最新の観てきた!クチコミ一覧

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刻印

刻印

innocentsphere

JMSアステールプラザ 多目的スタジオ(広島県)

2015/01/24 (土) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

観た舞台が血となり肉となる。
これって舞台とはいえ、やって良いの?
…っていう、かなり重い題材を、
かといって、偏ったメッセージ性というものでもなく、
観てる側が、その思い、考え、経験等々の中でそれぞれ昇華していき、
それでも多分答えは見つからなくて、
でも、観た芝居の記憶は、
それを観たひとのひとつの細胞として、
血となり肉となり残っていくのではないかと・・・・ふと思う。

ネタバレBOX

“刻”のラストで、つくりがうまいなぁ
…って思いながら、ぞくぞくした自分に少しこわくなったけど。
埋もれて、白い

埋もれて、白い

三角フラスコ

仙台市宮城野区文化センター・パトナシアター(宮城県)

2015/01/23 (金) ~ 2015/01/26 (月)公演終了

満足度★★★★★

全体的にレベルが高い作品。戯曲の力がすごい!
劇作家、生田恵さんの新作書き下ろし、ということで非常に期待してみに行きました。震災後の海辺の町が舞台だろうと思います。生田さんの震災後の作品として、「はなして」「あと少し待って」からの・・・という文脈も気にしつつ拝見しました。
会場に入ると、中央に四角い舞台、手前と奥に客席がある二面舞台になっていました。この小屋でこの使い方をしている作品は私は初めてでした。舞台と客席が適度に近く、後ろの客席は高さを上げてあったので非常にどの席からも見やすい環境でした。
私は奥の席を選びました。四角い舞台の中央には、人一人がすっぽり収まるくらいの丸い穴が空いていて、なんだか前にも似たような舞台があったなぁと思ったらそれは「みかん」でした。それよりもアクティングエリアは広くとってあります。

オープニングは、前作「あと少し待って」のイメージを引き継いでいたように感じます。もしかしたら登場人物たちも、前作との関連が強かったのかもしれませんが、手元に資料もなく、記憶もおぼろげで定かではありません。暗く、静謐な空間に風が遠くで渦巻いているような音、東北の闇の深さ、そして冬の厳しさと美しさを感じました。

演出家の手腕なのか、出演者の集中力なのか、多分両方なのだと思いますが、私には非常にテンポが良く感じられ、よく精度を高めてあるだけでなく、その場の空気によって微調整をするような余裕を感じられる、優れた仕上がりだったと思います。スタッフワークとの呼吸も見事でした。本当にグッと作品の世界に引き込まれました。

終演後のアンケートにも書きましたが、今のタイミングで、彼らだからこそ出来上がった作品に仕上がっていると思います。ぜひ多くの方々に見て頂きたい、仙台、東北から発信する優れた作品だと思います。

ネタバレBOX

冬の厳しい世界、暗い。降り積む雪はあらゆるものを白く覆い、穴を見えなくする。登場人物たちのそれぞれの悩み、葛藤はとても深く、お互いを引っ張り合う中で、瀧原さんが演じる役は中立的で、ある安定をもたらす、というのは、「はなして」のときと大同小異に感じた。劇構造の点でこれまでと共通する部分が感じられた分、その後の展開が大きくこれまでとは違うな、と感心した。
冬から春へ、雪解けと新たな命の息吹が感じられる結末へと向かうのだけれど、ここの描き方がとても力強く、地に足が付いていて、これまでの作品のなかで最も未来への希望を抱かせる作品だったと感じる。
夜と森のミュンヒハウゼン

夜と森のミュンヒハウゼン

サスペンデッズ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★★

摩訶不思議な内面劇(?)
 面白かったです。

森の存在がとても良い発想ですね。

これが何であるのかは、各人の採り方で微妙に解釈に違いが生じるかもしれませんが、それは観る側の我々が各々想えばいいことなのでしょう。

「心」なのか「脳」なのか。そりゃ「心」でしょ!?ってのも短絡的かもなあと深読みしたくなりますが、これが案外作者の狙いかも…。

ファンタジーとはちょっと趣を異にする時間にまずは身を置いてみる事でしょう。

ネタバレBOX

演技部の活躍には拍手です。

特にサキ役の地村さん、素晴らしいです!
よくぞこの役にこの人がいた!ってくらいの拍手。


明けない「昏迷」はないのでしょうが、そこに至る過程が非常に良くできています。
少々、難解な印象を受けるのは、感覚的な手法で書かれた本だからでしょうか?
全てを理解しようとするより、伝えられた情報に身を任せて、自分の感性だけをナヴィにして体感すべき作品のような印象を受けました。

全公演完売!「RUN」

全公演完売!「RUN」

劇団お座敷コブラ

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2015/01/22 (木) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★

箱が大きすぎ…。
KAAT大スタジオ見やすくていい劇場ですね。

舞台の広さを使いきれていなかった演出、演技であったのは残念です。
客席中央あたりで観ていたのですが、半分ほどの役者さんが何を言っているのか聴き取りにくいレベルだったのはキツかった。
芝居の善し悪し以前の問題ですが、最後列で観ても最低でも聴き取れる発声で演じてほしかったです。全員が生声での演技が難しいのなら、マイクをきっちり着けて一人づつ音量調整をするぐらいのことはしてほしい。滑舌の悪さと発声の悪さを補ってもらわないと、後ろで観ていて、何がなんだかわかりません。

全体に無駄が多いわりに大事なことを省略されすぎた本は、客に想像させ補完しなくてはならない部分が多すぎて、それは好みの問題もあるのかもしれませんが、あまり良いとは思えません。

演劇ならではの良さが活かされていない舞台は、演劇を観たことのない人に生の人間が動くことを二次元的に受け入れてもらうにはいいのかもしれないですね。

芝居観が見る舞台ではありませんが、いろいろな需要があるので、そちらに向けて公演を打てば、それはそれで良いのかなともおもいます。

脳内補完でLGBTを意識して観れば、けっこうあちこちで泣けました。

ネタバレBOX

榎音の心の動きがあまりにも描かれていない、役者頼みの本になりすぎている気がしました。役者さんが可哀想。
不自然な殺意。例えば、榎音が和奏に恋愛感情を抱いているだとか、プロデューサーにセクハラを繰り返されているだとか、そういった具体的な何かがあって、それがきちんと本で描かれ演出されていれば、榎音が殺人をするに至る動機も鮮明になり、観客も彼女に共感できるとおもいますが、このままでは彼女が思い込みの激しいちょっと危ない女の子、にしかならず、それでは役があまりに可哀想。
そのわりに笑えないギャグ(客席が静かなまま)が多く盛り込まれていたり、で、全体にバランス悪いです。
最後まで推敲を投げない、きちんと手を入れた本にしてほしかったです。
鬼のぬけがら

鬼のぬけがら

ナイスコンプレックス

OFF OFFシアター(東京都)

2015/01/21 (水) ~ 2015/01/26 (月)公演終了

満足度★★★★

様々な鬼の姿!
父子の心の葛藤を数々の”鬼”を使った成句を示唆する過去・現在、、寓話が絡むファンタジー。
被災地での本音の会話が生々しい。人間の怖さという意味での”鬼”の部分を一番感じた。
舞台が低かったので、低い位置での演技は後列は見にくかったです。

ネタバレBOX

芝居から連想できる成句
鬼とも組む 鬼を欺く 鬼は外福は内 鬼が住むか蛇が住むか 鬼に金棒 鬼の空念仏 鬼の女房に鬼神がなる 鬼が笑う 鬼を酢にして食う 鬼が出るか蛇が出るか 鬼の念仏 鬼の居ぬ間に洗濯 鬼の霍乱 鬼の首を取ったよう 鬼に衣 鬼の目にも涙

暇があったら調べてください(笑)
プルートゥ PLUTO

プルートゥ PLUTO

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2015/01/09 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★

原作を気にしすぎでは
原作のテーマを横に置いて、あらすじを観たような気分になってしまった。
ストーリーを丁寧に追うことよりも、テーマをきちんと見せることに注力すべきだったのではないだろうか。
いろいろと中途半端で残念な舞台だった。

ネタバレBOX

浦沢直樹のマンガ『PLUTO プルートゥ』が原作の舞台。
『PLUTO』自体が、手塚治虫の『鉄腕アトム』のエピソード「地上最大のロボット」を下敷きにしている。

『PLUTO』は、ロボット刑事ゲジヒトを主人公にして、7人のロボットたちの最後を描いていく。
「心」まで生まれてくることで、生物と生物ではないものとの境目がわからなくなってくるような、ストーリーだ。

舞台は7人のロボットのうち、5人がすでに亡くなっているところから始まる。
なので、マンガにあったような、「泣かせるエピソード」がない。

なので、ロボットの苦悩のようものに共感もできず、ラストにプルートゥが、「目覚めていく」という展開にも納得度が低くなってしまう。

原作マンガでは、「アトム」がやはり最大の媒介者であり、彼の存在が、プルートゥの「心」を動かし、「人殺しをした唯一の存在」と言われているロボット(原作でもモロ、『羊たちの沈黙』のハンニバルだし、ロンギヌスの槍が刺さったリリスなんだけど・笑)の「心」も動かしていく。
しかし、その要素を摘み取ってしまったように思う。

例えば、槍が刺さって動けないという人殺しロボットの「槍をアトムが抜いて」しまうのだ。確かそういうシーンは原作にはないと思う。これがあるとなしでは意味が違ってくるように思う。例えば、「槍は自分で抜くことができたのに、今まではしなかった」とも受け取れることから、彼がどうしてアトムの手助けをしたのか、というところへと思考が進むからだ。
それをストーリーをわかりやすくするためにか、アトムが実際に「槍を抜いて」しまうのだ。

さらに、ロボット刑事ゲジヒトも実は「人を殺したことがある」ということがわかってくるのだが、それを舞台では、「自分の子ども」に対する復讐として描かれてしまう。単純、短絡にしてわかりやすくなってしまったことで、失ってしまったモノがあると思う。

「心(憎しみやその連鎖)」と「家族」とそれらを形作る「記憶」と「生命」というテーマが交錯して、『PLUTO プルートゥ』という作品は成り立っていると思う。

そのテーマに、もっときちんとフォーカスして描くべきだったのではないか。
つまり、原作のストーリーを追うことが第一義に考えられた結果が、この舞台になってしまったように思える。

さらに、森山未來さんがダンスやってるからダンスも入れた感が強く、必然性があまり感じられない。アトムが飛び立つ姿は、いいな、とは思ったが。
原作の持つテーマに絞って、ダンスだけの舞台でもよかったと思うのだ。

人が数人で操るでかいプルートゥが舞台に登場するのだが、まるでヒーローショーのようで、子どもの声援が似合いそうな対決シーンとなっていた。単純に見せすぎて、残念。

ラストにボラーが布を使って表現されていて、それにはスペクタクル感もあり、舞台の演出として、なかなかだったのだが。

永作博美さんが、ウランとゲジヒトの妻の2役を演じていた。それはそれでうまいとは思ったのだが、2役演じさせるのならば、そこに意味を持たせてほしかった。
同じように、柄本明さんが天満博士と人殺しロボットの声を演じ、松重豊さんも声でもう一役演じていたが、両者ともに声に特徴がありすぎて、同じ人が演じているのがわかりすぎてイマイチであった。そこに意味はないので、別の人でよかったのではないだろうか。
少人数で演じ分けることに意味があるのならば、そういう演出にしてほしいのだ。

原作どおりゲジヒトが物語を回していたのだが、5人のロボットがいないストーリーなだけに、アトムとの関係が微妙で、もっとすっきりとどちらかを主人公として扱ったほうがよかったのではないか。

マンガのコマをイメージした舞台セットと、ロボットの残骸が舞台全面にあり、それが戦争のときのイメージや、捨てられたロボットたち、そして「花畑」に見えてくるような装置は良かったとは思った。
全公演完売!「RUN」

全公演完売!「RUN」

劇団お座敷コブラ

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2015/01/22 (木) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度

うーん
正直観劇して後悔しました・・・。脚本・演出・演技ともに出来の悪いアマチュアレベルのものを見させられたというか・・・。出演者さんの身内のお客さんは楽しかったかもしれないですね。そういう意味では発表会でした(汗)

リアルリアリティ

リアルリアリティ

Nibroll

シアタートラム(東京都)

2015/01/23 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

生きる実感
この世に占める割合からいえば、死が大多数で、生が少数であることは間違いなく、そこに正義も悪もない。ただただたその場所においては、無意味な衝動、生活サイクルが大半を占めるという、非合理的な現実があり、技術進化による合理性とは真逆。虚しい。

ランドスライドワールド【本日大千秋楽!!14時の回 当日券ございます!!】

ランドスライドワールド【本日大千秋楽!!14時の回 当日券ございます!!】

劇団鹿殺し

本多劇場(東京都)

2015/01/11 (日) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★

行き違い・・?
過去の「電車は血で走る」「スーパースター」あたりをお気に入りの人(要は自分だったりするが)にすれば、違和感を覚えるかな。。 パワフルに前を向いて行こうぜ、的な感じではなく、家族崩壊の悲劇的要素が強い。まぁパワフルさはあるけど。

今後の鹿殺しの方向性が気になる・・

ネタバレBOX

チョビが指摘している「不確かな地面」という点については、非常に納得というか思い知らされる面があり、帰宅時考えてしまった・・
こわれゆく部屋

こわれゆく部屋

水素74%

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/01/16 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

まったりした家族崩壊劇
ゆるやかな時間の流れの中で、軋み歪みが増幅しその限界を超えるとき、いとも簡単に大事だったものがあっという間に手の届かないところへ飛び去るのを、どうしようもなく見送るしかない。その悲しい現実をただただ受け入れることができないために、周囲とのコミュニケーションも取れず、孤立化していく有様がGOODでした。

リア王

リア王

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2015/01/06 (火) ~ 2015/01/22 (木)公演終了

満足度★★★★★

シェイクスピアにはまだまだ「お宝」が潜んでいる
文学座の公演で、江守徹さん主演。
鵜山仁さんの演出なので手堅いだろう。
『リア王』なので、3時間ぐらいの舞台になる。

いかにも「正統派」的な舞台が観られるのだろうな、と思っていた。

ネタバレBOX

文学座の公演で、江守徹さん主演。
鵜山仁さんの演出なので手堅いだろう。
『リア王』なので、3時間ぐらいの舞台になる。

いかにも「正統派」的な舞台が観られるのだろうな、と思っていた。

ただし、江守徹さんは、少々呂律が怪しい感じもあるので、そのへんどうかな、とも思っていた。

休憩15分を含み、2時間55分ぐらいの公演だった。
しかし、グッと集中して観ることができた。

舞台は、ほぼ素で舞台の構造が見える感じで、全体が白く塗ってある。
上手・下手の奥には、天井にも届くぐらいの紙が置いてあり、それ以外はイスがある程度。

役者を観てくれ、と言わんばかりの舞台セットだ。

今回の、この舞台を観て、『リア王』はいろいろな手法も含め、何回も観ている演目にもかかわらず、新たな発見、見方があったということに、驚いた。

文学座という老舗の劇団で、江守徹さんが主演をし、鵜山仁さんの演出なので、オーソドックスなシェイクスピア劇を楽しめると思っていたのだが、そうではなかった。

いや、これこそが「オーソドックスなシェイクスピア劇」だったのかもしれない。

それを感じたのは、まずは「台詞」だ。

シェイクスピアの作品だと、ストーリーを追うために台詞は丁寧に聴いていくのは当然ながら、言い回しや、内面の吐露などが、少し鬱陶しいという印象を受けることも、ときにはある。
しかし、今回は、少し違った。

台詞の1つひとつが、きちんと耳から気持ちにも届くことが多いのだ。
台詞の言葉を納得しながら、聴いていた。胸に響いたりもした。
これには少し驚いた。

「なるほど」なんて思いながらシェイクスピアを観たことがなかったからだ。

この舞台には、若手と古株の俳優さんたちがいる。
彼らにとって、そこは戦場だ。
彼らの、前への出方と引き方がうまいのだ。
そのやり取りには火花が見えるよう。

だから、台詞の1つひとつが粒だっていて、耳へ、気持ちへ、届くのだ。

次に感じたのは「老い」。
リアが娘たちに王国を相続させる話であり、王という立場からの見方しかできないことの悲劇であると思っていたし、その根本には「老い」はあるものだと、思っていた。
しかし、本当の意味での「老い」とは、「王であろうとなかろうと関係のない」ところにあるということなのだ。

末娘の反応が自分の思っていなかったことで癇癪を起こすのだが、それは何でもできる「王」であることが理由ではない。
「老いた」ことが原因なのではないだろうか。
思い込んだことは簡単に変えられないし、その思い込みもきつくなっている。

江守徹さんが演じるリアを観ていると、その頑なさが、切なくなってくる。
「老い」が全身から滲み出てしまうから。
声もよく出ていて、オーラさえある人なのに、老いには勝てない姿が、舞台の上にあるのだ。もちろんそれは役者の実年齢のみがなせる業ではない。
演技と演出によって、そう見えてくるのだ。

息子を信じることができなかったグロスターにもそれを感じた。
だから、目をえぐられたグロスターが、リアと再会し、手を握り合う2人の姿は、ストーリー以上の哀れみを感じざるを得なかった。

老いたことへの「報い」はこれであるのか、と。
2人の老人は、実の子どものことを信じられなかったことで、最悪の罰を受けることになる。
それが「老い」とは切っても切り離すことができない、と、この舞台を観て、リア王で初めて感じたのだ。

先にも書いたが、休憩を含み3時間近い上演時間なのだが、鵜山仁さんの演出が、とてもスピーディなので、観やすい。場面展開もサクサクと進み気持ちいい。

上手・下手に立てかけられた大きな紙を使った演出もうまい。
激しい音を立てて、紙が取り払われたり、その残骸が舞台の上に残ったり、で大きな効果を生んでいた。

さらに、細かい付け足し(だと思う)の味付けがとてもいいのだ。

例えば、目をえぐられたグロスターがドーバーへ向かおうとして、領地に住んだいる老人に案内させるシーンがある。そこへ身元を隠した息子・エドガーが現れ、グロスターの案内を買って出る。グロスターは、エドガーに財布を渡すのだが、その財布から、老人が、金を1枚だけつまみ出して持って帰るのだ。これが面白い。老人が金を抜き取るのが、あまりにも自然で、エドガーも「あれっ」と少し思う程度なのだ。老人役の高瀬哲朗さんのタイミングも見事なのだが、そのシーンを入れたことで、老人自体が活きて舞台に現れたのだ。

また、姉2人のシーンも、いい。
特に、次女・リーガンと恋人・エドマントのやり取りと、別れ際、さらに長女が現れてからの、姉妹の距離感と呼吸感のようなものが、見事なのだ。

長女の執事が功を焦って、グロスターを亡き者にしようと襲ってきたときに、エドガーにあっさりと倒されるシーンでの、エドガーの台詞「弱い」のひと言には笑った。間がいいので笑えるのだ。

役者ももちろんだが、うまい演出だなと思った。と

役者さんたちのうまさは安定していた。

江守徹さんは、やはり少々呂律が厳しいところもあったのだが、最初のほうのシーンで、末娘に激高する台詞が、力強く響き、「この舞台はいいぞ!」とすぐに思ったほど。
ほかの役者さんたちは、そのリア王に真っ向から立ち向かう。
この胆力がある、江守徹さんだから、変に気遣ったりする必要がないからだ。

ケントを演じた外山誠二さんあたりは、リア王を喰わんばかりに、グイグイくる。
少しばかりカッコ良すぎるのでは、と思ったぐらい。

道化を演じた金内喜久夫さんも素晴らしい。道化の台詞もきちんと伝わってくるのだ。しかも、笑わせてくれる。
「今まで観てきたリア王の道化って何だったのか?」と思うほど、リア王へ掛ける言葉が活き活きとして聞こえるのだ。台詞がリアに対する嫌みではなく、「本音」として聞こえてくる。それを受け答えるリアの江守徹さんは、見事に「王」であるのだ。

リアの長女・次女を演じた、郡山冬果さん、浅海彩子さんのタイプの違う悪女もいい。実にカッコいい。単なる「悪いお姉さんたち」ではない。
傲慢で、彼女たちの欲望が露わになってきてからの、短いシーンや、台詞がいちいち効いてくる。

演出については、長女の婿が、グロスターの目をえぐるところから、豹変したように狂ってしまうのと、長女の執事が倒されるときに、言い残したことを言うために何度も起きたりするところは(笑ったけれども)、少しやり過ぎかなと思ったりした。

この舞台の最大の見せ場はラストにあった。
それは、末娘・コーディーリアが殺され、リアが嘆き悲しむシーンだ。
「非劇的だな」と思ったことはあったが、悲痛さをこんなに感じたことはなかった。
リアの悲しみが、痛いほど伝わってくるのだ。
胸に迫るものがあった。
『リア王』を観て、こんな体験は初めてだ。
これだけで、江守徹さんが凄いと思った。
多少の呂律なんてどうでもいいと。
先にも書いた「台詞が1つひとつ胸に響いたりもする」ということが、ここの結実したと言ってもいいだろう。

シェイクスピアにはまだまだ「お宝」が潜んでいる。
それは小劇場系劇団だけではなく、文学座のような老舗劇団であっても、見つけることができるということを強く感じた舞台だった。
悲しみよ、消えないでくれ

悲しみよ、消えないでくれ

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/01/23 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

げに恐ろしきは‥‥。
モダンスイマーズ初観劇。濃密&臨場感ある舞台で非常に見応えがあった。

役者陣の演技もみな素晴らしく、役にしっかりハマっていたと思う。



上演時間:120分




ネタバレBOX

親友、夫婦、恋人(不倫)関係。様々な人間関係が、終盤たたみ掛けるように崩れ落ちていく展開は見事でした。


全公演完売!「RUN」

全公演完売!「RUN」

劇団お座敷コブラ

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2015/01/22 (木) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

ここはヨコハマ。
はじめてKAATに行きましたが、綺麗な劇場ですねえ。
ここで全公演完売というのは素晴らしいことです。

さて、オープニングダンスはよかったです。
その後も高低差のあるセットでいろいろと見せ方がいいなーと思うところは多かったです。

が、好みになるんでしょうけど途中のダンスはなくてもよかったのではと。
あとはキャラづけのために足されたであろう小ネタ的なものが
キャラによっては余計な味付けに感じた点も多かったです。

などと言いつつ、2時間しっかり楽しめました。

ネタバレBOX

次作ありきで作られたんでしょうか、
それでもラストはうーん、銃声まではなくてもよかったのでは。
彼女に生きててほしいからですけど。


佐村河内&妖怪ウォッチネタにだいぶ引いてしまった感がありましたが、
もう消費しつくされたネタなんですかね、去年のことなのに。
サイクルが早い早い。


KAATで上演するからの舞台設定だったんでしょうね。
帰りに足を伸ばして馬車道まで歩き、コスモクロックを見て帰りました。
男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/01/15 (木) ~ 2015/01/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

負け組は気から

どうしてだろう。


デパートの試食コーナーで、生ハムを何度も口に運んでしまう感覚だ。

子供騙しじゃない。彼らの「笑い」は適度なエスプリを含み、時代批判精神を保ちつつ、その場にいる観客を「勝ち組」に錯覚させる術がある。

『男は二度死ぬ~』。人物相関図が複雑だ。ショート・ストーリーズにも思えてくる。

若干のネタバレかもしれないが記す。
遊園地のヒーロー・ショー出演者が「墓場」なら、ドラマ・シーンをどう喩えたらよいか。うむ。「働き盛り」だろう。

今、汗だらけの者たちが「働き盛り」を過ぎし棺桶の幻という、この現実。しかし、『ライオン・パーマ』は そこにもメッセージを託そうとしない。

用意するのは「笑い」だ。そして、上品で知的。この謙遜がいい。

夜と森のミュンヒハウゼン

夜と森のミュンヒハウゼン

サスペンデッズ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★

夢か現か幻か
個人的に久々にサスペンデッズの舞台を見る。今作は再演だが初見。
舞台上は森の中をイメージした大木が幾つか並び、劇場内はそれを助長するような薄暗さなので、上演前の待ち時間にチラシに目を通そうと思っていたら読み辛いw
某人気バンドの楽曲をイメージしたかのような衣装かわいい。
病弱な少女と大人向け恋愛要素も含んだ寓話のような森は生きてる感、だったけど他の作品より分かりやすかった。
系統は違うのだけど、漠然とCB成井作品を思い出したり。約2時間。

ネタバレBOX

ポニーやウサギや狸、ホワイトソックスと呼ばれる動物たちが次々登場してくる幕開けに、一瞬面食らうも、そんな森の奥で暮らす動物たちと違和感なく会話する兄妹。
ある意味、異次元世界なのに、冒頭から登場するアユミの不倫の末の選択の行為が現実的。なぜこの森に訪れることになったのかがわかってから、この作品に入り込めた。
ホワイトソックスにより森に生きるルールを破られ、サキの存在も浮かび上がり疑問も解明するが、アユミとサキの2人の決意から森を出て行くあたりは精神医学用語でもあるタイトルの「ミュンヒハウゼン」につながるのかな、と自己判断。
Father with No Name  続 夕陽の父子たち

Father with No Name 続 夕陽の父子たち

ピストンズ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2015/01/23 (金) ~ 2015/01/26 (月)公演終了

満足度★★★

お好きな人ならその逆なら。
開場中から西部劇映画のBGMが流れて雰囲気はよし。

だがしかし。
正直、2時間が長く感じる展開でした。

西部劇に馴染みのない人だったらどうだったんだろ。

ネタバレBOX

せっかく持ち込んで敷き詰めた槌もあまり効果をあげているとは思えず、
パネルを動かしてのセット配置もテンポよくない感じでした。

どのシーンも説明が長かったので、
もっと削れるところを削って30分くらい短縮できたんじゃないかなーと。
なんというかプロットは面白そうだっただけにもったいなかったです。


夜と森のミュンヒハウゼン

夜と森のミュンヒハウゼン

サスペンデッズ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★

ムービング?
はなかったよね?。石村さんさすが。

ネタバレBOX

裸木では森のイメージに欠ける。落葉用意しておいてもだめ。森は葉っぱが生い茂ってるのが私のイメージ。夜の雰囲気もない。真っ暗にしろとは言わないが夜の雰囲気がまったくない。タイトルロールがそこにあるのにそれを感じられないのがもどかしい。。ラストに一気のネタばらし?も好みじゃない。
誘拐

誘拐

劇団だるま座

アトリエだるま座(東京都)

2015/01/19 (月) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

50年前かあ。
当然といえば当然ですが、台詞回しが古いなあという印象がありましたが
やりとりが自然だったのはそれが生きた言葉として書かれているからでしょうか。

軽妙なやりとりが楽しかったです。


ネタバレBOX

娘が帰ると意思表示したところでもっと「怖っ」と
背筋が寒くなるようなところまでいけたらなあーと思ったりも。

アトリエ公演ということもあって若手さん起用だったんでしょうか、
もうちょっとを期待したくなる方も何人かいらっしゃいましたね。
死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜

死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜

世の中と演劇するオフィスプロジェクトM

座・高円寺1(東京都)

2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

長い芝居は嫌われる。
なんてことを劇中で言われたり客席いじりされてましたが、
2時間越えのこの作品、長いなあーとは感じませんでした。

過去の2人について知らなかったから、というのもあるでしょうか
3つの物語を合わせてよりも1つ1つを90分程度の単独作品として観たかった気持ちもありました。
特に現代の、奥さんの過去のエピソード、父と娘の物語を。

今、実際にそういう仕事に就いている方がいるわけですが、
どうなんでしょうねその時のその心中は。

ポストグラフ

ポストグラフ

彗星マジック

浄土宗應典院 本堂(大阪府)

2015/01/23 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

最高でした!
役者さんも最高!
脚本も演出も照明も衣装も音楽も
全てが最高に素敵な舞台でした

ネタバレBOX

ゴッホを演じる立花さんの研ぎ澄まされた空気感に魅了されました
立花さんの決して大きくはない体から解き放たれたオーラに当時誰にも理解されなかったゴッホを感じました
そしてその仲間であった芸術家達も皆が個性的であり、それをアルルという少女の目から観客に訴える各自の生き様が生々しくも美しくて涙が溢れました
そのアルルの姿もまた本当に儚くも力強くてラストシーンが本当に印象強かった・・・
1月にして、今年ベスト舞台になりえる舞台に出逢えました
ありがとうございました!!

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