わが星
ままごと
J:COM北九州芸術劇場 小劇場(福岡県)
2011/05/19 (木) ~ 2011/05/22 (日)公演終了
満足度★★★★
生の謳歌を感じた
『わが星』は3回観たことになる。映像・リーディング・そして今回。
当然といえば当然だが、今回が一番良かった。
誰もが郷愁を感じ、思い出すことができる「我が家の明かり」というキーワード、長い時間と空間を超え最後の瞬間にだけ会える少年と少女。
多くのキーワードが観る者たちをそれぞれの思いに駆り立てる装置が出来ていて上手い。
ラップによるセリフ回しでテンポよく聞けるというのもある。
前方からの演出はなされいたものの、今回は円形ではなく、箱型の舞台だっため、座った位置により観やすさに不公平感はあったように思う。
桜の園
地点
イムズホール(福岡県)
2011/05/21 (土) ~ 2011/05/22 (日)公演終了
満足度★★★
面白い。が、物足りなさを感じた。
窓枠に座り、或いは立ち、そこから動かない屋敷の人々。
巨大なプラットホームのようなベンチ、お金を敷き詰めた舞台を行き来する外部の人間、と分けられている。
お金がばらまかれた舞台上を歩くことにより、音・光と効果が生まれる。
また、窓枠が変わっても、「出ていきましょう」と言っても、最後までその場から動かない屋敷の人々に、家・土地に縛られている感じがあらわれている。
セリフの入れ替え・物語の短縮も面白い試み。
しかし、それには物足りなさを感じる。
演出家がやりたいことはわかる気がするが、もっと大胆でもよかったのではないかと思う。
アフタートークも楽しめた。
『prayer/s』※ワーク・イン・プログレス公演
RAWWORKS
SRギャラリー(福岡県)
2011/05/16 (月) ~ 2011/05/17 (火)公演終了
満足度★★★
期待できる
まだ「途中経過」なので評価はしにくい。
観たものの、実を言えば自分にはわからなかった部分も多かったので
、観たことにより自分の中に浮かび上がったイメージを列記してみる。
最初に浮かんだのは「見世物小屋」。俳優たちは開場したステージで自分の姿をさらしている。
俳優たちが喋り、何人かの俳優が去って行った頃「精神病院」のイメージが湧く。これは、白い壁からのイメージだろう。
そして次に「死後の世界」ではないかと思い始める。彼等は死後未だ苦悩し、もがいているのだ。
そして物語も終盤、コミュニケーションの苦悩や、同じ場にいながら違う位相に住むものを描いているのではないかと考える。
キャンドルと外から漏れる明かりだけを使った照明は面白かった。
ことばの入れ替えをもっと多元的にしたら面白くなるかも、と妄想した。
正直言うと会場客席は狭くて体が痛かったし、だんだん暑くなり、観劇状況としては辛かった。
紅姉妹~べにしまい~
G2プロデュース
J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)
2011/05/15 (日) ~ 2011/05/15 (日)公演終了
満足度★★★
見本のよう作品。
終戦から現代まで、アメリカに住む日本人(日系人)3人の姿を、時代を遡りながら描いていく。
時代が遡るたびに出演者たちは若くなっていく。
いま語っていることが後でどうなるのか、観客たちはその答えを既に見ている。
そして、古い時代3人にどんなことが起こったのかも徐々に知らされる。
それは微笑ましかったり、残酷だったりする。
時代背景もしっかりとしている。
3人のキャラクター配置も考えられている。
何の欠点もないとも言うこともできるのだが、ちゃんとしすぎていて面白みに欠けることがちょっと残念。
『Family Days -キレイで、グロテスク-』
座”K2T3
大博多ホール(福岡県)
2011/05/13 (金) ~ 2011/05/14 (土)公演終了
満足度★★★
堅実なつくり。
終末を描く作品だが、それほど荒唐無稽ということにもならず、堅実に作っている。
実際に劇中の人物たちのようなことになるかは分からないが、「ありえない」と思わせるような不自然さはない。
老け役の無理さ加減も納得のいく設定で笑わせてくれた。
イーヨの演技には納得いかないものもあったが小さな傷だろう。
終末の後が描かれることはよかったが、なんとなくいい話で終わったのは個人的には残念。
ねずみとり
ゲキダン大河
ぽんプラザホール(福岡県)
2011/05/10 (火) ~ 2011/05/13 (金)公演終了
満足度★
ミステリーを考えもせずやるものではない。
原作とは男女の配役を何名抱えている模様。
おかげでストーリーに無理が生じている。
役者の実際の年齢の幅があまりないから、役柄の年齢を見た目で推察することが出来ない。
演技も下手だからミスリードの演技なのかどうかも判別しにくい。
手持ちの劇団員だけで安易にミステリーをやるものではないという見本だった。
むしろ芝居が始まる前の舞台の方が興味をそそられた。
おやすみ・ザ・ワールド
非・売れ線系ビーナス
西鉄ホール(福岡県)
2011/05/08 (日) ~ 2011/05/08 (日)公演終了
満足度★★★
演フェス、このレベルからの作品を望む。
中央に箱。四方を客席と挑戦的な舞台にしている。
出番のない役者は舞台端で紙袋をかぶり座ってる。
中央の大きな箱からは小さな箱も分割で現れるようになっている。
この全てがちゃんと効果的に使われている。
最初の冒険部のくだりは長く感じたしつまらないくすぐりも多くて不安に感じたが、その後は一つ一つのエピソードがきちんと積み上げられていたし、意味のあるものだった。
舞台の中(明りの当たるところ)と外(明りの当らないところ)の動きも考えられていてよかったと思う。
小さなマイナス点は、役者の演技があまり上手くなかったこと。
大きなマイナス点は、ラストがその後を暗示するだけに終わってしまったこと。
作者が自分なりの答えを示すことができていれば傑作になったと思う。
この劇団で観た作品中で一番おもしろかった。
四つの部屋と、住人と。
演劇関係いすと校舎
西鉄ホール(福岡県)
2011/05/05 (木) ~ 2011/05/05 (木)公演終了
満足度★
何もおこらない
タイトルの通り、劇中何も起こらなかった。
一応ちょっとした変化はあるが、それは劇を転換するようなことでは全くない。
日常を描いたり、若者の小さな変化(成長)を描くということなのかもしれないが、退屈すぎて時間がとても長く感じた。
まわりの席からもため息などが聞こえてきていたから多くの人が同様だったのだろう。
役者陣たちが頑張っているのは伝わるが、演技・滑舌・間が酷い。
地元(地方)劇団のほとんどに言えることではあるが、あまりにもセリフとセリフの間がなさすぎて人間の会話をしていない。
幕間の着替えに使っていた「オクラホマミキサー」の音楽もいま一つ効果的とは言えない。
照明も含めもっといろいろ工夫する必要があると思う。
「堀川波鼓」 「ヂアロオグ・プランタニエ」 「霊感少女ヒドミ」
FOURTEEN PLUS 14+
西鉄ホール(福岡県)
2011/05/01 (日) ~ 2011/05/01 (日)公演終了
満足度★
なぜ短編3本としたのかわからない
3つの作品をやることで、それぞれに相関性が生まれるわけでもなく、むしろ一つ一つに時間をかけることが出来なかったためか、作品の面白さも消えている。
「報われない思い」を描くというなら、近松作品は酷い改悪でどこにそんなものがあったのかわからないし、岸田作品も本来あったものが消えている。岩井作品は見たまま「報われない思い」だが、表面的。
やっつけ仕事ではなく、きちんと作品と向き合って作ってほしい。
作品の読み込みもせず、表面だけでやられたのでは、その作家の評価を落とすことにすらなりかねないと思うのだが。
個人的意見ではあるが、近松・岸田・岩井と並べたのでは、岩井作品だけ作品のレベルが格段に落ちてバランスが悪いと思うのだが。
現代の作家から同じテーマで、ということで探すなら、他にも候補作はあるように思う。
「吉林食堂〜おはぎの美味しい中華料理店〜」
特定非営利活動法人 劇団道化
西鉄ホール(福岡県)
2011/04/28 (木) ~ 2011/04/28 (木)公演終了
満足度★★★
普通に観れた
中国残留孤児の問題を、声高に叫ぶことなく演じられていて悪くなかった。
役者の大仰な演技も、最初こそウンザリしたが観進めるうちにそれほどは気にならなくなった。
しかし、後半まで引いた、「母と妹を会わせないようにするネタ」にほとんど意味がなかったことは評価できない。
「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう!」vol.3 上演審査
福岡市文化芸術振興財団
ぽんプラザホール(福岡県)
2011/04/22 (金) ~ 2011/04/23 (土)公演終了
満足度★★★
差があり過ぎる。
なかなか面白い企画ではあった。
残念だったのは参加団体(コンペに通って上演できた団体)が2団体と少なかったこと、力量差があり過ぎたこと。
私が観た日は、village80%が先、柿喰う客が後の上演だった。
ですので、上演順に簡単な感想を。
演出のコンペなので、基本的には役者の演技力不足はあまり勘定に入れません。
village80%は、全体に白のイメージ。白いシーツにコロスたちも白。
コロスたちにゴキブリの羽音やセリフの反復などの「効果」の役割を持たせている。
最初こそは目を引いたが、後半になるにつれ彼らの意味はどんどん消失し、芝居の面白味もどんどんなくなっていく。
また、コロスたちの衣装は真っ白だったが、インナーのパンツは白ではなかった。
これは演出意図だろうか、それともそこまで演出が行き届いてないだけか。
後者のような気がする。
台本自体に関してはただ素直になぞっているだけなので、演出との乖離が目立つ。
特に、「ブラジルは~」からのセリフや「チェーホフです」のところは演出が浅すぎて読み込みが不十分なのが丸わかり。
演出家の幼稚な自己満足を見せられた気になり評価できる舞台とは言えなかった。
柿喰う客は最初から音楽とダンスで始まり、正攻法で見せない事がすぐに分かった。
しかし、奇をてらっただけのものではなく、客を引き込むことをちゃんと考えている。
台本も解体が行われ、「ブラジルは~」や「ゴキブリ~」などのセリフを違う役者によって反復させたりする。
それはただ単に観客に目新しさによる面白さを感じさせるだけでなく、作品理解を促している。
同じセリフであっても、別の役者が別の解釈でセリフをしゃべることにより、別の意味が生じている。
また、それまで女たちによって演じられていた舞台に現れた男優、彼によりまた意味は大きく変貌した。
いかにも韓国人というたどたどしい喋りと回りの俳優たちの反応で、長いセリフを飽きさせない。
「チェーホフです」のセリフも、前段階でほかの俳優に喋らせておいて別の解釈を与えておき、最後に彼に言わせることにより、また別の解釈が生まれる。
何度も同じシーンを、違う意味を与えながら重ねることで、観客への作品理解と深みを与えたことで成功した舞台だったと思う。
今回の星は2つの作品の間を取りました。
焼肉ドラゴン
新国立劇場
J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)
2011/04/16 (土) ~ 2011/04/17 (日)公演終了
満足度★★★★
面白いと好きは違う。
単純に言ってしまえば「屋根の上のバイオリン弾き」在日版。
だが、遠い異国の話ではなく自分たちの住む国での出来事であるだけに現実感・恐怖感が増す。
高度経済成長の時代に設定されているため、今の目から見た彼らの状況、その後の運命などが見て取れる。
日韓の俳優の配置も、日本人を日本生まれの在日としているなど上手い。
なにより、父母が力強くていい。
抑えるべき部分などは随分ストイックにやっていたが、感情過多な部分も目立つ。これは国民性の違いと捉えるべきだろうか。
賞を取りまくったというのはなるほどと思えた。
しかし、絶賛される程の理由は思いつかない。
後半以降の観客席で起こっていたすすり泣きや笑い、この意味を観客はもっと考えるべきではないだろうか。
シングルマザーズ
ニ兎社
大野城まどかぴあ(福岡県)
2011/04/10 (日) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
芝居としての評価は・・・
シングルマザーたちの苦労、DVの問題、母子加算などとの闘い・・・、とシングルマザーたちを襲う問題を年代を追いながら見せてくれて勉強にはなった。
だが、我々は勉強をしに行ったのではなく芝居を観に行ったのだ。
芝居として考えると、役者たちのほとんどがオーバーアクトでつまらない。
そんな中で、枝本萌はコメディリリーフを上手くこなしていた。
脚本も永井さんとしては下の部類だと思う。
探偵〜哀しきチェイサー〜
ココロ・コーポレーション
ももちパレス(福岡県)
2011/03/31 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
流石マキノノゾミ
ハードボイルドの世界を吉本新喜劇でやる。
聞くと違和感がありそうだが、実際には素晴らしくフィットしていた。
大阪弁、下町という世界がハードボイルドにビッリだと発見したマキノノゾミは素晴らしい。
年を取り、うらぶれた探偵を沢田研二が好演。
他の面々も役柄に合っている。
ストーリーも複雑ではないが、キチンとしたミステリーだった。
端々に現れる「ハードボイルドネタ」もクスリとさせてくれる。
唯一と言えるほど残念なのは、やはり制約のせいなのか、沢田研二の歌だけが世界観に合わず浮いていた。
ミステリーのためストーリー(後半)のネタバレは書きません。
ゾウガメのソニックライフ
チェルフィッチュ
山口情報芸術センター YCAM スタジオB(山口県)
2011/03/13 (日) ~ 2011/03/13 (日)公演終了
満足度★★★★
次はどこを目指すのか楽しみ
登場人物は5人。
物語には1つのカップルが登場するが、誰が「彼」で「彼女」かは特定されず流動的だ。
話も特にあるわけではなく、何も起こらないと言っていい。
初めてチェルフィッチュを観たときのような衝撃はなかったが、十分に楽しめた。
それは幸運にも前週に行われたワークショップに参加できたせいもある。
岡田氏は、作品の完成形は舞台の上ではなく、観客の脳内でつくられるべきもの、と語っていた。
そして、それは実際の舞台を観ることで実感できた。
パンフレットで「レイヤー」というキーワードを使われていたが、役者たちは、言語・仕草・心・無意識・(または無関係)などをそれぞれ担当、表現し、それがレイヤーとなり、観客席に一つの完成した画像を(それも観客一人一人に違った画像を)結ばせたのではないかと感じた。
ただし、「素晴らしい」と感じたパフォーマンスと、「いま一つイメージが伝わってこない」と感じたパフォーマンスがあったことは残念。
それから、直接観客に対するアプローチには賛否あるようで、本来は私も好きではないけれど、今回は、観客へイメージを送るための刺激になっていたように思うので「アリ」だと思う。
BEN
北九州芸術劇場
J:COM北九州芸術劇場 小劇場(福岡県)
2011/02/21 (月) ~ 2011/02/27 (日)公演終了
満足度★★★
テーマは一つがいいと思う。
それなりに楽しく見れたが、前半と後半にズレがあり、無駄なシーンも多すぎた。
前半のホームドラマと後半の企業宣伝、仕方のないこととはいえ、視点がブレすぎ。
どちらか一つに絞ったほうが潔かったのではと思う。
役者陣は頑張ってはいたが、役柄のせいで割を食っていた人もいた。
無駄なエピソードを省き、2~30分カットしたらもっと面白かったと思う。
個人的なことだが、夢想でのダンスシーンが物足りなかった。
金閣寺 The Temple of the Golden Pavilion
KAAT神奈川芸術劇場
キャナルシティ劇場(福岡県)
2011/02/25 (金) ~ 2011/02/27 (日)公演終了
満足度★★★
擬人と光
3時間と長い舞台だった。
前半は疲れていたこともあって少し居眠りをしてしまった。
教室のような舞台で役者が本を読むところから物語に入っていく始まり方は意外にもスムーズ。
役者陣も安定した力を見せていた。
が、今回の白眉は金閣の擬人化と光の演出だったと思う。
少しくどいところもあったが、やはり宮本亜門の光の使い方は好きだ。
個人的には三島は好きではないので、舞台は面白くても、話としては面白く見ることが出来なかった。
ミュージカル「アトム」
わらび座
ももちパレス(福岡県)
2011/02/22 (火) ~ 2011/02/22 (火)公演終了
満足度★★
可もなく、不可もなく
とにく普通。としか言いようがない。
「アトム」を出さずいかにして作品を作るかの試みは面白いが、原作の精神から乖離しすぎたテーマになっていて、これをアトムと言うのかと疑問を感じた。
話の展開や演技等、いかにも子供向け。子供向けミュージカルが悪いとは言わないが、子供向けと子供だましは違う。
他ではいい仕事をする脚本家や演出家も、わらび座では面白くない。
なにかあるのだろうか。
4時48分サイコシス
花野組
ももちパレス(福岡県)
2011/02/20 (日) ~ 2011/12/04 (日)公演終了
満足度★
失敗作、だと思う。
2時間がとにかく長かった。
主催者はこの作品を上演すためにずいぶん長い時間をかけ作品を解読したらしいが、それが成果を上げているとは思えない。
演出家の頭だけで考え、自分の狭い世界より外に出ることが出来なかったように思う。
どれが正しいと言えるような作品ではないが、作品の解釈を誤っているとしか思えない。
また、役者の演技もカッコつけばかりで、原作に全く書かれていないセリフを喋らせたりと、なぜそんなことをさせるのか理解できない。
それが効果があると思ったのだろうか。
ホールが会議室のようなところで音響が悪かったせいもあるが、音楽と役者のセリフのバランスが悪く、声が聞き取りづらかった。
ロングラン公演だということなので、これから劇的に変われば面白く見ることもできると思う。
原作脚本を読み直してみようと思う。
時計じかけのオレンジ
ホリプロ
J:COM北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)
2011/02/18 (金) ~ 2011/02/20 (日)公演終了
満足度★★
いろいろなものが活かされていない
面白い部分はいくつかあったものの、最終的に面白い舞台とはとても言えなかった。
役者たちのしゃべりが不明瞭で聞き取りにくかったこと、ミュージカルといいながら曲が少なかったこと。
それに演出がうまくない。
やりたいことや考えていることはわかるのだが、わかるようでは客は面白いとは感じない。
途中やたら「原作通り」とか「原作にない」のセリフも余計なだけ。
とにかく物足りない舞台だった。
とはいえ、白い幕を利用しての舞台転換は良かったし、幕間への入り方は笑った。