満足度★★★★
金の靴
チラシに惹かれて観劇。
糸あやつり人形劇が中心の舞台は初めてだったからか、どうもヒトのほうに目がいってしまった。ただ、構成が上手いのか元の話が面白いのか良いストーリーで、面白い「舞台芸術」だった。
ネタバレBOX
とある国(領地?)で反乱が起こり、領主が殺されその妻は逃走し、残された赤ん坊の息子を、女中グルシャ(高畑こと美)が苦難の逃避行の末守り抜き、晴れて「母」となる話。
ハチャメチャな裁判官アツダク(結城一糸)の大岡裁き的な采配(離婚調停の故意の誤り・引っ張り合いでの母親判断)で、偽りの結婚を破棄し、婚約者のシモン(斉藤悠)と結婚、息子を育てるエンドが充実した気持ちにさせる。
いろんな音のでる道具を使用し賑やかな立ち上がりなのだが、しゃべりがかなり聞き取りにくい。客席後方だったためかもしれないけど、ストレスで気疲れした。そんなワケで序盤からやや注意が散慢だったのだけど、中盤(グルシャの偽装結婚あたり)から面白さがグッと増して、一気にラストの裁判へ気持ちも連れて行かれた。
裁判の中で、グルシャの息子への愛情が目一杯放たれ熱い想いに浸れる。パンフにもある「もしも金の靴を履いたら」のセリフがかなり熱い。観劇後読み返してみても熱い。芯の通った女性(母性)の愛情を、強く前向きに、時に弱く表現した高畑の演技が良い。
江戸糸あやつり人形座の面々の中でも、結城一糸の動きはとても良いと感じた。色っぽいルドヴィカ(結城民子)とのやりとりは見ごたえがあった。もっと、人形に注目して観ていれば良かったと思った。
座席を半分潰しての舞台設置であったが、これくらいが観劇の限界だろうか。舞台脇を使用した演出や楽器演奏も好印象。面白い舞台芸術ジャンルと感じたので、機会があればまた観たいなという感じ。できるだけ前方で。
満足度★★★★
ヒーロー×愛
面白いし、好みなんだけど、ちょっと長い。エピソードがかなり盛り込まれていて充実してはいるけども、もう少々スッキリしたスタイルになると嬉しい作品。面白いし、好みなんだけど。
主演の三枝貴志と、ヤクザの嶋村太一が良い。女優は、阿久澤菜々がキュートな風貌だけでなく、物語にいいアクセントをつける演技で良かった。
ネタバレBOX
弓月(三枝)とさく(浅野千鶴)の姉弟愛が主軸だけど、登場人物のそれぞれの物語も孕みつつ突き進む。
おどろおどろしい雰囲気、コメディ要素、純情、SF、ダークなエッセンスなど、これでもかとぶち込まれ、それを130分の中に凝縮した手腕は良い。人形の造形もグロかわいいし、この路線でガンガンいってほしいなと思う(特に老人?の人形が好き)。きっと次回も観ると思う。
ただ、いろんな話を広く浅くより、深く掘り下げる舞台が好みなので、次回そんな話だと嬉しい。不幸を撒き散らかすと思い込んでいるニコ(佐々木千恵)のエピとか若干消化不良な気がする。太陽になって幸せそうで良かったんだけど。あと、あかり(木下実香)の心が溶ける描写とかね。それぞれがちょっと足早な印象でした。
肝心のヒーロー要素ももっと多いと良かった。単純なヒーローものじゃ、それはそれで不満なんだろうけど。
おかまな幼馴染・金吾郎(横島裕)のダークな側面とかもいい展開。春子(浅野)の前でさくの旦那と一騎打ちというラストも良い。
満足度★★★
とりあえずチラシが美しい。
舞台はよくわからんかった。
浮浪者役の渡辺晋が良かった。
ネタバレBOX
乳首の快感に取り憑かれた照一・まり、その周りの人間らのドタバタ劇。
大量のカブトムシが終盤舞台上に溢れる、よくわからん舞台だった。笑い声が結構あったけど、ちょっと入っていけなかった。いろいろと、もうちょっと描写がほしい。
満足度★★★
意外とコミカル
ブラジル初観劇。なかなか楽しめたかな。
ネタバレBOX
妻が亡くなった岡田家に、長女・真由美(柿丸美智恵)が会社運営に失敗して、次女・亜希恵(桑原裕子)は離婚して、三女・多香子(肘井美佳)は刑期を終えて、帰ってくる。父・欣一(原金太郎)は、津波被害にあったという兄妹と同居し、家政婦らしき妹・今井美樹(近藤美月)と男女の関係が見え隠れする。そんな中、家を売るという話が水面下で動いていて…。
3姉妹と父の想いが交錯するところが中心にあって、それぞれがキーパーソンらとの背景を抱えつつ生きていく話。ハッピーエンドといえばハッピーエンドなのだけど、甘いような甘くないようなさじ加減がうまい。ただ、満足のシナリオかどうかは微妙。物足りない気もした。ちょっとドタバタが過ぎたのだろか。
真由美のいかにもガサツそうなスタイルを柿丸が気持ちいいくらいに怪演してた。父役の原も地味ながら上手。今井美樹役の近藤が美しくも狂ったキャラを演じてたが、もっと狂ってもよかったかも。「やっっべ~」の箇所は笑えた。あと、最終盤のチャリンコ二人乗りで横切る描写は好き。
全多的に、毒が少なくコミカルな感じ。殺人とか起こっているのだけどね。
満足度★★★★
漂う青春
劇団☆新幹線の高田聖子が魅力的すぎる。あとNYLON100℃の廣川三憲もいい存在感。
三回目の鹿殺し。一番しっくりきたし、歌も楽しげで良かったし、舞台がまとまってみえた。舞台的な派手さはないかもしれないけど好きなストーリー。
チケットは4000円に収めてくれると嬉しいけど。
ネタバレBOX
元アイドルグループ「モトコー5」は、リーダーの波美(高田聖子)の失踪により人気絶頂で解散。残った4人は「あほスパイラル」というような下降しつづける人生を送っている。そんな中、昔のノリそのままで波美が戻ってきて、TV関係者の夫のツテでモトコー5にTV出演のチャンスがあると言う。4人は上京するも、収録後、波美がボロアパートで病死しているのを発見する…。
破天荒というか男勝りというかサバサバしているというか、そんな波美を高田が好演。あの笑顔がヤバイ。その波美と妹・凪子(菜月チョビ)の姉妹愛とすれ違いが見所か。波美は肺ガンで死亡するが、悲壮さは少なく、ラストの風が4人に吹き込んでくるシーンも含めて苦い爽やかさに溢れる。確かに「青春」の「漂流」だった。
歌は、「青い春」がキャッチーで良い。ラスト砂浜で泣きながら踏むステップが、過去への決別のようにみえた。
また、波美の手紙のシーンは見ごたえ十分。終盤近くで舞台を一色に染め上げるパワーが単純にスゴイ!
満足度★★★
ポチ×花子
110分の舞台。結構あっという間だったので、つまらなくはないのだけど、もおう一歩、客の心を鷲掴みにする何かが欲しかった。
演技は、総じて良かったと思う。特に、山本大樹と渡辺綾子。クールキャッツ高杉と阿部潤の醸す雰囲気も良い。
ネタバレBOX
公務員アイドルAKOの主力メンバー7人と秋元プロデューサーの隠し子が、秋元の敵討ちを画策するところを中心に、それぞれの心の内側をゆっくり描いていく。隠し子・秋元王子(高杉)のためにひと芝居打ったAKOのメンバーからの手紙ですべて知った王子の元に、板野(渡辺)がタコ焼きをもってきて、結ばれてHE…というAKB48と忠臣蔵の話をミックスさせ、あたたかでフィクションなストーリー。
当初、討ち入りまでをどう面白おかしく進めていくのかとポイントを決め付けて観劇してしまったので、見方を失敗したかもしれない。とはいえ、本筋が見えにくい感じもする(王子が隠し子ってのがそんな重大なポイントと捉えなかったので)。それも味だけど。
OPの演出はとても引き込まれた。あと、最終盤の手紙のシーンも、(忠臣蔵の最高の見せ場?である)切腹と重ねる演出が素晴らしいと感じた。
舞台は、忍者扉とか床からのホワイトボードとか、ちょっと凝った感じが好き。チラシに過去公演写真だと、作り込んでる感じなので、もし次東京であればこんな舞台での公演も観たい。
ちなみに、開演までのスタッフワークも良くて、終演後の役者もしっかり見送りまでしてたのはとても印象が良い。チラシも実用性とデザイン性を備えてて良い。
満足度★★★★
はむれっとって感じ
結構面白かった。スピーディというか独特のテンポにうまく馴染めた感じ。
ネタバレBOX
早口のセリフに安っぽさを感じつついたが、中盤から楽しく思えてきた。衣装や小道具も、最初の印象から変わって、話にフィットしてきたような感覚。不思議にも。
総じて悪い演出ではなかったと思う。雰囲気の話だけだけど。
ハムレットを演じた嶋田健太は好演してた。「尼寺へいけ!」のとことか特にね。
満足度★★★
龍馬の魅力とは
チケットプレゼントにて鑑賞。坂本龍馬の知識はあんまりない。
面白い着眼点。女性のサガというより坂本龍馬スゲーという感じ。8人の登場人物は若干多かったのか、散慢なイメージ。
ネタバレBOX
坂本龍馬の49日に集まった龍馬と親しかった女性8人。龍馬暗殺の日のこととそのバックグラウンドをひとりひとり話していくうちに、龍馬暗殺の真相が明らかに…。
お金とか国への忠誠心とか恋情とか入り混じった、女性のサガを描いていると感じたけども、ちょっと小奇麗すぎる気がする。ラストが泣ける展開なのでこれはこれでまとまってはいるのだけれど、若干物足りないかなと(皆善人だし)。2人くらい削って、その分ほかの人間(おこととおりょうとかの中心人物)のエピソードとか心情をじっくり描いたほうが好み。特におりょう(吉川麻美)はもっと目立っても良いポジションだと思う。
時折挟むダンスはとても良い。舞台のアクセントになるし楽しめる。おこと役の小俣彩貴の動きは中でも良かった。立ち姿も一番美しかったし。
衣装も華やかで○。
ナターシャ(よしこさん)の北朝鮮ネタ的解説は笑えるし嬉しい配慮。一番笑ったのは、鳩?を介抱するおことだったけど。
ちなみに、視覚的に舞台が寂しい印象。8人が突っ立て、その場シーン話す人が中央にくるような感じで、その周りの人間が空気のようになってしまう気がする。直接関わらないシーンでも、なにかしらのアクション(動き)があると良いと思った。
あと、ラストの献花シーン。花のところにバミリ?があって、なんか美しさが半減。
満足度★★
神社でダイブ
嫌いでもないけど、80分は長かった。半分くらいの時間で駆け抜けてくれると嬉しい舞台。
ネタバレBOX
進化ver、ということで、原始人らが現代人へ進化するということ。進化しても恋してイライラして、根本は変わんないってことなのかしら。
長いと書いたけど、例えば、別の劇団と40分ずつのセット公演とかなら納得できたかもしれない。これ1本だけだとやや不満の印象。
ひらすら奇声を発する役者はさぞ疲れただろうなと。
満足度★★★
肯定の舞台
何十着もの衣装に囲まれた舞台面。アゴラ劇場をフルに使用しての110分。なかなか楽しめたが、演技的にもっと迫ってくる感じがほしい。
ネタバレBOX
女優のひとりが、今の「ナオ」として誰かに話しているという設定で、7人の女優が(その内容)「ナオ」や家族、友人などをかわり番こに演じるスタイル。
優しい兄の自殺未遂や母親との軋轢、恋人や友人関係が綴れられていき、ナオの自殺を匂わせるところで終幕となる。ナオは、いろいろと傷を負いながら生きてきて、精神を病み、悪意のない事故で人を死なせてしまい、カウンセリングを受けているらしい。
舞台には澱んだ空気が流れているも、ナオの存在を肯定する気にさせる何かがあった…と信じたい。とわいえ、ナオの「ごめんなさい」ってセリフが悲しく響く舞台だった。
ナオと対照的な友人役(名前忘れた)のセリフ「ドーンとこい」ってヤツが気に入った。あと、舞台に出てこない「タケハラ?」が哀れかつ愛すべき存在で気に入った。
満足度★★★
粗くて繊細な舞台
チケットプレゼントにて鑑賞。
パンフのとおり、確かにめんどくさい。
歪んだ人物はいるものの話自体に目新しさがなくやや寂しい印象。もう少しハッチャケててもよかったかも。笑える箇所はポツポツあった。全体的に悪くはない。どこがよかったのかわからないけど。あと、お尻が痛くなった。
役者は、山田佳奈が一番よかった。
ネタバレBOX
昨年観た、エレファントムーンの「業に向かって唾を吐く」のような、性的要素を入れ込んだエセ宗教団体が舞台。
村上淳也と椎谷万里江の破局後、村上はエセ宗教団体「G・I教」に救いを得るため入信。そこは、性と麻薬と金が入り乱れる怪しい世界だった…。
結局、教団に捜査のメスが入ることになるが、二人は、歪んでいるようないないような純愛で包まれるという感じかな。そこの描き方は、好きになれないけどよかったと思う。あと、山田さまとくまさまの関係とかもよかった。
ただ、全体的に要らない部分があったかなと。漫才のとことか。また、舞台のカーテンの内と外を描くワケなのだけど、長いなと感じてしまった(このカーテンが何度も開閉するわずらわしさも見せ方の工夫でクリアできる気がした)。
ラストの麻薬の中で2人が抱き合うシーン(BGM:碧いうさぎ)は、感情移入なんてしてないけど、ちょっとグッとっきた。「碧いうさぎ」がオチになってたけど、歌詞「今の二人 救えるものは きっと真実だけだから」が示唆するように、真実=愛なのかと思った。
性描写は演出に工夫がほしい。
満足度★★★★
ラーメンを食べない女性は…
面白いアイデアを面白い舞台に仕上げる力量が見事。アフターイベントも単純に笑えて満足。
ネタバレBOX
彼女がある日、5人に増える(分かれる?)話。
ファンタジックな設定に思わず引き込まれるも、一連の話をみせてから、女と男の視点、それぞれ描写してから話を一点に収束することで、舞台の面白さがぐっと増す。この点で、前回公演(IN HER TWENTIES)より好み。
コインの裏表みたいにお互いの心を覗けないもどかしさが心をくすぐる公演だった。また、元カノの小鶴璃奈が結婚するというくだりの、加藤岳史の独白は思わずニヤっとしてしまう。
女優陣が魅力的に舞台にいて、その意味でも見ごたえある。漫画好きな彼女の子とか。第二の彼女(李そじん)とか。
ちなみに、黒木絵美花のファッションが素敵すぎる。性格もいいトコついてた。
満足度★★★★
工場見学
初五反田団。有名なので観劇。
番外公演的な位置づけと思うけど、本公演も観てみたくなった。2,000円で300分(180分の間違い)のボリュームで、かつ気楽に見られて楽しい公演。
ネタバレBOX
「業界人間クロダ」…「演劇人」と「業界人」の間に位置し、業界人を目指す「業界人間」が、とある映画に出演する話。バックステージ物のようなつくりではあるけど、とにかく楽しめる。業界人間と演劇人の扱いの悪さたるや(決起集会のシーンとか演技指導のシーンとか)。また、クロダの彼女の優子との会話で、業界人になるともう演劇人には戻れない…というくだりもリアルっぽくて興味深い。
「ポリスキル」…出所する仲間に歌を捧げる。最後のコーラス・内田慈のキメ顔が好き。
「ザ・プーチンズ」…ホントに活動してるユニットとは知らなかった。
「七餅」…願いを叶えるため、七つの餅でシェンロン的なものを呼び出し、獅子舞も出てくる話。どんな話か忘れた。正月っぽかったといえば正月ぽい。
「金子の退団のニセモノ」…初ハイバイ。金子岳憲の退団の裏側を描くというもの。とても笑えた。本公演観てみたくなった。
各演目の間に、主宰前田らがワイン片手に、案内役というか雑談めいたスタンスでワンクッション入れる構成も○。
満足度★★★★
トルネードの後
前回「裸の~」がよかったので観劇。パワフルな演出と演技は相変わらず。こういうダークなテイストの話はあんま好きじゃないから、もう一度観たいとは思わないけど。
あと、開演20分押しは勘弁。
ネタバレBOX
序盤のひき逃げとかの話は、どんちゃん(寺田)の精神世界かななんて思ってたら、ホスピタルプリズンに服役中の天本(板倉チヒロ)の脚本という構成(正確にはバンド結成後のレイプシーンに入るまでが脚本かな)。中学生だったどんちゃんをレイプした天本が、どんちゃんを精神的に立ち直らせるために脚本を書くというのがホスピタルプリズンという施設ってのは面白い。ただ、雪村(森下)だったかが言った、人間は立ち直る!というセリフがどこか響かなかったのが残念。実際どんちゃんが立ち直る描写はなかったと思うし(ラストのスーツが立ち直りの象徴?)。
震災をトルネードに置き換えて、そんな状況下での理不尽や暴力を描いたのかななんて印象。登場人物みなキャラがたってた。すごくフィクションな動きで視覚的にも楽しめる。
目撃者の渡辺とかげのファッションと表情が魅力的。また、どんちゃんの友人のキリコ役・七味まゆ味も、舞台になじんでたようにみえた。特徴のある人物像をしっかりと描けてた。登場の際のしゃべりが若干聞き取りにくかったけど。どんちゃん役の寺田も鳥居みゆきみたいな表情が素敵。あと、レイプをああいうふうに描く演出は素晴らしい。
「裸の~」のときのように、場面転換はダンスと音楽を交えスタリッシュでかっこいい。
満足度★★★★
氷
時間堂初鑑賞。
かなり直球で120分じっくり観劇できる安定した舞台。
チラシのタイトルデザインもユニーク。
ネタバレBOX
大正か昭和初期の氷屋・吉永園を舞台に、そこに生きる人々を冷静に描く。
冒頭に梅子(ヒザイミズキ)と辰男(菅野貴夫)と静子(木下祐子)の場面を持ってきてから、過去を描いていく手法。時折、初代甚五郎らの時間軸(もしくは回想)に戻ったりするが、総じて見やすく混乱することはない。焦点は、静子にあたっているのだろうけど、ほかの人物にも光の当たるうまい偶像劇。
舞台から客席中央を突っ切りる白い面(花道みたいなの)を川に見立てるシーンが一際美しかった。女郎?に堕ちた梅子と兵役後の辰男が会話する場面や破談にショックを受けた八重子(直江里美)と初代甚五郎の女(窪田優)の場面とかね。怖いくらい。
過剰な演出がないためか、会話と物語が際立つつくり。ただただ、静かにゆっくり川が流れているような印象の舞台で「大人のための小劇場」という文句になるほどと思った。ストーリーも淡々としてて、やや暗めだしね。
演者は、次男・信雄(荒井志郎)と静子(木下)、番頭(酒巻)がよかった。また、語り手でもあったヒザイミズキの声と表情が好き。それと、吹雪役の窪田優は白雪役の美人具合に驚いた。アホそうな吹雪と色っぽい白雪の落差がはっきりしててうまい。
満足度★★★
なにげにダンスが良い
初デス電所。
せっかくなので、もっとぶっ飛んでもよかったかな。なかなか楽しめる。120分くらい。
ネタバレBOX
人が死ぬのが特色みたいなのは聴いてたけど、ほぼ全員死ぬとはね。飛んでる舞台で嫌いじゃない。けどもっと飛んでてくれたほうがより好きになれた気がした。
中盤から(曲が死んだくらいから)の、空気がだんだん濃く重くなっていく感覚が良い。愛理(山村涼子)の精神面を描くとか、玉沢(葛木英)の人体解体の心得とかいい味が出てくる。それまでの空気は、入り込めるような込めないような感じだった。ネコの映像とホラー映画?のギャップが面白いセンス。
三木直人(浅見紘至)は、作家の実力もなく巨乳(田嶋杏子)のためだけに作品を仕上げ、沙織(羽鳥名美子)はハチャメチャな映画脚本に傾倒し電波な方向へ、樅山(今奈良孝行)は地元をシメるヤバイ人種…と、なかなか終わってる系の方々が狂っては殺されて(自殺もあったけど)いくサマはどこか清々しくもある。そんな中でも、大前田(吉川莉早)のように、愛理に刃傷沙汰を繰り広げ愛理に尽くすことを人生の中心においているとか、終盤の愛理の孤独さとか、バックグラウンドに惹かれる設定もあったりして面白い。
葛木の役が性格、見た目とも可愛くて意外だった。主演の山村涼子も全体的に良い演技だったと思う。また、狂いだしてからの羽鳥の演技と表情は○。
途中途中のダンスが結構好き。ミュージカル風なとこの歌詞は聞き取りにくい。しかも結構長めやってるから、ややダレた。「視覚的に」楽しめる舞台だったということかな。
満足度★★★
初26.25団
チケットプレゼントにて鑑賞。
舞台上で露わさなさ加減がうまい。
ネタバレBOX
とある商店街にあるフランチャイズタコ焼き屋が舞台。店主・鶴牧(杉元)は、実家の小麦を使用したタコ焼きで評判を得るも、FC本部より、遺伝子組み換え小麦を使用するよう、再三警告を受けている。実家・福岡の畑でも、近隣畑が遺伝子組み換え小麦に品種を変えたり、親が衰えたり、区画整理の話があったりと、鶴牧の悩みのタネは尽きない。そんな中、アメリカのミュージシャン・ジョージを勘違いから殺害してしまう、とドンドン苦悩の真っ只中へ…。
遺伝子組み換えの問題を扱っているけど、舞台は現在よりも数年進んだ日本の様子。むしろ、震災・原発の影響という匂いがする。そんな感じで、舞台上に見せない箇所を感じさせる作風がうまいと思った。FC本部の八雲の本音、バイトの栢山の素性、泉美の本音、泉美と秦野の関係、ジョージの仕事、愛と明を含めた実家の状況とか。
もう少しはっきりとテーマを提示してもらえる舞台が好みだけど。
霊感少女・桜(岸本鮎佳)は素直に笑える。てか表情が良い。
満足度★★★★
魅せ方がとても美しくて
歌舞伎とバレエを見事に融合させた傑作。見ごたえのあるシーンの連続、素敵な衣装と照明効果、魅力的な登場人物の描き方に満足した。
チラシ裏面に「歴女も必見!」とあるけど、歴女以外も是非といった感じ。
ネタバレBOX
刀を持たずに表現する討ち入りシーンが、音楽と相まって不思議な高揚感に浸れる。その討ち入り→切腹までの流れが一番の見どころだろうけど、何気に塩冶判官の切腹シーンが好き。あと、顔世御前の桜の枝を使った悲哀の表現とかも。怖いくらいに美くしい。
黒子を使った歌舞伎的な衣装の「見せ方」も観客の心を奪うに充分。バレエもそうだけど、歌舞伎もとてもフィクションな舞台で、その二つを絶妙なバランスで一つの芸術に仕上げた感覚に驚くばかり。あと、(一力茶屋)遊女のシーンとか、(山崎街道)樹の表現とかね。
とても美しく惹かれる舞台だった。
満足度★★★★
美しい世界
ダークファンタジーな美しい愛情の話か。かなり面白い。衣装センスも良い。
ネタバレBOX
空気が配給制の世界。女王に気に入れられると金貨がもらえる、貧富の差がしっかりあって、なんだか息苦しい世界。そんな世界は、「バラ」と呼ばれる人間によって保たれている。「バラ」は、くうきにんげんで、褒められると身体が膨らみ、新鮮な空気を放出するが、今の「バラ」からの空気放出量が減ってき始めていた‥。
女王・カストー(笹野鈴々音)に仕えるルルート(古賀裕之)の子・ニカロ(猪股和磨)は、くうきにんげん。ルルート夫婦はそれを秘密にするため、笑顔でニカロを罵る毎日。ニカロと同級生のピコ(浅野千鶴)と病弱なその妹のウピ(小石川祐子)は、貧しいながらも明るく生きていて、あっけらかんとしたピコはニカロと仲良くなる。しかし、ニカロの秘密がバレて、ウピとニカロとルルートがつかまってしまう。ピコは駆けつけるも、ニカロを「バラ」として生かすか、それとも死ぬか迫られる。ピコは、ニカロに告白してニカロを爆発させようとする。
話の設定とか登場人物とか終始惹かれるものがあった舞台。特に終盤の、ニカロへの「好きだ」連呼シーン。ニカロの笑顔と、ルルートの満足げな表情が印象的。ピコの爽やかで穢れない愛情があふれていた。
女王の付き人的なドッコ役の永山が、色々と良い味を出していた。いい感想じゃないかもしれないけれど、好きだ連呼シーンが、「ラピュタ」のバルスシーンにかさなっているように、終演後ふと思った。
満足度★★★★
本当の裁判
四方から舞台を囲む座席とその周りにも廊下状の舞台があって、観にくいなと思ってたけど、途中から気にならなくなるくらいの面白さ。充実の120分。
ネタバレBOX
俗に言う幸徳事件について、その予審を担当した若手判事の田原(西尾友樹)の苦悩を中心に描く。
国が人を殺す‥その過程を克明に提示する。100年も前の日本のことではあるが、やはり現代日本でも、形は違うにせよ、往々にしてありそうな気にさせる。現場の人間に命令を出す上司の上に上司がいてさらにその上に‥というように、皆圧力によって動き、社会が成り立っているのだろうか。一番上の人間(今回は元老・山縣有朋)も、みな仕事をしただけ、と言っていたように、おそらく本気でそう思っていたのだろう。善悪や倫理といったものでなく、単なる恐怖(もしくは一種の使命感?)で人間は動くもので、その恐ろしさを味わえた。結審後のワインとか。(天皇は事件や裁判の内容なんて正確に知るはずもないんだろうけどね)
こんな状況を達観した菅野(堀奈津美)の表情が凛々しく舞台を照らす。終盤に田原が吐いた嘘も、菅野は理解していたと思う。だからこそ、田原らの状況をがんじがらめといい、自分は自由だと、田原らは哀れだと、言い切れたんじゃないかなと。