unicornの観てきた!クチコミ一覧

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Hgリーディング

Hgリーディング

Hgリーディング

自由学園明日館 講堂(東京都)

2011/06/15 (水) ~ 2011/06/15 (水)公演終了

満足度★★★★

ポジティブに考えられなかった
2008年にスズナリで上演された作品の「一部」のリーディング公演。
高度経済成長期の四大公害病の一つ、熊本水俣病を題材にした作品。いざという時の人間の弱さが表面化する残酷さがみててつらい。

いまの原発問題でも構図はかわらないのかもしれない。人間が関わっている以上。こんなこと表だって言えないけど。

ネタバレBOX

よく大企業の隠ぺい体質とかいわれるが、人間なんてこんなものかもと冷めて観てしまった。(もちろん、隠ぺいは良くない、被害の原因や被害の拡大は、チッソにあると思うが)実際に自分があの会議室にいて、どんなことが言えるか、できるか。

劇中の小澤や石渡、細田は、原因がチッソにありこのままじゃいけないという考えもあったろうが、結局、積極的に被害拡大を防いだワケでない。細田は400号を熊本大学へ持ち込んではいるが、数年後である。石渡は、?の書かれた箱の中身を確かめたい、化学式を解明するという科学者らしい意見で、被害者の苦しみを防ぐという発想とは乖離がある。(本心は被害の拡大を止めたいと考えていたのかもしれないが、結果に直結することには至らなかった)

こんな話の場合、歴史から学ぶとか言うが、学ぶ以前の問題かななんて思う。人間の本質だから。いや、乗り越えたいとは思うけど。

作品の再演という話になれば是非見てみたい。
人涙(じんるい) ★ご来場、誠にありがとうございました。

人涙(じんるい) ★ご来場、誠にありがとうございました。

劇団印象-indian elephant-

タイニイアリス(東京都)

2011/06/09 (木) ~ 2011/06/26 (日)公演終了

満足度★★★

妖精は涙を食べる
妖精の登場するSFな話だけど、世の中でめずらしくない出来事を扱った正統的な演劇だった。
演技はそれぞれ上手く、飽きることはないが、ややまっとう過ぎるきらいがある。

ネタバレBOX

目の手術(レーシック)をした奥寺今日子(龍田知美)は、妖精が見えるようになる。そこに妖精・フデキと今日子の目の妖精・ナエとナロも加わる。
今日子は30になるが結婚するような男もなくどこか不満な日々を送る女性。今日子の母(石橋美智子)は、今日子と同い年の青年・里中健(深尾尚男)と恋愛中(年の差約20歳)。健の姉・小達未茶来(岩崎恵)は、お腹の子のことで夫とトラブル中。みな、大なり小なり悩みを抱えている。

基本会話で物語が進行する形式。小達の悩みがどうなったかはわからなかったが、母と健は、障害を乗り越え人生をともにするんじゃないかなと感じた。ラストの今日子の晴れ晴れとした表情が印象的だった。

70分で描くには、若干難しいテーマな気がする。妖精の涙を食べる話もあり、そこらへん、もう少し本筋と絡めてもらいたかった。
さいあい~シェイクスピア・レシピ~★ご来場、誠にありがとうございました。

さいあい~シェイクスピア・レシピ~★ご来場、誠にありがとうございました。

tamagoPLIN

タイニイアリス(東京都)

2011/06/09 (木) ~ 2011/06/26 (日)公演終了

満足度★★★★

なぜか面白い
最初、○○のカブリモノがでてきた瞬間、大丈夫かななんて思っちゃいましたけど、最後まで観て、正直面白かったと思いました。なぜか。

ダンスカンパニーとパフォーマンス集団が合体した団体ということもあり、ダンスを中心に身体表現(通常の演劇も身体表現だけど)はけっこう見ごたえあり。というか、引き込まれていたと思う。演出の功績かな。くどくもなく上手いバランスで舞台上の流れに合致していた。あと、歌。なんか耳につく(残る?)。
それでいて、ストーリーもわかりやすく、温かい気持ちになるような感じで好印象。いい舞台だんたんだな、と終わって気づいた。

なんだか、この集団特有のイキオイみたいのがあって、それに自分が乗れたんだなと思う。傑作とは決して言えないけど、もう一度見たいかもという気になってしまった…。なぜか。

ネタバレBOX

母親が自己死し、転校先では友達もできず、父親は仕事仕事で自分をみてくれない、淋しい女子高生(柴田千絵里)と野菜たちが、シェークスピア作品(の台本)を通して、愛とは何かを学ぶ。野菜たちは人間に近づき、女子高生は父親と和解しハッピーエンド…なんかまとめにくい。

基本、野菜と女子高生のやりとりで舞台は進む。その野菜たちが、変にハイテンションでなんか好きになる。そこに、先のパフォーマンスが挿入され、なんだか面白い気分になる。
途中、タマネギとの話があって、生きることとしぬことは同じだみたいな話になる。こんあふうに、シェークスピア作品のエッセンスも含めた脚本になってて、意外とまともな本だったなんて思える。(当初、野菜たちの見た目がコメディ的なので偏見で観てしまっていた)

変に多い小道具とか、背景の紙に文字を書くとか、楽器に身体パフォーマンス。荒削りに見えて、しっかりと舞台作品に仕上げられている(観客の目を気にして造られている)、こんなとこに親しみをもったから面白いという感想になったのかななんて、いまさら自分なりに納得した。
天守物語

天守物語

少年社中

吉祥寺シアター(東京都)

2011/06/03 (金) ~ 2011/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★

チラシも話も美しい!
「天守物語」の内容知らずに観劇した。

舞台セットもしっかりと作られていて期待が高まりながら開演を待った。わかりやすい構図を最後まで保ち、安定した演技に支えられた公演。満足のいく2時間を過ごせた。

富姫(あづみれいか)と図書之助(廿浦裕介)の、妖と人の悲恋を主軸に、登場人物の考えと感情を力強くまた儚く描き、エンターテイメント性の高い作品に仕上がっていた。照明や音響も演技に上手く作用していて、見ごたえ十分だった。

ネタバレBOX

妖と人の混在する戦国時代。武田播磨守に仕える鷹匠・図書之助と妖の姫君・富姫は、時代の流れや肉親の情、種族間の対立に翻弄されながらも、それらを克服し、真実の愛を掴む。

妖が人を殺すと鳥になるという縛り、妖が人を愛する立場にあること、人は妖を諸悪の根源として目の敵にしていること、そしてその結果、双方が殺し合う歴史が続いていること、など相容れぬ関係が前提がある上に、その他の要因(図書之助の父の件、弟の件、亀姫の立場、武田播磨守の乱心、願を叶える獅子頭など)も加わることで、悲恋のストーリーを一層魅力的に彩っている。どこらへんが脚色の部分か知らないが、よく考えられた話と思う。そしてそれをテンポよく進めることで、話がスッと頭に入ってくる。

序盤の踊りとラストの真っ赤に燃えあがる舞台上での踊りが印象的。妖と人も本質的に同じで、愚かながらもただただ踊り続けるしかないような悲しみと、哀しき運命を跳ね返さんとするかのようなパワフルさの同居した、なんともいえない異様な印象をもった。

あづみれいかの妖艶かつ運命にもてあそばれるかのような演技は好印象。また、廿浦も板挟みにあいながらも、富姫への愛を示す誠実な青年を好演した。
大竹、杉山、井俣の猪苗代トリオも残虐な妖らしさを上手く演じ、舞台に花を添えていた。(一応、人間の残虐さの裏返しとしての残忍さなのだが)
個人的に極落鳥役の加藤良子がカラフルな衣装とメイクも手伝ってか、かわいく思った。彼女もまた、愛する「人」を殺したというバックグランドがあり、興味をひく存在だった。

チラシは、黒と赤、青を基調に妖しく魅惑的にデザインされ心惹かれるものがあった。HPもとてもきれいなつくり。舞台の中身も上々だけど、宣伝にも力が入っていて、そんなトコも良かったと思う。
次回公演もぜひ見たい。
さらばユビキタス

さらばユビキタス

エビビモpro.

王子小劇場(東京都)

2011/06/08 (水) ~ 2011/06/12 (日)公演終了

満足度★★★

半ミュージカル
現代のというか、人間の本音をさらせない心を描く作品かなと考えてたが違った。

後半、一気にストーリーがぶっ飛んで一気に収束した。ストーリーはさほど気にかけなくて良い。パンフにあるように「何も考えずに楽しむ」舞台だったなと。

観た回は、客の私語が多くてまいった。役者の友人知人と思われるが、もうちょっとなんとかなんないのかな。作品の質も高くはないし、シリアスな舞台じゃないので我慢できるけどいい気はしない。

ネタバレBOX

世界の危機を救うため集められた12人が、ミュージカルで神様を説得し世界を救おうとするんだけど、そんなことより同性同士の愛を告白し、12人が同性同士でくっつき、神様も感動し、一件落着な話。

備後(山増圭)のキャラは好き。あと、ローレライ(長田涼子)とセイレーン(真山カコ)は、衣装や役付け、メイクなど作品のいい色付けになっていた。
永田歩とウォーレン・リウのキャラはもっと笑いに走ってよい。
星より昴く

星より昴く

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2011/06/04 (土) ~ 2011/06/12 (日)公演終了

満足度★★

微妙
チラシ裏にあるとおり「くさい話・王道中の王道」ではあったが、どうも安っぽくみえてしかたなかった。

話の筋は良いと思う。その意味で退屈はしなかった。
ただ、演技にいまひとつ熱量が足りないような気がした。また、照明が簡素すぎないだろうか。気になったのは、役者の顔が陰になる箇所があったこと。役者の演技を際立たせるためにも、照明をもう少し効果的に使用してほしかった。

「シアターKASSAI」へは初めて行ったが、観やすい小屋で好感が持てた。

ネタバレBOX

親の跡をついでストリップ劇場を切り盛りする真理(岩田)は、売れない芸人の龍治(誉田)に恋し、龍治の夢(売れること)をかなえようと、男と偽り龍治の付き人となる。真理のアシストで大物女優相手のドラマ出演を勝ち取り、一気に売れっ子になる龍治。真理は女であることと恋心を隠したまま、付き人として、龍治をサポートする。
大物女優・南条(岩本)と龍治に男女の影が見え隠れし、真理は、女性であること、恋していることがつい表面に出てきそうになるが、龍治のため、ぐっと我慢する。ひょんなことで、三流雑誌の記者が原因で、真理は女性であること、龍治への恋心を告白し、龍治に黙って去る。
真理の友人から真相を初めて知った龍治は、ストリップ劇場へ向かい、記者を集め、真理に告白(プロポーズ)する。


真理とのキスの練習シーンやラストの告白シーンは見ごたえあった。

開演中、トイレに行こうとした客が下手の舞台袖に入ろうとしたのは驚いた。役者があんだけ出入りしてたのになぜ?
泣けば心がなごむけど、あなたの前では泣けません

泣けば心がなごむけど、あなたの前では泣けません

世田谷シルク

「劇」小劇場(東京都)

2011/06/03 (金) ~ 2011/06/06 (月)公演終了

満足度★★

(劇団の)カラーはでていたのかな
原作の内容しらずに鑑賞。

ちょっと詰め込みすぎな印象。
あくまでメインは主人公の心情なのだろうけど、現実の話と王国の話を追うことに意識が集中して、そこらへんがボヤけてみえた。
そんな感じなので、主人公の女の子が様々な問題を抱えていて、王国の話を通して、自分の気持ちにいろいろ整理をつけていく過程に感情移入しにくいと思った。
下手ベッドのモニターはなくてもよいかな。効果がイマイチわからなかった。また、セリフの聞き取りにくい箇所があった。改善が必要と思う。

やはり、独特のダンスは、ウリだけあって良い出来だったと思う。楽しくみさせてもらった。演技は、河崎卓也が一番良かった。野村美樹の美人度はハンパなかった。

点数はきびしめに。

IN HER TWENTIES

IN HER TWENTIES

TOKYO PLAYERS COLLECTION

王子小劇場(東京都)

2011/05/31 (火) ~ 2011/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★

10人の女優を贅沢に使った良作品。
1人の女性の20代を10人の女優で描く手法。とても楽しくみさせてもらった。(公演後、チラシを見たらきちんと書いてありましたね)

言ってしまえば、1人の女性の独白みたいなもので、動きはさほどないのだが、照明や構成、セリフに趣向を凝らして、舞台の熱を70分保ち続けていた。

演技では、冬月ちきが好みだった。梅舟惟永はこういう舞台でやはり冴える。

ネタバレBOX

椅子取りゲーム後のオープニングが上手い演出で、一気に興味をひかれた。また、各年代の役のセリフが交錯するような台本も、面白い。しつこくなく話の邪魔にならない。

20歳(榊菜)と29歳(冬月)は、誰かのインタビュー?に答えるようなスタイルで、21歳~28歳は、独白もあればそれぞれに意見を向けたりする。上手から20→29と半円状に椅子に掛け、同じ空間に10年間の彼女がそれぞれを主張する。その中で、彼女の20代がじわじわ浮かび上がる。

最後、20歳と29歳の会話が超現実的に交わされ、29歳は未だ忘れられないショウタ?に会いに向かう。
浮き沈みのある20代を経て、彼女はどんな30代に突入するのだろうかなと思った。
神様の言うとおり

神様の言うとおり

NICE STALKER

池袋GEKIBA(東京都)

2011/05/27 (金) ~ 2011/05/31 (火)公演終了

満足度★★★

ケータイ切らずに観劇
観客参加型の面白い企画。関係者は通常の公演よりひと手間かけて準備をしたであろう。お疲れ様です。

今後もこんな企画を続けて興行してみてほしい。今回と同じ企画ならば、もっとはっきりと「分岐」のわかる展開(ストーリー)にするとか改良を重ねてみてほしい。

ネタバレBOX

全公演終了後、各分岐のチャートとか示してくれると嬉しいかな。
劇中で、小説を書いた人はすべてわかっている神様だ、というようなセリフがあったが、客席の客は自分らの選択でどうなるかわからないという意味で、神様じゃないような。むしろ、主催側の方が、全知の神様なんじゃないかな。
その神様(主催)が、客に特定のルートを「選ばせ」ているとか。

そんなワケじゃないだろうけど、私がみた回も含めてすべて「バッドエンド」らしい。企画倒れとは言わない。楽日のお客様(神様)、神様の意地でぜひハッピーエンド?を選択して。
堕落美人

堕落美人

弾丸MAMAER

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/05/25 (水) ~ 2011/06/01 (水)公演終了

満足度★★★★

罪深き女の業
チラシデザインに惹かれて鑑賞。「福田和子」の逃走・逮捕の事件は、それほど詳しくなく、調べもせず観劇した。

芳本美代子扮する「速水節子」とそれを匿う「バーのママ」役である奥山美代子の二人が主軸のストーリー。特に、芳本の演技が魅力的でグッと話に引き込まれる。観劇後調べてみたら、元アイドル歌手とのことで納得。

あらすじにある「罪深き女の業」をまざまざと見せつけられた。話としては、もう少し絞れるところは絞ってもよさそうだが、十分に楽しかった。

ネタバレBOX

不倫をした夫を殺して逃走。全国を転々とした速水節子は、広島の山奥の町のとある寂れたバーに身を寄せ、ホステスとして生活するが…。

家庭のある客の一人と寝た節子をあさみ(バーのママ)は優しさで叱責し、節子はあさみに信頼を寄せる。あさみもまた、ワケありと思われる節子をギリギリまで信頼する。節子が殺人・逃走のことを自白しても匿いつづけ、荒れる節子をなだめる。
誤解が疑惑・不信を生み、その信頼関係が崩れ、あさみは通報してしまう。誤解とわかった後も、節子に通報のことを告げられず、泣き崩れるあさみのセリフ「(節子の)美しさが妬ましかった」が怖ろしく悲しく響いた。
逮捕の際の節子は、とり乱すこともなく、化粧をし、あさみに「結婚おめでとう」と告げ、逃走生活が終わる。

二人の「女」がみせる感情が舞台を支配し、物語を美しく飾る。良い舞台だったと思う。

守(不倫した夫の前の内縁の夫?)と守との間にできた娘・梨子が訪ねてくるシーンでは、節子の自然な喜び、母としての喜びが溢れ、非常に温かな空気が流れた。ここも、芳本の好演が光っていた。魅力的な女優さんと思った。
紅き深爪【沢山のご来場誠にありがとうございました】

紅き深爪【沢山のご来場誠にありがとうございました】

風琴工房

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/05/24 (火) ~ 2011/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★

チラシデザインも魅力的!
虐待自体を見せるのではなく、あくまで登場人物の述懐や心情表現に徹したのが良い。「こどもへの虐待」という問題の本質の一端を垣間見れる。

ルデコの床とかの雰囲気が、作品の荒廃した感じにマッチしていたとも思うけど、客席により観える観えないの差がかなりありそうなので、劇場でやっても良いのではないか。

ネタバレBOX

母より虐待を受けて育った睦美(浅野)と妙子(葛木)は、それぞれ結婚し、睦美は娘・知奈(大塚あかり)をもうけ、妙子は身重。一見真面目で地味な睦美と酒を煽って病院を訪れる妙子(服装も派手)の対比があるが、心の傷は二人に大きく残っている。
睦美は、「知奈をこんなに愛しているのに、知奈は私を愛してくれない」と虐待に走る。妙子は、お腹の子を堕胎するとヒステリックに喚く。
それでもなんとか懸命に生きようともがき、母への悲しい愛情を捨てられない二人。ラスト、母が死亡し、深爪した指で母をつねる睦美の姿が悲しすぎる。

浅野千鶴目当てで観劇した。浅野は、どこか薄幸な役。次観るときは、明るい役を観てみたい。
注目は睦美の夫・良平(園田裕樹)。妙子やその旦那・宏治(佐野功)から、無能者呼ばわりされるような、地味で主体性もなさそうなオーラが滲み出ていた。そして、ラストの睦美のメモを発見からのくだりで、睦美を守り、道を踏み外す。そこには、傷ついた妻をこれ以上傷つけまいと苦悩し、弱弱しくも行動に移した夫の姿があった。
女優マリア

女優マリア

東京おいっす!

「劇」小劇場(東京都)

2011/05/24 (火) ~ 2011/06/01 (水)公演終了

満足度★★★★

見せ方がうまい!
女優マリアの真意を直接見せず、過去回想と現在の関係者の断片的な発言で浮かび上がらせる手法がとてもうまい。謎のまま残った部分もあるが、ラストシーンで、一人の「女」としての女優マリアが存在していたことがぼんやりと判ることで、後味良く終幕できた。

女優マリアの人柄をはじめ、登場人物全員が好意的に見れる(善人ということでなく)ため、コメディも自然に笑える空気が出来上がっていた。

ネタバレBOX

大女優マリア(鈴木麻衣花)が所属した事務所はもうすぐ撤退する。マリアが死亡したためだ。夫であり事務所社長の風間(ロン佐藤)のとこに、マリアの追悼冊子を作りたいと出版社の飯島(奥原)が訪ねてくる。飯島が編集のため、関係者へのインタビューを重ねる。そこには、嘘を駆使して業界内を渡り歩き、大役を勝ち取るマリアの姿が見えてくる。
ただ、飯島の正体が出版社の人間でないとわかった時、マリアとはどんな女だったのか、夫ですら知らなかったマリアの真意はなんだったのか、大きな謎が頭をもたげる。

登場シーンから、不思議な雰囲気のマリア。大言を吐き、かわいい虚で大物女優に取り入る。大物監督には、色気で押すこともキッチリこなし、一気にスターダムを昇る。実にカワイイ。
このような人物像で、観客の心と興味をしっかり掴んだことも大きい。ここを抑えたからこそ、後半の謎が示された時の客のテンション上がり、ラストのオチ(マリアが女優になったのは、風間の夢をかなえるため)で温かな気持ちになれるのだろう。ああ、彼女は、普通の「女」だったんだなと。


ちなみに、チラシにあるようなドレスアップしたマリアは登場しない。事務所に自分を売り込みに来た際の私服。レバニラ定食?を出前に来た際のバイト着。白川志穂(松浦玉恵)の付人時のジャージ姿。あとは、ホテルでのバスローブ姿。鈴木の演技の賜物か、どれも魅力的に見えた。
『十二人の怒れる男』/『裁きの日』

『十二人の怒れる男』/『裁きの日』

劇団チョコレートケーキ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/05/25 (水) ~ 2011/06/05 (日)公演終了

満足度★★★

上品に仕上げた作品「裁きの日」
日本の裁判員制度への問題提起を上品に仕上げた作品。厳しい見方をすれば、ちょっと行儀が良すぎる気がしないでもない。現実的な作品だけどもう少し味付けがほしい。別に退屈はしなかったのだが。点数は厳しめにつけた。

ネタバレBOX

山森信太郎のキャラは、自分が死刑を決定するのは嫌でしょうがないだけに見え、吉川亜紀子のキャラも死刑にかかわりたくないと嫌悪していた。そうした市民感情があっても、結局「死刑」という、裁判官の目論見にハマる制度でしかないという批判なのかなと感じた。序盤と中盤にそんな話もあったし。
まあ、それも含めた「問題提起の作品」なのだろう。

ほぼ椅子に座ったままで、(一部の)演者の表情が見えないのが残念。実際の裁判員の審議も立ったり座ったりしないのだろうけど、「演劇」という「舞台」なのでそこの配慮はあっていいかな。
『十二人の怒れる男』/『裁きの日』

『十二人の怒れる男』/『裁きの日』

劇団チョコレートケーキ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/05/25 (水) ~ 2011/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

【十二人の~】法廷劇の金字塔
…という予備知識なしに鑑賞。

こんな面白い話があるとは!と驚き、凄まじい破壊力に圧倒された。もちろん、しっかりした演技があってこその舞台なのだろう。
人種差別問題なども含まれた社会性とサスペンス的要素、人間の独善的な弱さが内包した素晴らしい脚本に負けない、力の籠った演技で十分に満たされた。

名作ほど劇団としては手を出しにくいと思うし、自作の法廷劇(裁きの日)との2本立てという企画である点、勇気ある公演だと思う。


ネタバレBOX

若干の違和感を覚えたのは、大塚秀記が被告少年のような境遇の人間を差別的に罵倒するシーンの岡本篤の「首をへし折るぞ」というところ。あくまで建設的理知的に話していた彼が、業を煮やしたにせよ、この発言をするのはおかしく聞こえた。
誰ガタメノ剣~長宗我部元親伝~

誰ガタメノ剣~長宗我部元親伝~

シアターキューブリック

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2011/05/25 (水) ~ 2011/05/26 (木)公演終了

満足度

つまらない
とてもつまらないと感じた。演出が悪いのか。音楽や照明をふんだんに使用し、メリハリがない。ゆえに盛り上がり部分もシラける。あとダンスシーンが多いと思う。ダンスが下手とは言わないが、とりたてて爽快感やかっこよさがあるわけでない。それと、歌は必要か。
ただでさえ、登場人物が多くゴチャゴチャしがちなのだから、主人公など主要メンバーにもっとスポットをあててテンポよく話を進めるべき。あんなにキャストが必要か。

登場人物の心(考え)が見えてこない。主人公とか、その正室とか。どうも魅力を感じない。その苦悩も感じない。変に演出にこだわるより、ストーリーに重きを置き、人物の心情を丁寧に描く方が、後半は盛り上がって、ぐっと来るものがあったかもしれない。

久しぶりに、観て後悔した舞台だった。

ネタバレBOX

客席は結構笑いがあって、うける部分も多かったみたい。なので演出との相性が悪かっただけなのかもしれない。

だた、芝居中に流れをぶったぎるような客とのカラミが要らない。なんのために拍手しなきゃならないのかわからない。あれをエンターテイメント性ととらえるのは無理がある。

誰か解説してほしい。

醜い蛙ノ子

醜い蛙ノ子

張ち切れパンダ

テアトルBONBON(東京都)

2011/05/19 (木) ~ 2011/05/26 (木)公演終了

満足度★★★★

とても楽しめない
作・演のパンフ挨拶に「楽しんで観ていただければ~」とあったが、とても楽しめない。

主人公・加絵(八木菜々花)の悲痛な19年。「私が何をしたっていうの!」という叫びがとても重い。

終盤の深夜のシーンを筆頭に、上手い演出するなと感心した。このようなテイストの話は好きではないが、また観たい。八木菜々花の美しさがストーリーの悲壮感を一層際立たせていた。

ネタバレBOX

加絵は、母とも姉とも似つかない美人として出生する。両親の軋轢のとばっちりで母にオイルをかけられ、火をつけられ、首から下に大火傷の痕がのこる。味方であった姉も、次第に加絵につらくあたるようになり、加絵は孤立し自宅に独居しひきこもる。ゴミに囲まれながら…。

「みにくいアヒルの子」の話は、実は白鳥でした、というシンデレラストーリーだが、本作はもっと地味で現実的。加絵の回りの人間も良いも悪いも普通にいそうなキャラ。だからこそ怖い。
原一家は、本作の中で一番良心的に振舞い、物語を安定させている。こういったキャラがいないと、ある程度のリアリティを保てなくなり、話についていけなくなる。
ちなみに、林(小島竜太)はいかにもな雰囲気がうまく出せていたし、上田(深井邦彦)も、独善的なオーラと小心者な空気を醸し出せていたと思う。演者の功績とも思うが、やはり演出が巧みだったのだろう。

気になった点が少々。
加絵を演じた八木の演技。幼いころの演技が、知的障害をおっているように見えた。また、ここまでどん底に落ちた加絵が、姉(中島愛子)に守ってもらったことで急に回復したように見えたのが、ちょっと軽くないか、とも感じた。(それぐらいどん底にいると思っていたので)
もうひとつ、加絵が美人なのは良いが、ゴミ屋敷に住んでいるにしては綺麗(服とか髪とか)すぎないかな。
『パ・ド・ドゥ』【ご来場ありがとうございました!】

『パ・ド・ドゥ』【ご来場ありがとうございました!】

七里ガ浜オールスターズ

王子小劇場(東京都)

2011/05/24 (火) ~ 2011/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

接見室で明かされる謎
裁判でなく接見で明かされる過去と現在の想い。

1999年の初演らしいが、普遍的な魅力に溢れた脚本。二人の演技に引き込まれて見入っていた。とても面白い。

舞台は、演者がアクリル板(?)を挟んで座り(まさに接見室)、客は演者を横から眺めるスタイル。全部で40弱程の座席。話が盛り上がる終盤、横から観る白熱する表情が非常に美しかった。

初日らしく噛むこともチラホラあったが、どうでも良い。最後の挨拶時にセットの暗幕が舞台にかかってしまっていたが、どうでもよい。そんな充実した舞台だった。

ネタバレBOX

恋人がマンションの4階から転落し、殺害未遂で逮捕された日向(伊東)は、元夫であり弁護士の名塚(瀧川)へ弁護を依頼する。嫌々引き受け、やる気無く、また訝しみながら応対する瀧川。どこか現実味のない供述をし、起訴されたように見えない日向。

名塚の浮気で離婚した二人は別々の人生を歩み、接見室で再び交わる。そこで交わされる嘘と本音、打算と感情を経て、過去の想いを伝える二人。裁判の行方ははっきりしないし、世間的にマイナス評価を受けるであろう二人は、過去の清算を済ませ新たな人生を踏み出すと感じた。

序盤から中盤のどこかふわふわした雰囲気や会話にクスっとする。
日向が過去の想いと事件の真相をぶちまけるシーンが見せ場。怖いくらいの感情が溢れる。
恋する、プライオリティシート

恋する、プライオリティシート

コメディユニット磯川家

王子小劇場(東京都)

2011/02/05 (土) ~ 2011/02/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

疾走するコメディ
関東とか関西という分けに意味はあんまり無いかなと思うけど、「コメディユニット」と冠している団体さんなので、期待して足を運んだ。

舞台は、バーがしっかりとつくられていて完成度は高い。上手にはピアノ。下手はエレベーターとトイレ。

話の軸は、美人の障害者(物延結)とバーテン(渡辺毅)の恋。そこに、周りのバーの客や親族、元彼やマスコミなどが入り乱れてのドタバタコメディ。ドタバタコメディで嫌なのは、舞台上だけ盛り上がって客席は冷めているような公演。本作品は、こんな心配を吹き飛ばす一体感が会場を包んでいた。

特に、終盤のノリの良さは、ピアノの伴奏も相まって、一気に大団円のハッピーエンドにお客を運んでいく。
実に軽快なラストで、爽やかな充実感が残った。


ネタバレBOX

理香(物延)は表向き性格に難ありの障害者。バーで男を試しては無為な毎日を過ごす。バーテンの迫田(渡辺)は、そんな理香に告白するが…。

ドイツに行って手術すれば回復する可能性のある理香の障害だが、理香は自分のお金でなければ渡航しないと意地をはる。周囲の人間らの思惑も加わり、鈴(白石廿日)は、婚約者の敏太(島岡)の貯金(結婚資金)1,000万で、皆の悩みを次々解決し、理香の渡航費も持ち、皆は幸せになる。ここのピアノのノリと鈴のノリ、その他の演者のノリの一体感に思わずニヤリとしてしまった。


障害者を扱うと、ストーリーや人物像が重くなりがちだが、笑い重視の「コメディユニット」だけあって、テンションはひたすら高く、ポジティブな舞台を保ち続けた。まったく曇りがない。
もちろん笑いの部分も多くあった。一番笑えたのは、ピアニストの全力疾走だったが…意外でびっくりしたくらい。

一応マイナスを上げれば、登場人物がやや多めなので、多少削っても良い箇所があったりすると思う。その分、主役二人のストーリー、もしくは姉の珠(信原)とのやり取りを掘り下げるとか…再演があればさらに練って良い舞台に仕上げてほしい。

なんにせよ、★5文句なしの公演でした。

不機嫌な子猫ちゃん

不機嫌な子猫ちゃん

青年団若手自主公演 田川企画

アトリエ春風舎(東京都)

2011/02/15 (火) ~ 2011/02/21 (月)公演終了

満足度★★★★

秀逸なリード文とドロっとした舞台
チラシのリード文に惹かれて鑑賞。

歪んだ人物のオンパレード。愛子(母)は飛んでるし、その弟?もおかしい。彼氏も実際に近くにいてほしくはないタイプ。まともと思った「市子」自身も、普通じゃない人物像。

こんな人物たちの会話劇。やはりまともじゃない。まともじゃないんだけど、その雰囲気が劇場に充満していて、嫌悪感はあまりない。
終盤に出てくるオンナノコもからみ、さらにまともじゃない舞台へ突き進むが、そんな中でも話はきれいに収束する。見事。

作・演出の「田川啓介」さん。次回公演も期待したい。

ドロシーの帰還

ドロシーの帰還

空想組曲

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/02/23 (水) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★★★

無理して観てよかった
仕事のスケジュール的に観劇できないかなと思っていたが、なんとなく気になり、無理して観に行ったが、行ってよかった。

各劇団のエース級のキャストであり、演技面に不安なし。脚本は定評通り。ハイクオリティの舞台だった。

ネタバレBOX

全体的に「怖い」公演だった。ヒトの弱さを抉る(というか客に見せつける)ため、目を背けたくなる。

特に、久保貫太郎と梅舟のエピソード、「人の気持ちが分らないじゃない~人の気持ちを分ろうとしない」という箇所がコタエタ。

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