
スモール アニマル キッス キッス
FUKAIPRODUCE羽衣
吉祥寺シアター(東京都)
2020/08/28 (金) ~ 2020/09/07 (月)公演終了
満足度★★★★
久々に羽衣妙ージカルを観たが、最も完成度が高く感じられたのは何故か。総勢15人全てにメインキャストとなる小エピソードがあてがわれ、10個程あったろうか。曲に乗って描かれる色恋にまつわるエピソードは、人間と小動物が半々位。曲+歌には好みもあるが場面に即しており、秀逸なものが幾つか。振りと曲のマッチングもさすがだが、踊り手もいい。
今回の特徴は「口ぱく」との事。最初離れた男女が呼び合う声に違和感あり、奥の女性が生声、手前の男性がマイクを通したこもった声に聞こえ、確かに喉も枯れていたので窮余の策かと思えば、他もマイクの声である。そこで「なるほどステージ前面では録音を使い、感染症対策としている」と納得。だがよく見ると殆どが口パクである。
場面は音曲とダンスが基本構成要素なので、歌は音楽に乗せて録音できるが、ただの台詞は合わせが大変である所、よくやっていた。それにしても録音は声のテンションと身体状態とのギャップを生むが、臨場感ある録音の声に身体が付いていく。稽古の賜物か。またエピソードが少人数ごとなので稽古参加人数も制限できたに違いない。
さて今回感じた優れた点は恐らくこの「口パク」が理由だ。というのも生声であの動きを全力でやるのは無理である。録音だったからこそ身体パフォーマンス(口パク込み)に専念でき、質を高めた。コロナ対応のためのアイデアが舞台上でもうまく機能した訳である。演じ手と語り手の分離は宮城總のお家芸だが、この手法の利点に通じる。
糸井氏演出による「摂州合邦辻」の再演も嬉しい。

BLACK OUT
東京夜光
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2020/08/21 (金) ~ 2020/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
作演出の名もユニット名も初、星のホールのNEXT COLLECTION(注目の若手)にしては小劇場の実力派を揃えており、評判も良いのでコロナ後初の三鷹(最遠方)へ足を運んだ。
小劇場演劇界のあるあるを超えて当事者だから書ける生々しい逸話が、2月後半あたり、つまりコロナ事態の迫る状況を背景に展開し、フィクションながら(観劇屋として)身に詰まされるリアルなドラマであった。
作演出を夢見る(まあまあ書ける)主人公が、「仕事はあり金にもなる」演助のオファーを受け、夢と天秤に掛けて手堅い将来像を思い描くあたりは切ない。
芝居の大部分はあるプロデュース公演の稽古。映像の仕事にかまけて?ブランクのあった鬼木が久々に舞台の仕事を受け、企画段階とは異なるコロナを題材に自分としては満足の行く台本で挑もうと意気込み、先の主人公も制作担当である旧知の女性の声掛けで演助に入っている。所が問題発生、観客の7割を動員するだろう事務所所属の若手俳優が台本に異論を唱えた。「今苦しんでいる人がいるのに何故コロナか」(彼なりの真剣な意見)。一度疑問を呈して黙ったが、いつか答えが解るだろうと思ってたが未だに理解不能と彼は言い、説得に失敗。結局鬼木は台本を書き直す事になる。「バイトのつもりで頑張る事にするよ」と主人公にこぼす鬼木。
物語は、主人公の「作演出者への夢」と「演助への期待度が高い現実」の葛藤の構図の中に意味づけられながら展開する。「夢」の片隅にいた制作の女性が実は婚約していて妊娠中、最後の仕事として鬼木の作演舞台を企画した事が後に判ったり(主人公は彼女と大学時代から演劇を作った仲で自分の夢も語り共有してくれていると思っていた)、演助を受ける代わりに鬼木に自作を渡してもらうよう依頼していたが今の仕事の中で渡すタイミングなく過ぎていた頃、別のルートから作演オファーが来て舞い上がる。一方「コロナ」から「不倫」をテーマに変えた鬼木の舞台は転換手順の検証など粛々と進み、主人公は演助の役割を見事にこなして信頼を得るが、作品の「中身」は観客には伏せられている。そこで主人公による舌禍事件発生。確か照明スタッフとして稽古参加し気安くなった声力のある女性に、つい通し稽古の感想を漏らす。相手は「演助」としての彼に「うまく行った」感想を期待したのだが彼は首を傾げ、「え、え、何、問題あった?」と突っ込まれて「正直自分がやった方がうまく行く気がする、台本も含めて」と本音を漏らす的にこぼす。「お前がそれ言ってんじゃねえ!」と一刀両断された直後(この先が「通常ない」だろう展開だが面白くなる)、稽古場の片隅でのこのやり取りに気づいた鬼木が、記録のために録っていた主人公のレコーダーを見つけ(このかん主人公は手も出せない)、会話の全てが全員が聴く中で再生される。次に主人公がとった行動が哀れで滑稽で、普通なら脇役に振られる類の中々なシーン。「演劇界」で生きて行こうとする彼の本心が実力者鬼木にすがりつき己の非を詫び、受けたオファーも断ると宣言するという行動へと突き動かす。つまり演助として「食って行く」道を選択したと見えるのだが、同時に「作演出」を貫く器ではない、との周囲の評価そのままが露呈した風景にもなる(自分を対象にしなければこうは書けないだろう)。が、主人公がオファー元に電話をした携帯を鬼木が取り上げ、「彼、今酔っぱらってるんです。仕事、とても喜んでまして。では」と相手に言って切る。それをきっかけにだったか、主人公はついに自分の本音に居直り、コロナの芝居の方が断然面白かった事、新しい台本がつまらないゆえに通し稽古もつまらない事、皆がそれを指摘しない事の欺瞞を吐き出すように言う。この瞬間は一旦突き落とされた地獄(世間)から、かつて魅せられ信じた演劇に対する思い(己にとっての真実)に踏み止まった瞬間とも言え、胸を掴まれる。鬼木は「面白くないと言われれば、謝るしかない」と頭を垂れ、「面白くないのなら面白くするしかない」と彼に稽古の進行を頼む。周囲は再び稽古に戻って行く。
もみくちゃになりながら舞台を作ってもコロナには勝てなかった結末を含め、演劇製作者へのエールになっていた。

明日ー1945年8月8日・長崎(2020年@シアターX)
演劇企画イロトリドリノハナ
シアターX(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
ウイズコロナならぬウイズ戦争の中を生きる人々。
オヤジ♪さん、ハンダラさんの感想にもあるように初演と比べて演出が、より丁寧に、より深く描かれていたと私も思いました。
それでもって役者さんが大幅に変わったことで、
初演でのシリアス感強めな雰囲気が、これまた一変。
親しみやすい空気感多めになっていたと思います。
Aチームを拝見し、間をあけてのBチームを観劇。
自分的にはこれが大正解!
1回目の観劇では全体像を把握。
2回目ではダブルキャストの醸し出す違いを楽しむのは勿論。
何より、決して難しいストーリーではないにしろ、人間関係の機微や政治的不安要素など、演出においては様々なニュアンスが随所に散りばめられているので、見落としのあったこれらを発見、なるほど!と噛みしめながら鑑賞できるっていうのはこの公演ならではの至福。
う~ん、観察力、洞察力がもっと達者であれば1度の観劇で済むのでしょうが(笑)
ラストに向けての追い込みが圧巻!

ひとよ
KAKUTA
本多劇場(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
初演から9年。題名から舞台風景がすぐに浮かぶレアケースだったが、笑い所豊富であるのは記憶と違った。初演時は震災の記憶が未だ生々しく、笑いのある日常を背景(地)に、不穏要素が「図」として強調された、のに対して今回は(確かに脚本もそう描いてあるのだが)不穏な事情を背景とし(て利用し)、笑い待ちの観劇となった。
恐らくコメディエンヌにしか見えなかった主役渡辺えりの演技の影響も(本人は大真面目だと思うが)。本来なら物語そのものが問う「果たしてそれはあって良かった事なのか」という、ナイーブな問いが全編通じて波寄せるようでありたかったが、渡辺女史の逼迫振りを示すような噛みトチりは「コメディ的には」どうにかクリアしても、役の裏面史的にはどうだったか。聞けば前日が初日で、観劇日は魔の2ステージ目・・という問題ではなさそう。
役の女性は、渡辺本人と重なる要素はあるが、私には真逆の人物像に感じられる。「言わずにおれない」渡辺えりがあの行動に出る事は想像しにくい。男女同権の思想や女性のマイノリティ性の認識や自意識からではなく、言葉で状況が変えられないと悟ったからこそ家族のために「行動」を選択した一個の女性であり母親。それがこの芝居のヒロインである。
言わば自己犠牲・忍従の方に情熱を傾け得る古風な人格が、渡辺女史の演技に宿るか否か。。
社会の制度や風潮の変革を訴えることをしない代わりに、ヒロインは愚直に己の考えから割り出した「正解」を実行し、法が定める善悪を相対化した。そこには聖性が宿る危険もある(「危険」とは世間一般の価値基準によるが)。
芝居の方は母親が去った後も続けられていたタクシー会社を舞台に、様々な人間模様が展開するが殆どが男女関係に帰結し、親子関係が絡む。ヒロインの家族以外の人物は悲喜こもごも、人生あるあるを辿るのに比して、中心となる家族の事情はやはり特殊だが、両者がタクシー会社という場所で共存しているのが不思議である。従業員や関係者がある程度「過去」を知っている様子であるのも(やや曖昧に見えた部分もあったが)不思議なバランスで、この日常の帰趨には興味がそそられる。
KAKUTAお得意の笑いは吃音の長男(若狭)の妻(桑原)、男性目線では中々こうはフィーチャーされない「面倒くさい女性」キャラをうまく(可愛く)カリカチュアして見せていた。主人公が旅先で助けられた外国人のキャラ作りは(訛りも含め)芸の域。新米ドライバーの弟分だった男と恋人のカップルが訪れ終盤波乱を起こすが、主人公(母)の存在自体が波乱要因であり、このコミュニティの耐性を与えている。
この場所に横たわるぎこちなさや欠落が、言葉を当てられる事で埋まり、皆に収まり所が与えられ、芝居は終わる。シェイクスピア喜劇がフィナーレにもたらす統合は、戯曲がかくありたいモデル。KAKUTAらしい作品と言える。

明日ー1945年8月8日・長崎(2020年@シアターX)
演劇企画イロトリドリノハナ
シアターX(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
初日・・・♪
初演より倍くらい広い舞台・・・どんなセットになるか楽しみにしていた♪
しっかりしたセットで一安心・・・♪
強いて言えば床の間が上座に無い事か(笑)♪
初演より細かい所まで描いていて判り易かったのではないか♪

GIRLS TALK TO THE END
藤原たまえプロデュース
千本桜ホール(東京都)
2020/09/02 (水) ~ 2020/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
女性同士の関係を、リアルに可笑しく描いた舞台で、とても面白かったです!仲良さそうに見えても実は・・という感じとか、男性が絡んでくると、友情もへったくれもない感じとか「ある、ある」と納得してしまいました。役者さん達は、個々のキャラクターを熱演し、皆嵌っていました。ダンスも良く、テンポも良く、あっという間の時間でした。そして、役者さん達も主催の藤原さんも可愛かったです!

IN HER TWENTIES 2020
TOKYO PLAYERS COLLECTION
シアター風姿花伝(東京都)
2020/09/02 (水) ~ 2020/09/07 (月)公演終了

2020 みんなの春をやり直す
安住の地
シアターセブン(大阪府)
2020/09/05 (土) ~ 2020/09/06 (日)公演終了

かがみの孤城
ナッポス・ユナイテッド
サンシャイン劇場(東京都)
2020/08/28 (金) ~ 2020/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
東京千秋楽をライブ配信で観劇しました。
色々と演劇公演配信を観てきましたが、また新しい媒体。
今回は、ぴあライブストリーミング。
もう…感動的にハイクオリティでした。
映像的にも音質的にも最高品質、定点撮影ではなくスイッチング切り替えもあり、生配信でここまでのクオリティ、臨場感を出せるのかと…衝撃でした。
日本全国、いやむしろ世界各国、どこにいても皆等しく、今まさしくサンシャイン劇場で紡がれている時間を共有できる、感動です。

IN HER TWENTIES 2020
TOKYO PLAYERS COLLECTION
シアター風姿花伝(東京都)
2020/09/02 (水) ~ 2020/09/07 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
価格3,800円
観劇前は、柴幸男さんの『あゆみ』風作品かな?と思っていたが、フォーカスを20代に絞った為、上野友之さん独特のテイストが存分に発揮された、「演劇観たぞ〜!」と終演後に叫びたくなるような85分だった。
それにしても、20歳の頃に夢見た諸々が潰えていく過程は色々と滲みたなぁ。

鳥籠の城
ワイルドバンチ演劇団
ザムザ阿佐谷(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/07 (月)公演終了
満足度★★★★
ストーリーや個々のキャラクターも良く、ダンスあり殺陣ありのエンタメ性の高い舞台で、とても面白かったです。演技や殺陣に関しては、役者さんによって差はありましたが、皆の一生懸命さが伝わってきました。仲間への愛、男女の愛、友情や裏切りなど、色々な事が描かれていて観応えがあり、笑いあり涙腺が緩む部分もあり、とても良かったです。そして、鴉丸を演じた古田龍さんの動きと殺陣、キレがあってカッコ良過ぎました。良い舞台でした!

鳥籠の城
ワイルドバンチ演劇団
ザムザ阿佐谷(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/07 (月)公演終了
満足度★★★★
戦国物だから結構殺陣のシーンは多い。然し乍らホントに殺陣の決まっていたのは、鴉丸を演じた古田龍さんだけ。(追記後送華4つ☆)

畳子力学
あひるなんちゃら
駅前劇場(東京都)
2020/09/04 (金) ~ 2020/09/08 (火)公演終了

鳥籠の城
ワイルドバンチ演劇団
ザムザ阿佐谷(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/07 (月)公演終了
満足度★★★★★
たっぷり、目の前で、殺陣が観れて、すごーく感激しました。
すごーく満足でした。
ストーリーも、感動的でした。
ミュージカル的な要素もありとてもよかった。
時間的には、少し長くて、もう30分ぐらい短いと、楽だったかな。個人的には、つぐみ役の人が魅力的でした。
男性では、からす、と言われてた人、カッコよかった。
時代劇のお芝居って、めったにないので、とても楽しめました。
次回も、時代劇やってください。
待っています。

はじまりのうたが聞こえる
リブレセン 劇団離風霊船
日本聖書神学校 礼拝堂(東京都)
2020/09/01 (火) ~ 2020/09/06 (日)公演終了

あのコのDANCE
毛皮族
ザ・スズナリ(東京都)
2020/09/02 (水) ~ 2020/09/07 (月)公演終了
満足度★★★★
■110分強■
小ネタの連鎖で、ストーリーと呼べるようなものはなく、混沌とした印象の公演。内輪ノリが甚だしく、途中でゲンナリしてきたが、終盤の見せ場はそのマイナスを補って余りあるものでした。

知ラン・アンド・ガン!
劇団献身
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2020/09/04 (金) ~ 2020/09/13 (日)公演終了

ひとよ
KAKUTA
本多劇場(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/04 (金) 19:00
いい芝居を観せてもらった。余裕のある人は観るべし!
2011年にトラムで初演、2015年にザ・スズナリで再演した戯曲を、昨年、映画化されたことをきっかけにしたのか、再々演した。初演も再演も観ているけど、映画は観てない。
田舎のタクシー会社を舞台に、超DVな夫を、長男・長女・次男という子どもたちを救うためにも、殺す決断をした母親が、15年ぶりに帰って来る。自分が夫を殺したことで全てうまくいくと信じた母親と、殺人者の母親を持ったことで全てがくるった子どもたちとの落差や、周囲の人々の善意と世間の悪意やらの擦れ違いをも巧妙に描く。KAKUTAにしてはややダークな作品だが、人間を信じる終盤への展開は緊張感を持って観ていられる。
母親役が岡まゆみから渡辺えりに変わったが、それでテイストは変化するものの、良い舞台としてしっかり成立してる。初演からまいど豊が演じる、過去を持ってるらしい新人ドライバーがいい。複雑ながら気持ちよく帰路に付ける作品だった。

Killing Moon
DANCETERIA-ANNEX
WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)
2020/08/29 (土) ~ 2020/09/01 (火)公演終了

明日ー1945年8月8日・長崎(2020年@シアターX)
演劇企画イロトリドリノハナ
シアターX(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
明日と聞けば誰でも未来を明るいものと見做す。これがポピュリズムの反映である。然しサブタイトルにはーが入りーの後には1945年8月8日・長崎―と入る。タイトルが見事に示しているように今作の本質はこの点に在る。
Bチームに出演もしているが、今作の脚本・演出を担ったのは女優として活躍してきた森下知香さん。初演時も一所懸命に取り組んでいらしたが、今再演では、原作の読み込みが更に深くなっていた。脚・演出がことと相俟って照明は無論のこと舞台美術、音響も実に良い。(追記2020.9.27:02:34・華5つ☆)