満足度★★★
随所で不覚にもうとうとしてしまったためかラストがラストと判らず、台本を購入。妄想する人物と妄想との関係は判りやすいが、関連し合うエピソードの「謎解き」性が弱く、「妄想」をめぐる思索の結論として、作者の真の動機が滲み出るようなものを期待したが今一つ「そうか」と思わせるドキッとさせる瞬間もなく、部分部分面白さはあるのに深め足りない感が残った。際どいテーマに触れる予感もあるが、「焚き付け方」がうまくないのか熱して行かず、勿体ない。凡そ人間の営みは「幻想」「妄想」の介在無しに為しえない・・人間の本来的使命に属するものでさえも(例えば恋愛・生殖・仕事)。・・そんな自己理解を現代人は既に獲得しており、一般的な形で妄想を語られても「そうかもね」で終わってしまうのではないだろうか。この芝居のエピソードの具体性、リアルさを「一般論」の俎上に戻すのでなく具体性を掘り下げる方へ持って行けばどうだったか・・・そんな感想。(いや、そうしたつもりだと反論されると、そうかも知れないなと思うが。具体から出発すると「妄想」というテーマも確定ではなくなる、という意味。それはさすがに・・だろうか。)