天守物語 公演情報 世 amI「天守物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    センスの良さ
     言わずと知れた、泉 鏡花の名作。構成は多少変えてあるものの、内容は殆どいじっていないので、あらすじ等は省く。靴を脱いで観るというのが、先ず、らしくて良い。

    ネタバレBOX

     全体的に暗い舞台作りは、無論、観客のイマジネーションを最大限に引き出し、夢幻の世界に遊ばせる為の条件である。だが、この舞台作りのセンスの良いこと。最も観客席に近い所は、板敷きで奥行き一間弱という所か、下手には木製の燭台が、蝋燭を一本立てた状態で置かれ、その奥に湯のみと急須が各々一つずつ置かれている。能の雰囲気と茶の雰囲気が、もうこの小道具だけで濃密に漂う。更に懐紙のようなものが見える。
     板の間の切れる所から三段長い階梯が設えられ上手のそれには手すりがつき、その上手にある舞台奥の出捌け口からの掛かりになっている。
     最上段の階梯は、四段目に当たるが、他の階梯の半分の幅で人が一人座っており、その背後に広げた大きな衣と編み笠が壁に掛けられ、獅子を形成している。坐している人物は姫路城城主の鷹匠、図書之助である。
     階の上手・下手には垣を模した透かし彫りの板と各々、一株ずつの花があしらってあるのも侘び寂びの茶道精神を表して洒落ている。このような風情を齎すものをこそ、もてなし、という。
     城主が鷹狩りをしている最中には、昔は用いられなかった弓や銃が用いられるようになっており、城の天守閣五層に住む、富姫ら、妖怪には、煩くてならぬ。おりしも、姫の妹、亀姫が、姉の所へ空を翔け遊びに来ようという時であったから、彼女らの怒り、その苛立ちは常よりも強い。亀姫が到着すると、土産に寄こしたものは、姫の棲む城の主の生首。この気の利いた土産に姉の用意していた姫路城城主の兜は、見劣りがした。そこで姉は、類まれなる白鷹を捕えた。図書之助は、鷹を逃した廉で切腹を命ぜられる。それで、蟄居していたのだが、鷹が消えたのは天守の五層辺り、登れば戻れないと噂のある此処まで誰も登ろうとせぬ為、蟄居を命じられていたが呼び出され、様子を探りにきたのだ。そこで、彼は姫に出会う。彼にこの地へ来た訳を訊ねた姫は、その返答の雄々しさ、清冽に好意を持ち、殺さずに逃してやるが、次に来た時には戻さぬ、と念を押した。だが、戻る途中、彼は、妖しきものに襲われ、手に持った灯りを消されてしまう。城の下の層へ行くには梯子を使うなど、真っ暗な中では転落して大怪我を負い、物の役に立たぬ体になりかねない。そうであれば、戻って姫に訳を話し戻れなくなったり、命を失うことになろうとも、その方が、望ましい、と判断して姫の下へ戻って来たのだ。そんな彼を姫は益々いとおしく思う。終には、己の心を捧げて共に生を送りたいと望むが。(追記後送)

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    2014/02/23 13:44

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