満足度★★★★
芝居の醍醐味
九州の片田舎で暮らす姉弟の平穏な日常が、凪いだ海が少しずつ波立っていくように変化していく。その過程が静かに、(内実、激しく燃えるように)描かれている。
前作同様、この団体は言葉で多くを語らず、役者の表情や台詞の行間で我々に訴えかけ感じさせてくれる。観客の想像力を喚起させる芝居ーここにこそ芝居の大きな醍醐味があると思い起こさせてくれる。
昔付き合っていた男、清川悟にしつこく迫られても頑として受け付けなかった平岡佐和子が一瞬だけ表情を変えたように私には見えた。計測器の針が大きく振幅し、すぐに戻るように。そして、ラストでは(明らかにされないので定かではないが)佐和子は清川とあの岬へ・・・。大きく丸い月に照らされ岬に立つ二人の姿が見えるようだった。また強い絆で結ばれていたはずの弟の信夫は茶の間に一人座り込み何を思ったのか。彼は微かに笑っているようだった。大げさかもしれないがある種の「無常感」というものさえ感じさせる趣のある舞台だった。