遊民の観てきた!クチコミ一覧

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匿名家族

匿名家族

劇団フルタ丸

サンモールスタジオ(東京都)

2013/05/11 (土) ~ 2013/05/19 (日)公演終了

満足度★★★

たしかに「匿名」だな
「チャレンジング興行」と銘打つだけあって、確かにチャレンジではある。

ネタバレBOX

果たしてそのチャレンジが成功したか、ということになるとハテナが付いてしまう。
フライヤーの裏面でフルタ氏は“家族に付きまとう儚さを、優しくも激しいやり方であぶりだしたい。”と書いている。主人公である家族を透明人間にし、周囲の家族(父の妹とその娘)や息子の恋人、恩師、友人らによって、その家族を理科の実験の「あぶり出し」のように、観客にまるで彼らがそこに存在するかのように見せようという手法だ。「匿名性」を強調することによって、普遍的な家族の姿をより鮮明に浮かび上がらせようという訳だ。            ただ、私は観ている間、家族一人一人の顔かたちや背格好、表情などがおぼろげながらも見えてくるのではないかと目を凝らしていたのだが、そこまではいかなかったようだ。(多分に私の想像力の欠如が原因だろうが。)
それでも、実在しない相手に話しかける役者たちの演技にそれほど違和感はなかったし、今回のチャレンジ自体、大いに勇気のいったことだと思うのでその点は心から拍手を送りたい。
セリフで心に残ったのは教授の、世代間のバトンの受け渡しの話だ。まさに「家族」を象徴するような言葉だった。
チャレンジング興行は第1弾なので今後のチャレンジがどんなものになるのか、これからも楽しみな劇団である。      
ミニチュア!

ミニチュア!

こちらスーパーうさぎ帝国

小劇場 楽園(東京都)

2013/05/08 (水) ~ 2013/05/12 (日)公演終了

満足度★★★

街を、人々を描けていたか?
オープニングから小ネタが連発され、役者紹介などもセンスが感じられたので、「おっ、これはいけるかも。」と思ったのだが途中から失速していまい残念。それぞれのキャラクターが一見個性的で魅力的な存在のように見えるが私には没個性的でステレオタイプ的な印象に映った。それは一言で言ってしまうと“深みがない”ということになる。また、サークルの先輩、後輩であったり居酒屋を営む夫婦であったり、幼馴染の男女であったり、それそれ繋がっているようであって描かれ方が希薄で「小さな街に住む人々」としての一体感が生まれていない。必然、「街」の輪郭もぼやけてしまい、作者が当日パンフで語る、「主役は街です。」とはなっていないように思えた。エンディングも予定調和的で物足りない。今後のストーリー性の充実を期待したい。

松ぼっくりⅢ

松ぼっくりⅢ

植吉劇場

「劇」小劇場(東京都)

2013/05/09 (木) ~ 2013/05/13 (月)公演終了

満足度★★★★

植木屋ならではの・・・
「植木屋が演る、植木屋の芝居」というだけあって、施主が代替わりし、先代が愛した日本庭園を西洋風の庭園に変えたいという要望に揺れ動く植木屋の親方という、現実にありえそうなエピソードを軸に、師弟関係や兄妹の関係を人情豊かに描いた作品。登場人物それぞれの心情が丁寧に表現され、個人的にはとても好みな芝居だった。造園会社の社長、照山慶司や主人公の妹でリンゴ園を営む木村次郎の登場が物語にアクセントをつけて笑わせてくれる。無農薬で育てたりんごが蕾をつけたことに子供のように大喜びする次郎と、自身が手がけた庭を潰さなけらばならない植木屋の親方、松山吉郎の対比に焦点を置いて観るのもひとつの観方だろう。

素晴らしき哉、人生!

素晴らしき哉、人生!

オーストラ・マコンドー

吉祥寺シアター(東京都)

2013/03/14 (木) ~ 2013/03/20 (水)公演終了

満足度★★★★

素直に人生の素晴らしさを感じる
大変遅くなりました。こういう作品は素直に受け止めればいいと思う。なんて人生は素晴らしいんだろうと心から思うではないか。主演の仁科田貴さん、亡き川谷拓三さんにとても似てるなーと思ったのですが、主人公にピッタリでしたね。(アフタート-クで話が出ていましたが、確かにイケメンが主人公だとこんなに感動しないんじゃないかという気もする。(失礼))全て木製の温かみのあるセットがとても印象的で、こんなところにも古きよきアメリカの雰囲気が出ていた気がします。今、この時代に倉本さんがこの作品を上演した思いが理解できたような気がしました。

かっぽれ!〜春〜

かっぽれ!〜春〜

green flowers

テアトルBONBON(東京都)

2013/03/20 (水) ~ 2013/03/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

あっぱれ、かっぽれ
大変遅くなりました。「観たい」でシンプルなフライヤーについて触れましたが、作品自体も雑味がなくエッセンスだけを散りばめたようなお芝居でした。東吉師匠はじめ皆さんが本物の噺家さん以上に噺家さんらしくて、ポンポンと飛び交う会話のテンポなど聞き惚れていました。当日は名人の噺を聴いた後のようないい気分がいつまでも残っていたのでした。最後に「かっぽれ」を踊ったのも粋な感じで泣かせました。100点満点の芝居でした。そうなると前作の「かっぽれ」を観ていないのが心残りです。何とか再演していただけないでしょうか。いや、前作のみならず内藤さんのすべての作品を観たくなりました。

父と暮せば・準ドラマリーディング

父と暮せば・準ドラマリーディング

ユニット TOGETHER AGAIN

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2013/03/15 (金) ~ 2013/03/17 (日)公演終了

満足度★★★★

普通の芝居以上に劇的かもね
遅ればせながら書きます。やっぱり板垣桃子さんは素敵な女優さんである。娘の美津江さんは20代なのかな。私が今まで観た板垣さんの役は中年女性だったり老婦人だったりしたので、今回の役はどんな感じになるのかなと密かに期待していたのだがとても可愛らしく益々ファンになってしまった。若林さん、初めて拝見しましたが、娘を包み込むような優しさを感じました。ショパンのピアノ曲もとても合っていました。ラストの美津江がささがきごぼうを作るシーン、ジーンときます。井上ひさしさんは本当に素晴らしい作品を残してくれました。

ぶっ壊したい世界

ぶっ壊したい世界

劇団TEAM-ODAC

青山円形劇場(東京都)

2013/03/13 (水) ~ 2013/03/20 (水)公演終了

満足度★★★

円形なくなるのかな・・・
遅ればせながら書きます。青山円形は何年ぶりだろう。本当に久々だ。やっぱこの劇場は存続するべきだ。そう思った。古くは劇場って円形から始まったんじゃないかな。(って芝居のことじゃないのかい。)でもそう感じさせる舞台だったということだ。少しストリーがうろ覚えになってしまったので感じたことを。主演の永沢さん、初舞台ですか。そうは思えなかった。痛々しさが伝わってきた。個人的には母と娘、父と息子の親子の情愛をもう少し描いて欲しかったという気がする。モロさんの出番、少なかったしね。

ラッコサイズラッコ【公演特設ページ公開中】

ラッコサイズラッコ【公演特設ページ公開中】

トリコロールケーキ

シアター711(東京都)

2013/03/13 (水) ~ 2013/03/17 (日)公演終了

満足度★★

統一したほうがいいですよ
遅ればせながら書きます。当日パンフの「代表あいさつ」を読むと“過去2回の公演を振り返ると、ストーリーの筋を通したい欲望のある私(鳥原弓里江)と、ストーリーの筋をぐちゃぐちゃに破綻させたい欲望のある今田さんとのせめぎあいが続く稽古場を経て云々”とある。観終わった後、どうもフワフワした印象を持った理由がわかった気がした。これではいけないだろう。どちらかに統一しなければ。(ただストーリーを破綻させるとそれだけで終わってしまう危険があると思うが。)最後、「ヴィレッジ・ヴァンガード」に行き着くというのも突飛である。ナンセンスといえばナンセンスなのかな。

SECURITY BOYZ!!!!! -俺たちスーパー警備員-

SECURITY BOYZ!!!!! -俺たちスーパー警備員-

気晴らしBOYZ

サンモールスタジオ(東京都)

2013/03/12 (火) ~ 2013/03/20 (水)公演終了

満足度★★★

たまにはこんなコメディも・・・
遅ればれながら書きます。肩の力を抜いて気軽に楽しめたがそれ以上でもそれ以下でもない。わかり易いというのが何も考えずに楽しめるライトコメディの良さですね。しかし日本の最近の喜劇は何でこう、すぐに「ゲイ」キャラを出すのかね。芸がないね。

ヒーローアゴーゴー!

ヒーローアゴーゴー!

劇団東京都鈴木区

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2013/03/13 (水) ~ 2013/03/24 (日)公演終了

満足度★★★

役者の熱についていけなかった
遅ればせながら書きます。「デパート屋上編」を観たのだが、昨年好評を博した作品の再演とのこと。ワンシチュエーションでヒーローショーの舞台裏というガチガチの設定だからか、物語に無理が出てきてしまっていた。特に宇宙人が出てきてからはどうもついていけなかった。それと役者があまりに嬉々として演っていると初見の客としては少し引いてしまう。(会場も固定ファンがついているようで熱気があったのも手伝ってか)「楽しめた」とは言い難い。

~メタモルリバース~

~メタモルリバース~

おぼんろ

新宿眼科画廊(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/06 (水)公演終了

満足度★★

末原氏の世界を把握し切れなかった。
遅ればせながら書きます。「サラサラ」という砂の音と映像が溶け合って素敵な空間を作り上げていたことは確かだろう。フライヤー裏面にも書かれている詩的な表現も切ない。ただそれ以上のものは感じなかった。芝居以外のことを言って申し訳ないが土曜日で多少混雑していたのか、会場が窮屈で仕方なかった。広いスペースを必要とする公演とは思わないがもう少しゆったり観られる環境が欲しかった。狭い所に2箇所も役者の動く通路があるのだがあれがどれだけ効果があったのか理解できなかった。

秘を以て成立とす

秘を以て成立とす

KAKUTA

シアタートラム(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

してやられたり
前半くらいまで「なんか淡々と進むなー」と思っていたのだ。全然気づかなかったのだ。ハリオと赤城が内なる晋太郎であることを。それだけハリオはいかにもぐうたらな下宿人然としていたし、赤城は颯爽と登場するから医者の一人と思っていた。だから晋太郎の妻、津弥子の苦しみもわからなかった。それがわかった時、ああ、そうだったのか、本当に大変だったんだなって・・・。藤本喜久子さんが巧いから余計こみ上げてきちゃって。私はいつのまにか桑原裕子のマジックにかかり、気がつけば頬を熱いものが伝っていた。KAKUTA健在なり、だな。

忘却のキス

忘却のキス

東京演劇アンサンブル

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

これは難しいぞ
「難解」としか言いようのない芝居だ。役者の台詞を理解しようと反芻していると次の台詞はあらぬほうに飛んでいて聞き逃してしまう。(台詞回しも早いし)
ただ言えるのはどのシーンでも登場人物の台詞がかみ合っていないというか、自分勝手にまくし立てているというか、まあそんな感じだ。(初めと終わりの映画を観た後の観客たち、医者と患者、そして主人公の男と女etc・・・)でも何故か男と女は最後には赤い傘に二人で入ってハッピーエっぽい感じなのだ。(私が見落とした箇所が沢山あったのだろう)芝居を理解しようとしてクロマチック・アコーディオンの素敵な演奏をだいぶ聞き逃してしまったようだ。これは素朴な疑問だが、役者さんはこの難解な台詞をどうやって覚えるのだろうとそればかり気になってしまった。この作品は私には点数を付けられません。“観たい”に「挑むつもりで観ます」なんて書いたけどこりゃ完敗だな。

夜光星ディスコルーム

夜光星ディスコルーム

エムキチビート

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/06 (水)公演終了

満足度★★★

それなりに楽しめたけど・・・
観てから少し経ったので思い出せる範囲で書きます。微熱を帯びた時代の象徴としてディスコルームを登場させたわけだが、ミラーボールも確か初っ端に回っていたくらいであまり意味がなかったようにも思う。藤堂平助の来歴や池田屋と長州藩邸の位置関係、新撰組の局中法度の文句など歴史的考証はなされていたようだ。(もっとあっただろうが)まあ今まで池田屋事件はテレビ、映画で数多く取り上げられてきたわけだが、前例に違わず「誠」に生きる新撰組隊士が美しく描かれる。これだから今でも新撰組は人気あるんだろうなあ、という感じ。まあ、これはこれで楽しめるんだけど。それに引き換え本来の主人公である池田屋の丁稚、花火師のアサヒの描かれ方が浅かったようだ。あと舞台装置だが板の間に傾斜をつけたのは、狭い舞台に奥行きを感じさせ、場面ごとの変化をつけるのには効果的だったと思う。

Doubt

Doubt

よろづや商店

d-倉庫(東京都)

2013/02/26 (火) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

「演じる」ということ
息詰まる台詞の掛け合いにただただ圧倒され「演じること」の崇高さに触れた思いです。

ネタバレBOX

2005年のピューリッツァー賞、トニー賞を受賞した作品だけに最後まで観客を惹きつけて放さない力がある。それはタイトルでもある「Doubt(疑い)」の一点に物語の全てが収斂されることにより発生する張り詰めた緊張感であり、4人の登場人物が彼女が彼女として、彼が彼としてそこ在る確かな存在感である。また俳優たちが見事にそれを演じ切っている、というか、その登場人物としてそこに存在していたという表現がふさわしい。話が逸れるが、先日ラジオ番組で久米明さんが亡くなった劇作家、演出家の福田恆存さんから「役者は何を話すかではなく、なぜその人物がその言葉を発するのかを考えながら台詞を言わなければならない。」と常々言われていた、と仰っていた。それに照らし合わせるとこの物語の登場人物には必然的に発せられる台詞しかないと思われる。俳優たちはその必然さを背負って台詞を発し、登場人物のゆるぎない存在感を浮き上がらせて見せてくれた。それがこの素晴らしい戯曲を更なる高みに押し上げている。素敵な舞台を見た後の感動は何物にも替え難い。最後に当日パンフの、プロデューサー西村長子さんの「固定観念との闘い」なる文章に痛く感動し、大いに共感した次第です。
DUST SHOOTERS~ダストシューターズ~【金曜マチネ完売しました】

DUST SHOOTERS~ダストシューターズ~【金曜マチネ完売しました】

カプセル兵団

笹塚ファクトリー(東京都)

2013/02/28 (木) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★

大仰なキャッチだが・・・
どうやら私にはこういったコテコテのSF物は向いていなかったようだ。大仰なキャッチコピーに誘われて出かけた事を後悔した。私が感心したのは2点。1点目は長沢美樹演じるレイラがザレム(遠藤公太郎)と再会したシーンで見せる表情の変貌振り。それまで冷徹な戦士然とした表情、立ち振舞いだったのが一転して柔和な表情になり声のトーンも別人のように変わっていくその瞬間。2点目は沢山の宇宙人が登場した(ようだ)が、役者の肉体のみで表現しようというその気概と完成度が高めだったこと。(印象に残ったのは2種類くらいだが)でも衣装はきめてるのに銃くらいは小道具としてあったほうがよかったのではないか。後で考えると「飛び出す演劇」、「ビジュアルイマジネーション演出」というのはこういうことなのかと思うわけなのだが、とにかく音響に頼りすぎる。役者の出ハケの度にいかにもな機械音が爆音で聞こえるのは何なのだろう。スピーカーの近くにいたせいもあるがだんだん耳障りになって仕方なかった。照明ももっと効果的な使い方ができたと思うしアクションもイマイチで見応えがなかった。

愛して紅

愛して紅

劇団†勇壮淑女

ザ・ポケット(東京都)

2013/02/26 (火) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★

太田善也に乾杯!
これは劇画調エンタテインメント演劇の秀作だ。私の観た太田作品の中ではピカイチだった。

ネタバレBOX

とにかく観ていて飽きない。「チーム紅」と「武流怒愚」の対立、百恵率いる黒魔術団(?)の登場、麻衣子、逸美、かずえの行方、麻衣子の母、芽衣子(梶芽衣子を意識したか?)の隠れた素顔等、最後まで飽きさせない展開であった。場のつなげ方が巧く、その配分も絶妙で、所々に笑いを散りばめてもコメディに傾きすぎない点も評価できる。また、「いま、義理と人情は女がやっております」的な啖呵を切るシーンが多く思わず「カッコいい」と声を掛けたくなる。特に、以前から精力的に外部出演を続けている青年座の椿真由美さん演じる芽衣子、シビレました。チーム紅 明菜役の江間直子さんの眼力も素敵でした。「チーム紅」、「武流怒愚」それぞれの分裂と再生を描いた件は強引ではあるがこの作品自体が劇画チックなものであるからこれはご愛嬌というものだ。それよりも芽衣子と麻衣子の母娘の愛情を中心に据えてみると、この作品が太田氏が当日パンフの中でいう“芝居を作る上で一番大切なのは愛であり、この芝居にもたくさん愛を込めました。”という一節にも頷ける。観劇後の私はこの純和風劇画調エンタテインメント芝居に出会えた幸せで高揚感に包まれた。散歩道楽ファンとしては嬉しい限りである。次回、本公演に期待したい。おっと、忘れていた。これは劇団「勇壮淑女」の公演なのだ。主宰の相原さんは事情により出演されなかったが、彼女はじめ劇団のスタッフの皆さんはこれだけの女優陣を集め、この公演の幕開けまでに大変なご苦労をされたことと思う。感謝します。次回作も観てみたいです。
後ろの正面だあれ!

後ろの正面だあれ!

椿組

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/05 (火)公演終了

満足度★★★★★

うぅっ、たまらん!
椿組は長らく観たいと思っていたのに未見の劇団であった。何度もこみ上げてきてやばかった。

ネタバレBOX

時代は多分私が子供時代を過ごした昭和40年代だろうと思う。(山口百恵だったり加藤茶の「チョットだけよ」、「LUX」は高級舶来石鹸などの件から)そのせいか懐かしくもあり、作品全体を流れる空気がとても優しくて何度も泣きそうになった。まず何といってもアメノウズメ役の岡村多加江さんがいい。彼女の表情に表れる純粋さ、限りない優しさ。気丈な長女が一人、弱音を吐くシーンで後ろから彼女をそっと抱きしめるウズメ、なくなった母の写真を精一杯の愛しさを込めて抱きしめるウズメ、ラストで桜の花びらの舞い散る中、手を広げ満面の笑みを浮かべるウズメ、今でも目に浮かびます。そして座長の外波山文明さん、この二役は見事ですね。単純に別人に見えますもん。さすがですね。木場さんのトボけた感じが好きでした。(私などが失礼かとは存じますが。)初見ですが、なんだかここの役者さんがとても好きになりました。女優さん、皆キレイだし、男優さんも愛すべき野郎たち(また失礼)って感じなんですよ。いままであまり考えたことなかったけど役者と観客の相性ってあるのかな、なんて思ってしまいました。話が脱線してしまいましたが、私の中では今年のベスト5に入る作品になるでしょう。(ベスト1じゃないのか)とにかくこの作品に出会えて本当に幸せでした。

浅草紅團 ASAKUSA RED GANG

浅草紅團 ASAKUSA RED GANG

劇団ドガドガプラス

シアターX(東京都)

2013/02/22 (金) ~ 2013/02/25 (月)公演終了

満足度★★★

華やかなれど・・・
ショー的色合いが強くその点では素晴らしかったのだが、芝居としてはどうかと・・・。

ネタバレBOX

昭和初期の浅草が舞台ということで、まさに「エログロナンセンス」の雰囲気がプンプンする舞台を期待していたのだが、思いの外お上品でスッキリした印象である。想像するにもっと猥雑な雰囲気だったのではないかと思う。でもレビューの踊り子たちの華やかさは見応えがあった。「魅せられた」という表現がピッタリだろう。ただ物語は「紅団」「カジノ・ド・ジョバンニ」の面々、男装の麗人や女スリ師等等、その時代を象徴するような人物の全部乗っけの様相を呈し、それぞれのエピソード色が薄まってしまい物語性が希薄になってしまった。これが、当日パンフで望月氏が語っている“摩訶不思議なラビリンス”であるならばちょっと違うような気がする。個人的には紅団にレビューを絡めながら千代子、弓子の姉妹と赤木の関係を軸に展開していくような物語が観たかったかな、というのが正直なところ。あと舞台装置もスッキリしていて踊り子さんの煌びやかな衣装がわんさと吊るされていて観劇前は「早着替えでもあるのかな。」と思っていたのだが変装屋のシーンとバレエダンサーが踊った後着替えていた時しか使われていなかったので不思議に思っていた。
メンバーの方の書き込みを読んで「そうか、レビュー小屋だったのか。」とわかったが、シーンが変わっても舞台上に出ているというのは納得いかないところである。それにしてもドガドガプラスは華のある女優が揃っているので今後の展開が楽しみな劇団になった。
獣のための倫理学

獣のための倫理学

十七戦地

LIFT(東京都)

2013/02/19 (火) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★

視点を変えることによって・・・
観劇直後と、しばらく経ってからの印象が変わった作品である。

ネタバレBOX

説明に、物語の大まかな展開が綴られているので完全な推理劇として観ることはできない。特に「ロール・プレイ・メソッド」の参加者たちによって提示される資料によって“桐原は犯人ではなかったのではないか”という方向への持っていき方は、皆さん仰るように出来過ぎ、無理矢理の感を抱かせる。それは大摘村通信(?)だったり桐原が村人たちと写った写真から導き出される方向性、結論に対して。また、ラストにつれて徐々に明らかになるが、35年も前に起こった事件(終わった事件)をワークショップにより検証しようとする、その参加者たちはよほどその種のテーマに関心がある者、又は何らかのかたちで事件に関係のある人物であろう事は容易に想像できる。私は観劇の冒頭、(説明書きをすっかり忘れていたので)半分推理劇の展開を期待し観客もそこに参加するようなワクワク感を感じたので、観終わった直後はしっくりこない印象のほうが強かった。ただその後、この作品の肝は何かと時折思い出してつらつら考え多少考えが変わってきた。脚本の柳井氏はこの作品について「出来過ぎ」との意見が出ることは十分に承知していたはずである。その上で彼が描きたかったのはロール・プレイの役割を演じることによって炙り出される登場人物たちの細かな心理描写だったのではないか、と考えた。そう思えば合点がいく。ブログを拝見していても役者一人一人の役作りへの真摯な姿勢が窺える。特に市川玲子役の関根信一さんは印象的だ。彼の醸し出す穏やかで内に秘めた力強さを感じさせる演技は芝居全体を柔らかく包んで緊張感のある舞台を引き締めている。いずれにしてもLIFTという極小空間、ロール・プレ・メソッドという設定に縛られながら、最後まで緩むことのない緊迫感を持続させ、観劇後も観客にこれだけ考えさせてくれる芝居を創り出してくれた柳井氏始め、役者さん達、スタッフの皆さんに感謝したいと思う。

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