各団体の採点
初日だったので、これ大丈夫?!というシーンもあったが、それは初日の醍醐味なので一舞台ファンとしては良しとしたい。一度しか見に行けなかったが、十分に満足した。一挙上演するからには、3つの物語をどう絡ませるかが作家の一つの腕の見せ所だろうに、そこを評価できなかったのは残念…そこに乗っかりたかった。また、笑えて泣けてせっかく面白いのに、これまで見に行くことがなかったのは、チラシが目に留まらなかったからのような気がする。これは勿体無い!せめてタイトルと劇団名は読めてほしいな、と思いました。また見に行ってみよう、と思ったのに、次にまたスルーしてしまうと困るので…!
MCRは作・演出の桜井智也さんのギャグが個人的にとってもツボ!MCRというと「笑える!」という期待を胸に劇場に伺います。そして今回もまたその期待を裏切られることはありませんでした。これでもか、これでもかと細かく笑いの種がまかれ、気持ちよく刈り取られていきます。豊作っ!
今回は3本それぞれの主役が生まれて死ぬまでを描いているそうですが、私が拝見したのは奔放な母親を持った三姉妹の次女「椎名」(黒岩三佳)が主役。「虎雄」「猫」も椎名の人生に少なからず関わる人物(猫)として登場するので、彼らが主役のバージョンも観たくなります。
特徴的な個性を持つ登場人物たちが、それぞれにちゃんと自己主張をして存在しているので、おのずと人と人との関係性が現れてくるんですよね。作品全体の印象としては一見コント風ですが、人間関係もしっかり描かれているから、物語の中までぐっと入り込んで楽しめるのだと思います。
まさか3バージョン観てしまうとは。初見の劇団については、「一期一会」とい
うことを基本にしているので、今回も1バージョン観て、次回公演も観るかどう
か決めようと思っていたのですが、想定の斜め上をいく笑いのマシンガンにすっかり惚れ込んで、俄然全バージョンを観る気に。土日のほとんどをMCRに捧げました。。
3話とも登場人物は同じながら主人公を変えて、一家の団欒やら、学校の風景やら、空き地に住み着いた猫の日常やらをテンポよく切り替えながら、別々の物語を描いていく本作。各役者にはゼッケン着けさせて、名前と属性(例、○○家父、母、長男など)を裏表に記し、観客に伝える趣向。一見手抜きのようでいて、これが効いてるんですね。同じ登場人物をいちいち説明しないですむのもあるけど、役者のキャラクターを前面に出して笑いを取る、ワル乗りギリギリの演技も許される空気になる。リアルであることを一旦バッサリと捨ててる。ここまでくると、徹底した悪ふざけに突き進んで、ノリで芝居をしそうですけど、MCRがすごいと思ったのは芝居時間の80パーセントで笑いを取りながら、きちんと20パーセントできちんとドラマを見せてることなんです。笑いの中にちゃんと伏線を張って、ラストシーンを成立させる。いかんせん笑いの要素が多く、ドラマ重視というわけではないので、幕切れの余韻に欠けるきらいはあるけど(「猫」のラストは好きです)、それでも3作とも同じ笑いの密度とドラマの積み上げ方に唸りました。笑いも、流行ネタとかテレビネタよりもツッコミの間や言い回しの妙で攻める好きなスタイル。ツッコミのアクロバティックさ(例:プロレス技)は、小劇場界一ではないでしょうか。作・演出・出演の櫻井さん、今後の作品も注目したいです。