
茄子の花、落つ
りゃんめんにゅーろん
未来ワークスタジオ(大阪府)
2021/09/23 (木) ~ 2021/09/30 (木)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
非合法な仕事斡旋など、裏で街を支えてきた男が死んだ。さびれた温泉街での殺人事件。
それぞれの価値観の違いが、ボタンを掛け違えてゆく…
水木たねさんと山本祐也さんの演技が上手すぎる!
二人芝居だけど一人芝居のような構成で、話の展開が面白い!
これで500円は安すぎる。

『動ける/動けない 言える/言えない』を考えるWS 試演会
升味企画
アトリエ春風舎(東京都)
2021/10/24 (日) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
出演者観客共に若い層。「試演会」のレベルや如何に、とフタを開けた一作目はどっと疲れて後悔が過ぎったが二作目、三作目は収穫であった。椅子にじっと座る、という行為はそもそも苦行であった(幸運な事にそのことを忘れていた)。目の前の現象によって苦痛を忘れ、心が動き活力が湧く。血流、脳内分泌物の力。演劇とはナゾな代物である。

紙屋悦子の青春【9月28日~29日公演中止】
(公財)可児市文化芸術振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/28 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最も楽しみにしていた公演の一つ。観劇叶って幸福である。
黒木和雄晩年の監督作として題名を知っていたのが実は松田正隆原作と知り、数年前に映画版を見た、という記憶だけ持って(ストーリーを思い出さず)劇場へ。もっとも私めこの度は俳優陣に注目。「あつい胸さわぎ」の枝元、昨年4公演で目にした(突如現れた感ある)新人平体もさる事ながら、私としては文化座藤原氏、過去客演もあったが今回のようなプロデュース色の強い公演で、どんな存在感を発揮するか等楽しみに開幕を待つ。その部分の関心についてのみ言えば、無言の嘆息。脇役だがある意味での主役、誰もがやれる訳でない役どころを存分に形象していた。
あ、と映画を思い出したのは兵士二人が悦子の実家を訪れ、卓に置かれた布のかぶさった皿の中身が「おはぎ」らしい(昨夜女らが話していた)と気付いた時。見合い相手の男がこれをパクパクと食う。情感豊かなシーンである。
小さな、町の片隅に生まれてやがて消えて行く人生を体現する平体の小さな体、飛行機もろとも消えた思い人の命(同僚を見合い相手として彼女に紹介した)を、無言で見つめる小さな眼差し。おっちょこちょいだが実直で、今思いついた好意を伝える表現としてひたすらおはぎを食べ続ける今日婚約者となった男。悦子の思いを知り、最後の挨拶に来た青年との最後の時を悦子に与えようと必死に立ち回る義姉(女学校時代の親友で兄の嫁)、その夫。プロデュース公演色もゼロではなかったが、ala発舞台の前例に違わぬ温もりのある上質な舞台だった。

楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~
アン・ラト(unrato)
赤坂RED/THEATER(東京都)
2021/10/16 (土) ~ 2021/10/24 (日)公演終了

『動ける/動けない 言える/言えない』を考えるWS 試演会
升味企画
アトリエ春風舎(東京都)
2021/10/24 (日) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
■約65分■
ワークショップのテーマである「『動ける/動けない 言える/言えない』を考える」と、上演された3作品がどう繋がるのか、解説が欲しかった。
それはそれとして、単純に作品として興味を惹かれたのは、中島梓織脚本・升味加耀演出の一編目『けんかできない』。“喧嘩すること”“泣くこと”を演劇を使って哲学していて、胸に留まる、箴言めいた名ゼリフが多々あった。
二編目『温気』は、ありがちな幽霊譚。もっと尺を取って当然の内容を無理やり25分ほどに収めてあるため、状況説明の省略が多すぎてとても分かりづらかった。

或る、ノライヌ
KAKUTA
すみだパークシアター倉(東京都)
2021/09/25 (土) ~ 2021/10/05 (火)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
劇場で観劇し、配信も観たのは確か初めて。eplus streamingだったが音声、画像ともに実演のクオリティに見劣りせずがっつりと「観劇」できた。
複数のエピソードとそれにマッチしたディテイル、また戯曲上のアイデアが詰まった劇。宿命的に受動的である人間が、新たな風景の中から能動性の欠片を探すのに「旅」は相応しく、車窓の景色のように移り変わる場面に二時間四十五分はあっと言う間に過ぎる。かつお、という名の犬の目線が効果的だが、飼い主を渡り歩くかつおと、彼が町や旅先で遭遇する「人生の師匠」ジョージの姿は寄る辺ない人間存在を象徴してもいる。
幾つもの印象的な台詞、おいしい場面、心から愛おしく感じられる人物たち。
出演者全てが劇団員という、KAKUTAなる集団の成り立ちも独特である。

シャンデリヤvol.2
U-33project
高田馬場ラビネスト(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了

解放区
GROUP THEATRE
浅草九劇(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
とても哲学的というか、舞台の中で舞台みたいな感じがしました。やや難しい印象でした
演者の皆さんの演技はとても良かったと思います。セットもこだわりが感じられました。
次回も頑張ってくださいね

シャンデリヤvol.2
U-33project
高田馬場ラビネスト(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
肩肘張らずに面白かったとは思いますが、意図がわからなかったところも多々ありました。前作から拝見してますが、少し説明不足なのか、解釈に難しい部分があるように感じました。最後の夜迷荘の殺人よかっですね。あれ一本で見てみたいですね。次回も頑張ってください

流刑人走る。
百化竜嵐
荻窪小劇場(東京都)
2021/10/21 (木) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
時代劇は難しいと思いますが、狭い空間で殺陣も頑張ってたと思います。お話はちょっとご都合的なところもありましたが、まあ、難しいことを言わなければ楽しめたと思います。元気があってよいのですが、声はもう少しおさえても良かったかもですね。こんな時期ですが公演お疲れさまでした

流刑人走る。
百化竜嵐
荻窪小劇場(東京都)
2021/10/21 (木) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
着物の着方や刀の挿し方など、着付けの面で気になる役者さんがほとんどでした。
脚本に関しても、キャラクターの繋がりは無意味に広く浅く感じ、不必要に感じるやりとりも多かったように思いました。正直、不必要に感じる役もありました。二人の主人公にもっとスポットを当てたシンプルなお話にしても良かったと思います。
演出、照明、音響、舞台セットも特に効果的だと思う部分は少なく、殺陣も一部を除いてはあまり楽しめるものではありませんでした。
きつい書き方をしてしまい申し訳ありませんが、今後のご活躍を期待しております。

熱海殺人事件 東京公演
春匠
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
今まで観てきた熱海殺人事件は、怒涛の如く台詞の早い物ばかりでしたが、この舞台は、台詞が少しゆったりめで落ち着いた印象に感じました。伝兵衛を演じた春田さんの貫禄、個性溢れる登場人物達、笑いあり感動ありで、とても観応えがありました。面白かったです!

『動ける/動けない 言える/言えない』を考えるWS 試演会
升味企画
アトリエ春風舎(東京都)
2021/10/24 (日) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/10/24 (日)
価格2,000円
アトリエ春風舎での、升味企画「『動ける/動けない 言える/言えない』を考えるWS 試演会」16時半開演回(69分)を拝見。
あくまでもWSの"成果発表会"だという前提で拝見したが、3本の短編のうち2本目の『湿気』が予想外にエンタメ感⁉︎があって楽しめた。

傀-KAI-
関西大学劇団万絵巻
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2021/10/23 (土) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
殺陣も上手かったし、内容も良かった。舞台にほとんどお金をかけていなく、入った時は不安でしたが大満足。昔は関学の方がレベル高かったけど、今は関大の方が高い。今後も期待しています‼️

トリツカレ男
ナッポス・ユナイテッド
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2021/10/16 (土) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ロマンティックで面白くてしかもクライマックスではたっぷりと泣かせてくれる王道演劇。キャラメルボックスを中心に演劇界の人気者が集まったスペシャルな舞台。
緊急事態宣言が明け、劇場で演劇が気兼ねなく見られることの幸せをあらためて感じさせてくれた。
12月のキャラメルボックス復活公演が100倍楽しみになった。

フライングフィッシュストーリー
劇団 ユニットWOW!!
天満天六・音太小屋(大阪府)
2021/10/22 (金) ~ 2021/10/25 (月)公演終了
満足度★★★★
本劇団らしいハートフルコメディ。ほっこりできました。毎回違った若い客演を使い、主役に近い立場を与えている。次回にも、期待します‼️

プール!
演劇ユニットカンタロウ
戸山公園箱根山地区 陸軍戸山学校軍楽隊野外演奏場跡(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
初めて来たこの会場。日曜の昼は晴天で、鳥の声や風の音、時折響いてくる子供たちの声なども気持ちよかった。肝心の本編、序盤はこれは拾い物かもと期待したのだが、中盤からちょっと失速した感があるのは、あの問題とのバランスが今イチだったからかも。ヒロイン役の演者さんがチャーミングでした。

シャンデリヤvol.2
U-33project
高田馬場ラビネスト(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
評判が目茶苦茶悪い為、相当つまらないのでは?と構えたがまあ許容範囲。この作家、笑いのセンスは壊滅的に無い。面白いことをする事が笑いなのではなく、普通な事をしていても可笑しな情景は多々ある。コンビニ店員の男が派手にキモい男をアピールするのだが、全く方向性が逆向き。一生懸命普通を装いつつ、どうしても零れ落ちてしまうリアルさこそが笑い。兎に角演出のテンポがのろい。観客の脳内思考判断の先へ先へと駒を進めてこそが喜劇。笑いは”カルチャーギャップ“と“間”なのだ。
観客の散々募らされた鬱憤がラストの『夜迷い荘殺人事件』にて大爆発。これは普通に面白い。小泉愛美香(あみか)さんとまひたんさんにはセンスを感じる。小泉さんの「取り敢えず出ましょう」は名台詞。観客もドッカンドッカン沸いていた。外山(とやま)達也氏の刑事も観客の準拠枠として機能。

Jeanne
鬼の居ぬ間に
「劇」小劇場(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
ジャンヌ・ダルクと云えば、ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』を観たような気がするが全く記憶にない。ゴダールの『女と男のいる舗道』で娼婦ナナ(アンナ・カリーナ)が映画館でそれを観て涙を流す名シーンの方が印象的。
ちなみにジャンヌの故郷のドンレミ村は上野のドンレミー・アウトレット店(激安スイーツ販売で有名)の語源にもなったとのこと。
主演の奥野亮子さんが美しい。19歳で火刑に処せられることとなる、600年前フランスの軍隊を率いて戦った男装の少女に相応しいカリスマ性。神のお告げを聞いた片田舎の農夫の娘が王太子シャルルの下を訪ね、軍の指揮を任される。戦意高揚の旗印としての宣伝効果を狙ったものだろうが連戦連勝、シャルル7世の戴冠に貢献することとなる。だがイングランド軍に捕らわれるとシャルル7世は見捨て、見せしめの異端審問で虐め抜かれて死刑。その裁判記録が克明に残っており、余りの非論理的な遣り取りにうんざりする。
ドンレミ村の幼馴染役笠島智さんも印象に残る。時節柄、眞子さまに似てるなあと思った。
執行官役菊池豪氏は『一九一一年』の良心的弁護士役が記憶に残る。今作では『ベルセルク』の異端審問官モズグスを思わせる強烈なキャラクター。
ジャンヌの母親役田中千佳子さんの秘められた胸の内が物語のキーとなる。
1431年のジャンヌ・ダルクの異端審問と1455年のジャンヌ・ダルク復権裁判が同時進行で語られていく。前者では彼女を見棄てたシャルル7世(伊藤俊輔氏)が何故今頃こんな申し立てをするに至ったのか?それにはある女性(小口ふみかさん)の登場が関係してくる。

紙屋悦子の青春【9月28日~29日公演中止】
(公財)可児市文化芸術振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/28 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#紙屋悦子の青春
昨年、読売演劇大賞の優秀女優賞を受賞した #枝元萌 さんと、文学座の期待の新人 #平体まひろ さんが同級生で義姉妹という配役。その効果もあってか、とっても可愛らしい枝元さんと、少し大人びた平体さんを拝見することができて楽しかった。
今作の根底にあるのは、恋も夫婦愛を含めた家族愛も包み込んだ愛情。そして戦争反対。それらの基盤は「おもてなし」の心であり、その象徴がお茶だ。「お茶ば飲みましょ」というセリフが『あなたを大切に思っています』に聞こえてくる。大切な人との時間が永遠ではないことを痛感しているからこそ、今日の続きを求め、ずっと続くと信じることで自分を勇気づける。
最近、古き良き時代とは何かを考えるようになった。今が生きやすいかと問われれば頷けないけれど、一家の大黒柱という父が君臨する昭和が素晴らしいとも言いきれない。ここでは #岸槌隆至 さんが家父長制度の象徴のような存在の兄を演じる。その声の圧が、あの敗戦までの日本の国家主義や男尊女卑の根強さを実感させた。もちろん溢れるほどの愛情があるのだけれど、かつての日本に染み付いた皇国の常識に縛られた人々の姿が映る。
国家に、性差別に押さえつけられ、大切な人の出征に心とは裏腹の言葉を発しなければならない女性の姿が痛々しい。それでも、単身赴任の夫の帰省に心躍らせたり短さに拗ねたりする妻は、なんとも可愛らしく愛しい。二人の女優さんが去り際に見せた"その場"に想いを残す雄弁な視線に射抜かれた。
枝元さんの表情を観ているだけで幸せになれるのだが、星めぐりの歌、ゴンドラの唄の鼻歌にも心を擽られる。平体さんは七色の「はい」を使い分け、淡く、それでいて確かに作品を彩った。
戦争の前後には、兄弟の嫁や恋人、親友の嫁や恋人との縁談があった。捻れた悲愛。想いを抑え或いは押し殺し託す愛と、託された愛。それを承知で受け入れ受け止める愛。飲み込んだ想いを絶筆の告白で吐き出さねば飛び立てなかった死への恐怖と理不尽な戦争への怒りと絶望。それを背負った夫婦は果たして幸せだったのだろうか。
桜を見上げ、さざ波に耳を傾け、未来に目を向けた二人。やがて車椅子を押し「お父さん」と呼ぶ女と、お父さんになった男が辿った共に歩んだ人生。描かれた二つの時間に見える二人の関係性から、狭間の時間に想いを馳せる。
車椅子から降りる際の介助で左足を叩く仕草や、壁の向こうの廊下の様子を可視化させた #藤井ごう さんの演出が光った。
#長谷川敦央 さんの因業な年寄りも #藤原章寛 さんの一本気な若者も、どちらも声が美しかった。
美しさで言えば、満開のあの花とヒラヒラと舞うそれが、谷崎潤一郎『細雪』のラストのようでウットリ。ひとつ欲を言えば、本編の居間を畳に廊下を板張りにしてほしかったなぁ。最初のシーンを工夫すればなんとか……。
しみじみとほんのりを味わえる秀作、たくさんの人に観て欲しい。