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棘/スキューバ

棘/スキューバ

不思議少年

損保ジャパン人形劇場ひまわりホール(愛知県)

2016/10/29 (土) ~ 2016/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/10/29 (土)

棘(不思議少年)感想】思わずギョっとするイントロから始まり、終始、眼を奪われ続ける舞台。まるで空間に漂うマルコの魂が順に役者に憑依していくが如く、人格が入れ替わり立ち代わりして…2人芝居ながら丹念な1人芝居を観ているような感覚。人だけでなく、時空間も自在に操り、行きつ戻りつ、繰り返し、前後し、時には重なる。まさしく人生の走馬灯が駆け巡っている感アリ。そして特筆すべきは森岡光さんの演技。強烈な印象を残しました。泣き声を初めとして、どこから声が出ているのかと思わせる多様な声の数々が、作品の幅を拡げていました。もう、なんかね…言葉に出すとどうしてもありふれた表現にしかならないんだけど、小さな舞台にエネルギーが凝縮されて、ドッカ~ンと爆発してった。良い体験させてもらった。九州の劇団でそうそう観れる訳でもないってのが残念だけど、この機を逃さないで良かった、ホント

スキューバ(不思議少年)感想】棘と同様、時空を巡る感覚があるけど、悲壮感ある棘に比してハートフルな後味。個人的には棘のインパクトが余りにも強くて、あっさりめな印象として残りましたが、公演としての後味はとても良かったです。

METAL LOVERS

METAL LOVERS

N.N.P

ナビロフト(愛知県)

2016/10/27 (木) ~ 2016/10/30 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2016/10/27 (木)

「大胆…、思い切ったなぁ」というのが率直な印象。LOVERSシリーズを"FOR"、"DEAR"と観てきたNNPに対するこれまでの私のイメージは、単なる演劇でなく、「多種の表現媒体や手法を取り込んだ総合アート志向」の集団でした。それが、装いこそスチームパンクでソレっぽいですが、ほぼ全編で徹底的なコメディとエンタメ。なんか、すっごい「過去との決別」を感じました。

ネタバレBOX

客入れから舞台美術に貼り付いて、過去作にも通じる良い雰囲気を漂わせていた金原みな子さんを、ほぼ序盤でギャグとともに切り捨てる潔さ。過去とのギャップを狙ったんかな。(でも、「ば~かっ」の捨て台詞ともに走り去る金原さんは可愛かった。)

そう頭を切り替えてしまえば、後は数多の変態キャラ達や美女や殺陣を楽しむのみで、特にブリキンガーXとか、キャプテン・パンティとかオカマの振付師とか、キワモノ揃いやったなぁ。トップをねらえ!とか懐かしかったし、なんで"はらみつさん"だけキャスト名でいぢられてるの?、とかバラエティ的な楽しみが盛り沢山でした。そういや、加藤千菜実さんは、こここでもワニピースかます社畜ぶりだったなぁ(笑)

・・・それにしても、NNPは今後どの路線に突っ走っていくのか、気になるところですねぇ。
あの大鴉、さえも

あの大鴉、さえも

東京芸術劇場

三重県文化会館(三重県)

2016/10/26 (水) ~ 2016/10/27 (木)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/10/27 (木)

過去の不条理演劇をモチーフとして明示的に使っているが、舞台での印象は、それとだいぶん違う。ガラスの表現が非常に多彩で、なんか「現代アート」を見るような愉しみが盛り込まれており、それだけでも素直に楽しめる演出です。それでいて更に、それがその場の空気と言葉に深みと拡がりを与えている感覚で、二重三重に楽しみが繋がる。演出で、こんなにも芝居は変わるんだなぁ…と、その無限の可能性に感動を覚えます。
東京芸術劇場のRooTS、良い取り組みだなぁ。
そして、小林聡美、片桐はいりなんて手練の役者の演技を、間近で観れたのも感激でした。
今回、珍しく自分で選んだ訳ではない観劇だったのだけど、凄い拾い物したなぁ。幸運でした。劇VIPシステムに感謝

ONNA

ONNA

つねプロデュース

円頓寺 Les Piliers(レピリエ)(愛知県)

2016/10/20 (木) ~ 2016/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★

女性をテーマに、男性作家2人と女性作家2人、で2回の公演に分けて上演。男性2作が完全に別作品だったのに対し、女性2作が見事な連作、オムニバスになっていたのが印象的。

以降、ネタバレBOXに作品毎の感想を書きます。

ネタバレBOX

①10/23「どこいく。」(久川德明)感想】「かぐや姫を口説いてください」を観ていた私。パンフの女1「空白」を見た瞬間…「ヤツが来る!」とワクワクしておりました。絶対病みつきになってるよね(笑)
シュールな展開とコミカルな会話の中、徐々に姿を現す2人の正体… 分かってから思い返すと、トランスジェンダーを感じさせる序盤のやり取りとの整合に謎を感じるけど、複合的に登場人物(?)に投影されてるのかなぁ…
そして、歳とるとリアルに周りで発生する出来事に収斂していく。体験を伴うとやはり重い。

②10/23「ハハチチ」(渡山博崇)感想】インパクトある猟奇な出だし。狂気と無知と幼児性が選択権を握る中での タイトロープ的な交渉。それに笑いが散りばめられて…奇妙な味わいの展開でした。それだけでも十分な楽しみがあるところ、そこから更に「多様な根深い背景」を感じさせる深みがあって、重みが増したなぁ。おっぱいに対する多面なコンプレックス、幼児虐待、愛情の思い込み、境遇の脳内合理化… 各々で1作が作れそうなピースが沢山詰め込まれていて、想いを巡らすのが楽しかった。特に、複雑な背景を一つの演技で見せてくれた まといさんの芝居、良かったなぁ。
そして最後に、本人すら癒した母性の代表で閉めたのにはぐうの音も出ません。まあ、今回は負けといたるわぁ…< 男の負け惜しみ

③10/30「スガタミ」(みなみ津姉)感想】女性の話と銘打っているので、トランスジェンダーの話であろうことは薄々分かるわけですが、それでいて尚、一般的な男の子の暴走を心配する母を演ずる荘加真美さんの演技はキレッキレで、可笑しいことこの上なかったです。
そして、最後の姿見の演出が素晴らしい。理屈ではなく、見せることで分からせるインパクトの強烈さは見事でした。「スガタミ」は、まさしく、このシーンのためにある作品でしたね。

④10/30「心(ハート)より前にあるモノ」(鏡味富美子)感想】そしてスガタミから見事に連携して本作。割とテンプレになりがちな本人と周囲の葛藤を、あっさり省いてココに持ってくるのはテンポ良い。今時、理屈としては理解できる人は多いでしょうから、それを前提にした作りは納得。それに積み重ねて、母に起きた事件を描くことで、2作相互により深みが増してました。
事を前に「女としての記憶を…」という母の行為なんかも、コミカルに描かれながらも、人間的で良い味だったなぁ。あと、母と子に起こる「逆の境遇」を象徴的に表現する印象的なセリフが多くて泣かせますね。
そして、良いタイトルだなぁと最後まで見て、改めて思いました。
フカフカがーる

フカフカがーる

劇団「放電家族」

G/Pit(愛知県)

2016/10/21 (金) ~ 2016/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/10/23 (日)

不条理感の強い構成で作品イメージのピースをばら撒いて、単体ではほぼ解釈不能だがw、ひたすら丹念に下地を作り続けた前半。そこから、一転、メインモチーフである大事故を具体的に印象付けて、現実に紐づけて伏線を回収していった後半。結果、心に染みるラストが演出されたが、なんか天野さんに騙されている気がしてならないw
(以降、続きはネタバレBOXへ)

ネタバレBOX

改めて感想を書き始めて、前半と後半がうまく整合しなくて苦悩。前半で何度も繰り返されて印象に残っているのは「夢に喰われる」というキーワード。夢に、仕事に、欲に翻弄され苦悩する登場人物の姿。夢追う辛さが前面に滲み出る。小劇場演劇に長く留まる天野さんならではの切実さ。
そして「フカフカが~る」に誘う少女。連れて行ける人と行けない人がいる。「フカフカが~る」とは何なのか。
後半では「少女の夢」と明示されたと思えた。「フカフカ がある」なんて語呂も出てきて、心地良さげなイメージ。安らぐ麻薬の様な暗示もあった。前半に相対して、この「夢」は救いの夢なのか…
だが一方、「カフカ」のモチーフも現れたりして、「苦悩する夢世界」のイメージも漂う。事故と絡めて「フカフカが~る」は三途の川の渡し舟にも思えるし、兄の最後の言葉では理想への架け橋の様。事故に巻き込まれた隣人を留めおく夢。一方で「1人残る少女」自身の張り裂ける心を繋ぎとめる…たぶん1本道で整合するような話ではないのだ。甘さと辛さ、毒と薬の二律背反を内包する「夢」を語るに相応しい物語。観て、考えて、混乱するのが正しい見方かも。
ふとTLに前半と後半を繋ぐ「おしゃれ相撲」は台本に載っていないと流れてきた。前半に引きずられる観客の頭を、本当に一旦キャンセルするためだけに仕掛けたのかもしれない。パンフに印象深い言葉があった。これも「ラストで観客に何かしらの感情を湧き起こさせる」ための手練手管か。
今後も心地よく騙してください、天野さん。
勧進帳

勧進帳

木ノ下歌舞伎

穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)

2016/10/22 (土) ~ 2016/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/10/22 (土)

まずイントロに痺れた。最初、すごく無造作に役者陣が現れて仕込みを始めるんですよ。思わず、「えっ?」ってなる程、全く芝居っ気が無い。そこに照明と音響がグワっと入り、役者の姿勢が変わる、一瞬にして纏う空気が変わる、800年の刻を超える… 痺れるわぁ…

始まると、1つのシーンを分解したり繰り返したり、2つのシーンを融合させたりの進行で「時空間の使い方」が面白い。現代との融合もいつもながら見事ですが、中でも様式美を活かしつつもダンスの様に昇華された「足捌き」とか格好良かったなぁ。
音楽の使い方も、今まで観た中で一番ポップでした。歌舞伎語(?)が少ないのも特徴的でしたね。

そして、やっぱりキャスティングが素晴らしくて、弁慶・義経の異彩の放ち方が尋常じゃない。そういう"見てくれ"だけじゃない意味が込められているのも印象的でした。

ゴルジ隊「つい。つい、うっかり。」

ゴルジ隊「つい。つい、うっかり。」

津あけぼの座

津あけぼの座(三重県)

2016/10/19 (水) ~ 2016/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/10/22 (土)

脚本も役者も流石のラインナップ。
それを見事に纏めて、充実、濃密のひとときでした。幕間映像まで手抜かりなし。

以降、ネタバレBOXに個別の感想。

ネタバレBOX

①コントロールオフィサー(平田オリザ)感想】果たして仲間なのか敵なのか、当事者なのか傍観者なのか。呉越同舟、対岸の火事、人の不幸は蜜の味、奇妙で滑稽な集団の緊張感溢れる空気が堪らなく面白かった。特に諸星敦士さんの戦場に放り込まれた感が非常に愉快。

②団地の三人姉妹(岩崎正裕)感想】三姉妹の感情の発露を呼び起こす、くるぶしさんの腐れ住職加減・空気読めない加減が何とも良い味出してた。
結果として励起された気持ちの三姉妹の中でのやり取りが切ない。人生ままならぬ、でも、ありが〜とぉ。

③3650と3日(関戸哲也)感想】入り乱れるジェットコースター的負け組人生がとてもリズミカルで、役者が生き生きしてる。小関加奈さんのノリノリ加減が良かった。
そして関戸さん脚本にしては、主役男性に優しかったなという印象。男性に降りかかる未来が余りにも理不尽すぎて、対照的に男性の愚かさが感じられなかったからなのでしょうか。いつもなら、もっと明らかな自業自得展開だけど、今回は珍しく同情。
そして、顛末がとても甘酸っぱいわ〜。
いい感じに赤面(≧∇≦)

④うつつに響く(永山智行)感想】今回一推し。小説の頁を一枚一枚めくる様な生々しい・じっくりとした描写。単に朗読してるからってだけでは無いな。10年熟成された想いを経て、頭の中で辿り着く沙織への理解は、現実なのか幻なのか、昇華なのか狂気なのか。ある種、ねちっこく偏執的な坂口修一さんの芝居が良い意味で怖い。脚本にベストフィットですわ〜。沙織の人物像も、姿を見せないからこその幅の広さと深さが良い。
レコードを媒体にするという演出も気が利いていて良かった。

⑤夜のオシノビ(横山拓也)感想】故人を偲びつつ、否応なく時の流れと現実が忍び寄る… じっくりとした人間ドラマ的な前半の雰囲気から、一転、蔵田が出てくる後半へのギャップと展開が物凄い。何をするにしてもツッコミどころ満載の蔵田と浩輔との掛け合いは何とも言えぬ乾いた笑いに昇華しつつ、どんどん謎の人物化する故人の多面性が浮き彫りになっていくのが興味深い。当時の彼女の精神状態を推し量る情報を散りばめつつ、決して一意に収束させずに終わっていくのが良い味でした。

⑥橋の上のはなし(油田晃)感想】何か元ネタでもあるのだろうか… と思わせる程、支離滅裂感があるのだが、それでいて何故か微笑ましく、背景のドラマを勝手に脳内創作して補ってしまう。不思議な作品だぁ。オレオレの人達が何とも良い味を出してたよ。
庭と自ら

庭と自ら

幻想劇団まほろ

ナビロフト(愛知県)

2016/10/14 (金) ~ 2016/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/10/16 (日)

下手・中央・上手の3つの舞台を行ったり来たりして、その関係性を色々想像させながら進む展開。箱庭療法をモチーフに、実際に治療を受ける「下手」、箱庭の中のイメージと思しき「中央」…に対し、残る「上手」に私は色々想像を逞しくさせられました。
並行した別のモチーフなのか、箱庭による創作物なのか、時系列で直結する過去なのか・・・を揺れながら観てました。終盤のタネ明かしはやや性急な気もしましたが、必ずしもイメージが一致しない3人の女優で実質3人1役の構成になっているのは新鮮で、だからこそ、色々と想像の余地が発生したのが面白かったです。

ネタバレBOX

そんな脚本の仕組みの面白みを剥がすと… 母の箱庭を飛び出した少女が、外に自分の箱庭を見出し、結果として母と同様に対象に裏切られる辺りも非常に皮肉的。
しかもそれを箱庭を造って認識する辺り、とても意味深。いったい何が「大丈夫」なのだろうか… マリーならずとも、彼女の行く末が心配になる結末でした。闇を感じさせてくれる点で、もちろん、こちらも面白い。
そうそう、当日パンフに付いた心理学用語集はとても有難かったです。
世界に1人だけの草なぎ

世界に1人だけの草なぎ

宇宙論☆講座

ラ・グロット(東京都)

2016/12/27 (火) ~ 2016/12/30 (金)公演終了

満足度★★★★

巧さと稚拙さ、真剣と悪ふざけ、上がったかと思うとドスンと落とす。
相反するものがゴテゴテに混在し、もはや良いのか悪いのか、面白いのか面白く無いのかすら分からなくなってくる・・・いや面白かったのですけどね。
何をどう感想とすれば正解なのかは解らないが、凡庸でない事は確か。

ネタバレBOX

多分「わが星」の様なリズミカルな公演も可能なんだと思う。
でも美しく仕上げた作品を創る気はサラサラ無い様である。
演劇は「嘘」で出来ているという理論をどこまでも発展させ、隅々まで嘘が張り巡らされている。
それはドジで愚鈍を装い観客をあざ笑わせておいて、引っかかったーと舌を出す屈折さを持ちながらも、今回お金ができたから観劇料金も1円以上でOKだしワインも買ってきたからどうぞー。と観客にとことん自由さを与える優しさも持っている(様に思える。何しろどこまで本当か分からない)
決して要領がいいとは思えないが、その独自性はハンパない。
そして独自性の真意は謎だらけである。
結果、あまり自身を追い込まないで欲しいと心配になってきたりもするが、それすら計算ずくなのかなー。
もし劇団内に知り合いがいたら、それこそ聞いてみたい事がいっぱいである。
星回帰線

星回帰線

パルコ・プロデュース

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/10/01 (土) ~ 2016/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

今更の書き込みですみません。
理由あって集まった数人の人々。
自給自足のごくごく狭い施設内の閉じた濃密な人間関係が生々しく描かれていて凄い。
痛い。
中でも「イケメンの心理」を描くなんて観たの初めてです。
向井理さんの演技が自然で上手い。
小劇場で目の前で見れるのもいい。

エノケソ一代記

エノケソ一代記

シス・カンパニー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2016/11/27 (日) ~ 2016/12/26 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/12/24 (土)

座席1階B列

エノケンの偽物の半生。
全人生をかけてエノケンを演じエノケンになりきる
「本物のニセモノ」の壮絶な人生。
笑えるのに、泣けてしまう。
役者の三谷さんも、またいい味です。
市川猿之助さんの安定したなりきりぶり、
浅野和之さんの盤石な演技、
何よりも今や超売れっ子の吉田羊さん演じるエノケソの妻、
さっぱりした感じが上手い!さすがです。

ネタバレBOX

三谷さんのフリで、浅野和之さんが、イヴの夜、
カーテンコールでちょっとした芸を披露され
客席も出演者も大爆笑でした。
舞台上と客席の一体感が楽しかった!
モグラ…月夜跡隠し伝…

モグラ…月夜跡隠し伝…

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/12/15 (木) ~ 2016/12/27 (火)公演終了

満足度★★★★

歴史の暗部をメルヘンや冒険譚の題材に取り込んで装置と見事なアンサンブルで魅せる劇団桟敷童子(とまとめて良いのか自信はないが)。メッセージは、悲しくつらい事、人の醜さ、生きる空しさ・・それでも前を向いて行こう。
が劇団も「体夢」あたりから、新たな物語世界への「挑戦?」の姿勢を何となく感じさせ、今回もその一つの形と見えた。そして私的には十分に満足である。
松本紀保は声が裏返り、どうにか千穐楽を乗り切ったという印象。元々(桟敷童子団員のように)線の太い声の持ち主でない。がその声を駆使して芝居の昂揚に貢献し、満身創痍ながら役目を果たした、と言うような風情も、大いに貢献したのに違いない。
今回の作品、「大陸へ行く」という表現があるから時代は大正か昭和か、不詳だが現代よりは古い。舞台は前時代な生活のある山奥。「今より昔」か、「今より昔」な時代の風が吹く場所、である事が重要。数奇なエピソードや人智を超えた現象、能力が登場する。その一方で、山で採れる植物の効能等の蘊蓄が詳しく語られ、聴く・観る者の目を架空の物語世界へと誘い、惹きつける。時に「素」になる笑いまで挿入して「客」を逃がさぬよう「語る」伝奇小説ならぬ伝奇芝居は、唐十郎のそれに「テンション」においては似ており、純粋娯楽に徹した物語には潔さを感じた。
時間単位での情報量も恐らく普段の桟敷童子の芝居より多く、伏線など関係なく次から次と繰り出される、その密度の高さ。これぞ伝奇譚風冒険活劇たる所以。

愛のおわり

愛のおわり

こまばアゴラ劇場

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/12/22 (木) ~ 2016/12/28 (水)公演終了

満足度★★★★

初演を観ていたが、それを今回の再演と見比べる「贅沢」を味わいたくアゴラへ。
台詞の殆どは覚えていないが幾つかの要素を思い出しつつ、しかし芝居は初演に比べ詰まっている・・台詞を繰り出す役割を担う者、止まりでなく、そこに存在する者として観ることができた。よくある男女の別れ、それが互いに熟年にずれ込んでいる事により、多弁はむしろ嘘の上塗りとなる(何も言わなければ・・ただ「別れよう」とだけ告げていたなら、そこで終り、芝居にはならないが頭の良い男ならそうしただろう)。
 もっとも台詞にもある通り、二人は全てを曖昧にせず対話してきた関係ゆえ、男は何かを語らねばならなかった。が、その本音を語るに色々と修飾を施さずにはおれず、裏切った側の疚しさを認めては意思(離縁の)を貫徹できないそうにないから「正しい態度」は取れず、その「不適切さ」を女は見事に掬い上げて指摘し、男に突きつけ認めさせたという寸法だ。
平田オリザによる改稿は、明らかにそれと判った部分もあり、どの程度変えたのか知りたくもあるが、いずれにせよ良い具合に台詞は流れていた(一箇所だけ語尾が気になる箇所があり「おや、オリザっぽい」と思ったがどこだったか・・)。
初演と劇場が異なり、今回は二人の表情を近くから見る事ができた。私の目にはっきり認められたのは女の苦しむ表情。男に反駁する姿は痛快だが、その根底には二人の間で言葉を曖昧に(都合良く)使わせないという意志がある。即ち二人の間にいかがわしい言葉を通用させたくない、かつて存在した愛が偽物だった結論には決してしないという意志である。
この女性の態度・・・好悪で人が離別する事はあっても尚言葉を交わし合う関係は続くのだ、と暗に告げる態度は、男に対する女の愛(=代替不能な関係)の告白でありながら、人間として向き合う(尊重し合う)関係を育もうとする意志・願望の表われでもある。それは言い換えれば希望だ。二人のドメスティックな事情を超えて、そう感じ取れるものがある。
 男女の関係である以上、恋愛である以上、好悪が事の次第を決めるに過ぎない。女はただ未練があるのだ、と一蹴することも可だ。男の心はとうに彼女から離れている。男はただ「そうなってしまった」己を恥ずかしく思っているようであり、その疚しさあってこそ、滔々と前半の1時間喋り続けた。が、男を手放す以上、どこまでも女が惨めなのであり、しかし一個の人間として、愛を知った人間として立ち続けようとする「意志」はやはり彼女自身に発するものだ。
女の男に対する舌鋒が束の間溜飲を下げる一方、足場を失ったような脆さは女の孤独を示す。そして「攻撃」でない語りを語り始める女は、「愛」が確かに愛であった証を示し、「気分」などによっては容易に無に帰せられないと、信じようとする、だけでなく相手に向かって断じる。現在と未来を変えようとするのでなく、過去についての認識、共有し得るものについての議論。いかにも虚しい議論にも思えるが、女は「過去」を現在形に引き戻しそこに「愛」が存在した事を確認しようとする。その「過去」は過去ゆえに虚しいものだ、という考えを彼女は意志によって選択しない。
 現実には時間は流れ、やがて状況も変化するだろうが、その瞬間には「終わった」と感じたとしてそれも一つの真実である。希望というものは強い意志を持って、血の滲む思いで引き寄せるものだ、という事だろうか。否、そうせざるを得なかった彼女が居たに過ぎない・・・主客論争(運命論)の滝に流れ込みそうだから引き返す。が、「感動」の理由は間違いなく「意志」にある。

途中に挟まれる絶妙なハプニングといい、憎い芝居である。

妄想の祭り

妄想の祭り

劇団森キリン

アトリエ春風舎(東京都)

2016/12/23 (金) ~ 2016/12/28 (水)公演終了

満足度★★★

随所で不覚にもうとうとしてしまったためかラストがラストと判らず、台本を購入。妄想する人物と妄想との関係は判りやすいが、関連し合うエピソードの「謎解き」性が弱く、「妄想」をめぐる思索の結論として、作者の真の動機が滲み出るようなものを期待したが今一つ「そうか」と思わせるドキッとさせる瞬間もなく、部分部分面白さはあるのに深め足りない感が残った。際どいテーマに触れる予感もあるが、「焚き付け方」がうまくないのか熱して行かず、勿体ない。凡そ人間の営みは「幻想」「妄想」の介在無しに為しえない・・人間の本来的使命に属するものでさえも(例えば恋愛・生殖・仕事)。・・そんな自己理解を現代人は既に獲得しており、一般的な形で妄想を語られても「そうかもね」で終わってしまうのではないだろうか。この芝居のエピソードの具体性、リアルさを「一般論」の俎上に戻すのでなく具体性を掘り下げる方へ持って行けばどうだったか・・・そんな感想。(いや、そうしたつもりだと反論されると、そうかも知れないなと思うが。具体から出発すると「妄想」というテーマも確定ではなくなる、という意味。それはさすがに・・だろうか。)

ジュラシックな夜

ジュラシックな夜

円盤ライダー

山野美容学院マイタワー27階(東京都)

2016/12/20 (火) ~ 2017/01/15 (日)公演終了

満足度★★★★

初・円盤ライダー。チラシでの認知2回目にして観劇は早い。劇団来歴も役者も知らぬが何となく気になり、村井雄(劇団ペナントレース)作・演出とあるのも後押しして(年頭の主宰劇団公演はインパクト有り)、開演日時も都合よく観劇に至る。此度は会場を山野美容専門学校27階ラウンジ。未知との遭遇に期待、して遭遇叶った事に気をよくして帰路についた。
芝居の方は力の入った、ナンセンスギャグのノリにして実態は男ばかりの体育会系ハイテンション会話劇。奇妙な間合い、テンション、動線も、余韻を引き摺っておかしみを残す。「脱線が成り立つ」スタンダードが提示・維持されていたという事だ。
 バーに既に居る客と、新たに訪れる客。ご都合主義でなく関係が結ばれて行く様が楽しい。他愛ない会話もいい。

ネタバレBOX

ラウンジのバーカウンターの方向をステージに、客席が並べられている。他の三方は高い天井まで届く展望窓から都内の景色を映じており、芝居に入る前段の儀式はこれに巨大なブラインドを引くことである。これが夜なら夜景、晴れた昼なら陰影の趣きと、芝居とは別に副次的な効果があった事だろうがこの日は曇天。始まりも終りも似たくすんだ都内の外貌であった。
合い言葉は「恐竜」。なぜ恐竜なのかは良く判らない。この判らなさが良い。
モグラ…月夜跡隠し伝…

モグラ…月夜跡隠し伝…

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/12/15 (木) ~ 2016/12/27 (火)公演終了

満足度★★★★★

いつもは可能な限り最前列に座る私が2列目にしたのは今回の舞台には高さがあったから。高さの理由は後で分かるのですが、桟敷童子さんのことだからこれは絶対人力だよなと言うのが心をかすめても、音響だけでなく、役者の演技だけでもなく舞台が揺れると言うのは迫力が違うものですね。「スペクタクル〜」なんて思ってしまいました。
説明の文章がすごく暗いので心配だったのですが、現実に即した物語ではなかった(怪奇ロマン?)ので安心して見ていられましたし、面白かったです。荒唐無稽な物語はこれで終わりなんて言わないでまた面白いお話を創ってください。笑える事には賛否あったようですが、桟敷童子のみなさんは笑いがとれるキャラだと思うので笑いがあってもよいと思います。とは言え「セリフをあげる」とか「この後の転換に便利」とかは、やり過ぎだと思いました。
これで観劇納めにしておけば満足して終われた2016年でしたのに・・・

世界に1人だけの草なぎ

世界に1人だけの草なぎ

宇宙論☆講座

ラ・グロット(東京都)

2016/12/27 (火) ~ 2016/12/30 (金)公演終了

鑑賞日2016/12/29 (木)

虚実ない混ぜ、ではなく、ほとんど全てが嘘の宇宙論★講座。今回も演劇とは言えないような破壊的な演劇で、観る者を裏切り続ける。彼らは一体、どこに行くのだろうか。
今回は音楽劇要素は少なめ。上演中の飲食OK、写真撮影OKは変わらず。

ネタバレBOX

普通の芝居をすれば良いものができそうな気がするのだが、やらないだろうな・・・
麦とクシャミ

麦とクシャミ

ホエイ

四天王寺スクエア(三重県)

2016/10/14 (金) ~ 2016/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/10/15 (土)

昭和新山誕生が舞台で、何かスペクタルな要素を想像していましたが、それよりも遥かに存在感があったのは、そんな環境下で地道に、逞しく、強かに生きる人間たち。「どっこい、生きてる!」って感じの生々しくも強靭な生命力が印象的。
全般、なんか「生の素材を活かした料理」みたいな芝居で、脚本で技巧に走るのではなく、本当に役者の良さを前面に活かした印象を受けました。彩る徹底的な「方言」が強さと温かさを演出していて、特に中村真生さんの岩手弁は素晴らしい。
普段からアレで生活してるんじゃないかなと思うほど。そして、宮部純子さんの徐々に強かさが現れてくる芝居の感じも良かったな。河村竜也の最後のシーンも、一転、現実・現代に帰ってきているかのような説得力と余韻が印象的でした。観に来て良かった。

嵐になるまで待って

嵐になるまで待って

演劇集団キャラメルボックス

三重県文化会館(三重県)

2016/10/10 (月) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/10/10 (月)

芝居はさすがの緊張感と情感。ただ、好み的にはこのネタならもっと深くダークに斬り込んでくれた方が現実味を感じられたかな。

ネタバレBOX

作品の狙う客層が違うと言われればそれまでだけど、この生い立ちと実績があるならば、波多野と…さらに言えば雪絵には、積み重ねられたもっと深い闇があるべき。あんなにアッサリ終わっちゃ不自然。むしろ、あの結末が雪絵の意図したところである…なんて策略的なエンディングなら… などと考える私は心が汚れているな;^_^A 

シーンとしては、クライマックスでの雪絵の嗚咽がとても印象的に心に残っています。喋れない人が絞り出す声というのものには、計り知れない魂が乗っかっている。それを表現した岡内美喜子さんに感服至極。
虹色のリリー

虹色のリリー

演劇ニッケル

御浪町ホール(岐阜県)

2016/10/09 (日) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/10/09 (日)

断片的にばら撒かれ繰り返される言葉のピース達。言葉遊びとしてだけでも、かなり面白い秀でた表現が多々出てきました。独唱感想文とか、ツボすぎ。
そして核心。何に触発され、何を結び付けるかで、観客がこの作品の中に何を見出すかは全く異なるんだろうね。

ネタバレBOX

私はトランスジェンダー(百合や性同一性障害のイメージも感じた)とか、多重人格とか、多様な価値観の中で自己が確立できない状態とか想起したけど、とても一度の観劇では消化できなかったし、それ"だけ"とも思えない。分からないキーワード沢山あった。
きっと、西野さんも一本道で消化させるつもりはないだろう。色んなイメージが渾然と凝縮されている印象です。脚本を数日後にUPするとのことだったので、熟読してみたい。本音言うと、その上で更にもう一度観てみたいと思わせるお芝居でした。

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