劇団サーカス劇場
採点【劇団サーカス劇場】

夢の島を舞台にした作品をいざ夢の島で上演する!というのは当人たちにとっては本当にうれしいことだと思う。第五福竜丸が本当にそこにあるとは知らなかったし、「ゴミの島」「死の灰」とくれば作家の想像力を掻き立てるものがあるだろうと思う。ただ、初演ならまだしも再演なのだとしたら、もう少し“場”について検証してほしかった。今、夢の島は綺麗に埋め立てられていることを皆知っていながら、観劇に行く道すがらでは何となく「ゴミ処理場」のようなカラスが飛び交う「ゴミ溜め」を想像している。だから、せめてテントの周辺だけでもその“期待”に応えてゴミやガラクタに埋もれるような感覚を与えてほしかった。再演で勝ち取った夢の島での上演、という高揚感は、その紆余曲折を知らないただの観客には伝わらなかったのかもしれない。

 書きたいことが見つからない小説家・ミズホシと、第五福竜丸という船にラブレターを書き続けた女・火見子を中心に、ゴミ溜めに集まる奇妙な人々のそれぞれの妄想のような世界が繰り広げられます。

 登場人物はみな雄弁ですが、対話ではなくずっと独白し続けているようでした。意味や設定が、次から次へと上書きされるように変わってしまうのが非常に残念。役者さんの演技はセリフ同様に一方通行な人が多く、あまり引き込まれず。選曲がつぎはぎな印象でした。しかるべき時にしかるべき音・音楽を鳴らす覚悟が欲しいです。

 夢の島公園にテント劇場を建てて、かつての夢の島を舞台にしたお芝居を上演するという企画は、抜群のインパクトでした。劇団メンバーは主宰・作・演出の清末浩平さんと、プロデューサー・俳優の森沢友一朗さんのお2人のみだそうです。多くの方の協力を得て公演が実現したのでしょう。お2人の人徳と並外れた努力がそれを可能にしたのだと思います。アングラ演劇界の層の厚さも実感しました。

 開演前に第五福竜丸展示館に行けてとても良かったです。貴重な機会をいただきました。また、展示館を見た人と見ていない人では感想が全然違うのではないかと思います。
 開演前に体調が思わしくないことを伝えたところ、とても親切に対応してくださいました。ありがとうございました。

ひさしぶりのテント公演。しかも初見の劇団なので不安と期待が入り混じる中の開演待ち。のっけからBGMと、青白い顔の黒服の男女が現れて、一気に「非日常の物語」へ誘われました。まさに唐十郎さんの遺伝子を受け継いだ、怒涛のイメージの連鎖が、個性的な役者たちの口から矢継ぎ早に吐き出される。迫力はまさにテント芝居。

だけど…なんです。作家の男の「書けない」という葛藤は分かるにしても、幽霊船に恋文を書き続けた女の激情の在り処が分からないんです。理解を超えた言動に隠されたものが、まったく見えない。多分、そこをどう考えるかが一番挑まなきゃならんところではないか? 例えば、凡庸だけど出自とか家族の過去とか。単に第五福竜丸の事件や夢の島という土地をにおわせても、幽霊船に恋をするという「理解を超えた行動」の根拠には、そう簡単にはなりません。一番観たいところが、観れなかったのが残念。

それと、BGMを多用しすぎだと思います。役者ががんばっていたのに、せりふが聞き取れない箇所があって、もったいないと思いました。曲で雰囲気を作るより、役者に任せるべきところは任せてほしかった。

ソワレの回に合わせて、第五福竜丸展示館が特別開館。情報としてでなく、実際に見られるというのは重要なポイントだと思います。これだけでも夢の島まで足を運んだ価値はありますが、上演時間が2時間半というのは事前に公開するべきだった気がします。チラシのコピーを否定する文章と合わせて記載されていたこともあり、開演前になんだか残念な気分に。そうした気分も影響してか、どうしても描かれる世界のフィクションを信じることができませんでした。 理屈で強度を固めるのではなく、勢いと熱量で飛んでくれればと。展示されている「第五福竜丸」という事実を超えるものは、観られませんでした。

役者さんの演技はしっかりしていたと思います。歴史の流れ、風刺的な要素は面白かったのですが、基本ストーリーが非常に分かりにくく、場面の切り替わりが沢山あり、ついていけなかったのが残念でした。

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