彼女にとって無敵の世界
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
満足度★★★
盛りだくさん
常に表面を軽い笑いが渦巻いていてクスッとさせる。
だが底の方に考えさせる要素が仕込んであって
最後にそれをスプーンでひと口、ほろ苦い味で〆る感じ。
その構成はいいが、ちょっと解りにくいのがもったいない。
もっとストレートに親心と、娘の成長譚であっても良かったような気がする。
ネタバレBOX
まこと(柳瀬春日)は眠りにつく前のひととき、今日も父親(樺沢崇)のお話を聴く。
父の語る物語は、昔ばなしや名作をアレンジしたもので、どれも現実的だ。
だから登場人物が死んでしまうことも多い。
ついにまことは「自分が物語の中に入って主人公を助ける!」と言い出す。
「世界で一番私を愛してくれるパパの創った世界なら、私にとって無敵の世界のはず」
そう言ってまことは自らその物語の中へと入っていく。
果たしてそこは、本当に無敵な世界なのか…?
おバカな世界と思っていると、父親の含蓄ある台詞も出てきたりする。
このお父さん、地味ながらなかなか台詞に味わいがあってよかった。
ただせっかくの意図がエピソードに紛れて解りにくいのが残念。
「浦島太郎」「銀河鉄道の夜」「走れメロス」「不思議の国のアリス」と
音無家、 山田家の人々という、盛りだくさんな展開にテーマが埋もれがち。
もっとストレートに“もう一つの世界”の価値観に触れたまことが成長し、
戻って来て厳しい現実を受け入れる、という話でも十分面白いと思う。
その理由は、出てくるキャラがバラエティ豊かで楽しいから。
シャドウ(あや)や、アナザー(比嘉建子)など存在そのものが意味深なのも大好きだ。
車掌(石毛セブン)の滑舌よく切れの良いジャッジは最高だった。
アナザーとシャドウも台詞が聞き取りやすくて、台詞の面白さが伝わる。
中には台詞が流れてしまってせっかく面白いことを言っているのに
テレビのように字幕があればもっと笑いが取れるだろうな、
と思う方もいてちょっと残念。
また常に笑いがちりばめられてはいるが、どかんと笑ったところは少なかったかも。
そのあたりのメリハリがあれば、もっと魅力的な舞台になると思う。
Rebirth
革命アイドル暴走ちゃん
あうるすぽっと(東京都)
2015/10/28 (水) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
30日12時
昨日は真ん中より少し上手より。
今日は最前列ど真ん中。
へー、こんなになってたのか。
やっぱりど真ん中は良いなあ。
昨日より何倍も楽しめた。
錆びつきジャックは死ぬほど死にたい
ポップンマッシュルームチキン野郎
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2015/10/28 (水) ~ 2015/11/03 (火)公演終了
満足度★★★★
おもしろかった☆
こちらの劇団さんは 前作の「 ~ブルースレッドフィールド」 に続いて二度目。 相変わらずの 楽しいお芝居でした。
ここの劇場は 初だったのですが、 駅から近いし 椅子はふかふかだし トイレはきれいだし とても良い劇場でした☆
ネタバレBOX
まず、ジャック役の久保田さんに拍手です☆ ”機械人間” らしい動きが とっても良かったです。 やってる方は 相当疲れるでしょうね。 お疲れ様です。
それから ルートヴィヒ役の CR岡本物語さんも すごくハマってて良かったと思います。
お話自体は 過去、現在の行き来が多すぎて なんか疲れちゃいました。
あとは、 ちょっと おふざけが多かったかな~
でもやっぱり うまいですよね~ また次回を楽しみにしています☆
あるハロウィンの物語
大和メ組
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/10/30 (金)公演終了
満足度★★★★
温もりを感じに。
「ある冬の物語」に次いで二回目の参加。
今回は大好きな劇団ばかりのとんでもないお祭り企画!!
夢のようなひと時でした。良くも悪くも後には何も残らない花火のようなイベント。
花とフィーユ
少年ギ曲団
シアター風姿花伝(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★
小劇場らしさ感じるファンタジーな冒険譚
中央中列。メタボ剣士と女ニンジャの凸凹コンビが繰り広げる冒険。
シンプルで無駄がなく、それでいて演出や衣装、舞台装置に工夫の凝らされた舞台だった。
テンポの良さがあり、そんな中でのギャグが何とも小劇場らしい面白さがあった。
ネタバレBOX
美しい花が咲くという世界樹を見物にトアール王国を目指す二人。しかし王国近くの森で盗賊に襲われ、ツキと名乗る女盗賊と知り合う。何故かツキと二人はゆるい掛け合いとなるのだが、ツキ曰く「花は咲かない」という。これは失われた世界樹の花びらを探す物語らしい。
ファンタジーものは台詞が固有名詞等分かりにくくなりがちだが、聞き取りやすかった。そこでまず、この芝居を観ようという気持ちにさせられる。
衣装は、ファンタジーらしくみんな個性的かつよく特徴を表していた。女性陣は、みんな綺麗に見えた。
舞台は、一面に敷いた布に綱をつけて天井に回し、舞台裏から引っ張って起伏を所々で変えていた。面白い発想だなと思った。布の下から漏れる照明の光も良かった。
脚本は聖剣伝説からヒントを得たのかな? まとまりよく面白かった。本当の悪人はいないようだが、あれで良いのだと思う。
王女のギャグがちょっとわざとらしくなってしまったか。
また、王子が王女を連れ階段を登るシーンと、サンダースが額に刺さった苦無を投げて逃走する瞬間に若干死に間が見えた。
オバケの太陽
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2015/10/23 (金) ~ 2015/10/30 (金)公演終了
満足度★★★★
泣かせるツボを押されてしまった
10/27午後、すみだパークスタジオで上演された劇団桟敷童子公演炭鉱三部作『オバケの太陽』を観てきた。昨夜に続いての舞台鑑賞のハシゴである。しかも、昨夜とは正反対に感動で涙なしでは見終われないというもの。この桟敷童子、というか、実質の作と演出を行っている東憲司はなかなかしたたかである。人がなくツボというものを的確に攻めてくる。舞台から受けるインパクトが強かろうが弱かろうが、何故か泣かされる。まぁ、観劇に感動する正に正攻法というべき舞台作りと言えるだろう。
舞台一面に咲いていたひまわりは実に印象的だし、最後に登場する機関車には、「さすがただでは済まぬ桟敷童子の舞台設営」と感心させられた。
ネタバレBOX
さて、物語は今では炭鉱もほぼ無くなってしまったとある田舎町。舞台では具体的な町名を使っているが、ちょっと失念。その町名を使うことが、舞台にリアル感を持たせている。小さなことかもしれないが、観る側としては物語に入り込みやすくなる点で重要なことなのだ。
その町に住む亀田家で両親を失った梁瀬範一という少年を施設に行くまでの夏の間預かることになり、結果として、町中ではないが亀田家と交流のある呉工務店一家や須崎家などを巻き込んで展開される、範一が口にする「オバケの太陽」の意味探りと、彼が唯一心を許す呉工務店の従業員の1人・松尾元との交流を軸に舞台は展開していく。途中、この松尾元と呉工務店の長男の妻との浮気・疾走・離婚騒動も織り込まれ、範一と元との交流物語だけでは暗くなる舞台進行に躍動感を与えていた。「オバケの太陽」という範一の言葉になぜ多くの登場人物たちが反応し一喜一憂するのか、その衝動の根本原因の提示が若干弱く感じられたのが残念に思えたが、結果としてラストで魅せる範一と元の別れの場面のやり取りは、静かながらも秘めた熱い感情が観客に伝わったようで、客席で涙ぐむ人が多かった。かくいう自分も泣かされましたね。
この舞台で光ったのは、やはり範一役の大手忍、元役の池下重大、そして呉工務店長男の嫁役の椎名りおだろう。客演では、劇団青年座の尾美美詞(亀田家の娘役)の演技がうまかったというか、明るく劇団の雰囲気に馴染んでいた。
知人・もりちえは須崎家夫人役で登場。呉工務店社長や範一を預かる亀田嘉穂の仲間の1人という設定で、やや控えめながら登場シーンでは、なかなかのインパクトを与えていた。
ドラマ・ドクター
ティーファクトリー
吉祥寺シアター(東京都)
2015/10/23 (金) ~ 2015/11/02 (月)公演終了
満足度★★★★
役者の演技に身を委ねて分かる奥深さ
10/26夜、吉祥寺シアターで上演されたティーファクトリー公演『ドラマ・ドクター』を観てきた。
この舞台を観に行くことにしたきっかけは、出演者の中に女優・岡田あがさがいたから。数年前、東京国際映画祭に参加した映画『死神ターニャ』を観たことがあった。この映画にデビュー以来応援している役者が出演していた関係からだったのだが、映画の中で妙に存在感のある女優がいた。それが岡田あがさだった。彼女の存在を知った自分は、映画ではなく舞台での彼女の演技を観たくなり、今回ようやくその思いが実現したというわけだ。
出かける前にネットでこの舞台の口コミ評を観たのだが、どうも不評のようであったが、実際に観終わった直後にTwitterに投稿した自分の一口感想は、「舞台は、ネットの口コミ批評ではあまり評判がよくなかったけれど、それはこの舞台に感動をもとめたからだろう。そうではなく、ここで観客は感心と関心を求められていたように思う」と書いた。ちょっと難しい感想なのだが、実際に観ていただくとこの意味する所が何となくではあるがわかっていただけると思う。
ネタバレBOX
さて、物語は次のようなもの。
人気劇作家のヘンリーとライバルのトニーは、プロデューサーであるヘルマン・プレミンジャーから「どこにもない物語」の共同執筆を依頼される。二人は書き始めるのだが、書くことの出発点の設定から持ち味の異なることからなかなか上手く書き進められず、結局書き手が書くことに困ったときに手助けしてくれるドラマ・ドクターも元に行くことになる。ドラマ・ドクターは、書き手に書くヒントを与えたり、時には代筆も請け負うことがあるらしく、二人は過去に何度か彼の診察を受けたらしい。実際に行ってみると、そこにはヘンリーの作った劇を観たことがあるというアスラムという男とがおり、更には二人の知人である女性作家サラも診察に来ていた。結局、ヘンリーとトニーはサラも加えた三人で共同執筆することにし、「どこにもない物語」を書くヒントがありそうな洞窟の奥へと姿を消していく……というのが、実はドラマ・ドクター自身の書いていた物語だったのだが、書き終えたつもりのドクターの前に、三人がドクターの意志に反して物語の中で勝手に動き回る事態に遭遇し、混沌と困惑の中で舞台は幕を下ろす。
舞台上で起きていることは、時には現実、時には小説の中の出来事で、人が死んでもすぐに生き返るという具合だ。
観客は、現実と小説の中の世界を行き来知る役者の演技が創りだすゆらぎの中に身を任せて行けば、なかなか楽しめる。ドクター、ヘンリー、トニーの三人では淡白というか平凡に終わってしまいそうな中に、アスラムとサラを登場させることで劇に内容にメリハリがハッキリ付いた。その意味では、特にアスラムの存在は大きい。
岡田あがさ、予想していたよりも陽的な演技で新鮮だった。
ちなみに、やはりドクター役の河原雅彦の演技が、舞台全体を支配していた。
時には笑いの怒る場面はあるが、感動で涙するというシーンは皆無。
観客は、物語を書くという過程がどんなことなのかに関心を持ち、それ的確に表現していく役者の演技と物語の持つ力の大きさに感心する。それが出来れば、大いに楽しめる舞台であろう。
Le Lien Perpetuel~ル・リヤン・ペルペチュエル~
劇団SANsukai
萬劇場(東京都)
2015/10/21 (水) ~ 2015/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★
2時間
2時間テンションを保っていてよかったです。
もう少し演技がいいとよかったです。
オバケの太陽
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2015/10/23 (金) ~ 2015/10/30 (金)公演終了
無題1638(15-327)
19:00の回(晴)
18:30着、受付(3回券)、指定席(上段下手寄り)。横の壁にまでひまわりがいっぱい。
舞台上には「炭労の斗いを地域の共斗で勝たせよ」などがかかれた(黒地に白文字)5つの板、セミの声、ドリフの歌(?)。
19:00(15名遅れのお知らせ)、19:02前説、開演~20:46終演、バックステージツアー。
「泳ぐ機関車(2012/12)」からなのでこの企画はとてもありがたいです。
ネタバレBOX
内容ですが、全体的にやや平坦な(登りきれない)印象を受けました。
「元」と重なる「範一」と姉、「紫」と「家族」、「幼馴染み」。煤けた建物と黄色い花。繰り返しながれる「Holidays(日本語カバー版)」..オリジナルは72年のヒット曲。もちろん役者さんは言うことなし、美術もひとめで時代が伝わってくる出来栄えです。
避けられない(わかっていながら何もできない)苦しみ、一方的な思いやりとの交差、コミカルなシーン、これらが並行、収斂することがないようにみえたので散漫な感じを受けたのでしょうか。
どうして「オバケの太陽」を忘れてしまったのか、なぜ少年は何度もつぶやくのでしょう、「元」と「範一」は同じ道をたどってきた2本のレールではないのだろうか。
底ん処をよろしく
東京ストーリーテラー
高田馬場ラビネスト(東京都)
2015/10/19 (月) ~ 2015/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★
やはりこうでなくちゃ
TSTはこういう作風が一番合っていると思う。心がほっとするような物語で、見終わってよかったなと思え、心が満たされたような感じで帰路についた。
花とフィーユ
少年ギ曲団
シアター風姿花伝(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★
冒険譚
少し奥行がありました。
ネタバレBOX
男女の冒険者コンビが、20年に一度咲くという世界樹の散らばった花びらを集め咲かせる話。
花びらの一つは若い女性になっていて、花を咲かせるためにその女性は人間としての命を捧げました。
先日同じシアター風姿花伝で観た風凛華斬『Obtain~over the horizon~』と同様に、若い劇団員を中心とした単なる冒険活劇のようなものかと思っていましたが、先日の劇団と比べ役者に少しだけ一皮むけた感があり、ストーリーも自己犠牲の精神に加え、エネルギー問題を問うようなところがあり、奥行がありました。
ミュージカル『パッション』
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2015/10/16 (金) ~ 2015/11/08 (日)公演終了
満足度★★★
ちょっと難解だけど、レベル高し
ソンドハイムのミュージカルは、元々万人受けするタイプではありませんが、この作品は、特に、玄人受けする演目かもしれないと思いました。
井上さんの演技には、「アンナカレーニナ」を彷彿とさせるものがありました。
和音さんの背中の美しさと、シルビアさんの怪演並の名演ぶりにドキドキすること多々あり。
演技と歌唱力の確かなキャスト揃いで、舞台のクオリティは高いのですが、好みは分かれる演目だと思うし、明るいミュージカル好きな方には、奨めにくい作品かもしれません。
両者にお気の毒な気がしたのは、後方席で車椅子で観劇されていた障害者の方と、一般客の方々。
難解な恋愛哲学のような作品で、ソンドハイムの、人物の心情を音符に還元したような、不協和音的なメロディの度に、障害者の方々の不安を煽るのか、静かな劇場に、度々、雄叫びが響く結果となり、作品に見合わない空気が生まれてしまったのは残念でした。
心から、ハッピーになれるような、スイングできるようなミュージカル作品なら、両者が楽しめたのでしょうに…。
ネタバレBOX
冒頭、いきなり、濃密なベットシーンから始まるので、ドキドキものでした。
後方席で構えていた双眼鏡を慌てて下ろすほどでした。(笑い)
和音さんの背中の美しさにはクラクラしました。
シルビアさんのフォスカが、まさにストーカーのようで、観ていてかなり怖いです。
でも、夫と子供がありながら、都合の良い時にだけ、自分との情事を欲する美しいクララへの欲情ろり、病弱にも関わらず、身を呈して付き纏う、フォスカの濃い愛情にやがて、靡いて行くジョルジュの心情は、やはり、女の私には、ちょっと共感し辛い部分がありました。
出演者の力演を堪能したい方にはおススメですが、あまり、演劇に精通していない観客には、少し、苦痛かもしれないステージでした。
彼女にとって無敵の世界
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★
笑!
フライヤーのタイトルからして分かりにくい作品だが、実際の舞台は・・・やっぱり分かりにくい!(笑)。もともとこの劇団は独特な世界観を表現するのは得意技。しかも今回はファンタジー、なんでもアリだ。前説から芝居は始まっており、スームレスに本編へ。常に細かい笑いが散りばめられていて、理屈抜きで最後まで笑いっぱなしの120分。
私的恋愛ベスト〜全ての女に懺悔しな!〜
元東京バンビ
スタジオ空洞(東京都)
2015/10/24 (土) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★
イイですね~
手を伸ばせば役者さんに触れるくらい、舞台が近い近い。臨場感あります。ライトウエイトながらなかなかに凝った恋愛劇、シュールで自虐的でイイですね~。大いに笑わせてもらいました。
心中天網島
遊戯空間
上野ストアハウス(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/11/03 (火)公演終了
満足度★★★★★
民
近松門左衛門の心中物の中でも最高傑作の誉れ高い今作であるが、義理(人が人として守るべき人倫の道)と人情(例えば恋、己の理性で律すること能ぬ本能の齎す欲求)の機微を、これほどドラマチックにまた悲劇的に同時に美的に描いた作品は古今東西実に稀である。(追記は文化的なレベルで述べる。前段はここまで。追記2015.11.1午前3時)
ネタバレBOX
だからこそ、日本のシェイクスピアとも評される、近松作品の心中物の中でも最高傑作との評価が為されるのであろう。まあ、一般受けする評価などはハッキリ言ってどうでも良い。問題は、観た自分が評価できるか否かに掛かっているからだ。結論から言えば、自分は高い評価を下す。現代日本との直接的関連性を演出家が直接的に意識しているかと問われれば、その点では若干弱いと思う。だが、今作を今、掛けることを選び取った嗅覚ともいえる感覚は確かなものだと思うのである。
愚衆ならいざ知らず、現代日本を単刀直入に見る目を持つほどの者ならば、日本がアメリカの植民地であることくらいは自明であろう。そして植民地として収奪され、誇りを奪われ、奴隷ですら持ちうる反抗の自由・権利を奪われて唯々諾々と従っている体たらくを情けないと思わぬ者は居まい。
近松の生きた時代、国と言えば各藩の領内、そして各藩を統べるのは、徳川幕府であった。して、徳川幕府は何をやったか? 儒教のうち朱子学を幕府御用の哲学として採用し、以て人倫を支配、各藩が持つ軍事力に対する抑えとしては武家諸法度・参勤交代を加えた。天皇家を中枢とする公家に対しては禁中並びに公家諸法度を用いて縛り付けたのである。無論、江戸時代の人口構成の90%以上を占めた庶民からは、総ての有効な武器を取り上げて反抗の為の道具を奪い、豊臣 秀吉の検知以降、人民の所在を明らかにすることに努めたのみならず、538年に伝来し国教ともなっていた仏教のイデオロギー的側面を骨抜きにし、ここでも御用宗教即ち御用哲学と為して、檀家制度の元、人別帳の徹底化・人民支配に利用したのである。百姓が、人口の90%以上を占めた時代の実態は、水呑み百姓が大多数であり、長子相続という形式を守ってさえ食うや食わずの生活であったから、その生活の悲惨は、容易に推察できる。最も端的にそれが分かるのは人口の増加率によってである。1603年から1868年迄の増加率を観てみれば基本的なことは足りる。私見によれば今に至る日本人の畜生根性は、太閤検地によって人別帳を明らかにされ、刀狩によって反抗の為の手段を奪われた民衆が更に徹底的にイデオロギー的にも宗教的にも為政者によって収奪された江戸時代の簒奪によって完成されたと思っている。即ち人民は、数百年、馴致の歴史を持っているということだ。
当時の世界の識字率の平均と比べて圧倒的に高い日本のそれは、この人口増加率の低さに矛盾したデータとして現れるのだが、そのことの意味する所が、今作の眼目でもある。
江戸時代の日本語と三味線(中竿)、横笛、琵琶、太鼓、拍子木などと南京玉すだれのような形態のもっと重い木で作られた自家製の楽器などが用いられ、日本音階で奏でられるメロディー独特の声調とメロディアスな楽器としてのみならず、リズム楽器として用いられているのではないか(西洋の笛では殆ど考えられぬ)と感じられるような横笛の、空気を切り裂くような用い方が、時空を断ち切り、並行的な楽器のコラボレーションというより、輪唱のようなコラボレーションになっては、観客のイメージの中でいつか輪廻転生をも感じさせる。それが、今作にも表れる仏教観とも繋がり音楽と文学と哲学が微妙に折り重なりながら共鳴し合う。
一方、ここには、道行以降異様に美しい日本語表現と共に、所謂封建制度下での制度的束縛より、人倫に悖るか否かの、即ち人としての倫理(義理)と恋(人情)に引き裂かれ苦悶する2つの実存の、深く切り裂かれた傷口から見える底知れぬ奈落へ、支えもなくずり落ちてゆく苦悩と共に、蟷螂の斧のように振り上げた反抗の意図もほの見えるようではないか。殊に五障の障りがあると山に入ることを禁じられる立場であった女性の小春が簡単に死ねないのはとどのつまり詰め腹を切らされるのが力の弱い女性であることの反証のようにも思えてならない。この辺りにも演劇の科白を単に意味を伝えるだけの記号ではないと捉えている演出家、篠本 賢一の姿勢が込められていると観た。
無論、自分のように様々な理屈を持ち込む必要などなく、素直に様々な要素の輻輳する演劇のダイナミズムを楽しんでもらえれば、それで本質は掴めるように作られた舞台である。
ダレノカミサマ
演劇企画ユニット劇団山本屋
サンモールスタジオ(東京都)
2015/09/09 (水) ~ 2015/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
よかった
まず衣装がオシャレでセンスいい。プロジェクションマッピングも最高にカッコいい。世界観もかなり中二病っぽくてツボ。ボリュームたっぷりのストーリーは伝わってくることがいっぱいある。ストーリーの展開の仕方もハイセンス。でも錯綜し過ぎてわかりづらい箇所あり。
家を出た
ことのはbox
d-倉庫(東京都)
2015/10/21 (水) ~ 2015/10/26 (月)公演終了
満足度★★★
なるほど
緻密さに欠けるような。不完全燃焼
BLT 〜少女と金魚鉢〜
劇団東京都鈴木区
遊空間がざびぃ(東京都)
2015/10/29 (木) ~ 2015/11/03 (火)公演終了
満足度★★★
2本立て
BLを題材にした学校編と声優編の2本立てのお話。
連作といえば連作なのだけど、ほぼ独立したお話になっていました。
前向きなお話で観劇後感が良かったです。
コメディとしては声優編の方が好き。テンポが良くて笑えました。
とあるシーン、女性のお客さんたちの絶叫にちかい歓声(悲鳴?)が凄かった(^^;)
BL界隈に明るくなくても十分楽しめます。BL好きな方にはより楽しめるのだと思います。
鈴木区さんは伏線とかリンクを良く入れてくるので、この2編の間に何かあるのかな?と身構えていたのですが、
今作はそういうのは控え目でした(見落としているだけかも)。
と油断していたら・・・・・・こういう演出は良いですね。
初日から大盛況、受付の行列が凄いことになっていて開演は15分押しでした。
舞台ギリギリまで客席を広めにとっているので手前の演技が若干見えづらい時があります。
早めにいって見やすい席を狙うのが良いと思います。
あ、あと今回は空調ばっちりでした!
地を渡る舟 ―1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち―
てがみ座
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2015/10/23 (金) ~ 2015/11/01 (日)公演終了
teamworkは健在ですが
人物造形にふくらみが出て人間ドラマとしての幅が広がり戯曲がさらに深みを増しています。舞台そのものも極めて水準の高い作品であり、1945年から現在に滑らかに移行してゆく最後の場面はすばらしく、役者さん、裏方さんが舞台裏では大変ご苦労されていたと思います。
ただ、可動性の高い舞台装置とマンパワーを駆使した新演出は一つの試みとしては面白かったのですが試行錯誤的で(決して悪いことではないのですが)全体的にどうしてもバタバタした感じが目立ってしまい、初演の時に感じられた躍動感と鮮明なイメージを呼び起こす舞台の冴えがかなり影を潜めてしまったような印象をぬぐえませんでした。
また、制作の姿勢に疑問あり。
上演時間は約2時間半(10分の休憩あり)。
ネタバレBOX
新演出は、群像会話劇に、強いていうなら身体性の演劇的な要素も取り入れてみたいという試みのようで意欲はわかるのですが、発展途上にありぎごちなさとバタつき感が出すぎていたように思います。
また、少しためらいがあるのですが、開演時間があまり守られていないようなので、一言書かせていただきます。
観劇日は、開演時刻から約10分も待たされ、観劇への緊張感が下がり興がそがれた状態でようやく開演。事前に遅れるお詫びや説明もなし。また、その日はアフタートーク開催日でアフタートーク開始時に主宰の方がようやくとってつけたようなおざなりのお詫びのあいさつをされていましたが、あれでは時機が遅すぎる上、残られたお客さんにだけお詫びをするというお客さんへの公平性を考えると大変礼を失していたと思います。さらに、閉館時間がせまっていたことでトーク内容も急ぎ足で参加者が少し感想を述べるという中身が極めて薄いものでした。にもかかわらず、公演の宣伝については抜け目なく行うことは決して忘れない。
必ず開演時間を守れといっているのではなく、どうしてもある程度遅れるのならば事前にきちっと遅延の説明を行うのが、時間を都合し芝居を観に来たお客さんへの筋であり礼儀だと思います。また、休憩が入る長めの上演時間、終演後にアフタートークがあることがわかっていながら、開演時間を大幅に遅らせたことも疑問です。 後でツイッターあたりでお詫びのことばをつぶやきお茶をにごしておけばいいだろうなどという安易な対処はもってのほかです。
お客さんは時間を割き決して安くはない代金を払い劇場に足を運んでいる、お客さんあっての商売であるということ、サービスするところはサービスしきちんとすべきところはきちんとする、そのあたりのプロ意識というものをもっとしっかりともち一期一会の姿勢で臨んでいただきたいと思います。
FLY AGAIN
関西大学劇団万絵巻
OVAL THEATER & GALLERY (旧・ロクソドンタブラック)(大阪府)
2015/10/17 (土) ~ 2015/10/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
同じ名を持つ主人公二人が格好良く、素直に楽しめた♪
総統に登り詰めようとした特務部隊隊長・真、
真に憧れ軍隊に入隊した進、
進を支える幼馴染みのリオナ、
そして総統、特務部隊と第13部隊の面々、
など、個性的な登場人物。
スピーディな戦闘シーン。
テンポ良く、展開される物語。
どれも素直に良かったと思います♪
ネタバレBOX
特務部隊隊長・真は、総統に迫る地位まで登り詰めるため、信条に反する総統の行為に目を瞑るが、部下・上坊は(自分の故郷が犠牲になることに)反発し、総統の作戦を制止しようとするが、巻き込まれ戦死する。
自らの不作為で大事な仲間・上坊を失い、失意した真は、用無しとして、特務部隊から吹き溜め第13部隊に配属され、隠遁生活を送る。
空に希望を抱く青年・進は、真に憧れ、軍隊に入隊。
バカが付くほど真っ直ぐな進は、整備士で幼馴染みのリオナの助力を得ながら、行方知れずの真が13部隊に居ることを突き止め、13部隊に入隊。
腑抜けとなっていた真に熱い想いをぶつける。
進の真っ直ぐな眼差しに、自分がなすべき事を悟った真は活動を再開し、進に自分の技術の全てを伝える。
戦果が認められ、真は再び特務部隊隊長に、そして進は晴れて13部隊隊長に就任するが…。
空軍基地が炎上し、敵襲が…。
今回の炎上も、真が上坊を失うきっかけとなった整備不良も、自分の手引きだと、幼馴染みのリオナから告白される。
リオナは実は敵国国民で、幼い頃、総統の無謀な作戦で家族を全て失い、進のいる施設に預けられ、成長したが、敵国のスパイとして活動していたのだった。
その時、総統がリオナを銃で打ち抜き、進にとどめをさすように指令する。
戦況が好転しない事を憂いた総統は、原子爆弾の使用を決意するが、真は断固反対し、軍を離反し、敵国に情報リークに向かう。
それを阻止せんと派遣された進は、真の想いを知り、真を見逃す。
一方、原子爆弾の使用を止めさせようと画策する真の部下・佐々木は議会を動かし、原子爆弾の使用差し止めに成功する。
やがて総統は失脚し、真と進の活動が実り、敵国と本国双方で平和勢力が台頭。
数年の後、平和の使者として、真と進がまみえる事に…。