くには梯子を使うなど、真っ暗な中では転落して大怪我を負い、物の役に立たぬ体になりかねない。そうであれば、戻って姫に訳を話し戻れなくなったり、命を失うことになろうとも、その方が、望ましい、と判断して姫の下へ戻って来たのだ。そんな彼を姫は益々いとおしく思う。終には、己の心を捧げて共に生を送りたいと望むが。(追記後送)

ロミオとジュリエッタ

ロミオとジュリエッタ

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2014/02/22 (土) ~ 2014/02/28 (金)公演終了

満足度★★★★

被差別社会と恋
 体を売っての家業である女郎には、どんなに惚れた相手であって、相手が納得してくれているハズであっても去来する不安は、あるかも知れぬ。自らが汚れているというコンプレックス、複合意識である。中原 中也じゃないが、わざとはすっぱな表現、汚れちまった悲しみに、今日も、「嵐」は吹きすさぶのだ。フォックスのショールが銀狐のそれであれ、ミンクのコートであれ、本質的に何の変わりも無い。そんな女郎の哀しさをさらりと出してくる所に望月 六郎演出の良さがある。
 ところで、この苦界を取り仕切る犬上 弾左衛門は、無論、非人の頂点であった浅草 弾左衛門を下敷きにしている。衆知の事実であるが、吉原に限らず、廓の内側では、武士と雖も帯刀は禁止、酒も入り、色恋の里ともなれば、無論、嫉妬や意地の張り合いなどで、放っておけば修羅場と化すは必定。掟は可也厳格に守られていたようである。また、この吉原の用心棒には、幕府に仕えた伊賀者、甲賀者以外の忍びが関わっていたとの話を下敷きにした漫画があった。何れにせよ、表の世界からは切り離され、独自の世界観と秩序に統べられた世界であった。(追記後送)

BETTER

BETTER

HYP39

新中野ワニズホール ( Waniz Hall )(東京都)

2014/02/21 (金) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★

人称
 一応、2人の演出家が、短編を其々演出して、技を競うという形で2篇。その後、関西漫才を模した作品が1篇のオムニバス形式なのだが、3篇で編むのならもう少し、尖鋭的な組み方をして欲しい。この辺り、頗る非論理的、非数学的である。演劇の基本は言う迄もなく理論だ。そして、理論は一切の例外なく、自然な展開をさせれば必然的に尖鋭化する。つまり平面図形で言えば、三角形なのだ。この辺りが、理屈でなく感覚で分かっていないように思う。文化系の人間に理数系の理屈をそのまま押しつけても、何の意味もないからこういう言い方をしているのであるが、言いたいことは以上で述べたことだ。
 大体、ナルキッソスにもなれないナルシストの安倍でもあるまいに、あんな阿保の真似を芸人がしてどうなるのだ? あの阿保が阿保なのは、歴代の保守本流が、敢えて置かなかった駒を得意になって置き、その愚かな棋譜の意味にすら気付いていないことにあるのだが、アーティストも然り。決意性ややる気ばかりを顕彰して、日常の中に潜む、他人の誰一人として未だ発見できていないような発想、視点、可笑しさ、グロテスク等を見出し、形にしてこそのアーティスト、表現者だ。メンタリティーに踊らされてはならない。泣き落としだの色仕掛けだのの手練手管を用いても所詮、それは、2人称の世界の話だ。世界と対峙し、互して行く為には、無論、3人称の世界での対峙が必要である。2人称的な世界に意味が無いか、と問われれば、無論、意味はある。然し、取り違えてはならないのだ。2人称だけで世界は成り立っていないと知るべきである。今公演、1作目、3作目はそのような意味で反面教師として解釈すると面白い。同時に、以上の点に注意して世界を見て欲しいのである。
 3作のうち、自分が最も気に入ったのは、2作目である。

あうろらの君

あうろらの君

ヅカ★ガール

秋葉原アトリエ「ACT&B」(東京都)

2014/02/20 (木) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★

純度の高さ
 氷の国の女王はだだっ広いだけで、何の変化もない氷の国の宮廷に飽き飽きし退屈しているのだが、手すさびに雪を捏ね回して人型を作り命を吹き込んで、側近にしたり兵士にしたりする他、殆ど、遊びが無いことにうんざりしている。(追記後送)

大奥春秋

大奥春秋

井上泰治プロデュース

SPACE107(東京都)

2014/02/18 (火) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★

日本人の臍を深く抉って欲しかった
 シナリオレベルで、日本及び日本人の傾向を取り違えているように思われる。日本人に、哲学的態度は殆ど無い。その背景にあるのは、恐らく刀狩、太閤検地を経て、江戸時代に朱子学で徹底的に骨抜きにされた論理的・弁証法的思考、批判精神、弁証法的生活態度の欠如である。見ざる、聞かざる、言わざるという三原則で総ての反逆の芽を摘まれたまま、それでも湧きあがるヒトとして当然で自然な、よりよく生きたいとの思いの渦中で、フツフツと湧きあがる無定見で狡く鵺的なだらしなさ、不気味さの構成する根本に視点を据えているとは感じられない。
 この思考レベルの不徹底が、ドラマに真に迫る緊迫感を与えていない。如何に、それなりに時代がかった言葉を用い、発音迄再現しようと努力する役者が居ても、その力を遺憾無く発揮できるソフトウェア=O.S.が機能不全では、役者が可哀そうである。

眠る羊

眠る羊

十七戦地

LIFT(東京都)

2014/02/19 (水) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

必見!
 必見の舞台である。初日に拝見し、このあとが長いので、あらすじなどは書かないが、相変わらず、見事なダイアローグで成立した舞台である。(追記2014.2.20)

ネタバレBOX

 演劇のシナリオなのに、小劇場で書いている劇作家の作品には、ダイアローグが、キチンと成立している作品が少ない。余りにメンタリティーに拘っていたり、情に流されることが、美学だとでも思っているかのようなのだ。
 だが、十七戦地の柳井 祥緒君の書く物には、ダイアローグの典型的作品の流れがある。今迄の所、自分の拝見した作品には、大きな流れとしては二通りあるように思うが、その一つが、論理の応酬が中心になるタイプの劇で、今作と、自分が拝見している作品では、もう一作「艶やかな骨」がこの系譜だ。設定が見事である。今作でも、物語の中核部分は、スキャンダルを起こした国防族一家の、国会での証人喚問を模した、擬似証人喚問が中核を為す。内容が国防に絡み、憲法や表現(者)の位置、人間関係や利害、生き様やプライド、善悪の判断やその根拠、誰の為の、どのような施策なのか、という根本的な問題にも、また、政治的立場の有利・不利、今後、のパースペクティブ等々、多岐にわたり内容的にもジャーナリストが見て唸るであろう、高度なものでありながら、極めて適確で誰にでもわかるような仕掛けが設けられていて、それが、極めて自然で理にかなったものなので、違和感が一切なく、観客は、本当に、自分がその状況に関係者として参加しているような錯覚に浸りながら観ることができる。最高度の演劇体験の一つを味わうことができる。これも、柳井君の作品の特徴の一つである、古層を重層低音のように、作品に取り込んで行く独自なシナリオ作法の表れだ。今回、この古層には、平家物語が使われているが、どの部分が、平家物語を現代風にアレンジしているかを見極める楽しみも出てこよう。
 優れた芸術作品は、時に時代の本質を映しだすものであるが、今作は、その典型でもあろう。当にどんぴしゃり! この国の為政者の閨閥による民衆支配の構図や責任転嫁の方法、嘘と真・建前と本音の使い分けによるダブルスタンダード、密室性等々、政治を注意深く観ている人なら気付いている事実を、役者達の身体を用いて現前化させることで、見事に、そのメンタリティーを腑に落ちるものにして見せると同時に、批判に値する対象として現存させている。脚本の素晴らしさのみならず、演出の良さ、役者陣のキャスティングの良さや優れた役作りと共に、会場の選び方の的確さもあって迫真の舞台を愉しむことができる。
風雲!チキン野郎城2

風雲!チキン野郎城2

ポップンマッシュルームチキン野郎

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2014/02/18 (火) ~ 2014/02/18 (火)公演終了

満足度★★★★★

兎に角、タノピー
 夜の陣を拝見:古より伝わりしオープニングライブに始まり、ガチで40分の間に下北の町を徘徊、なるべく有名な人のサインをゲットするコンテスト。役者たるもの、自分で早く着替えるのは当たり前、寝ている演技の役者を、如何に素早く着替えさせるかの競争。コンビニを模したスペースに商品と盗難防止ガードマンを配置、現行犯に。らずに商品をどれだけ多く盗めるか! 点数が同じ場合、より大きな物を盗んでいた方が勝ち。(追記後送)

東京カフェ公演「あとの祭り」

東京カフェ公演「あとの祭り」

ナカミチ円陣

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2014/02/16 (日) ~ 2014/02/18 (火)公演終了

満足度★★★★

男と女、そして日常
 今公演の本来の演出家は、ご逝去されたとのこと。面識はなかったものの、そのようなことを負いながら、公演を予定通り進めて下さった。作る側総ての方々の精神力、プロ意識、そして精進に感謝申し上げると共に、亡くなられた演出家、水下 きよしさんのご冥福を祈ります。なお、今回、演出を引き継いで下さったのは、加納 幸和氏。
 以下は、いつも通り、勝手なことを書かせて頂くが、水下さんは、我らを宙宇から眺めて笑っておられるかも知れぬ。何れにせよ、男と女、日常生活の中に潜む狂気や狂的なもの・ことを突っ込みと呆けで形成した後、更なる突っ込みを入れて論点を先鋭化すると同時にテンションを上げて、エッジの利いた短編を作り、更にオムニバス形式に纏めた。(追記後送)

狐雨の花嫁

狐雨の花嫁

株式会社Legs&Loins

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/02/15 (土) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★★

権力というもの
 劇団ベースボールが、初めて殺陣に挑んだ。やるからには、しっかりとした形をとるものである。キャスティングが一部Wになっているが、キャスティングも良いようだ。(自分はAを拝見)また、全編、権力というものの本質をキチンと押さえたシナリオにブレが無い点も評価できる。(追記2014.2.19)

ネタバレBOX

  神は、その昔、狼、狐、狸を作り、この世に誕生させた。其々の種は、共存共栄をしていたが、狐の少女が、摘んではならない、とされていた白い花を摘み、恋する男に与えた。以来、戦乱が絶えず、既に狼は狸の軍門に下って狐との戦いに照準を絞った。狸軍の大将の名はムジナ、先代の大将であった彼らの父は、弟のホンドと真剣で戦わせ、勝者に次代の将を任せると戦わせた。どちらが死んでも構わぬ、と。勝負は弟が勝っていた。然し、兄の首筋に剣を当てた所で弟は攻撃を控えた。勝負あったからである。然し、ムジナは、その弟を刺し実力では上回った弟の優しさに乗じて大将になった。
 その後、狸、狼連合軍に襲われた狐の城は落ちる。ムジナは、全員征伐を命じたが、ホンドが、自らの命を賭けて助命嘆願、今後、狐を支配するにも温情を見せた方が得策との意見も認められる。が、負けは負け、狐はその高い誇りにも関わらず、屈辱と忍従の生活を余儀なくされ、狐の美しい女達は、狸の下に嫁がされた。中でも格段に美しい姫、コウは、﨟たければムジナの側室にと運命づけられてしまった。
 10年の時が流れ、コウはムジナの予想した通りの美しい娘に育った。ホンドも美しく優しい若者に成長、二人の間には、互いに惹きつけ合う感情が芽生えているが、状況は、この二人が結ばれることを許さない。そんな折も折、ムジナから、嫁ぐように、との命が届いた。一方、面白くないのは狐上層部である。若い娘は強制的に狸に嫁がされて種の断絶を図られ、狐族の誇りの象徴である、首長の娘迄、敵に盗られるとあって、心穏やかなハズは無い。然し、今や、敵は狼を傘下に置き、戦力の差は余りにも明らか。それでも、10年に亘って差別され、収奪され、辱めを受けた無念には、最早、耐えられないという思いが強い。そこで衆議が開かれた。結論は、鬼と呼ばれて、今は人里離れた地域に住む狐、狸、狼を味方につけ、奇襲を掛けることに。然し、現在、狐の将を勤めるスイレンの側近、キタキの裏切りで、待ち伏せに会い、迎え撃ちにされてしまった。元々、狸や狼側に立ち、庇いだてをしてくれているホンドと彼のガードをしている忍び、コクウも反乱軍についたものの、奇襲を知られては劣勢の跳ね返しようは無い。戦は始まり、又しても狸側が勝利した。穏便な解決法と種の共存を訴えたホンドは敢え無く惨殺されてしまった。この後、この闘争を収束するに当たって、ムジナはコウを除く総ての反乱軍の首を落とせ、と命じるが、姫の頼み等によって考え直し、姫が選んだ一人の首を撥ねるという命令に変更。姫は、自らの死を望むが認められず、母親と慕ってきたスイレンの首を選ぶ。それも、自ら死刑執行の役を担うと言うのだ。彼女は、スイレンに最後の望みを訊ね、これ迄自分を育ててくれた礼を述べ、礼を尽くして、母から受け継いだ短刀に死花の毒を塗って、スイレンの首筋を裂く。
かぞく {チケットプレセント応募受付中}

かぞく {チケットプレセント応募受付中}

演劇ユニットハイブリッド

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2014/02/14 (金) ~ 2014/02/16 (日)公演終了

満足度★★★★

擬制の終焉
 家族と言う擬制の背後と言うより地下に在る蠢きを視覚化した舞台。敢えて、図式的に分かったことになっており、体制側に取り込まれたことになっている表層に拘る形を採りながら、巧みな設定によってそれを逆転させ、アイロニカルな視座が、観客の心に残るように設えられている点が秀逸。

ネタバレBOX

  ところで、生存競争理論が、正しいなら、劇中で描かれているマイナスな世界こそ真実だろう。皮相的に聞こえるかも知れないが、頗るシンプルに下意識が、日常的な意識の反転であると仮定するなら、精神のプロトタイプを示すであろう幼児期と父権制下の父、即ち社会との対置に於いて抑圧、被抑圧の関係を取るだろうが、父権制そのものが解体された現在、社会的単位の最小のものとして、父、母、子一人を呈示せざるを得ない。だが、そういった擬制も既に解体しているとすれば、“のんべんだらり”とした日常は、無論、見せ掛けに過ぎず、本当の形は、生存競争の論理、弱肉強食であるのは、論を俟たないからである。

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