最新の観てきた!クチコミ一覧

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池袋モンパルナス

池袋モンパルナス

劇団銅鑼

俳優座劇場(東京都)

2016/03/02 (水) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★

熱演ではあるが訴えかけが弱い気が
3日午後、六本木俳優座劇場上演された劇団銅鑼『池袋モンパルナス』の公演を観てきた。これは、題材に興味を持ったからである。
というもの、現在自分は千葉県袖ケ浦市に住んでいるが、以前は東京都北区に住んでおり、自宅周辺あった作家たちの集まる地域「田端文士村」と画家たちがあつまる地域「池袋モンパルナス」に興味を持っていたのだ。小熊秀雄が命名した池袋モンパルナスに関しては、CATVが俳優・寺田農(彼の父・洋画家の寺田政明はモンパルナスの代表的な存在だった)をMCとして特集番組を組んだこともある。
そこを舞台にした小説を書いたのが宇佐美承で、劇団銅鑼はそれを基に小関直人が戯曲化して1997年に初演。今回は脚本を改定し、演出に野﨑美子を迎えての再演ということだった。

舞台は、モンパルナスの画家たちが求めるシュルレアリズムの運動が弾圧されていく太平洋戦争時代の画家たちの行動や思想的葛藤を2時間余にまとめ上げたもの。

ただ、扱った内容が広く浅くという印象で、結局全体で何を言いたかったのか焦点がボケてしまったような舞台だった。これは、登場人物個々が熱演すればするほど焦点が曖昧になってしまうという問題を内在したままの演出に起因しているのだろう。いや、演出だけでなく、脚本的にももっと的を絞るべきではなかったろうか。

場面展開や女優陣(特に、土井真波)の熱演には感心させられたが、男優陣の熱演は、熱の入れ方がちょっと違うのではないかと思わせられる場面が度々あったのが残念。
音楽的には生演奏の部分や土井の歌などが舞台を和ませたり緊張感を盛り上げたり。
昨年別の劇団でうあはり画家を取り上げた作品を観た時に感じたのだが、画家の生涯や活動を舞台で取り上げる時の方法論を、もっとしっかり確立しなくてはならないだろうと思うのであった。

カサブタかきむしれっ!

カサブタかきむしれっ!

演劇ユニット3LDK

ザ・ポケット(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

Amazing!
台本やDVDまで買ってあり、生で観るのも2度目なのに涙が自然と流れて、心底笑える、まさに心が震える作品。
素晴らしい舞台セット、演出、暗転無しのワンシチュエーション、東北弁も交えてのセリフ回し。演者の皆さんの熱量。涙が出てくるシーンの直後、「ドッ」と笑いが来る....どれをとっても非の打ち所がない。
間違いなく、たくさんの人に観てほしいと思える、そして一人の演劇人として指標になる作品でした。
※そういうこともあって、劇場出るときに「ありがとうございました」って連発してましたw
本当に観られてよかったです!

欲望線

欲望線

サファリ・P

アトリエ劇研(京都府)

2016/03/04 (金) ~ 2016/03/07 (月)公演終了

満足度★★★★

サファリ・P 山口茜「 欲望線」を観劇
男性4人の演者でテネシー・ウィリアムズ作「欲望という名の電車」が上演できなかったのは残念ですが、本作をインスパイアされた作品も、男性ならではの身体を大きく使った迫力ある演技と複雑な人間関係のストーリーで、原作同様に面白かったです。
4人夫々が複数の役を演じておられて、劇中で男性役から女性役に何度も変わる方もいて、前半はストーリー展開が良く分かっていないので、話の切り替わりについていくのが少し大変でした。

寝られます―魔女ものがたり・その2―

寝られます―魔女ものがたり・その2―

浪花グランドロマン

ウイングフィールド(大阪府)

2016/02/26 (金) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

不可思議な世界を堪能できました
過去に起きた出来事により左足を失った男は、ずっと自責の念にかられながら旅を続け、心静かに休める場所を探していた。
女主人(魔女)のいう「寝られます」は、男が人生の様々な苦難を超えてたどり着いた終着点、不自由から解放される場所、それは死を超えた世界にしか存在しないのだろうか…などと色々と深く考えさせられる作品で、面白かったです。
お二人の会話劇が素晴らしくて、別役ワールドに引き込まれました。

いつかの膿

いつかの膿

VAICE★

駅前劇場(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

まさに膿
日本の劇作ではあまり見かけないパターンの展開で少々違和感を覚えるものの、そこは経験豊かな役者陣の芝居で充分に楽しめた。小林さんのキレ方、本間さんのおどおどした時の表情、高橋さんの愁いをおびた表情、白川さんの貫禄ぶり、などが印象的。

負け犬ポワロの事件簿

負け犬ポワロの事件簿

東京AZARASHI団

サンモールスタジオ(東京都)

2016/03/04 (金) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

コメディ最高!
わかりやすくて、楽しくて、とても面白かったです。

わが闘争

わが闘争

ハツビロコウ

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

ハシビロコウ?
誤植かと思いましたがそうではなかったようで。殺人現場に建てられたブルーシートのテントの中で、酒箱を椅子に取り調べが始まる。最近の刑事ドラマでは絶対主人公にならないようなネチネチといやらしく、物言いのひどい定年前の刑事と、すぐにかっとなる若くて尊大な刑事。万が一にもこんな奴らに取り調べなんてされたくないものだ。しかし、聞くに耐えないような取り調べが続く中、どんどん物語に引き込まれて行く。そしてたどりつく事実・・・。と、お話はおもしろかったですが、誰の闘争なのか分からなかったです。みなさん、風邪などひきませんよう。

見よ!振り向けばMISOJI

見よ!振り向けばMISOJI

かさいみよ

吉祥寺スターパインズカフェ(東京都)

2016/03/04 (金) ~ 2016/03/04 (金)公演終了

満足度★★★★

無題1765(16-055)
19:30の回(晴)。

19:00会場着、受付、ドリンク注文。

ここは「arriving 2015(20155/8)」以来で、この時も「大石組」としてかさいさんと大石さんは出演していました。

「clubC」を観たのは「落日~マクベス、あるいはマクベス夫人と三人の魔女~(2013/1)」が初めてで「NEXTREAM21 in RIKKOUKAI 2013(2013/4@六行会」「立川いったい音楽まつり(2013/5@屋外)」、そして「魔女裁判(2013/9)」で解散してしまいました(その後他の作品に出演しているときは観に行っていました)。

そんな「clubC」の元メンバー、かさいさんのバースデイ・イベント。前日までどうしようか考え(イベント的なものがかなり苦手なので)、一度スタジオまで行ったこともあるしと、結局、前日の日付が変わる直前にメールで予約。

ダイジェスト版30年史、コント、歌、演劇(短編)という構成。saya.さん、はちみつシアター(「ロミミ」2014/6@BON BON)は観たことがあります。

「clubC」のダンスはダーク(幻想的)な要素が強いもの。かさいさん、大石さん、堂本さんの「きつねつきね(2014/8)」もそうでした。今晩のように、実に楽しそうに微笑みながら踊っている姿は初めて観ました。

「はちみつシアター」は衣装も、キャラクターもとにかく笑ってしまいました。

いつかの膿

いつかの膿

VAICE★

駅前劇場(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

思い出のソファー!
小林さやかさんのイメージとギャップのある台詞には正直驚きましたが、
”まじめな喜劇”として面白かったです。
役者陣の演技はとても良いのですが、この問題解決方法がいろいろとしかも簡単にあるということが観劇中に頭に浮かんでしまい、話合う問題としてはいささか単純すぎるように思いました。
また、大家は息子の死を見据えた契約をしたのかというのも疑問です。

ネタバレBOX

月1万円破格の家賃で豪邸の一室を借りていた住人たちが、豪邸取り壊しの為引っ越しすることになる。しかし、契約時に引っ越しの際には居間にあるソファーを住人の誰かが引き取らなければならない。拒否の場合は個々24万円の違約金を支払うという約束が交わされていた。ソファー引き取りをめぐり住人たちの話し合いが始まるが、そこのは今まで溜まっていた鬱憤が膿のようにどろどろと流れ出す!そして大家のソファーに対する思惑が明らかになっていく。
赤い竜と土の旅人

赤い竜と土の旅人

舞台芸術集団 地下空港

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

若者にも観て欲しい
実にシンプルな舞台背景。椅子しかない。衣装も茶系。客席とステージが近い。
劇が始まると何もない背景が自分の頭の中で作られていくから不思議。役者さんが演技で背景を作っていくのです。そして客席とステージは近いためその場にいる臨場感。
テーマは原発とか情報でみていたので、お硬い感じなのかな?と思っていましたが、青年(最初は少年ぽくて本当に可愛い)の素直さ可愛さ、竜はなんだろう?とストーリーの中に引き込まれていきます。青年を演じる村田さんの歌はとても素敵でまだ心の中、頭の中で流れています。
人間のもつ汚い部分、欲望や自分さえよければという身勝手な所、自分の都合のよいように解釈するところが描かれ、でもそれと闘うのも人間しかいないということでしょうか。
この劇に示唆される問題に目を背けないことは大切なことですが、他感な時期の若者の中には、学校教材的なリアリティあるドキュメンタリーは重苦しいく怖がってしまう子たちもいて(それではいけないのですが)、こういう劇なら抵抗なく引き込まれ、自分で気付き考えることができるかと。押し付けでなく自分で考えることができれば次の行動に繋がるかと。
若い方にも観て欲しい作品です。

赤い竜と土の旅人

赤い竜と土の旅人

舞台芸術集団 地下空港

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

「原発こわい」と口で言ってみよ。
印象・・・真剣さ、誠実さ、若さ。

ネタバレBOX

最近「原発」の話題を避ける風潮があり、その結果被ばく地域の住民保護や移住の権利を云々したり、より正確な実態を究明しよう、といった話に繋がるようなドキュメントやドラマも、敬遠されている。
 そうした心情が多くの日本人を支配している理由を、「言わずもがな」と一蹴せず、考えて言語化したほうが良いと思うのは、禁忌の領域が拡大させることは自分の首を絞めるに等しい愚かなことだと思うゆえだ。
 で、端的に言えば被ばくは健康の逆だから、触れたくない。だが、本当に健康に注意するなら、放射能被害の実態を可能な限り知ろうとするはずだ。実際には人々は「健康であろうとする」選択肢を奪われている、ないしは放棄している訳である。
 そこには、曖昧なら触れるまじ、という基準はありそうだ。例えば、放射能は測りづらい、という事情。しかしそれ以上に、放射能に言及すべからず、という「空気」から、正確な情報を得る可能性が低いことを悟っており、結果「判らないのなら触れないほうが良い」、という判断なのだと思う。つまり、「放射能問題に触れるまじ」との「圧力」に、負けているという訳なのだ。
 だが、そういう事では身も蓋もないから、例えば反原発派が「必要以上に騒ぎ立てている」といった説を採用し、後ろめたさを回避している、という事もあるだろう。 ただ、国内に間違った意見を持つ者が勢力を得ているなら、本気で彼らを諭し、原発推進を唱えるべきだ。そうしないのは「反原発派が必要以上に力を持っているから」「自分が悪者にされる」と、ここでも言い訳に使われるが、実際にはそれを本気で信じていないからだろうと思う。
 ・・・こうした奇天烈なあれこれは、結局のところ「被害の実態を明らかにする」という方針を実現できていない、という既成事実から、「風桶」式に導かれている現象なんだろう。

 自民党改憲案がもし通ればこれは歴史的な「えらいこと」だが、これが如何にえらい事かを見るより、野党共闘を人々が応援するのかどうかと、風見鶏のように「空気」を読んでいる。でもって当然ながらマスコミはこれを白々しい視線で報じるので、「空気」としては自民党支持が多数派と見える(日本ではテレビ報道を信じる人の割合が8割と言われる。諸外国では50%以下)。 大樹になびく心情が巷を漂うさまが見えるようだ。 

 遠大な前置きが果たして相応しいかどうか・・・だいぶ引かれそうだが、今回の地下空港の舞台で、久々に「原発」の恐怖に触れたと感じた。それだけ、如何に普段この話題が遠くなっているか、という証左なのだろう。
 イギリスはウェールズの西端の島には原発があり、2013年、経年劣化した原発を新調する取引相手に日立製作所の名が挙がった。 この地を作品製作のために訪れ(助成により)、今回の作品が出来たという。

 岬に行けば竜(赤)の声が聞こえるという片足の青年ロイの物語は、「旅人」がその村に持ち込んだ「窯」、その窯に棲む竜(黒)の存在、青年が恋をする旅人の娘、青年のおばさん(母は昔死んだ)、窯の力がもたらす「経済効果」に目をつけた事業家、その妻、息子、村長、役人その他を巻き込み、紡がれて行く。 劇団桟敷童子の拠点すみだパークスタジオが、ややなだらかに組まれた客席以外はがらんどうに椅子だけがあり、役者は開場時刻から場内で発声練習しながら案内などをやっているが、いざ劇が始まると無駄の無い統一した挙動に入る。椅子を使った場面転換、本域の歌をはさみながら、最初牧歌的にみえた「物語」が徐々に暗雲が垂れ込め、最終的には悪夢の様相を呈するに伴い、語られている「窯」が、原子炉の隠喩である事が明白になる。
 このお話が含んでいる警鐘は、日本では既に起きてしまった原発事故についての言及を促すが、恐らく観客は受け止めがたい思いで劇場を後にしたのではないか。俳優の演技に拍手を送りつつも。
 もし、この歪な状況を変え得るとすれば、やはり「語ること」「言葉を見つけること」で、息をするしかないのだと思う。
 日本は今危うい所にいる。実際の危機より、その危機への対し方について。

 「敢えて」語ってみせた地下空港の今作には、その意味で驚き、「語られない」奇妙さが、改めて思い出された。 そして「語らない」のは自分も同罪である。
カステラと伊達巻

カステラと伊達巻

タイマン

ライトサイドカフェ(東京都杉並区高円寺南2-20-19-2F)(東京都)

2016/02/25 (木) ~ 2016/02/29 (月)公演終了

演劇って
生きているんだと感じる。まずは、作る側の変化で作風も変化する。今回は作演出する主宰の齋藤陽介さんの私生活ご自身の結婚と、妹さんのご結婚と懐妊。それが色濃く作品に反映されて、ある種ノスタルジックな作品が立ち上がっていた。そう、ちょっぴりセピア色に染まっていた。また、演劇作品は、会場で上演されながら変化し成長していく。それも、演劇が生きていると感じさせること。初日を観たが、どんどん成長していく作品は、ごっこ遊びをする幼い子供から、親を看取り新たな家族を迎える大人へと成長する様に通じるのだろう。次回作には、いつ出会えるだろうか。2年は待てないですよ庸介さん。半年で観たいくらいだけど、せめて1年で再会させてください。

月いちリーディング 16年3月

月いちリーディング 16年3月

日本劇作家協会

座・高円寺稽古場(B3F)(東京都)

2016/03/05 (土) ~ 2016/03/05 (土)公演終了

満足度★★★★★

素敵な
劇団「TOKYOハンバーグ」主宰の大西弘記さんの脚本。視点、テーマが興味深いもので、作品として魅力的だった。リーディングであり、視覚的な情報が無い中でも情景が思い浮かぶのは、作品の力であり、言葉の力である。そこに、たしかな表現力を持った俳優陣が、無駄な力みなく生きていて、確かに存在していた。だから、登場人物がみんな魅力的だった。俳優って凄いということを再認識した。ブラッシュアップのためのディスカッションもさまざまな視点で作品を振り返ることができて封意義な時間だった。

わが闘争

わが闘争

ハツビロコウ

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

鐘下辰男の台詞劇。
のっけから喧嘩腰で始まる会話は、「事件」後、雨音響く村のとある場所で、喪服の事件関係者と刑事二人によるもの。男ばかりの中に女の喪服が一人混じり、奥にはこの場面には関わらないスウェット姿の青年、後に判る「犯人」に当たる青年がぼうっと立っている。 「喧嘩」は刑事のほうが嗾(けしか)けているが、この態度が「正解」である事が一人ずつ露見して行くというドラマの運びだ。 にしても、喧嘩言葉のドスの利き具合が半端ない。この場面にあるどす黒い快感は、鋭利な言葉の応酬が互いに拮抗している所から来る。
 「津山事件」にどの程度依拠しているかは不明。オリジナルとして観た。かつて村人が信じる宗教(神道系?)を司る辰巳家が、新興勢力に敗退した三、四代前の過去を、事件の背景に据えている。新興勢力とは企業であり、雇用創出する土建業が利権と結びついて「力」を持って行くといった光景は、きっと日本の近代史上津々浦々に数多見られた事だろう。 この村でも「神」は周縁に追いやられ、ある時点で辛うじて保っていた村における象徴的権威まで奪われた。 この因縁にケリを付ける事を使命とする「信者」(青年)が、殺しの加害者となり、殺された女はたまたま青年の描く「ストーリー」上に位置づけられ、被害女性となった。女の日頃の「素行」もあってか、犯人を一方的な悪だとは他の者たちも考えていないらしい。ここに集った被害女性の夫、実兄、加害青年の姉(被害者兄の妻)、三人の「関わり」が次第に浮かび上がる。展開ごとに、事実はその前の認識を覆し、納得できる「全容」に結実して行く、文字通りのサスペンスだ。
 この戯曲の強烈な特徴は「過去の因縁」を、現在に影響を及ぼし得る(及ぼす資格のある)要因として刻みつけようとする意志である。戯曲は刑事に、逃走中の犯人が「死」に追いやられる可能性を憂える台詞を言わせている。青年が殺してしまった女性を、でなく、彼をこの物語の悲しいヒーローと見ているのだ。
 辰巳家の末裔である姉弟は親を早くに亡くし、母代りの姉は弟に辰巳家の末裔としての誇りを説き、弟は純真な「信者」となる。一方姉は敵方の家の長男に嫁いだ。相手は容姿端麗な姉に十代の頃から惚れていたが、終盤の姉の台詞は結婚承諾が両家の因縁への自分なりの決意である事を仄めかす。が、彼を本当に好きになった、とも言う。彼女の異性に対する本心は被害女性の夫にあり、相思相愛であったらしい事等も仄めかされ、関係は入り組んでいるが、いかにも小さな村の狭い人間関係を示している。物語のテーマの核心はやはり、犯人と宗教との関係、宗教側が近代に領土侵犯された歴史にあると思われる(これを単なる<味付け>に用いるには重すぎ、晦渋だ)。 
 犯罪には社会が一目おくべき示唆を含むことがある、と思う。ある価値観の浸透が、多くの「負」を帯びたものである場合、「負」は何か別の形をとってでも噴出しない訳に行かない・・と教える。テロに対する見方も違ってくるだろう。・・そんな事を考える。
 まァ作品解釈はともかく、俳優の佇まいに見惚れた舞台であった。

ネタバレBOX

テーマをめぐって追記。
辰巳家の没落は、端から見れば、単に権力関係が変わって一方が隆興し、一方が凋落しただけの事だ。ただ、信仰に支えられた秩序と貨幣経済による秩序(合理主義?)の本質的な対立は洋の東西をまたいで根深い問題だ。
自由主義経済が放任主義では立ち行かないのは周知の事実だが(これに反駁する新自由主義なるものもあるが)、弊害を来たした時、市場原理に代わる決定原理を、どこに求めるかという問題が浮上する。まず、「民主主義」というシステムが挙る事だろうが、全ての案件を有権者による投票で決める事はできないから、限界がある訳である。選ばれた政治家が政治決定を行なう(代行する)際、決定の根拠としての思想がなければならない。何に価値をおくか、倫理的機能をどこに求めるか、という時に人類が長年にわたって蓄積した宗教的価値体系、慣習のご登場となる訳である。
 かつて社会主義陣営がとった政治システムは、統制経済であったため、自由競争が阻害され、人員配置も「競争」によらず人脈や自己利益誘導という原理で決定し、歪な官僚制が発達してしまった云々といった弊害が指摘された。ソ連の科学技術の発達は、ある意味で「米国との競争」が成したもので、やっぱり競争原理な訳である。で、東側が敗北したのは世界が「競争原理」で動いていたため、競争原理を排した陣営が当然の如く敗北した、という事である。高福祉を実現している北欧などを見ると(あまり詳しくはないが)貿易黒字や国内総生産などで一定の経済面の実績を上げている(「競争」にも対応している)。かつての東欧は対外的な(経済的)勝利を、他の問題に優先できず、その原因は恐らくソ連の覇権の影響と思われる。
 「競争原理」があらゆる技術を発達させている事は間違いなく、それが国力・企業力となって「支配」関係を生み出す。この事はある種の「自然現象」だ。これを正当化しているのは「科学・技術の進歩」だろう。 では、「科学・技術の進歩」じたいを相対化する価値観、例えば宗教がそこにあったとしたら、どうだろうか。市場経済や、ある種の競争原理は、当然に主張していた正当性を、この宗教の前では失うのだ。 そして、こうした宗教を見出し、あるいは生み出す契機と考えられる状況が、はっきり見られるのも事実。構造的経済格差がそれだ。
 辰巳家の青年は、「宗教」に立つ地点から、たまたま敵への復讐に至ってしまったのかも知れないが、強力に働いていたのは「没落」という状況であったのかも知れない。(宗教は文字どおり彼の生の「拠り所」となった・・)
君は即ち春を吸ひこんだのだ

君は即ち春を吸ひこんだのだ

公益社団法人日本劇団協議会

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2016/02/25 (木) ~ 2016/03/01 (火)公演終了

満足度★★★★

新美南吉半生の記
若くして逝った童話作家・新美南吉の短かった作家人生と青春を、素朴なタッチで描いた作品。否、「素朴」は新美南吉の人生への印象か・・ 等身大の人間の温度を感じるストレートプレイだった。
エコー劇場に作り込まれた田舎の家屋、上手には紅梅か桃の花が咲き乱れた裏庭があり、これに面した縁側のある畳部屋が、新美正八=南吉(寺本一樹)のささやかな「書斎」で、彼が人生の殆どを過ごしたのがここ愛知県半田市(知多半島)だという。冒頭セピア色の照明が強く当たり、一気に「そのむかし」へ観客を連れて来る。
微妙な恋仲の女性・ちゑ(まりゑ)が、医師として大阪で活躍したり動的であるのと対照的に、田舎で教員生活を送っている新美は、徴兵検査ではねられた肺病病みが最後に露見する事で諸々が符合する「陰」を帯びている。ただしその時点までは(肺病については)「噂」の真偽は明かさず、新美の「陰」も見えるような見えないような、微妙な色づけにしてある。
肺病を巡っては、彼を慕う事になる女生徒(白勢未生)がいずれもこの死病で亡くした二人の友人に対し、サバイバル・ギルティを抱いているエピソードの後、新美の喀血が始まる、という仕立てになっている(彼女が献身的に彼を介抱しようとする)。 ちゑや、生涯の友人(シライケイタ)の「死」も新美の生に強く突き刺さる。その一方で欲得を隠さず生きる一庶民である父(高橋長英)と、あっけらかんとした継母(南一恵)が、老いてなお健康そうなのも、新美との対照を印象づける。
そうこうする内に「病」に倒れ、死に行く新美南吉・・彼の生が一体何であったのか。本編には新美の作品があまり出てこず、作家としての葛藤も具体的には触れられない。ただ、彼のはかない人生が、それでも彼の内側には豊かな時間が流れ、彼は外的な「何か」にすがる事なく、自立して人と対し、彼自身の生き方を貫徹した・・そんな風情が台詞や行動よりは佇まいによって象られていたと感じた。そうなると新美南吉が登場人物である必要があったのか、素朴な疑問は湧くが・・。
演技の質の面では、新劇系の高橋、南と、技巧的?な若手と、ややバラけた感があったが、それぞれの良さが出た場面が認められ、群像劇としては成立した。ただ、もっと場面の意味を鋭利に作り込める余地はあったかも知れない。 今回の「日本の劇」戯曲賞受賞戯曲は、観客全員に配布されていた。

「俺の地口を聞け!」&「トコネリ島に朝が来る」

「俺の地口を聞け!」&「トコネリ島に朝が来る」

ブートレッグ

Geki地下Liberty(東京都)

2016/02/23 (火) ~ 2016/02/29 (月)公演終了

お疲れ様でした!
藤井さん、2公演ご出演、お疲れ様でした。

ネタバレBOX

終演しているので、ネタバレBOXに書く必要もないかもしれませんが・・。
いい評価ができないので、書くのを戸惑いましたが、チケプレで観劇させて頂いたので、投稿します。ここに書かせて頂きます。
旗揚げ公演が楽しかったので、今回も期待していました。
でも・・・私には合わなかったようです。
「トコネリ」は、あらすじから想像していたものと違いました。薬とか、年寄りに対しての詐欺。こういう話はダメです。ごめんなさい。
「地口」は、えっ?終わっちゃった・・と言う印象でした。最後を、観る側に託すのであれば、ちゃんと伏線を貼って欲しかった。導入部分から、無理が多い。
両作品とも、いい評価のようなので、私が合わないだけようです。
負け犬ポワロの事件簿

負け犬ポワロの事件簿

東京AZARASHI団

サンモールスタジオ(東京都)

2016/03/04 (金) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

コメディ・コメディ・ミステリー
ストーリーがわかりやすく、登場人物の造形(キャラ設定)もよく、
とても楽しめた舞台だった。

役者さん達もそれぞれ好演されており、一貫される空気があったと思う。

ただ、私的にはもっと“ミステリー要素”や、“意外などんでん返し”が欲しいところではあるが・・・。

UDC15th -O-

UDC15th -O-

セッションハウス

神楽坂セッションハウス(東京都)

2016/03/05 (土) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

無題1764(16-054)
19:00の回(曇)。

18:15会場着、予想通りすでに列ができていました。18:23受付、18:34開場、19:02前説、19:05開演~18:49、休憩、20:01~20:38終演。

この「UDCシリーズ」は2012(UP!)から続けて観ています。

会場は満席、さまざまなスタイルのダンスが繰り広げられ、どの作品も学生らしさに満ちた内容でした。カラフルな衣装、趣向を凝らした小道具、力強い振り付け~コミカルなパフォーマンス、60名余のダンサーは駆け回り、跳び、這う。

特に、後半最初の「合同作品3」はスピード、キレ、運動量とも圧巻。これだけ多様なダンスを一度に観ることができるこの企画はずっと続いてほしい。

わが闘争

わが闘争

ハツビロコウ

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

見応えあり!
“鐘下作品”は、今回が初めての観劇になる。

終始、引きつけられる脚本もさることながら、演出もよかった。

次回公演も楽しみだ。。。

ネタバレBOX

余談ですが、

〔観てきた〕コメントで、“声のボリュームが大きい”との情報得ていたので、
最後列座席に着席したのだが、前の席にかなり体格のいい方が着席・・・(汗;)。

隣の方に迷惑にならないように気を使いながら、
ちょっと右から左からを繰り返し観ました。

あらためて、席選びは難しいと思ったのです。。。
寝られます―魔女ものがたり・その2―

寝られます―魔女ものがたり・その2―

浪花グランドロマン

ウイングフィールド(大阪府)

2016/02/26 (金) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

別役ワールドの違った一面
会話が繋がっているのか、すれ違っているのか…。
背筋が少し寒い内容なのに、役者さんの力量なのか、何故かニヤリとさせられていました。
今まで拝見した別役さんの演目とは少し違った感じの二人芝居。
とっても楽しめました!

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