袴垂れはどこだ 公演情報 劇団俳小「袴垂れはどこだ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    袴垂れ=袴誰はどこだという人物探しを表層的に描いているが、底流には貧富の差の拡大と言われる現代日本への警鐘とも受け取れる。同時に人の心には善悪(清濁)という二面性があるという寓意のようなものが観えてくる。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    セットは、やや上手側に丘もしくは山奥を思わせる階段状の舞台。両側の奥に枯れ草、客席寄には別空間を思わせるスペースがある。

    梗概…主人公は地頭や役人たちの専横に苦しむ農民。村で行き倒れになった僧侶から地頭屋敷を襲い、金品を奪っては村人たちに分け与える、「袴垂れの盗賊」の話を聞き、農民たちは「袴垂れ」の到来を待つ。しかし姿を見せない「袴垂れ」を待つだけではなく彼ら自身が「偽・袴垂れ」になって旅立つ。そして真の「袴垂れ」に合流しようと思う。そして7年の時を経て現れた「袴垂れ」は農民たちが思い描いた人物とはかけ離れていた。そこで真の「袴垂れ」を倒し、自分たちが「袴垂れ」になることを決意する。

    脚本は1964年に福田善之氏が書いているが、当時の社会情勢と現代では当然違う。当日パンフに、七字英輔氏が60年安保闘争における全学連内部の対立について触れている。その時代背景の違いを人間の本質という普遍的な面に力点を置き、観客の心情と納得度に訴えてくる。

    憧れや理想は抽象的で、野望や欲望は具体的と思わせる。良薬は口に苦し…絶望と希望は毒か薬のようで、その受け止め方は人それぞれ。「袴垂れ」の真・偽は人が持つ善悪のように投影される。善悪の主体は、立ち位置によって変わる。聖戦か侵略(奪略)かは、人の意識と状況によって分かれるのではないか。そのことが峻別できれば人間社会は混乱しない。この作品では、二面性を持つ人間の本性(正邪)といつの時代にもある貧富の差をしっかり観せてくれる。その観せ方は全体的にモノクロ感で描き出し、農民たちの理想と挫折、皮肉な幕切れに人生の哀感が漂う。
    理想を掲げた農民(民衆)の思いと現代日本が抱える問題に鋭く切り込んでいた。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/17 13:45

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