最新の観てきた!クチコミ一覧

55321-55340件 / 189912件中
サヨナフ

サヨナフ

くじら企画

ウイングフィールド(大阪府)

2017/12/15 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

脚本、演出もウイングフィールドという小さな劇場を十分に意識し、これ以上ない出来の劇である。演劇的には本当に素晴らしい出来で、目を見張る思いである。
ただ僕は、犯罪を犯した当時の19歳の青年に、女優を配したのがちょっと解せない。やはり男優の方がよかったのではないかと思っている。何故殺戮したのかという問いには、ストレートに男優を配しなければその問いには答えられないと思うからである。

motif.

motif.

内山茜

立教大学新座キャンパス(埼玉県)

2017/12/15 (金) ~ 2017/12/15 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/12/15 (金) 18:30

価格0円

18:30の回(晴)

18:23開場、中は暖かい。

ピアノとヴォーカル、ソフトな曲が流れている。

天井近くでは白い薄布が交差している。

18:32開演~19:17終演。

近未来的な羽織袴風(?)衣装。

天球の運行のように正確な歩みは遥かな起源と無限のこれからの間の一点を思わせる。

三方向に歩む姿は阿修羅像の如く。

阿修羅像はあしゅらおう(百億の昼と千億の夜)に重なり、光瀬龍さん、萩尾望都さんにつながる。

寄せてはかえし 寄せてはかえし かえしては寄せる波の音は
何億年ものほとんど永劫にちかいむかしからこの世界をどよもしていた。

冒頭の一節が体の奥に甦る。内山さんの佇まいはあしゅらおうに似ている。
一歩が数億年の世界のように感じる。

内山さんは、立教大学映像身体学科松田正隆クラス2014卒業制作「傍らに佇む(2014/8)」@サブテレニアンを観ている。もちろん、その時は妖精大図鑑に出たり、新座キャンパスに観に行ったりするとは思ってもいなかった。

他にはないユニークな存在。

袴垂れはどこだ

袴垂れはどこだ

劇団俳小

シアターX(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

まだ日が残っているから現時点なのだが。
今年に観た演劇では群を抜いて心に残った。

この戯曲が、1964年に作られたというのを知り、納得した。
安保闘争が山を越え(うまい言葉が見つからない。決して無くなったわけではない)、世の中は東京オリンピック一色になっていた時期。
しだいに経済成長の「恩恵」が、国民を覆っていく時代だ。闘争になにかしら主体的に関わったものとしては、安保も、戦後処理も、日韓の問題も、なにも解決していないままで歴史が楽天的に進んでいることに我慢ならなかったはずだ。
そんな空気がひしひしと感じられる戯曲だけに、これを半世紀たった私たちが、どう表現し、どう受けとめるか、興味深くして赴いた。
俳小の役者の力量が十分に分かっている。
あとは演出家の技量だろう。
結論は、期待を裏切る? いや、期待通りの演劇であった。
戦術と戦略の、理想と手段の葛藤。
私はこんなことばかり考えながら観ていた。
蜷川演出に影響され、「金に糸目をつけない」舞台装置(これは私の偏見かもしれない)のかと思っていたが、予算の関係もあるのか、これは杞憂(笑)
手堅い演出、そんな印象だった。

なによりも私が感銘を受けたのは、戯曲の選択。
劇団の時代の読みの鋭さだ。

あらためて、私たちの日常で、理不尽な現実を前にした闘いで、感性の部分で触発されたことが嬉しく思えた。
1964年と2017年。
問題がいくつも置き去りされたままだ。

黒蜥蜴

黒蜥蜴

上智大学演劇団体2017年度生

上智小劇場(一号館講堂)(東京都)

2017/12/14 (木) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

価格0円

12:00の回(晴、強風)

11:30受付、開場。

今日は通常のセッティング(入って奥に舞台)、客席はパイプ椅子+クッション。
2017年度新入生公演ということで役者の皆さん1年生ということでした。

1月 演劇研究会「月面歩行」
3月 リトルスクエア「優しくて無神経なあなたは今日もわたしの目を見て笑った」
8月 リトルスクエア「愛は失敗をしない」
6月 橄欖舎「Will o` wisp」 演劇三団体合同「不始末な彼女」
9月 橄欖舎「ハイツアマノ//201」
10月 リトルスクエア「人魚姫は嫌いです」
11月 リトルスクエア「太陽の下」
12月 橄欖舎「裏庭」、本作

大学単位でみると一番多い(大学)劇団。

乱歩で知っているのは「人間椅子」だけ。それも「かたりと」の公演で「サティde乱歩」を聴いたから。
推理小説は気づかなそうな伏線と思いもよらなかった真実が醍醐味かなと思うのですが、45分間で表現しきるのは難しかったかも。

11:45/55前説、12:00回開演~12:46終演。

やや古風なトーンで会話していますが、普段使っていないためでしょう、少し違和感を感じました。
普段着の演出(テンポ)でもよかったのではないかと思います。

折角の椅子(2つ)を使って、立ったままの演技に変化をつけたり、もっと照明に濃淡をもたせたり、
いろいろと試してみるのでもよかったかなと。

最後のシーンの照明は「黒蜥蜴」というタイトルらしさがでてナルホドーと思いました。勅使川原三郎さんの公演(@KARAS APPARATUS)を参考にされるといいと思います。

失笑(笑)

失笑(笑)

ハネオロシ

HEP HALL(大阪府)

2017/12/15 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

とても良かったです。差別が人間性を変えてしまい、死をも恐がらない…。生きていくことの大変さ、死に対する考えを上手く表現してたと思います。アガペルさんも見れたし、満足です。

Overtime HIGH

Overtime HIGH

One Bill Bandit

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2017/12/16 (土) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/12/16 (土) 19:30

価格1,000円

土曜日、1日3回公演ってすごいな。着ぐるみショーか。

少し込み入った話。思惑が途中で変わったり、ウラオモテが見えてきたりするたびに、ついていくのに苦労するので(ただしそれでも少しも面白さは損なわれない)、できれば2度みたい。再演しないかなー。

休憩やBBSなど、1,000円という料金にまったく似合わないサービス精神が、どんどん高まっていくふしぎな劇団。
こういうの、芝居の練習と同時に全員でどうするのか決めて共有し、覚えなきゃいけなくて、けっこうたいへんですよね。
「ところであれどうするんだっけ」「はっ! 決めてない!」みたいな問題が本番の半日前に出てきたり…。でも「たいへんだからシンプルにしよう」なんて思わないのが演劇人のおそろしさ。そして、サービスはちゃんとやらないとつまんないからちゃんとやる! この根性が演劇人のおそろしさ。

今回も「愛のテーマ」が最高でした。
あと、いい話なんだけど、いい話の落とし穴に落ちないバランス感覚がこの作家さんの天才性だとわたしは思います。

切実な問題の切実さをわかっていないわけじゃないんだけど、それにひっぱられて説教がましくなるのをすごーく上手に避けている。
「演劇に一生懸命になるの、イヤだな。ワンビルに一生懸命になりたい」というパンフにある言葉、かっこいいです。木下さんにしか言えない言葉です。

ネタバレBOX

鳥みたいな人だな。いや、鳥か? 鳥なのか? と思ってたらどんどん鳥になり、ついには…というあの鳥さん、すばらしかったです。

「後藤さん」は錦織さん史上最も名字がふつうな役、サプール(コンゴの超オシャレ平和運動家)に目をつけて研究したとはさすがだっ。

その「錦織さんに惚れて使えない人になる、最初はまともそうだった女性」の役、今回は佐藤マリ子さんの「葉山さん」でしたね。この女優さん、発声がすばらしくて、ずっとほれぼれしながら聴いておりました。

『巨人の星』の「ター坊」みたいな幸幸少年、なぜあんな昭和のマンガ感が出せるんだ…若いのに…木下さんもたいがいだけど演じる女優さんも何なのか…。

そして出ずっぱりの課長さん! 客入れのときからずっと、半田課長でそこにいる…。あまりにも自然な、芝居がかってるところがみじんもない演技で…。お芝居始まってないのに芝居してる…芝居じゃないみたいな芝居を。シュールだ!
これに気づいたときのワクワク感といったらなかったですよ。

ああもうきりがないな、ほかの人も衣装も装置も相変わらずの凝った音響も照明もいいのに、定時(?)までに書き終えられませんでした。
ツレは格闘技のシーンで涙が出たそうです。なんでやねん。
荒れ野

荒れ野

穂の国とよはし芸術劇場PLAT【指定管理者:(公財)豊橋文化振興財団】

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/12/14 (木) ~ 2017/12/22 (金)公演終了

満足度★★★★★

多田さん可愛い。
小林さんおもろい。
中尾さんセクシー。
井上・増子さん良い勝負。
平田さん流石。

「彼女が最期に憂えたこと〜detective of the Victorian era〜」

「彼女が最期に憂えたこと〜detective of the Victorian era〜」

Project S.H

ワーサルシアター(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

前作も含め、セットをほめている書き込みが多かったので、まずそこに注目したのだか、その点では少々がっかり。家具のエイジングとかもちょっとね。

ただ、本編に入ってからはすっかり引き込まれてしまった。見応えのある90分。「風」の使い方なんか素晴らしい。

袴垂れはどこだ

袴垂れはどこだ

劇団俳小

シアターX(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

前半部分はやや退屈になったが、後半俄然盛り上がった!正義を振りかざすひとは、義賊になっても心安らぐ場所はない。そういう教訓かと思う。抜群の完成度です。

ネタバレBOX

村にはうさんくさい長老がいた。彼は反骨ではあったが,さりとて建設的な人間でもなかった。そのような長老のおさめる村に事件があった。情け知らずの地頭がいて,そのバカ息子に家族を凌辱された男が,逆上し謀反を起こしたのだ。もはや,村が皆殺しにあってもおかしくない事態で,長老はおかしな提案を始めるのだ。

なにも村から出てどこかでひっそり暮らす選択もあったであろうに,この際伝説の義賊になろうと言い出すのだ。伝説の義賊は本当のところいるのかいないのか,定かではない。本物が出てきたらその配下になればいい。とりあえず旅先で,現地調達の盗賊を始めた。ほどほどの悪事にとどめて,社会改革とは程遠いただのドロボーだ。

あるとき旅人がやって来た。彼は厳しく長老の偽善を暴く。あわてた長老は行き当たりばったりで言い逃れた。旅人も,長老と似たようなインチキ野郎だったので,長老とその配下は旅人をとうとうなぶり殺しにする結末。死に際で旅人は,おまえたちは所詮人殺し集団でしかなかったのだ・・・とつぶやくのだ。

インチキおじさんが仕切る社会がある。そこで老練な手練手管に騙されることがあるのかもしれない。本当の改革者は,不正を指揮したりしないであろうに。
暮れゆく箱庭の中で

暮れゆく箱庭の中で

PAPADOG

下北沢Geki地下Liberty(東京都)

2017/11/30 (木) ~ 2017/12/03 (日)公演終了

満足度★★★

登場人物の全容が解ってからの展開、意味していたコトは面白く、良かったのですが、それまでがリピートの多さなども含めての作り方がもったいなく感じました

ネタバレBOX

風紀委員が同じパターンで何度も登場するところなど、最初は一人だけ、次は二人、そのあとに三人登場させるとか、三人出てくるが前倒しみたいに、前の人の口上中にかぶって登場するとかの変化があれば、もう少し違った印象になったのではないかと思います。
池田屋裏2炎上

池田屋裏2炎上

グワィニャオン

萬劇場(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

お見事です。今回は最初の方に舞台の仕掛けがありましたが,芝居の中身にもしっかり仕掛けがあったのですね。まぁ,ホント,これだけの登場人物を使い,脱線するギリギリの線を維持し,物語をしっかり作り,殺陣も格好よく,かつ,十分にコミカルに,見応え満載の舞台です。ホント,西村さん,お見事です。役者の皆さんも,とってもとっても良かったです。素晴らしい観劇時間でした。

山歩き

山歩き

イナセナ企画

赤坂エノキザカスタジオ(榎坂スタジオ)(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

とんでもなく面白いドイツの現代劇。約75分弱。インターネットがもたらした革新的変化に適応、反発、または乗り遅れる人類を赤裸々に描く。グーグル先生が両親より賢くなった今の、教育とは。人類は常に過渡期にあり、新たな問題にぶつかって、愚行を繰り返すものなんだな…。

ネタバレBOX

山の頂上で自分が消滅するほどの覚醒状態を体験した15歳のマリーは、一体となった相手のクララと、これからどういう関係を作っていくのかしら。
Dracula ドラキュラ

Dracula ドラキュラ

OSK日本歌劇団

心斎橋パルコ「SPACE14」(大阪府)

2017/11/25 (土) ~ 2017/12/03 (日)公演終了

満足度★★★★

チラシのざっくりしたデザインからは思いもよらない(汗)美しい音楽、衣裳、振付、照明、世界観の作品でした…。

ネタバレBOX

しかしラストが悲しすぎたこともあり、この公演で恋羽さんが退団してしまったこともあり、何だかとても凹みました…。

素敵なフィナーレもついていたのですが。
赤と青

赤と青

ラビット番長

演劇制作体V-NETアトリエ【柴崎道場】(東京都)

2017/12/15 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

 尺は約1時間。だが、濃密でスリリング、而もどうにもならない問題に実際対処せねばならない、現実に生きる人という存在のリアルを実に端的に描き切っている。(追記後送)花5つ☆

ネタバレBOX


 井保氏が、アクトゲーム用に書き下ろした作品なので、脚本最初の2ページは、お題として別の人が書いた。では、アクトゲームとは? という質問に答えておこう。先ず、何らかのお題が与えられる。お題とは上記の如く最初の2ページである。ゲームに参加していた作家が、その書き出しを自分流に紡いで物語を完成させるというのがゲームなのである。
最後の最後まで対立軸がぶれないことが、演劇の要諦であることを実に深く理解し実現している脚本である。 
井保氏は学生時代、病院で受付のバイトをやっていたそうで、その体験を踏まえての作品なのだが、現実に起きるどうしようもない出来事・事態を当にその点に於いて現実的に描いている点が凄い。ラストのジョークで終わらせる手際も見事である。
演出も今回は井保氏がやっているが、役者陣の演技の質も大変優れたものであり、充実した時間を過ごさせて貰った。
ビリー・エリオット

ビリー・エリオット

TBS/ホリプロ/梅田芸術劇場/WOWOW

梅田芸術劇場メインホール(大阪府)

2017/10/15 (日) ~ 2017/11/04 (土)公演終了

満足度★★★★

ホリプロさんのミュージカルは好きなのですが、この作品は、演出が映像的というか、梅芸みたいな大きな劇場には向いていない気がしました。3階の後ろのほうで観ていると、細かすぎると感じるのです。
もっと大胆にカットして、ショー的な盛り上がりがあってもいいのではないか、という気も。

ネタバレBOX


中河内くんがダンスがテーマのミュージカルに出ていて踊らないというのはストレスでした。

島田歌穂の先生が良かった。
デスノート THE MUSICAL

デスノート THE MUSICAL

ホリプロ

梅田芸術劇場メインホール(大阪府)

2017/08/19 (土) ~ 2017/08/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

期待通りの舞台でした。浦井くんの美しい声が、夜神月のキャラクターにハマってた。

Fantasia Doll

Fantasia Doll

OSK日本歌劇団

セントラファエロチャペル御堂筋(大阪府)

2017/08/06 (日) ~ 2017/08/10 (木)公演終了

満足度★★★★★

世界観のしっかりした曲ばかりで、テンポもよく、あっという間の60分でした。

時代絵巻AsH 其ノ拾壱『朱天〜しゅてん〜』

時代絵巻AsH 其ノ拾壱『朱天〜しゅてん〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/12/14 (木) ~ 2017/12/19 (火)公演終了

満足度★★★★

 AsHの作品は、時代考証や伝説を背景として脚本が書かれて居る為、そのような背景が無い場合には、作劇の常道を犠牲にしなければならない場合が出てくる。(追記後送)

ネタバレBOX

作家も悩む所だろうが、今作では、この点が作劇上の弱点となった。
将門の遺児、鬼道丸が足柄山で仲間を守る為に討死した後、その子は、蝦夷の庇護の下、大枝山に逃れた。名を鬼王丸と言う。鬼王丸は、京の都に度々下り、源 満仲の嫡男、頼光と友の契りを交す。
一方、朝廷は藤原北家が勢力を広げ、摂関政治で頂点に立ったのは兼家。将門の乱以降、残党と遺児その血脈、そして彼らを匿う蝦夷を絶とうと機を伺っていた。その目的完遂の為、何の罪咎も無い彼らを、都の腐敗しきった政治の目隠しとして利用し、人間ならざる鬼として敵視、その上自分達の陰謀や欲を実現した際に罪を被せる為、普段から流言飛語を用いて彼らを悪役に仕立て上げ民衆の目をそらし続けていた。
こんな貴族から命令を受け、従わざるを得なかった武士の統領達も、当然のこと乍ら、この事実に気付き心を痛めていたのだが、貴族の政治を覆すだけの力を未だ持ち合わせて居なかった彼らには、取り敢えず、藤原北家に従う他の道は選べなかった。
ところで、命令を下し総ての権力を手に入れ天皇の外戚として実権を恣にする兼家が、権力者の孤独について語ったり、足柄山で鬼道丸と蝦夷の長を討った満仲が、自らの子と同年代の子供を哀れに思い、守り役の蝦夷の民共々落ち延びさせたり、その子頼光が、鬼王丸の友となりながら、また友情と武士の統領としての義に引き裂かれながら鬼王丸・蝦夷討伐軍の統領として出陣、役目を果たすに至る経緯が敵味方の敵愾心に水を差し、ドラマツルギーの対立を弱めてしまう要素を克明に描いたことが芝居を弱くしてしまった。
Sparkling star

Sparkling star

OSK日本歌劇団

セントラファエロチャペル御堂筋(大阪府)

2017/08/06 (日) ~ 2017/08/10 (木)公演終了

満足度★★★★★

愛瀬さんの、一曲で世界を作り上げる力がすごくて、特に『ノートルダムの鐘』の「罪の炎」は圧巻でした。
遥花さんの『リトル・マーメイド』のアースラも素晴らしかった。

袴垂れはどこだ

袴垂れはどこだ

劇団俳小

シアターX(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

袴垂れ=袴誰はどこだという人物探しを表層的に描いているが、底流には貧富の差の拡大と言われる現代日本への警鐘とも受け取れる。同時に人の心には善悪(清濁)という二面性があるという寓意のようなものが観えてくる。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

セットは、やや上手側に丘もしくは山奥を思わせる階段状の舞台。両側の奥に枯れ草、客席寄には別空間を思わせるスペースがある。

梗概…主人公は地頭や役人たちの専横に苦しむ農民。村で行き倒れになった僧侶から地頭屋敷を襲い、金品を奪っては村人たちに分け与える、「袴垂れの盗賊」の話を聞き、農民たちは「袴垂れ」の到来を待つ。しかし姿を見せない「袴垂れ」を待つだけではなく彼ら自身が「偽・袴垂れ」になって旅立つ。そして真の「袴垂れ」に合流しようと思う。そして7年の時を経て現れた「袴垂れ」は農民たちが思い描いた人物とはかけ離れていた。そこで真の「袴垂れ」を倒し、自分たちが「袴垂れ」になることを決意する。

脚本は1964年に福田善之氏が書いているが、当時の社会情勢と現代では当然違う。当日パンフに、七字英輔氏が60年安保闘争における全学連内部の対立について触れている。その時代背景の違いを人間の本質という普遍的な面に力点を置き、観客の心情と納得度に訴えてくる。

憧れや理想は抽象的で、野望や欲望は具体的と思わせる。良薬は口に苦し…絶望と希望は毒か薬のようで、その受け止め方は人それぞれ。「袴垂れ」の真・偽は人が持つ善悪のように投影される。善悪の主体は、立ち位置によって変わる。聖戦か侵略(奪略)かは、人の意識と状況によって分かれるのではないか。そのことが峻別できれば人間社会は混乱しない。この作品では、二面性を持つ人間の本性(正邪)といつの時代にもある貧富の差をしっかり観せてくれる。その観せ方は全体的にモノクロ感で描き出し、農民たちの理想と挫折、皮肉な幕切れに人生の哀感が漂う。
理想を掲げた農民(民衆)の思いと現代日本が抱える問題に鋭く切り込んでいた。

次回公演を楽しみにしております。

このページのQRコードです。

拡大