実演鑑賞
満足度★★★★
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世田谷パブリックシアターにて前川知大(劇団・イキウメ)の奇ッ怪~其の弐を観劇。
前作の奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話の続編。
寺の住職の息子が、廃墟家した実家の寺を訪ねてみると、そこにはホームレスが住みついていて、その彼から語られる怪談話し。ホームレスが語り始めると、素の舞台と俳優が一瞬にして異次元に移動して、恐怖の世界へ導かれる。それも舞台美術の展開もなく、あくまでも俳優の演技で場面展開する辺りが、前川知大の18番である。上手い役者の使い分けと戯曲の巧妙さ、そして無骨な芝居をする仲村トオルの扱いが抜群で、もしかしたら舞台向き?と思ってしまうほど仲村トオルの芝居は前川知大の下だと実力を発揮する。そしてこれだけの役者と戯曲が揃ってしまえば、後は前川知大の世界観を楽しむだけである。2009年の傑作舞台と言われている前作に劣らずに、今作も全く期待を裏切らない舞台だった。
大好きな内田慈の活躍も嬉しい。
実演鑑賞
満足度★★★
五反田団の前田司朗の新作は円との共作だ。
おとぼけ前田司朗は円をめった切りにするだろうか?それとも円の俳優人はこんな演劇を演じた事がない!と行って劇団を辞めてしまうだろうか?
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満足度★★★★
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そして遂に演劇界の新しい天才に出会ったのです。歴史に名を残している演劇人は寺山修司、唐十郎、つかこうへい、蜷川幸雄、野田秀樹ですが、その新しい天才とはバナナ学園純情乙女組の演出家・二階堂瞳子。寺山修司の観客参加型の演劇、唐十郎の劇場体験、蜷川幸雄の群集劇、つかこうへいの汗と唾、野田秀樹の走り回る演劇。天才が行ってきた事を全て網羅しすぎているほどの芝居が行われているのです。誰にも決して真似できない、誰にも決して考え付かないほどオリジナリティーに溢れているのです。その二階堂瞳子の演劇とは、革命に燃えている学生か?文化大革命の紅衛兵か?トチ狂った宗教団体か?秋葉アイドルに熱中しているオタクか?ネット依存症の集団か?人間が狂喜に走っていて、もう誰にも止められない姿を、常に50人近い俳優が狭い劇場を90分間休まず狂乱しているのです。野田秀樹の迷言?演劇とはスポーツだ!なら、二階堂瞳子にとって演劇とは?????だろうか?
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満足度★★★
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劇団・少年社中の天守物語を観劇。
劇研(早稲田演劇研究会)に所属していたので、初見ながら期待をもって観ました。
物語は人間と妖怪が共栄共存出来るか?という話をエンターティメントにもっていき、派手な衣装、凝った照明、すごいセット、アクションと最近の若手劇団にはない演劇構造を元に、しっかりと面白さを追求している。俳優も声音、肉体が訓練されていて見ていてうっとりする。だが残念だったのは、市川猿之助のスーパー歌舞伎や劇団・新感線と全く同じ路線をたどっていて、物足りなさを感じた。演出家が映画から受けている影響が強いのか、映画の舞台版を観ているようで、生舞台での体感をさせてくれなかったのがもったいない。見た事のないエンターテイメントを作りだすのは難しだろうが、今作は脚色でオリジナル戯曲ではなかったので、次に期待しよう。この劇団は実力はありと見た!
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満足度★★★
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岸田戯曲賞を取った松井周の劇団・サンプルのゲヘナにてを観劇。
自称・太宰治に翻弄される人達の話だったようだが、さっぱり理解出来なかった。どんな内容か?とも説明出来ない舞台だった。訳の分からない観念的な舞台ならそれはそれで良いのだが、観念的ではなく、太宰治を読んでいれば理解出来るのか?というとまた違うようだ。終了後の岩井秀人(ハイバイ)と松井周のトークショーで、実はお客のほとんどが理解出来てない事が判明。その辺りを岩井秀人が突っ込んで聞いてくれて、何となく理解した気がした。でも人には内容を出来ない状況は変わらず。
お勧め出来ないが、世間では期待の劇作家と思われているのは間違いないようだ。
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満足度★★★★
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城山羊の会のメガネ夫婦のイスタンブール旅行記。
タイトルからすると旅の話と思いきや、一匹の猫の死から、夫婦、隣人の関係性へ繋がっていく。そしてシリアスな展開から入って行き、不条理、笑い(クスクス~ゲラゲラ)と狙ったような大笑いの芝居になっていく。上手い展開の見せ方で、別な意味での起承転結という言葉がピッタリとハマりそうだ。やや五反田団に似ているか?と思われるが、五反田団はおとぼけ、クスクス、まるで偶然に芝居が出来あがったように見せる上手さがあるが、城山羊の会は、作られた笑い、狙った笑い、生芝居でしか得られない笑いで上手く見せている感じだ。作・演出の山内ケンジはCMディレクターだ。僕がアシスタントの頃に一本だけ仕事をした事があるがまさか?その方だとは思わなかった。この芝居を観て損はしない。
かなりお勧め!
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満足度★★★★★
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三軒茶屋のシアタートラムで劇団・阿佐ヶ谷スパイダースの新作・荒野に立つを観劇。
長塚圭史がイギリス留学後の劇団での2作目の新作。
精神に不安を抱えている女性がある日、探偵から貴女の目玉、片方無くしてませんか?という問いかけに自分の目玉を探しに行く話である。彼女の生活と目玉を探しに行く彼女の旅を二重構造で描いていく。断片的な展開の羅列や、別々に描いていた二重構造の世界が簡単に繋がっていたり、これは何かの比喩か?と思わせぶりで全く関係ない構成で舞台は進行していく。見ている観客は明らかに混乱していくが、観客は見ながらフルスロットルで想像力駆使していき、勝手に展開を繋ぎ合わせる行為を楽しみながら舞台を観ていく。これこそ長塚圭史にしか出来ない舞台でしか味わえない演劇での楽しさを満喫させてくれる。どうみてもこれは明らかに玄人向けの芝居。今までの長塚ファンは間違いなく離れていくだろうが、演劇の新しい表現方法と長塚圭史の枯れない才能に喜びを感じる。そしてこれを楽しめないようじゃ演劇を観る資格なし!
今回は、大好きな女優・佐藤みゆきの活躍の場があまりなくて残念。
観客席には多数の芸能人を発見。そして斜め前に行定監督を発見(芝居小屋で見かけるのはこれで5回目)
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長塚圭史・新ロイヤル大衆舎の『花と龍』を観劇。
何度も映画化されている玉井金五郎の物語。
明治時代終わりの北九州・若松港。
港から船へ石炭の積み込み荷役労働者(ゴンゾ)たちは安い賃金でこき使われ不満を抱いている。ヤクザも登場し、派手なアクションや任侠ものになるのか?とも感じたが、長塚圭史なのでなる訳はない。
出世意欲があるでもない玉井金五郎だが、一向に良くならない生活の為に労働組合を作ろうと奮闘する姿と妻・マンの夫婦の物語だ。
話の流れでヤクザの抗争の見せ場もありながら、ゴンゾたちの貧しい生活を描くのを忘れていない。ヤクザ、賭博、遊郭、玉井金五郎の色恋も描かれていて、波乱万丈の物語と錯覚してしまいそうだが、搾取する側(ヤクザ)とされる側(ゴンゾ)が物語の要になっている。
時代背景を鑑みると資本主義と社会主義との対決と看板をあげて描くことも出来るが、仲間のために生活を良くしたく労働組合を作ろうとする純粋な玉井金五郎の生き方に震えてしまう。
その看板を大きくあげて物語を進行していないからか、あの時代にすんなり入れるのは確かだが、背景を感じながら観劇していくと一層深まっていくだろう。
長塚圭史は決してテーマを表に見せない作劇の上手さが阿佐ヶ谷スパイダースでは際立っていて、困惑と面白さを見出すファンは沢山いるが、大衆向けに作られている今作でもそこは外していない。長塚圭史の作品になっているのだ。
開演前に舞台セットに作られた屋台で、焼き鳥やら焼きそば、アルコールなどの飲食が売られていて、客席で観劇しながら飲んだり食べたりしてもよく、試行を凝らしている。値段も安いようである。一般の劇場がこのような試みをするのはないので、お勧めである。
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満足度★★★★
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ONEOR8の『誕生の日』を観劇。
あらすじ:
バーを経営している加寿美の店では様々な客が訪れている。
人生の話し相手として客の悩みを聞いたりして、流行っているようだ。
そこで高校時代の友人たちが、店の10周年を記念してパーティーを開催するが、記念のビデオを作成するフリーディレクターが、加寿美と友人たちの関係を暴露してしまい、混乱を極めてしまうのであった…。
感想:
小さい頃から男性のような成り立ちをしているから、恋愛をすることを諦めてしまい、自我を殺したまま40歳まで生きてしまった加寿美の人生に、疑問を呈する闖入者に唖然とした観客は全員であろう。
誰にでもある淡い高校時代の思い出が挿入されながら、彼女が何故?このような生き方しか出来なかったのかが描かれている。性同一障害の悩みを抱えているからか?と勘繰りながらも、成長と共に生きていく難しさに焦点がゆっくり合っていく。
少年時代から青年、大人になり、自我の成長と共に他者との関係を築きながら、上手くいかない箇所は諦め、都合よく生きてしまった人生。己の生き方を振り返りながら観劇している観客の心理と物語の構成の流れが見事なまでに合致しているからか、闖入者の暴露に加寿美と共に反応してしまう我々はそこにいるのだ。劇作家の狙いに「お見事!」なんて言っている暇はないほど混乱してしまったのは確かだ。
見事な作劇であった。
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劇団た組『ドードーが落下する』を観劇。
岸田戯曲賞作品
あらすじ:お笑い芸人・夏目は相方と日々ネタ合わせを行なっているが、思うように芸人として歩めていないようだ。相方・賢も介護士の資格を取り、将来の先行きを悩んでいる。
そんな中、夏目に神から声が届くようになり、現実と妄想の世界を彷徨ってしまうのであった…。
感想:統合失調症を抱えながら生きていく辛さと彼に関わる友人、知人、家族との軋轢が描かれている。周りには理解されないと知りながら、ひた隠しに生きていく夏目。知らず知らずのうちに周りに迷惑をかけ、彼の行動は仕方ないと理解しつつ、登場人物と観客は落ち着かない。 時間軸が現在から近い過去へ行ったり来たりする手法は過去作でも行なっているが、あまり意味がないようだ。 他者との関わりの居心地の悪さを終始感じさせる展開は気分が悪く、終着点を見出したいが、それすら見えない終わりに向かっている。 ラストで夏目の妄想と現実の狭間いる平原テツの芝居は圧巻で、生々しくて恐怖すら感じてしまう。これを真に感じることが今作の描きたかったこのなのだろうか? 演劇を生で観ることの喜びすら感じる瞬間でもあったのだ。
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満足度★★★★
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二兎社『こんばんは、父さん』を観劇。
息子に小さな工場を継がせたくない父と父親のような職人になりたいと憧れを持つ息子。
互いの思いは通じず、息子は父の期待通りの職業に就き成功者になるが、投資で失敗し借金を重ねて逃げ待っている。
工場経営は順調だったが、時代に取り残されてしまい、借金を重ねて夜逃げしてしまった父。
互いに借金取りから逃れた先は以前の住んでいた工場。そこに借金取りが現れ、父と息子の確執が暴かれていく。
最近では描く事が少なくなった父と息子の物語。終わりの見えない親子の罵り合いにうんざりしながら、亡くなった母の存在が浮き上がってくると、分かり合えなかった家族間の原因と物語の本筋が見え始めてくる。
闇金を借りてしまった古い昭和世代の父とその息子。金が簡単に稼げるから取り立て屋になった現代の若者。互いの世代感と価値観は違えども、『幸せイコール金を稼ぐ』という定義に翻弄されてしまった登場人物たち、いや我々へのメッセージは痛烈だ。
永井愛の戯曲は政治や社会の不正を描くことが多く、ついつい他人の出来事の様に見てしまいがちだが、先ずは己の足下を見る事が一番大事なのだという思いが切実に感じられる。
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城山羊の会『平和によるうしろめたさの為の』を観劇。
あらすじ:
W不倫の中年カップルが公園で逢瀬を楽しんでいる。そこに待ち合わせをしている若いカップルが現れるが、若い男性はW不倫の女性の元彼のようだ。そこに中年カップルの夫と妻が現れ混乱を極めるが、言い訳と言い逃れで難を逃れるも、疑心暗鬼になってしまったカップル、夫婦たちはよりを戻せるのだろうか…。
感想:
ここ最近の『城山羊の会』は以前とは違った作劇で観客をあっと言わせてしまう勢いがあり、そこに社会問題を含ませ一層面白くなっている。今作は初期の頃に近い、会話劇の男女関係の混乱から、誰もが予想だにしなかった展開になっていく。前作がすこぶる面白かっただけに、過去作に似た感じからか?失望感があったのは否めない(過去に12本も観ているので期待値は高いのはしょうがない)
あり得ない偶然による偶然、更なるの偶然の展開が、ご都合主義に思えず、不自然さを感じないのが劇作家・山内ケンジの絶対的な魅力だろう。今作もその面白さが際立っていて、失望感を感じつつも、満足してしまったのだ。
誰もがひた隠しにする男女の秘め事を物語の中心に持ってきて、登場人物たちが大いにエロを謳歌している中、観客も彼らの様になりたいと羨望の眼差しで眺めながら、いやらしい気分にさせてくれるのだ。結果、うしろめたさを感じているのは我々なのだ。
下北沢と三鷹の劇場での公演が交互だが、三鷹の劇場だと大胆な作風になるのは間違いないようだ。
次回作は三鷹での公演を期待しよう!
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満足度★★★★
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こまつ座『太鼓をたたいて笛ふいて』を観劇。
売れっ子作家・林芙美子に原稿の催促に来ている編集者。
沢山の依頼を抱え、遅々として進まないと知りながらも、新たにラジオ界への進出を提案するのだ。
そんな最中、戦争が始まり編集者は内閣情報部員として彼女を戦地に赴かせ、戦争を高揚させる文章を書かせるが、戦地での酷い出来事を目撃する度に、日本という国に疑問を呈するのであった…。
林芙美子の人生を眺めながら、日本が行った戦争について疑問を投げかけている内容だ。
井上ひさし作品はどれもそうだが、市井の人たちからの目線で描かれて、登場人物たちと一緒に疑問を感じ、同じ様な考えに至るという流れになっている。
知られざる林芙美子の内面と生き様に共感し、力がみなぎり、涙腺が緩み、「満足した」と思えども、観劇後には一瞬立ち止まり、描かれているテーマを改めて反芻してしまうのが井上ひさしの底力なのだ。
野田秀樹や平田オリザの描き方とは異なり、演劇的興奮や刺激はないが、テーマを直接的に客席に投げかけられると、逃げられなくなってしまうのだ。
林芙美子を演じた『大竹しのぶ』は勿論だが、林キク(母親)を演じた劇団☆新感線の『高田聖子』の芸の幅の広さには驚きしかない。
『近藤公園」も抜群だ。
『井上ひさし』の戯曲のみ公演する『こまつ座』だが、一度ぐらいは観ることを勧める。
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満足度★★★
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マーティン・マクドナー『ピローマン』を観劇。
『ピローマン』といば長塚圭史の作品と言われていたほど、翻訳劇で有名になった戯曲。
当時は長塚圭史のオリジナルだと思っていたが違っていたようだ。
再演する機会もなく、今回にやっと観劇。ただ演出は小川絵梨子。
作家・カトゥリアンは自分が書いた物語の影響で、殺害が行われてしまい勾留されている。実行したのは障害者の兄・ミハエルである。
刑事たちはカトゥリアンが書いた物語を読みときながら事件の真相に迫っていくが、物語を読み込めば読み込むほど現実と虚構が入り混じってしまい、何が本当なのか分からなくなってしまう。
あっさりと兄が物語の筋書き通りに罪を犯したことを認める。
カトゥリアンは死刑を宣告されるも、自分の書いた物語だけは社会から消さないでほしい懇願するのだが…。
独裁政権下で、自由が奪われた時にこそ、物語が社会に与える影響下を謳っている。現実の世界情勢を鑑みると、いかに物語が我々に力を与え、行動力の種になるかを感じる事が出来る。特に共産圏は自由な物語への怖さに怖気づいているのだろう、国民への締め付けは大きい。
独裁政権下の設定なので、昔の作家かと思いきや現代の劇作家だ。住む場所が違うとテーマの描き方がこんなにも変わってくると実感するのが翻訳劇の面白さでもある。
翻訳劇は興味がないので、有名なマーティン・マクドナーすら見たいと思わなかったが、どうやら外してはいけない作家になったようだ。
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満足度★★★★
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THE ROB CARLTON 18F『ザ・スタボーンズ』を観劇。
三鷹市立芸術文化センターの期待の若手劇団シリーズ。
絶対に面白くないと確信を持ったので、情報を一切得ずに観たのだったが…。
第一部:とある外国の伝統的な建物で、バッソ、ドルベルト、ファロニアが大事な会議を行おうとしている。彼らは将来有望な企業家であり、政治家で、野心満々だ。彼らの共通言語は日本語で、辿々しいながらも言葉を操る事が出来るようだ。
いざ話し合いが始まるが、言葉の意味の取り違えで、会話は混乱に混乱を極め、大事な会議どころではなく、「我々は一体全体何を話しているのだ?」というカオス状態になってしまう。
第二部:その30年後、彼らは社会的地位を得て立派になり、改めて同じ会議室で懐かしみながら当時の思い出話しをするが、各々の曖昧な記憶違いでまたもや混乱に混乱を極め、「我々は一体全体何を話しているのだ?」と同じようなカオス状態が起きてしまう。
第三部:その各々の記憶違いを基に、当時と同じ物語を再現してみると、「一体全体何が起きていたのかが分からない」というカオスにすらならない状態になってしまうのであった。
『日本語の意味の取り違え』『曖昧な記憶』だけをテーマに、人間の混乱の様子を描いている。
たったこれだけのテーマだけで、こんなに面白い会話劇を成立させてしまう戯曲力と演出力に圧倒される。
もう面白いのなんのって、興奮しまくりであった。
追っかけ劇団決定である。
今年のNo.1の予感がする。
お勧めである。
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満足度★★★★
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『ドリル魂2024』
朝日新聞の劇評が良かったので観劇を決意。
無名な劇団をいつも取り上げているのが信用出来る証だ。
育成中の俳優など、若手の俳優陣を多数集めての公演だ。
不良少年、外国人の出稼ぎ労働、在日問題、恋愛模様、借金取り、耐震偽造など、建築現場内で起きる問題を社会の縮図として描いているので、展開には事欠かない。現場に使う道具で、がなり立てる音と激しい音楽が混ざり、興奮するミュージカルになっている。
タップダンス、大道芸、美しい歌声、バレエダンス、歌舞伎の技法などが満載で、一瞬たりとも飽きることがない。翌日になっても未だに興奮冷めやらないが、それ以上に若手俳優の熱気だ。『つかこうへいの所に行け!』と言いたくなるくらい熱く、最大の見所だ。彼らの姿を見てるだけで涙腺が緩む。
作・演出は横内謙介だ。彼はつかこうへい信奉者で、つかの戯曲を度々公演しており、『つかこうへい』を感じたいなら、今や横内謙介だけだろう。
なにはともあれ、興奮のるツボとはまさしく今作の建築現場だ。
お勧め。
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満足度★★★★
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かるがも団地『三ノ輪の三姉妹』を観劇。
三鷹市芸術文化センターの期待の若手劇団シリーズ。
あらすじ:
母と二人暮らしの三人姉妹の次女・箕輪葉月。
長女(苑子)は行方不明で、三女(茜)は独り暮らしをしている。
そんな最中、母の余命がいくばくもないのをきっかけに、ばらばらになった三人姉妹の仲を元に戻そうと葉月は奮闘するのだが…。
感想:
粗筋から何となく想像出来るが、期待を裏切らない物語を見ることが出来る。
三人姉妹の人生の歩みから、どのように苦しみながら、生きてきたか?
と各エピソード毎に描き、最後は三人姉妹が母の死に目に遭うという分かりやすい流れだ。
演劇には常に劇的な展開を期待しつつ、物足りないと今作を感じてしまいがちだが、人間の死、肉親、姉妹との確執など「己の身に降りかかってきたら、とんでもない事だ!」と身に沁みてしまうのだ。
でも..、今作は大きな感動もないのに何故良作に感じてしまうのだろう?
俳優の力量?
演出力?
チェーホフ似の物語?
それは構成力の上手さだ。
場面毎のつなぎの短い箇所は、厄介な人間関係を小芝居で笑わせながらサラッと描き、一気に本筋に落とし込んでいくのだ。そのせいか毎場面ごとがクライマックスを見ているような錯覚を覚え、しっかりと染み込んでくるのだ。構成力は俳優の演技力あっての賜物だ。
この演出家、綿密に作り込んでいながら、俳優の力量を一番に信じているのは確かだ。
今後の追っかけ劇団になるかは分からないが、目が離せないのは間違いない。
実演鑑賞
満足度★★★★
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劇団チャリT企画『Re:プレイバックpart3』を観劇。
以前に5本ほど観ていて、『ネズミ狩り』『死の町』が傑作であった。
あらすじ:
音信不通の叔父さんが自宅アパートで亡くなっていた為、後片付けにきた姪っ子。
部屋はある程度片付いていたが、一本のカセットテープが見つかる。
聞いてみると叔父さんの遺書のようで、独白を聞いているうちに、日航機墜落事件の新たなる真実を語っているようなのだが…。
感想:
カセットテープの内容は、自衛隊が墜落現場で人命を救助せずに、墜落原因の証拠集めをしていたという事実から、それを世に訴えようとした自衛隊員が何人も暗殺された、という仮説の物語が進んでいく。
初めにテープから聞こえた一瞬のノイズが、何の音か分かった観客は瞬時に物語に没入出来るのだ。
ノイズを聞き分けた瞬間が物語の入り口だが、聞いたことのない人には全く分からない仕掛けでもある。
「何故、人命を優先せずに、証拠集めに奔走したのか?」
墜落の原因は自衛隊が絡んでいたのだ!ととんでもない仮説を立てて物語が進んでいくが、遺族への思い、残された家族、事件の真相と作家の視線は優しいが、ハリウッド並みに逃げたり、追われたりのドタバタの展開と事件を笑い飛ばしてしまおう!という作劇は面白く、面白さは存分にある。90分ながらも、ゾッとする結末が待っているが、中身の充実度からか、事件について改めて考えてみようと思った観客は多数いただろう。
リサーチ力、執筆力が確かな劇団で、作風は違えども、社会への眼差しは『野田秀樹』『平田オリザ』に引けを取らないほどだ。
今作も面白いのである。
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満足度★★★
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西瓜糖『かえる』を観劇。
初見の劇団。
あらすじ:
太平洋戦争末期、中野の自宅が焼けてしまい、初老の父と妹、次男の嫁の三人が葉山に越してくる。そこに不在だった次男(作家)が愛人とその娘を連れてきて、一緒に住むことになる。
貸家の大家さん、傷痍軍人、看護師、女性編集者などが出入りし、貧しいながらも、賑やかな生活を送っている。だが敗戦が濃厚になってくると、互いの感情が爆発し、手に負えない状況になってしまうのであった…。
感想;
戦火の中で、人がどのように変わってしまうのか?が描かれている。戦争体験がなくとも、未だに他国では戦争が行われているという観点で見ていくと劇作家のテーマが見えてくる。
軍国主義の父親、それに反する次男、狂気に走ってしまう傷痍軍人、新たなる生きる道を模索する若者たちなど、被害を被るの市井の人たちの苦しみは辛い。
ただ時間と共に不満を感じるのが、経験のない未知の時代を直接的に描くのは正しい方法論かもしれないが、誰もがやっているからか、凡庸に見えてしまい、何も迫ってこないのだ。狙いは明らかなだけに、知らない時代を見れる興奮と演劇的興奮が交差してこないのだ。野田秀樹、平田オリザ、古川健らの刺激を求めないにせよ、戦時中を描くには独自の視点で攻めていかないと、重いテーマが劇場を後にした瞬間に消えてしまうのだ。だからか二重の含みを持つタイトルの『かえる』が萎んでしまうのだ。カエルのエピソードにぐっときただけに、残念にならない。
群像劇には必ず面白い俳優がいるようで、一番出番の少ない青年が語るセリフが、現代の我々に対する生き方への道標と思えたのが救いだった。
実演鑑賞
満足度★★★★
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イキウメ『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』を観劇。
このシリーズは日本の怪談話しを伝説ではなく、実話のように語る面白さがあり、決して見逃してはいけない作品である。
あらすじ
人里離れた山奥に、地図にも載っていない廃寺を改装した旅館にふたりの男が都会から訪れてくる。長期滞在の作家・黒澤が怪談話しを始めると、伝播するように各々の怖い話しで盛り上がっていくと、男たちは殺人事件の調査でこの地に訪れたと語り始めるのだった…。
感想
劇場に入った瞬間、雰囲気が伝わってくる舞台セットに緊張がよぎる。すり足で静かに俳優が登場し、作家の黒澤、旅館の女将、刑事たちが語り始める怪談話に「嘘か実か?」という疑念の下、没入感はたまらない。
怪談話しを俳優が演じながら語るのは白石加代子『百物語』と遜色はないが、殺人事件と落語・牡丹灯籠の怪談話しを絡めながら「これは真実の話では?」と少しでも感じてしまったら最後、登場人物と一体化してしまい、逃れられなくなってしまうのである。
『嘘の話し』『過程の話し』を実のように語るのが語り口の上手さで「今回の話は実話なのでは?」と思い始め、観劇後直ぐにインターネットで検索してヒットしないと分かると「あ〜嘘だったんだぁ!」と現実に戻され、イキウメの世界観からやっと逃れられるのである。
ただ怪談話しの怖さもだが、恋愛感情から起きる激しい男女の感情のもつれが恐ろしさの発端なので、観客も同じように息苦しくなり、いつも以上に感情を揺さぶられてしまった『奇ッ怪シリーズ』だった。
傑作である。