
Project BUNGAKU 太宰治
Project BUNGAKU
ワーサルシアター(東京都)
2010/09/30 (木) ~ 2010/10/10 (日)公演終了
新鋭演出家四人のガチ勝負
原作は一つも読んでいません。唯一、人間失格だけは高一ぐらいの時に読もうとして、半分も行かずに放った気がします。多分それ以降太宰は肌に合わないという先入観が作られ、食わず嫌いです。良くないですね。感想は長いですが特にネタバレしていません。
『HUMAN LOST』演出:広田淳一(ひょっとこ乱舞)
物語はまったく意味がわからなかった。ただ空間の中での役者配置、動きを含めた舞台上のヴィジュアルの見え方、計算された音の入りが美しい。僕は途中から話を理解することを止めて、その場で起こっていることを楽しむことにした。でもきっとそれは僕がいろんな演劇を観ているからこそ、見方を変えることが出来たのであって、ふつうに観たとしたら話が理解出来ないというのは大きなハンデになる。
公演後に話を聞くと、原作も意味がわからないらしい。それでも説明的な台詞を作るのは全力で避け、わかりやすさを排除したとか。「出演者含め総スカン覚悟」であったものの、原作を読んでいる人にとってはとてもうまく構成し直してあると感じられ、人気が高くて意外だったとのこと。これから観に行く人は、読んでからの方が楽しめるかも知れない。
『灯籠』演出:吉田小夏(青☆組)
観ながら何度か鳥肌の立つ瞬間があった。僕は芝居を観ているとき、話の筋と関係なくとも照明や音響、舞台の作りが好みにぴったりと嵌ると、その度鳥肌が立つほどの感動を覚える。小劇場の芝居では珍しい。「忘却曲線」しか観たことがなかった僕は、小夏さんがこのような演出もすることに驚いたし観ていて非常に面白かった。みな着物を着ているが、所作がきれいである。日舞をやっている人が役者の中に何人かいたからこそ、短期間で仕込めたのだという。着物を着た芝居はプラスに作用すれば大きいが、マイナスにも作用する恐れがあると思う。この芝居では良さを活かし、断然プラスに持って行けていたのではないか。
『ヴィヨンの妻』演出:松枝佳紀(アロッタファジャイナ)
何度もリプライズされるHaendelのSarabandeが芝居の間をきれいに埋めていく。統一感がありつつも、様々な録音が楽しい。一度稽古場のお手伝いをした際に、通し稽古を見させて頂いていたのだけれど、話のおもしろみが以前に増してギュッと凝縮された印象。何度か観ていたこともあって、台詞一つ一つが「あ、そうか」と腑に落ちた。その腑に落ちた言葉がとても重要であったりした。最後のシーンがとってもすき。稽古場で初めて観たとき、ぞくっときた。
『人間失格』演出:谷賢一(DULL-COLORED POP)
もうなんか転換の曲が流れ始めた瞬間に谷さんワールドが全力展開していて、面白い。広田さんに話したら共感してくれて「谷のターン!って感じだよね」と。上演しながら、舞台上にいろんなものが雑然と撒き散らかされていくあたりも谷さんらしい。作風はご自身で語っている通り、ダルカラ色が強い。僕は「幸せの歌を歌う犬ども」「幸せを踏みにじる幸せ」のようなふざけ方が実は苦手だったので、やはりこういう作風が好きだ。完全に僕の好みの話で申し訳ない。でももうこれはダルカラの新作みたいなもんだから、ダルカラのファンは絶対に観に行くべきである。
どこまで自己投影したのかわからない。途中で、どストレートに谷さん自身と葉蔵が被ってきたので、それはそれで驚いた。『心が目を覚ます瞬間』といい、谷さんが自己投影をした作品には、深く観客の精神世界に切り込んでくる力を感じる。有無を言わせず、心を揺さぶる力を感じる。サンモールスタジオで同時上演されている谷さん脚本の『悪魔の絵本』も観に行かないわけにいかなくなった。
お前は谷さんの子分だから、とか事情は抜きにして、はっきり僕はこの『人間失格』が四作品の中で圧倒的に好き。『灯籠』で鳥肌が立っていたのでどうなるものかと思っていたけど、完全にやられた。変な言い方だけど、一番にせざるを得ないものがそこにはあった。

Project BUNGAKU 太宰治
Project BUNGAKU
ワーサルシアター(東京都)
2010/09/30 (木) ~ 2010/10/10 (日)公演終了
満足度★★★★
関係者様へお願い
アフタートークがすごくよかったです。充実の内容でした。
しかし、アフタートークのメンバーの豪華なこと。
全部の回のアフタートークが聞きたい!!
撮影されていたようなので動画をネットで流していただけるとほんとうにありがたいです。
え?DVDの特典映像ですか?
うーん、ええ、ああ、買いますとも、DVD。

箱入り彼女博覧会
NICE STALKER
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
満足度★★★★
・・だけじゃない
「水着」とか「出会い系」とか、ちょっと(あえて)キワモノっぽい宣伝をしていますが、演劇として本もお芝居もよくできていてとても楽しめました。
わたしは2番目と3番目のお話が好みでした。
あと、客入れの時、座席の増設を伊藤さんが自ら行っていたのですが、ちゃんと自分で座って視界を確認されていたのには感心しました。

Project BUNGAKU 太宰治
Project BUNGAKU
ワーサルシアター(東京都)
2010/09/30 (木) ~ 2010/10/10 (日)公演終了
満足度★★★★
太宰のダは…
ダメ人間のダ。小学生の頃の思い出。他意はないです。
小劇場好きには堪らない顔触れの企画。
期待以上とまでは言わないが見応えは充分。
「HUMAN LOST」
私的1位。短編はキレ味だと思う。佐藤みゆき良いなぁ。
「燈籠」
小粋で華やか。うまいこと作るね、まったく。
「ヴィヨンの妻」
オーソドックスというか、これくらい鈍臭いくらいが太宰っぽいと思う。
「人間失格」
物足りなさが残った。役者、滅私奉公。長編にした方がいいのでしょう。
「ヴィヨンの妻」以外は技が勝ち過ぎている印象。
太宰って短編向きじゃないのかな。
前方から座敷2列、ベンチシート2列。背もたれのある椅子は後方でした。

異種をあわれむ歌
ルナ・パンク・ヴァリエーションズ
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
満足度★★★★
SFしか出来ない
超カッコいいルックスの人ばかりの女性陣に対して、男性陣は普段は超三枚目役が多そうな人ほど、この作品ではいい役どころ&良い演技!どうにか滅亡を回避したと思しき地球にジャスミンが戻って来たシーンは泣けた。スケールの大きな愛に満ちあふれていた快作。

箱入り彼女博覧会
NICE STALKER
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
満足度★★★★
OTAKU
アキバ系と聞いていたのでどんなものかと思っていたのですが,意外というかなんというか,かなりまともに(笑)おもしろかったです.舞台美術やBGM,コネタ,コンセプトなどがアキバ的なだけで,オムニバス一つ一つが小粒でもぴりりと利いた佳作でした.特に小学生の話が最後の一言できゅんとする,好きな話でした.

中村真生、車破損チャリティー上映会
青年団若手自主企画vol.48 深田・中村企画
アトリエヘリコプター(東京都)
2010/10/02 (土) ~ 2010/10/05 (火)公演終了

砂と兵隊/Sables & Soldats
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/09/16 (木) ~ 2010/10/06 (水)公演終了

やわらかいヒビ
カムヰヤッセン
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2010/10/01 (金) ~ 2010/10/11 (月)公演終了
満足度★★★★
難しいけども
重厚深遠な脚本と、超絶演技に圧倒されました。観て来た皆さんが一様に言われている通り、自分も観て良かったと思う作品でした。

令嬢ジュリー
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2010/10/02 (土) ~ 2010/10/10 (日)公演終了
建築
舞台美術というより。いわゆる『第四の壁』が業界通念になっているとこに、第四の壁もちゃんとある上に、なんといっても天井があるんです。
ちゃんと室内区間なので、室内の音の響きとか、蛍光灯やインテリア灯っぽい明り感も体感。
うーんこれは、やろうと思ってもいろんなスタッフの力が必要。『外圧』がないと出来ないことかもしれない。なにより、実現させる劇場だエライ。さすが

長短調(または眺(なが)め身近(みぢか)め)
あうるすぽっと
あうるすぽっと(東京都)
2010/09/30 (木) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
短、長と観て
これは贅沢な芝居だと思いました。
一定の部分に関してはどちらでも不満が残るという。
普通に音楽としてよく出来ている(CDで聴いても楽しめる)のだ、けれど。。。
「かもめ」がそれなりに頭に入っていれば、十二分に楽しめるとは思います。

偽作 不思議の国でアリんス
劇団ドガドガプラス
アサヒ・アートスクエア(東京都)
2010/09/29 (水) ~ 2010/10/04 (月)公演終了
満足度★★★★
無心に観ることができる
小難しいこと一切抜きにだれでも楽しめる、敷居の低い公演、ただし子供には下ネタ注意。童話をベースに、歌、踊り。観終わった後に楽しかった余韻が長続きする。この会場はアサヒの飲料が1杯サービスなのがよい。

令嬢ジュリー
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2010/10/02 (土) ~ 2010/10/10 (日)公演終了
進んでますねぇ!静岡県!
このチャレンジ溢れる作品が「高校生観賞事業公演」になっている静岡県って、スゴすぎる気がするなぁ!
舞台装置は、いままで観たこともないような斬新さ!
照明は、ジェームス・タレルの美術作品級!
ま、それだけでも、わざわざバスに乗ってお邪魔させてもらった甲斐がありました。ただ、「評価あえてせず」の理由は、ネタバレで・・・

箱入り彼女博覧会
NICE STALKER
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
満足度★★★★
伊藤伸太朗はイカしたストーカー!
伊藤伸太朗の公演はまず、企画がよく練られている。RENTAL BOXで女の子の「人生」の展示即売会だなんて。
水着シーンありますとか、センセーショナルに宣伝しているが、全編を通じて、伊藤伸太朗の女の子に対する強い愛情を感じる。
またメールアドレスを購入すると後から、登場人物からメールが来るという設定も面白い。毎回、公演とネットを連動させて劇場を出ても楽しめる企画を考えている。そのことが素晴らしい。

惑星ボーイズ
ファントマ
ABCホール (大阪府)
2010/10/01 (金) ~ 2010/10/04 (月)公演終了

シアター21フェス ADVANCE Vol.3
セッションハウス
神楽坂セッションハウス(東京都)
2010/10/02 (土) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
6作品
gingham
水の精・光の精
QUINTETTO
Moment for tomorrow ←一番好みの作品
明日が消えた日
3連/1st-Direction ,Division incl.2nd-Direction

やわらかいヒビ
カムヰヤッセン
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2010/10/01 (金) ~ 2010/10/11 (月)公演終了
満足度★★★
観る側の力量が問われる作品
全体的にはわたしの苦手な、感想の書き難いタイプの芝居。
ただし、話がどう転がって行くのか目が離せなかったし、
役者さんもそれぞれとても良かった。
最後の幕切れは切なくて涙が出そうになった。
それなのに小さな違和感や説明の無い部分が沢山あり、
それらが後からチクチクと効いてくるのだ。
観る側に託されたものは少なくないと思った。

センの風とムラサキの陽(池袋演劇祭・優秀賞受賞)
劇団バッコスの祭
池袋小劇場(東京都)
2010/09/30 (木) ~ 2010/10/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
最後は涙涙・・・
戦争中の本来暗い物語に、地域劇団の物語をエピソードに加えて明るいタッチで描いたのが成功している。お陰でラストは涙涙だ。
中心的な役者が上手いのはどこの劇団でもだが、今回、脇を固める役者が非常に良かった。
食堂の娘を演じた雨宮真梨の明るさとその裏にある影に感動。劇団の脚本家を演じた稲垣佳奈美もいつも明るくて素敵だった。新聞記者役の金子優子、海軍少佐役の石井雄一郎、大学教授役の田仲晶らが特に魅力的だった。
この劇団、毎回観ているがどんどん作品の完成度が高くなっている。今回の作品、私は今までの中で一番好きだ。

Project BUNGAKU 太宰治
Project BUNGAKU
ワーサルシアター(東京都)
2010/09/30 (木) ~ 2010/10/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
“分かりやすく美しい台詞”の小夏ワールド
吉田小夏の作品は、いづれも力作の他作品との対比で個性が際立ち、大満足。作者がブログで明かしているように、メインの『燈籠』に『待つ』『葉桜と魔笛』などを加え、その他の短編からも、太宰の名台詞をさりげなく潜ませて、オリジナルの小夏ワールドに仕立て上げた力量には敬服する。また、俳優諸氏が素晴らしい!特に福寿奈央の存在感と迫力は出色であり、魅せられてしまった。ファンは必見の舞台。

buzz
studio salt
相鉄本多劇場(神奈川県)
2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
特別な作品
モチーフにしている実際に起こった事件はとても重いものだけど、誰の人生にも「あの時こうしていれば」「あの時こうだったら」という一瞬があると思う。ラストシーンがそういう人生の取り戻せない、取り戻せたかもしれない一瞬を象徴的に表現していて、思わず泣いてしまった。残酷な事件が底流にありながら、しかしラストシーンには救いもあったのだ。ソルトの作品はずっと観続けてきたけれど、これは特別な作品になったと思う。脚本はもちろん、役者さんたちの演技も、演出、音響、舞台芸術など、制約もあったと思うが今できる限りのベストを表現しているという気がした。今もラストシーンの台詞がよみがえってくる。